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【北海道へ移住 生活費のお話】vol.09 清水町20231003

【北海道へ移住 生活費のお話】vol.09 清水町

大雪山系の山々と日高山脈に挟まれるように広がる十勝平野。道外の人がイメージする「北海道らしい」景色がそこにはあります。そんなロケーションに憧れて20年近く前に北海道へ移住し、自然に囲まれた中で小さな宿屋を営んでいるのが、今回の主人公・川勝恒良さんです。
当初は一人ではじめた「大草原の小さな宿 こもれび」も、今は奥さまの園江さん、2人のお子さんと一緒に家族で切り盛り。また、昨年5月に町が中心となって立ち上げた「十勝しみず移住促進協議会」の「移住者コミュニティ部会」の会長も務めています。今回は、これまでのことやこれからのこと、移住者の先輩という立場から清水町での暮らしのこと、気になる生活費のことなども伺いました。

移住をお考えの方へ

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川勝さんご家族 基本データ

〈家族構成〉
夫・川勝恒良さん、妻・園江さん、長男、長女の4人家族

〈移住情報〉
夫の恒良さんは京都出身で、2003年に十勝へ移住。帯広の高等技術専門学院の造形デザイン科で木材加工技術などを学んでいる際、現在の「こもれび」の場所と建物に出合い、2005年から自分で改築・改装をして、「こもれび」をオープン。2015年にヘルパーとして関わっていた園江さんと結婚。2人のお子さん(6歳、2歳)に恵まれ、現在は4人で暮らしながら、「こもれび」を切り盛りしている。

〈移住時の不安要素〉
宿をやることは決めていたが、帯広の学校へ通い始めたときは、宿ができる物件が見つかるか少し心配ではあった。あとは特になし。強いて言うなら、最初は雪や冬の凍結道路が心配だった程度。

〈現在のお仕事〉
清水町美蔓エリアで、「大草原の小さな宿 こもれび」を経営。

移住してみての感想

  • イメージしていた理想的なロケーション
  • 周辺の人たちが、みんないい人
  • 冬も8割が晴れで、雪が少ない
  • 野菜がおいしくて安い、海産物も安い
  • どこへ行くにもアクセスがいい
  • 町の支援が手厚い。特に子育てに関する支援

移住前の生活費と移住後の実際の生活費(月額)

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※左側は移住前の家計調査等による平均的な数字、右が川勝さんの実際の生活費
※家計調査の数字も含め、実態よりやや高めに見えますが、賞与等も勘案して1年間を平均的なところでならしています。
※交際費・嗜好品等の出費は含まれていません。

住居は移住時に購入し、全てご自身で改築・改装を行い、少しずつ居住スペースを拡張したりと今も継続して行っています。美味しく新鮮な食材が安いのは北海道ならでは。また、北海道の冬で心配になる冬季の暖房費。川勝さんの場合、薪ストーブと廃油ストーブで、それぞれの燃料は敷地内の木や、近隣の酪農家さんからいただいたもので十分まかなえており、暖房費はほとんどかからないというのも大きなポイント。

放浪旅で訪れた北海道に魅せられ、京都から十勝へ移住を決意

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清水町の市街地から鹿追町のほうへ車を走らせること約20分。牧草地や畑が広がる中に、「こもれび」と書かれた看板が現れます。舗装道路から砂利道に入ると、木々に囲まれた中に建物が見えてきます。辺りは静かで、風の音や虫の声が聞こえるだけ。
ドアを開けると、川勝さんご夫婦が出迎えてくれました。

建物に入ってすぐの宿泊者の共有スペースであるリビングは、ゆったりくつろげるアットホームな雰囲気。大きな窓からはテラスと庭を見渡すことができます。この建物は、元々農家さんの自宅だったそう。それを川勝さんがすべて自分で改築・改装しました。

「こもれび」がオープンしたのは2005年の8月。まずは移住のきっかけや、「こもれび」が誕生するまでの話を恒良さんに伺いました。

d_komorebi_4.jpgこちらが川勝恒良さん

恒良さんは京都の亀岡市出身。京都の奥座敷と呼ばれる貴船の料亭で、送迎バスのドライバーをはじめ、調理以外の店の雑務を一手に担当していました。毎年、夏の終わりから紅葉が始まるまでの間、長い休みを取ることができたため、北海道を気ままに旅して歩いていました。北海道には、23歳の初の放浪旅の際に訪れ、「いつか住みたい」と考えていたそうです。

2003年、27歳のときに念願の北海道移住を果たします。最初から場所は十勝と決めていました。

「僕のイメージする北海道らしい景色が、まさに十勝でした。牧草地がどこまでも広がっていて、その遠く先には山々が連なっている様子を望むことができる。そのような場所に暮らしたいと考えていました。また、冬に旅で訪れた際、天気が良かったことも決め手のひとつになりました」

地元の人からも、「十勝晴れと言って、十勝は冬も8割が晴れだよ」と教えてもらい、雪の心配がないのは大きいと思ったそうです。

d_komorebi_1.jpg「こもれび」という名前は、この家に木々の間から差し込む光を見て付けられたそうです

理想的な場所に出合い、話がトントンと進んで念願の宿屋をオープン

「移住したら、宿をやろうとは決めていました。放浪旅をする中で、各地の宿やゲストハウスに宿泊し、こういうのを自分もやりたいと思っていました」

恒良さんが放浪旅で主に泊まっていたのは、「とほ宿」と呼ばれる宿。ドミトリースタイルが基本のアットホームな宿です。一人旅で利用する人が多く、旅好きな宿主やほかの旅人たちとの温かな交流も魅力と言われています。

d_komorebi_10.jpgこちらは二段ベッドスタイルのお部屋。ベッドがないスタイルのお部屋もあります。

まずは帯広高等技術専門学院の造形デザイン科で木材加工技術などを2年間学び、どこかで働きながら宿のための物件探しなどをする予定でした。ところが、ひょんなことから、在学中にこの場所と出合います。

「よく利用していた宿のオーナーから、知り合いの女性が十勝でオーガニックカフェをやっているから、一度お店に行ってみてと言われていました。実はそれがこの場所。普通にお客として訪れ、いい場所だなぁと思ってはいたのですが、1年ほどしてその女性が本州で有機農業をはじめるためにここを手放すと聞いて...」

即座に「僕が購入します」と手を挙げた恒良さん。高等技術専門学院の在学中に宿のための土地と家屋を手に入れました。

d_komorebi_2.jpg自宅にいながら自然を満喫できるテラス

「農家さんの家のままの状態でカフェを経営されていたので、まずはいろいろなところを改築するところからのスタートでした。当初の予定より早くはありましたが、タイミングよく場所も決まり、学校で学んだことを改築・改装でフルに生かすことができ、本当にすべての流れが良かったですね」

2005年の5月から改築をはじめ、宿の営業許可を取るため最低限の改築を済ませ、8月から「こもれび」をオープン。そのあとは、毎年少しずつ建物に手を加え、今の形にまで整えてきました。

ほぼ自分で全部の改築・改装を行ってきた川勝さん。すべてがうまくいったわけではないと振り返り、笑います。

「はなれだったところが今の自宅なのですが、そこの基礎から自分で造りました。本当は砂利を入れなければならないところに、砂利ではなく掘り起こした土をまた入れて、その上に建物を造ってしまったら、冬になると土に含まれている水分が凍結して、家全体が持ち上がるという...。今は基礎の周りに断熱材を入れたので、持ち上がることはなくなりましたが(笑)」

d_komorebi_19.jpg宿泊者の共有スペースでもあるリビング

ヘルパーとして訪れた妻と結婚。かわいい子どもたちも誕生

宿のほうは順調に宿泊客が訪れ、1人では手に負えないほど忙しいときもありました。とほ宿の多くでは、「ヘルパー」と呼ばれる人たちが宿泊代の代わりに宿の仕事を手伝ってくれるシステムがありますが、ハイシーズンにそのヘルパーがつかまらない時は本当に大変だったそう。

奥さまの園江さん、実は「こもれび」のヘルパーでした。福井県出身で、派遣の看護師として関西中心に、愛知や岡山でも勤務をしていたそう。2013年に北海道へ派遣看護師として来道し、猿払村や北見市などで1年ほど勤務。関西へ戻る前、道内のどこかで仕事をしてからと思っていた際、「こもれび」のヘルパー募集を見つけたのがきっかけで十勝を訪れます。

d_komorebi_5.jpgこちらが奥さまの園江さん

「夏の関西に戻るのに抵抗があったので、北海道で夏を過ごしてから戻るつもりでした。ヘルパーは7、8月の予定だったのですが、9月も忙しいから良かったら残ってお願いできませんかと言われ、結局そのまま...(笑)」と園江さん。2015年に入籍し、2017年には長男が、2021年には長女が誕生します。

d_komorebi_16.jpg庭には大自然の遊び場がたくさん!

清水町に暮らして良かったのは人との出会い。町の子育て支援の手厚さも◎

道外出身のお2人、十勝での暮らしで困ったことや驚いたことはなかったのでしょうか。

「雪の心配くらいでしたけど、十勝はあまり積もらないと分かった上で来ているので、困ったことはほとんどないかな」と恒良さん。一方、園江さんは、「雪が少ないとはいえ、冬になると夕方や朝は道路が凍結するのが十勝。その凍結の感じが分からなくて、最初の頃、車の運転は緊張しました。今年くらいからやっと慣れてきた感じです」と話します。

「清水町に暮らして良かったなと思うのは、一番は人かな」と恒良さん。環境の良さはもちろんですが、周辺の方たちに恵まれていると感じているそう。この場所に移ってすぐのときに、同じ集落の男性陣が歓迎会と称した飲み会を開いてくれるなど、親しみやすい人が多く、地域に溶け込みやすかったと話します。

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「お隣さんと言っても距離は離れているから、そう毎日毎日交流があるわけではありませんが、何かのついでに野菜を持ってきてくれるなど、気にかけてもらっています」(恒良さん)

コロナ禍に宿泊者数が7割減という事態に陥ったときも、近所の酪農家さんから敷地内の木の伐採のアルバイトを依頼されたそう。「アルバイト代も出すし、切った木は薪として全部持っていっていいからと言ってもらって...。とてもありがたかったですね」と話します。

川勝さんの家は、薪ストーブと廃油ストーブがあり、薪はこのようにいただいたものや自身の敷地内の木でまかなっているそう。ちなみに廃油も近隣の酪農家、農家から出たものをもらっているため、暖房費はほぼかかりません。「みなさん、どうせ捨てるから持っていってと言ってくださるので、冬も助かっています」と恒良さん。

d_komorebi_20.jpgこちらは薪ストーブ。もう一つリビングに廃油ストーブも設置されています

園江さんも地元の農事組合の女性部のメンバーとして集まりなどに参加。また、同じ地域に暮らす移住者家族との家族ぐるみの付き合いなどを通じて、日々の暮らしや子育てのことなどを教えてもらっているそう。

「保育園や小学校のことなど、分からないことも皆さんに教えていただいて助かっています。また、清水町は子育てのサポートが手厚くて、役場の方も丁寧に教えてくださるので、その点も本当にありがたいと感じています」(園江さん)

子どもの医療費無料や小学校入学準備のための補助金など、清水町にはいろいろなサポートがあるそう。また、「子どもリサイクルデー」というのがあり、おもちゃや子ども服などそこに行けば必要なものが手に入るので、ほとんどお金がかからないとのこと。

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生活費について伺うと、「本州で暮らすことに比べればかなり抑えて生活はできると思いますよ」と恒良さん。「冬場の葉物野菜は少し高いけれど、それ以外は野菜も安いし、いいモノが手に入るし、海産物も安いと思います。これは僕の感覚ですが、本州より灯油も安い気がします。ガスはLPなので、少し高いですけど。そして、うちの場合は皆さんからいただく薪や廃油のおかげでほぼ暖房費がかからないので...」と続けます。

移住者のためのコミュニティが誕生。宿にも移住検討中の人が多く訪れる

恒良さんが移住した頃は、町の移住促進自体も活発ではなく、移住者同士のコミュニティも特になかったそう。昨年、町が中心になって立ち上げた「十勝しみず移住促進協議会」の活動に関して、「こういうのはとてもいいと思う」と話します。同協議会の「移住者コミュニティ部会」の会長も務め、道外の移住フェアにも参加し、清水町の魅力をPR。現在、協議会には40名ほどの町民が関わっています。「部としての集まりは、まだバーベキューを1度したくらいなので、これからもっといろいろ交流を深めていきたいですね」と話します。実は、部会のメンバーの奥さんが、この間からパートで掃除に来てくれているそう。そのような繋がりができたのもありがたいと話します。

d_komorebi_17.jpg「いらっしゃいませ!」と笑顔で宿泊者を迎える園江さん

「宿泊客の方の中にも北海道移住を考えている人は案外多くて、いろいろと質問を受けるのですが、十勝の良さに関しては、気候の良さ、食べ物のおいしさ、そしてどこへ行くにもアクセスがいいと伝えています。富良野や旭川、釧路、稚内など、道内各地へ行きやすいですから。あと、清水での暮らしで良い点は、やはり人がいいことかな。子どもが生まれてからは、子育て支援の手厚さもいいなと感じています」(恒良さん)

今は、はなれが自宅の川勝さんファミリー。実は、建物の裏側に自宅を新たに建てる計画をしているそう。「本当は長男が小学校に入るタイミングで完成している予定だったのですが、忙しくてなかなか手が回らず...」と恒良さん。宿の仕事以外に、大工仕事、車の整備、畑仕事と、なんでもできてしまうが故に時間が足りないそう。「昔、京都の料亭にいたとき、『なんでもできるけど、気を付けんと器用貧乏になるで』と言われたことがあって」と苦笑いします。

d_komorebi_18.jpg宿泊者へのお食事は恒良さんが担当

お子さんが生まれてから、子ども連れの宿泊客が増えた「こもれび」。長男はお客さまが来ると案内をしてくれることもあるとか。「子どもなりにお手伝いをしてくれているようです。結局は、お客さまに遊んでいただいていることのほうが大半ですが(笑)」と園江さん。また、「冬の閑散期に1日1組限定の親子連れプランを設定しようかなと考えています。周りの目を気にすることなく、自然の中で遊べたら楽しいんじゃないかなと思って」と恒良さん。

コロナによって大変な時期もありましたが、今年は客足が戻り、7月で200人越え、8月も300人近くの宿泊客が訪れ、フル回転状態に戻りました。恒良さんは、「ありがたいことなのですが、妻が子どもたちを見てくれている間は本当に人手が足りなくて...」と少々困り顔。とはいえ、子どもたちに向ける優しい眼差しからは、大切な家族とともに理想的な場所で暮らせることが、何よりも幸せなのだろうと感じられました。

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ここがポイント、移住して良かったこと!

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移住をお考えの方へ

移住 生活費シミュレーション 北海道清水町

北海道清水町に移住したら今の生活費はどうかわるの?
どのくらいの生活費がかかるのか、シミュレーターをつかって計算してみよう!

大草原の小さな宿 こもれび(清水町 川勝さんご家族)
住所

北海道上川郡清水町字美蔓20-107

電話

0156-62-7017

URL

http://komorebi-yado.com/


【北海道へ移住 生活費のお話】vol.09 清水町

この記事は2023年8月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。