結婚を機に江別市へ移住した、ウィンタースポーツ好きなご家族がいます。本州からやってきた伊藤さんご夫妻です。ウインタースポーツと言えば、道内にはほかにもメッカがありそうですが、、、なぜ江別市だったのでしょう!?。お話をうかがってみて、取材陣一同は、その理由に納得。さらには、この街の魅力についても、改めて気づかせてもらった取材となりました。
道外から江別市の住宅街に移住をした伊藤家
伊藤家は、孝太さん(たかひろ)と沙喜子(さきこ)さん夫婦と、生まれて間もない玄ちゃんの3人家族。JR線の駅から徒歩圏の住宅街にありながら、車で数分走れば自然豊かな野幌森林公園があるという立地に住まいを構えます。
孝太さんは江別市出身にて、厳密には江別市への移住というよりUターンというほうが正しいのですが、沙喜子さんは兵庫県神戸市の出身で、江別市には縁もゆかりもなく、まさに移住です。まずはお二人が江別市にやってくる前の生活と移住を決めたきっかけについて伺ってみます。
スキーが好きすぎてスキーの仕事を始めた孝太さん
「前に住んでいた時は、江別って何もないよなって思っていました」と語る孝太さん。江別市の外へ視線が向き、高校は札幌市内の学校へ通い、卒業後は北海道を出て首都圏にある大学へ通いました。
孝太さんの趣味はスキー。スキー好きなおじいさまの影響で5歳からゲレンデに立ち、家族に教えてもらいながらスキーの腕を磨いてきました。高校も大学もスキー部に所属して競技スキーに没頭。プライベートではバックカントリーも楽しんでいたそうで、大学卒業後はカナダに渡りさらにスキーに情熱を注いでいたそうです。
スキーとともに青年時代を過ごした孝太さん。スキーが好きすぎて、カナダから帰国をしてから就いた職場もスキーショップでした。
「アルバイトからの叩き上げみたいなかんじですかね。前に勤めていたところがアウトドア用品の輸入代理店という業態の会社で、輸入の仕事や海外のブランドについて知って、こうゆう仕事があることを知ったんです。ショップ店員から始まり、メーカーの営業になり、さらに今の会社の立ち上げメンバーになったという流れです」
アルバイトで入社をしたのち、24歳で同業他社の営業担当として採用され、27歳の時に今の会社の創業に加わり、今までの経験を生かして仲間とともに、アウトドア用品の輸入を手掛ける会社を神奈川県横浜市で立ち上げたそうです。横浜市内の繁華街の一つ、元町商店街の近くにオフィスを構え、職場の徒歩圏で家も借りました。営業職として国内外のスキーリゾート地に出向くことが多く、プライベートでも長野県や群馬県などのゲレンデに通っていたという、かなりアクティブな生活を送っていました。
登山とスノーボードが好きな沙喜子さん
いっぽう、沙喜子さんは江別市に来る前までは大阪市内の中心部で暮らし、通販会社に勤め主にECサイトのディレクションをしていました。趣味は登山とスノーボードで、休みのたびに頻繁にアウトドアフィールドへと足を運んでいたそうです。
「私が住んでいたところは近くに高速道路が通っていて、マンションが建設ラッシュで、パトカーや救急車のサイレンを聞かない日がないくらい、かなり賑やかなところでした。でも、休みの日に早起きしたら、ちょっと行ってくるかって感じで奈良県や、近郊の山によく登っていました。冬は友達とスノーボードをしに岐阜県に行くとか」
沙喜子さんも孝太さんと同様にアウトドア好きでアクティブな生活を送っていたようです。スキー好きな一家に生まれ、年越しはゲレンデが目の前に広がる志賀高原で過ごすのが毎年の恒例行事でした。北海道にも家族でスキーをしに訪れたことはあったそうですが、江別市に訪れたことはありませんでした。
プロポーズは移住のお誘い
そんなお二人が出会ったのは2019年頃。大阪でのアウトドア用品の展示会で知り合い、横浜と大阪の遠距離恋愛がスタートしました。時が過ぎ、2022年のゴールデンウイークに転機が訪れました。
この時、お二人は京都府から福井県に至るトレッキングコース「鯖街道」約72kmを4日間かけて一緒に歩きました。福井県のゴールに着いた時、孝太さんは沙喜子さんにこう告げました。
「北海道へ一緒に行きませんか」
プロポーズの言葉が北海道への移住のお誘いだったのです。
「東京や横浜に住んで15年くらいでしたが、いつか江別に戻るかもって淡く思っていましたけど、何かきっかけがないと戻れないなって思っていました。なので、結婚を機に戻ろうと思ったんです」と孝太さん。
いっぽう沙喜子さんにとってはまさに青天の霹靂。孝太さんが北海道出身ということは知っていたものの、北海道で生活をするとは考えたこともなく、そもそも江別市という地名自体プロポーズされてから初めて知ったそうです。
「ほんと突然の出来事で(笑)。雪がものすごく多そうと思ったけど、都会の札幌にも近く、なんとかやっていけるかなって思いました。自然も身近にあり、大坂の暮らしも楽しかったけど、もう十分楽しんだかなと。ノリと勢いですね。実際に来てみたら、神戸の郊外のベットタウンに雰囲気が似てるなって安心しました」
リモートワークの導入を会社に直談判
こうしてお二人は結ばれ、ゴールデンウイークに「移住のお誘い」を受けてわずか5か月後、2022年の9月に江別市へ引っ越すことになりました。
住まいは孝太さんの祖父が所有していた家を使えることとなりひと安心でしたが、問題はそれぞれの仕事です。移住を検討する方々にとって仕事をどうするかが一番のハードルかもしれません。
沙喜子さんは移住を機に正社員から業務委託に切り替えて仕事を継続し、玄ちゃんの出産を機に退職しました。
いっぽう孝太さんは当時、横浜市の本社に出勤してデスクにつくという仕事スタイルでした。そこで、孝太さんは会社に対して真正面から直談判をします。移住したい、リモートワークをさせてほしいと。
「自分が前例となって制度を作った感じです。規模の小さな会社で、その都度制度をフレキシブルに作って行くような会社なので」
行動力が長けた孝太さん。新たにリモートワークの制度や仕組みを会社に作ってもらい、江別市に住みながら横浜市の会社の仕事を継続することになりました。
江別のアドバンテージは交通アクセスのよさ
新たにリモートワークでの勤務を認めてもらえるようになった背景は、会社自体が新しく柔軟性があったということもありますが、移住先が江別市だったということも少なからず好影響を及ぼしているようです。
「仕事をしてみて気づいたんですけど、江別って意外と交通アクセスがいいんですよね。新千歳空港も丘珠空港も1時間以内で行けるので。国内外に出張へ行くことがよくありますけど、新千歳空港は主要都市に飛行機が飛んでるので、横浜から新幹線や飛行機で行くのとあまり変わらないんですよね。最近は丘珠空港から新潟への航空便もできたので、信越や北陸とか仕事で行くのも便利になりましたし。同じ北海道でも新千歳空港まで遠い町だったら仕事続けるのが厳しかったかもしれません」
現在は江別市の自宅を拠点に仕事をし、月1回横浜市の本社の会議へ出向くほか、ヨーロッパやカナダなど年4回程度の海外出張と、国内各所への出張へも出向いているそうです。江別市の地の利が成せる仕事スタイルです。
「でも、こう考えると、僕あまり江別にいないかもしれませんね(笑)」と語る孝太さん。国内外の出張が多く1、2週間家を空けることも時々あるのだとか。その間、沙喜子さんは寂しくないのでしょうか。
「1週間くらい神戸に帰って、友達と会ってリフレッシュしています」
縁もゆかりもない土地で知り合いが皆無な江別市に移住した沙喜子さんにとって、孝太さんの長期出張はいい意味でのリフレッシュ期間。関西圏への就航便が多い新千歳空港が近いからこそ、里帰りも気楽なようです。
空港に近いだけではなく、札幌市中心部にもJR線で数駅という近さも魅力。沙喜子さんは「街で買い物したいなって思ったら電車乗って20分で行けるので便利」と語り、孝太さんは「終電が遅いのでススキノの飲み屋に夜23時30分までいられるので、札幌市民とあまり変わらないと思います。江別に来て子どもできてから飲みに行く機会は減りましたけどね」と言います。
自然を身近で体感できる江別の暮らし
江別へ移住をしてよかったことは立地のよさ以外にいくつもあるようですが、何よりも自然が身近にある環境だそうです。お二人が例としてともに挙げたのは、自宅から車に乗って数分で行ける野幌森林公園です。
「自然の豊かさが桁違いですね。冬は子どもをソリに乗せて散歩するのですけど、家にいる時よりも楽しそうな顔をしているんですよね。こういうのは都会にいたら絶対できないなって思いました」
時折野幌森林公園を訪れるという沙喜子さん。よく公園を散歩している方と顔見知りになったり、野鳥の写真を撮っている方々にシマエナガを教えてもらったりと、公園ライフを満喫しています。行くたびに何か新しい発見や気づきがあるそうです。
孝太さんも江別市に引っ越してきたからこそ楽しめるメリットとしてこう語りました。
「横浜にいた時は車で3時間以上かけてゲレンデに行ってましたけど、今は数分で野幌森林公園にクロスカントリーをしに行けるので、時間的にも経済的にもコストが最低限になりましたね。仕事前に朝1時間くらい滑るということもできます。車で30分も走れば岩見沢や長沼のゲレンデにも行けるので最高の環境です」
緩いコミュニティが江別の魅力
仕事が休みの日は家族3人で野幌森林公園へ出かけ、玄ちゃんをソリにのせ、2人はクロスカントリーを楽しむということもよくあるそうです。
野幌森林公園はクロスカントリーを楽しむ方々がほかにもいて、何人ものスキーヤーが足の左右のスキー板で雪上を踏み固めながら滑っていくことで、まるで2本のレールのような轍が自然とできているそうです。
「誰かがわざわざ作ったとか管理者がいるとかではなく、自然発生的な感じでクロスカントリーのコースができてるんですよね。何か1つのグループなわけじゃなく、ただ近くに住んでてそこでクロカンしてるだけなんですけどね。学生もいれば70歳くらいのおじいちゃんもいます」
孝太さんは、地域コミュニティの緩いつながりや密すぎない地域の絆が感じられるのも、街の規模としてバランスがよいと考えています。沙喜子さんも同様に、心地よい距離感での人のあたたかさを感じると言います。
「近所にランチをしに子どもを連れて出かけた時、子どもが起きちゃって『だっこ~』みたいになったら、近くにいたおばさま方が『私ら見てるからゆっくり食べな』って子どもの面倒を見てくれたってことが何回かありました。恥ずかしいなと思いながらもありがたいなって」
将来はコミュニティを作りたい
江別市に移住をして約1年半。孝太さんにとっては15年ぶりの故郷で沙喜子さんにとっては未知の街でしたが、移り住んでよかったと語ります。この先も江別市民として暮らしていく中で、今後やってみたいことについて伺ってみました。
「今、ファミリー・ニューボーンフォトのフォトグラファーをしています。地域の方に認知頂き、節目に撮ってもらいたい!と思って頂くことが目標です。あと、この辺はカフェとかコーヒースタンドが少ないので、妄想ですが、カフェ経営も憧れます」
カフェ好きでコーヒーの淹れ方もプロに教わった経験のある沙喜子さん。子育てがひと段落したらいつか地域に根差したお店を開いているかも!?
いっぽう孝太さんは「ウィンタースポーツができるようなフィールドを自らクリエーションしたいです」と、壮大な夢を語ってくれました。一般的な民間経営のゲレンデ運営ではなく、スノーフィールドを守る共同組合のようなコミュニティを作るという発想です。
「みんなスキーやスノーボードをするんだけど、そのかわりにリフト係りやったり清掃員やったり食堂で何か食事を出したりとか、みんなで回してフィールドを守っていく運営です。ローカルゲレンデは採算が取れないところばかりなので、地元の公園を守るような意識でスキー場を守っていくのが必要なんじゃないかなって思っています」
街とゲレンデが近い北海道だからこそ、オフィス兼ゲレンデや保育園兼ゲレンデなど、ゲレンデにさまざまな機能をかけ合わせることで、ゲレンデの存在意義や地域の魅力がアップするのではないかとも語ります。
野幌森林公園に自然発生するクロスカントリーの轍のように、いつか地域のコミュニティによって守られるゲレンデが近郊にできるかもしれません。クリエイトするのは孝太さん、そこでコーヒーを淹れるのは沙喜子さんかも!?
都会暮らしをしながらウィンタースポーツをはじめアウトドアレジャーに長年慣れ親しんできた2人にとって、都市機能と自然環境が身近にある江別市への移住は大正解だったようです。よりよいライフスタイルを手に入れた伊藤さんご家族の幸せをお祈りします。
- 伊藤孝太さん・沙喜子さん
- 住所
北海道江別市
<会社情報>
Sputnik inc. Sapporo Office
〒064-0823
北海道札幌市中央区北3条西20丁目2-16 北3条MMビル 306号
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