HOME>北海道で暮らす人・暮らし方>寒さが苦手なエンジニア、コープさっぽろのDX化に斬り込む!

北海道で暮らす人・暮らし方
札幌市

寒さが苦手なエンジニア、コープさっぽろのDX化に斬り込む!20230221

寒さが苦手なエンジニア、コープさっぽろのDX化に斬り込む!

可愛らしいシロクマのキャラクター「トドック」でおなじみの、生活協同組合コープさっぽろ。

さまざまな事業を展開しており、安心・安全の商品を扱うスーパーは道内店舗数が百以上に上ります。

もうひとつの基幹事業である宅配システムトドックは、買い物が難しい高齢者や小さなお子さんのいる家庭、お店が遠い地域にも食品や日用品などを配達して暮らしの生命線を支えています。

道内の組合員数は195万人に上り、世帯数では北海道で7割がコープさっぽろを利用している計算に!北海道民の生活にとって無くてはならない存在です。

yamasaki_coop.jpg

コープさっぽろは、それまで外注していたシステム開発を自分たちで直接で行うべく、2020年にデジタル推進本部を立ち上げました。

そこで活躍しているのは、Amazonのクラウドサービス(AWS)のユーザーの有志コミュニティ「JAWS-UG」に所属している人たち。AmazonのAWSは汎用性が高く、コープさっぽろはもちろん、さまざまな組織や個人事業のシステム開発で利用されています。そのメンバーの1人、東京から札幌に移住してきた山﨑奈緒美さんにお話を伺ってきました。

山﨑さんは、寒さが苦手なこともあり、北海道に移住するつもりはまったくなかったのだとか。札幌に住み始めて2年あまり、現在の暮らしぶりも含めてインタビューします!

なぜかサムライの衣装が用意されていた

yamasaki_coop11.png(参考:左から情報システム部の田名辺さん、長谷川CIO、丸本さん、山﨑さん)

こちらは、コープさっぽろデジタル推進本部の「サムライ4人衆」。一番右の女性が、今回の主役、山﨑(やまさき)奈緒美さんです。左から2番目が、コープさっぽろのCIO(最高情報責任者)で、山﨑さんをスカウトした長谷川秀樹さん。

アマゾンのクラウドサービスAWSのユーザーコミュニティ活動に貢献した人は「AWS Samurai」という称号をもらえるそうで、全員が「サムライ」の称号をお持ちです。

みなさんノリが良いのですね、そう山﨑さんに伝えると、「これはコープさっぽろの広報部長がノリノリだった結果です」との回答。山﨑さんが一度視察に赴く前に、広報部長に身長と足のサイズを聞かれて「?」と思いながら答えたところ、後日この衣装での撮影となったのだとか。「私たちも『えっ?』みたいな感じで、ポーズを取らされていました」そう言って笑います。

新しく立ち上げたシステム部門にスカウトされて北海道へ

yamasaki_coop2.jpg


山﨑さんは関西生まれ、父親が転勤族で子どもの頃は引っ越しが多く、学生時代は1年間のニュージーランド留学もしていたとか。しかし、実は寒さが大の苦手で、北海道で暮らすことになるとは夢にも思わなかったそう。

東京の会社でシステムエンジニアとして働いていた山﨑さんと夫の重田真志さんは、立ち上げたばかりのコープさっぽろデジタル推進本部に転職しないかと誘いを受けます。声を掛けてきたのは、メルカリや東急ハンズ、そして現在はコープさっぽろでCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹さん。

「とりあえず、視察だけでも」ということで、ふたりで札幌へ。

当時の本部長でCDO(最高デジタル責任者)の対馬慶貞さんに関係部署を案内してもらい、打ち合わせにも飛び入りで参加させてもらいました。そこで驚いたのは、コープさっぽろが手掛ける事業の幅広さだったと山﨑さんは話します。

「それまで、コープといえば『店舗』と『宅配』という二つのイメージしか持っていませんでした。それが、旅行や葬祭、子育て支援に文化事業、エネルギー関係といったものまで、まさに『ゆりかごから墓場まで』をカバーしている組織なんですよね」。

yamasaki_coop4.jpg

JAWS-UGで旧知の長谷川さん、対馬さんも『道民の暮らしをより良くしたい』という思いで北海道へ集まってきていました。「面白そうなメンバーたちに加わって、自分の経歴や能力を生かしたい、一緒に面白いことをやっていきたい!」 そんな思いが高まり、寒さの不安もありながらもご夫妻で転職、北海道行きを決行したのでした。

生協「からあげ事件」もSlack導入でスピード解決!

実際に、コープさっぽろのデジタル推進本部メンバーに加わってみて、いかがでしたか?

「できることはたくさんあると思って来ましたが、想像以上にやることが多いことに気づきました」と山﨑さん。AWSに移行する前、コープさっぽろのシステムは200近くにも分かれていて、かなり古いOSが使われている部署もあったそうです。職員の経験や力技に頼る部分が多かったのも事実でした。山﨑さん、夫の重田さんはデジタル推進本部のメンバーとして、一つ一つの改善に取り組んでいきます。

yamasaki_coop8.jpg

職場内の固定電話をクラウド型のビジネスフォン「Dialpad」に変更したのもそのひとつ。パソコンとスマホの両方で電話を受けることができ、組織変更のたびに回線工事や番号表づくりをしていた手間も省けるようになりました。ほかにも、1つの番号にかかってきた複数の電話を別のスタッフが受けられるなど、職員にとっても、電話をかけてきた人にとっても便利になったといいます。

さらに、ビジネスでよく使われるコミュニケーションツール「Slack」も採用しました。Slackを利用する全員に情報が共有されることで伝達のスピードが格段に上がり、仕事の効率化や省力化につながります。

山﨑さんは、Slackが役立った例として「以前に『から揚げ事件』というものがありまして...」と話してくれました。

「翌日のスーパーの特売に出す総菜のから揚げが、『材料の配合ミスで揚げると黒くなってしまう』ことが判明したトラブルがあったんです。正しく配合した材料を、あと1時間以内に発注しないと間に合わない、そういったタイミングでした」。

それは大変な...!普通なら、から揚げの販売を止める店舗も出てくるところですが、そのときは違いました。

「Slackで呼び掛けたんですね。その材料が来ている店舗はどこで、発注数はどれぐらいか。『連絡をもらえれば正しい材料を届けますよ』と。そのやり取りを見ていた物流事業部の職員も、本来は担当ではないのですが『トラックを出しますよ』と書き込んでくれました」。このように、連絡がスピーディーに行われたおかげで、から揚げは無事に店舗のおかず売り場に並んだそうです。

それまでは、トラブルがあると、例えば「から揚げ事件」の場合であれば、担当者が各店舗に電話をかけていくため、時間も労力も相当にかかっていたそうですが、Slackではリアルタイムで全社的な情報共有が可能。誰もが書き込めるため、さまざまな困りごとに、接点のない部署の職員でもすぐに答えやアドバイスをくれるので、速やかな解決につながります。さらに、報告など承認が必要なことも、Slackに書き込めば返すほうは「OKです」といった絵文字で済んだり、絵文字を使って「おみごと」「いいね!」といった応援メッセージを送れるので、それが職員の意欲アップにもつながったりと、いまでは積極的に使われているのだとか。

新しいソフトやツールの導入時には、使い方が分からないとか、苦手という人もきっといるはずで、それをコープさっぽろの各職場内で浸透させていくのは大変だったのはないでしょうか。山﨑さんが答えてくれました。

「まずはトップから、職場内のコミュニケーションはSlackを使っていくというメッセージを出していきました。それから、月2回のペースで「イチから使い方を教えます」と勉強会を開いたんです。場所は本部会議室で、当時デジタル推進本部長の対馬さんや、広報部長が講師を務めて、それをオンラインで見られるような形にしました。それを、1年半続けることで、Slackも職員の間に浸透していきましたね」

サイクリングにスノボ、東京では考えられなかったアウトドア派に!

yamasaki_coop7.jpg


ほかにも、デジタル推進本部では、店舗や宅配で便利に使える「トドックアプリ」の開発など、着々とシステムの改善に励んでいます。「まだまだ、道民の暮らしや職員をラクにするためにやることはいっぱいあります」と意気込みを見せる山﨑さんですが、オフの日はどのような過ごし方をしているのでしょうか。

「ロードバイク好きな夫の影響でサイクリングをしています」と山﨑さん。東京では興味がなかったのですが、札幌に移住した初夏のある日、ひとり思い立ってママチャリに乗り、片道10km以上のおたるドリームビーチに行ったのが「目覚めた」きっかけだとか。

「札幌は自然がとても近いまちですよね。自転車に乗って30分も漕げば、海や山といった自然に出られる。絶景もいっぱいあって、そのなかを走るのが最高に気持ち良いです」。

先日は、ロードバイクで朝里ダム~さっぽろ国際スキー場~定山渓と、100Kmのアップダウンがある道のりを、日帰りで(!)サイクリングをしたそうです。

yamasaki_coop6.jpg実際のお写真

冬の季節はご夫妻で、または仲間と一緒にスノーボードを楽しんでいるそう。「大阪の大学時代にスノボをしていましたが、夜行バスを使うので大変でしたし、会社勤めをしていた東京では泊まりがけになるので中断していました。札幌や近郊のスキー場は近いので、仕事の支障になることもなく楽しんでいます」

アウトドア派なのですね!と聞けば、東京ではまったくのインドア派だったそう。

「休みの日はできるだけ寝ていたいというタイプでした。いま思えば、東京ではいろいろと無理をしていたのかなと思います。札幌に来てから休みの日はアウトドアを楽しむようになりましたし、ワークライフバランスが取れていると感じますね」。

北海道の食についても「やっぱりおいしいです!肉や魚だけじゃなく、野菜もおいしい!」と力説。なんばん(青とうがらし)を使った北国の食、三升漬けを手作りもしています。

人と直接会って話すことが、より良いシステムの開発につながる

yamasaki_coop5.jpg


ところで、寒さが大の苦手だという山﨑さん、生活上で困ったことはないのでしょうか。「特に大変だとか困ったとか感じることはないですね。こちらに来るまでは雪かきや水道の凍結など不安ばかりでしたが、いま住んでいるアパートは建物が暖かいので水抜きの必要がないし、エントランスまではロードヒーティングがあるので安心して暮らしています」

最近は基本的にリモートワークで、職場に行く必要はあまりないそうですが、それでもなるべく顔を出すようにしているそうです。「話すことって、大切だと思うんですよ」と山﨑さん。Slackなどメッセージを送ってやり取りをするだけでなく、実際に顔を合わせて会話することが大切だと、JAWS-UGのコミュニティなどを主宰してきた山﨑さんは実感を持って語ります。

yamasaki_coop9.jpg

「雑談だけでもいいと思うし、その相手が職場の人じゃなくてもいい。私は行きつけの飲み屋さんでマスターや常連さんたちとよくおしゃべりもしています。そうすることで、家で仕事をしている私の気持ちがリフレッシュされるということもありますし、もうひとつ、仕事をする上で役に立っているんですよ」。

それは、何でしょうか?

「仕事に直結するわけではないのですが、人と会って話していると、それぞれの考え方や価値観をより深く知ることができます。システムをつくったり広めたりするとき、私は『いろんな人に使ってもらうにはどうしたらいいだろうか』と検討するのですが、『そういえば、こういった人がいたな』と具体的に思い浮かべながら、よりいっそう受け入れやすい、使いやすいようなシステムを作っていく。そういったところに生きているような気がします」と山﨑さん。

システムエンジニアとして自分に課しているのは、「開発したもので誰かが便利になったり、生活しやすくなったりすること」。それは、仕事をする上で一貫しているテーマだと話します。北海道の社会インフラとも言えるコープさっぽろで働くことは、山﨑さんにとっての必然だったのかもしれません。

yamasaki_coop10.jpg

生活協同組合コープさっぽろ デジタル推進本部 山﨑奈緒美さん
住所

北海道札幌市西区発寒11条5丁目10-1

URL

https://www.sapporo.coop/


寒さが苦手なエンジニア、コープさっぽろのDX化に斬り込む!

この記事は2022年11月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。