
英語が飛び交い、まるで海外に来たかのような錯覚をおこす冬のニセコエリア。日本屈指の高級ウインターリゾート地として、世界中からたくさんの人が訪れます。コロナの影響を一時は受けたものの、今シーズンは再び賑わいが戻ってくる予感。世界中からパウダースノーを求めて多くの人が訪れそうです。
数あるリゾートホテルの中でも、5年連続でワールドスキーアワードを受賞している「木ニセコ」は、スキー場のゴンドラ乗り場すぐ目の前という立地の良さだけでなく、温泉、食事、そしてスタッフのホスピタリティーのレベルの高さなどが評判のホテルです。ちなみにワールドスキーアワードとは、世界中のスノーリゾートの中から素晴らしいサービスなどを行った施設等に贈られる名誉ある賞。つまり、世界に認められたサービスを提供するホテルというわけです。そのようなサービスを提供できるスタッフとは、一体どんな人たちなのでしょうか。今回は、「木ニセコ」に勤務する道外出身の3人のスタッフに、ニセコに来たきっかけから、今の働き方、プライベートタイムの過ごし方など、根ほり葉ほり伺いました。彼らがいかに充実した日々を送っているかがよく伝わってくる、「ニセコ愛」に溢れた取材時間となりました。
カナダで知った「ニセコ」という場所
まずは、入社6年、ホテルマネージャーを務める井河瞳さんに話を伺いました。井河さんは青森出身。地元のマスコミで編集や営業の仕事をしていましたが、常に締め切りに追われるハードな日々に体が悲鳴をあげてしまいます。「仕事は楽しかったし、好きだったのですが、心身ともに疲れすぎてしまって...。少し休んでやりたいことをやろうと思い、ワーキングホリデーでカナダへ行きました」
趣味でずっと写真を撮っていた井河さん。カナダでもずっとカメラと共に行動していたそう。世界遺産にも登録されている自然豊かなウインターリゾート地のバンフで、動物や雄大な景色を撮影していました。その一方で、もうひとつの趣味であったスノーボードも満喫。「バンフで出会った外国人から、日本と言えばニセコでしょ、ニセコはとってもいい雪質のウインターリゾートだよと教えてもらい、実はそこで初めてニセコのことを知りました」と笑います。
こちらがホテルマネージャーの井河瞳さん
帰国後は、カメラマンとして仕事をしたいと考えていた井河さん。青森でカメラマンのアシスタントから下積みをスタートさせます。しかし、写真業界は想像以上にハードな上に、時間もお金もまったく余裕がない状態が続きました。
「これだとカナダに行く前と同じだなと思いました。カナダの人は仕事よりも家族優先というスタンスを貫いていて、それがとても素敵だなと思っていたので、帰国してからはプライベートな時間がない働き方が肌に合わなくて...。そんなときにバンフで教えてもらったニセコのことを思い出しました」
アシスタントを辞め、まずは冬だけニセコで働いてみようと、別のホテルの仕事に就きます。初めてのニセコは、井河さんにとっていい意味で衝撃と感動があったそう。
羊蹄山を間近に望むスキー場が職場に直結!
「まず、羊蹄山のあるロケーション。晴れた日にくっきりと見える羊蹄山の美しさに心が打たれました。そして、ゲレンデが近く、空いているときには好きなだけ滑ることができ、好きな写真も撮ることができるという理想的な暮らしが、ここならできると分かりました」
趣味も仕事もやりたいことができる環境が整っている
冬だけの予定でしたが、井河さんの中に「いろいろな季節の羊蹄山を見てみたい」という思いが沸き上がり、通年で働くことができる仕事を探すことに。そこで出合ったのが、「木ニセコ」でした。
「ホテルの仕事をはじめてから、接客も好きなんだと分かりました。木ニセコでは、フロントデスクの仕事からスタートしました」と振り返ります。世界中からやってくるゲストに、ホスピタリティーあふれる日本らしいサービスを提供したいと考えながら仕事に取り組んでいた井河さん。その丁寧な仕事ぶりが認められ、今ではスタッフが頼りにするマネージャー職に。
「一生懸命やっているうちに自然とポジションがついてきた感じでした。やっていることをきちんと評価してくれる会社なので、そこはやりがいにもつながります」
働き方で気に入っているところを尋ねると、「長期休暇が取れるので旅行に行ける、日常的にリフレッシュのための自分の時間、趣味の時間も取ることができる、やりたいことをやればいいと会社が背中を押してくれる、スタッフがみんなそれぞれを尊重していることなどですかね」とスラスラ。仕事漬けだった経験があるからこそ、「オンとオフの切り替えがきちんとできる環境で、仕事に追われ過ぎることなく働けるのは私には大きいです」と話します。
休日には、スノーボードや写真撮影を楽しんでいるそう。「3年前からサーフィンもはじめ、夏はサーフィン三昧です」とニッコリ。
夏もサーフィンを満喫!退屈している暇がありません
さらに、写真の腕を買われ、ホテルやレストランの宣材写真を任されることも。また、ホテル内のギャラリーで個展も開催する機会にも恵まれ、「社長は仕事も趣味もやりたいことはどんどんやればいいという考えで、それを会社が応援してくれるのがうれしいです」と井河さん。
素直に「幸せ」と言えるニセコでの暮らし
ニセコでの暮らしについて尋ねると、「幸せに暮らしている。それに尽きますね」と即答。満面の笑みで、すぐにそう答えられることが少し羨ましくも思えます。
雄大な羊蹄山のふもとで、豊かな自然に囲まれながらも、倶知安の町に行けば大きなスーパーやドラッグストアもあり、生活に必要なものはほとんどそろうという環境であるため、不便はまったく感じないそうです。
「今はネットショッピングもあるので、買い物で不自由を感じたことはないですね。リゾートエリアなので、おしゃれなカフェやバーもありますし、それこそアウトドアウェアのショップなどもあるので、札幌に行かなくても十分足りています。スノーボードも好きなだけできるし、温泉もあるし、山菜も採れますし、すべてが近くにそろっていて、ラッキーな場所で暮らしているなと思います」
会話を重ねていると、井河さんが心身ともに良いエネルギーに満ち溢れているのが伝わってきます。日々の暮らしの中における気持ちの余裕が、仕事での素晴らしい接客につながっているのかもしれません。
バックカントリーがしたくて訪れたニセコ
次に話を伺ったのは、入社3年の森谷大貴さん。木ニセコのフロントデスクスーパーバイザーというポジションで仕事をしています。その仕事内容を伺うと、「時間帯責任者という形で、季節雇用のスタッフのトレーニングを担当したり、フロントスタッフのまとめ役を行ったりしています」と教えてくれました。
井河さんに続き、森谷さんも東北の出身。山形生まれで、ウインタースポーツが大好きだったそう。山形で働きながら、冬は趣味のスノーボードを楽しんでいましたが、あるときもっと趣味をとことん楽しめる暮らしがしたいと、全国各地のリゾート地でシーズン雇用の仕事をしながら、好きなアウトドアを満喫していました。夏は沖縄、冬は長野の野沢温泉などで働き、ルスツにいたこともあるそう。
こちらがフロントデスクスーパーバイザーの森谷大貴さん
「そのあと、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。2年滞在したんですが、やっぱりスノーボードをもっとやりたいなと思って、ニセコへ来ました」
地元の東北にも蔵王など有名なスキー場がありますが、なぜニセコに?と尋ねると、「ニセコは、きちんとルールが整備されている中で、バックカントリーが楽しめるんです。それが魅力的だと思って」とニッコリ。バックカントリーとは、スキー場のコース外を自力で登り、自然のままの地形を滑ってくること。スキー場のように圧雪車が入らないので、パウダースノーを楽しめるのが魅力です。
いろいろな国内リゾート地で働いた経験のある森谷さん。ニセコとほかのリゾートとの大きな違いは、「国際的、グローバルな雰囲気だと思う」と話します。ニセコを訪れる外国人は、アジア系だけでなく、欧米やオーストラリア人も圧倒的に多く、確かに街並みも含めて海外のリゾートのようです。
「ニセコは雪質がいいのはもちろんですが、スキー場が4つあり、それぞれの運営会社が切磋琢磨して、よりよいサービスの提供や整備に励んでいる印象があります。常に進化しているし、それに伴って、エリア内のホテルや観光施設などもレベルアップしています。そういうところが世界中の方たちに支持されているのかもしれません」
結婚し、家族が増え、ニセコに根を張ることに
ニセコで1シーズン働いたあと、カナダへ行くことも考えていたという森谷さんですが、ニセコで奥さまと運命的な出会いを果たし、結婚。HTMグループの木ニセコへ転職し、翌年には子宝にも恵まれます。
「妻はマレーシア人なのですが、ニセコ自体がグローバルな環境なので、ここで家族と暮らすのもいいなと考え、実は家を購入しました。また、妻はHTMの別のホテルで働いているのですが、娘が1歳になるまで夫婦そろって育児休暇を取ることもできました」
家族との時間も大切にできるのは、充実の待遇のおかげ
夫婦そろって育休が取得できるというのは、ほかではなかなか耳にしない話です。さすがだなというひと言に尽きます。
「HTMで働こうと思ったのは、規模の大きさもありますし、通年で働ける上に福利厚生などもしっかりしていると評判だったからなのですが、実際に働きはじめて、育休のことも含め、働きやすさを実感しています」
それぞれがプライベートや家族との時間を大切にしていて、それを互いに尊重し合う企業風土があるそう。保育園への子どものお迎えの時間になると、早く行きなさいとほかのスタッフに促されるなど、周囲が理解してくれているので子育て中でもとにかく働きやすいとのこと。
もともとスノーボードが好きでニセコへやって来た森谷さん。冬になると時間があるときはよく滑りにいっていたそうですが、「今年は子どもがいるので一緒にそり遊びかな」と笑います。現在、奥さまは第2子を妊娠中。「家族が増えるので、ニセコという場所で家族との時間を存分に楽しみたいですね」と話します。
森谷さんの家では普段から英語での会話が基本だそうですが、12月になると、ニセコエリア全体の標準語が英語になるそう。「海外に行けないけれど英語で話がしたいという人は、冬のニセコに来れば好きなだけ英語が使えますよ」とニッコリ。
ちなみに、どんな人がニセコで仕事をするのに向いていると思うか尋ねると、「プライベートと仕事のすみ分けがきちんとできて、遊びも仕事も一生懸命楽しめる人かな」という返答。「ニセコでいっぱい遊んでいる人はニセコに詳しいんです。情報がしっかり頭に入っているから、宿泊のお客さまからいろいろ質問されたときもすぐに答えられるというメリットもあるんですよ」と話してくれました。
国内、海外、さまざまな場所で暮らした経験のある森谷さんが家庭を持ち、根を張ることを決めたニセコ。自然豊かでグローバルな環境であることはもちろん、家族がいても働きやすい職場があることは大きなポイントかもしれません。
お話をうかがった、木ニセコの最上階特別室。プライベートデッキテラスやジャグジーバスを備え、12人が宿泊可能。晴れていれば窓の外には羊蹄山が望めます
アパレルから事務職へ、大好きな場所で新たな挑戦
最後に話を伺ったのは、入社1カ月という家本真規子さん。経理に所属しています。和歌山県出身で、大阪から移住してきた家本さんの経歴はなかなかユニーク。実は4年ほど前にニセコに3年間住んでいたそう。
「大阪のアパレルメーカーでデザインや営業の仕事をしていました。趣味はスノーボードで、毎週末、岐阜のスキー場に通って車中泊をして滑るくらい大好きでした。結構仕事がハードだったこともあり、辞めるかどうか迷っていたとき、旅行でニセコに初めて来ました」
こちらが家本真規子さん。未経験の経理に挑戦中
まるで海外のリゾートのような街並みと雰囲気、そして何よりも素晴らしいパウダースノーに驚いたと言います。その後、大阪のアパレルの仕事を辞め、とりあえずシーズンスタッフとして働くためにニセコへやって来ます。これまでの経験を生かし、ニセコエリアのアパレルショップに勤務。すぐそばにスキー場がある暮らしは、家本さんにとって最高だったそう。
「冬が終わって、実家のある和歌山へ戻り、夏の間は派遣社員で仕事をしていました。冬にはまたニセコへ戻るつもりだったのですが、ニセコで知り合って付き合いはじめていた彼との結婚が決まり、ニセコへ完全移住。冬に働いていたアパレルショップで通年で働くことに」
アパレルデザインの仕事から全くの異業種へ
ニセコで新婚生活を送っていましたが、夫婦で札幌か大阪かニセコでの転職を考えはじめます。その矢先、夫が大阪で転職先を見つけ、2人で大阪へ。家本さんは再びアパレル業界の仕事に従事します。大変だと分かってはいたものの、想像以上のハードさに心身ともに疲弊していきます。
「夫といつかニセコに戻ろうと話してはいたのですが、やっぱりニセコが恋しくて4年で戻ることになりました」
ニセコに戻ってきた家本さん、「長く腰を据えて働ける会社」を探しはじめます。ニセコの友人知人の間でも評判のよかったHTMで経理を募集していると知り、応募します。
「前職の有給休暇中に簿記の資格を取っていたんです。それで、資格が活かせるかなと思って応募しました。事務職は未経験でしたが、会社はやる気を買い、チャレンジの場を提供してくれたんだと思います」と家本さん。
人事や社員寮管理のサポートなどに携わり、まだ本格的に経理の仕事はスタートしていませんが、「とにかく社内の雰囲気がいいんです。みんな温かくて優しい人ばかり。私は英語が得意ではないのですが、周りが助けてくれるので本当に働きやすいです」と話します。
都会ではあり得ない、オフィスからの眺めの美しさ
現在はニセコの隣の真狩の、羊蹄山が見える場所に夫と暮らしている家本さん。オフィスからも羊蹄山が目の前に見え、スタッフの人たちと山の美しさについてよく会話をするそう。
「何気なく『今日の羊蹄もキレイ』って話をしていたとき、オフィスからの眺めについてスタッフとそんな会話を大阪ではしたことがなかったなと思ったんです。通勤時も、ニセコの美しい山並みや周辺の自然を気持ちがいいと感じながら車を運転していますが、大阪時代は電車の窓の外を見て、キレイだなとか、気持ちがいいと思ったことはなかったなと思いました」
家本さんの2度目のニセコ移住生活は始まったばかり。「オンとオフの切り替えができる環境がとてもいい」と、これからやってくるウインターシーズンにワクワクしているそう。「苦手な英語もここでなら習得できるような気がする」と仕事に関しても前向きです。
雪のない時期は、ハイキングや登山も満喫。写真はニセコ連峰の東に位置するイワオヌプリ
実は、家本さんたちに続き、遊びに来て以来すっかり虜になってしまったという家本さんの妹夫婦も来年ニセコへ移住してくる予定。さらに、和歌山のご両親の新婚旅行の場所もニセコだったそう。「我が家はどうやらニセコには縁があるようです」とニッコリ。最後にニセコで働くことを検討している方にメッセージをお願いすると、「思い切って来てみたら、天国だ!って思える場所ですよ」と話してくれました。
井河さん、森谷さん、家本さん、3人とも30代とのこと。いろいろな経験をしてきたからこそ、ニセコでの暮らしや働き方の良さを実感しているよう。歩んできた道はそれぞれ違いますが、共通しているのは「スノーボードとニセコが大好き」であることと、気持ちに余裕があるという点。充実した日々を送っているスタッフがそろっていることが、木ニセコの素晴らしいサービスに繋がっているのだなと感じた1日でした。