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栗山町

未来輝く中学生農家。ユニークな野菜取り入れグングン成長中!20221121

未来輝く中学生農家。ユニークな野菜取り入れグングン成長中!

「長香太(ながかった)」「みずみずしい菜」「シャキット」...これらが何の名前を表しているかわかりますか?

実は全て野菜の名前なんです。

こんな変わった名前の野菜を多く栽培しているのは夕張郡栗山町在住の中学生野菜栽培研究家、中仙道 怜(なかせんどう れん)くん。

まだ中学生の怜くんは柔軟な考えと発想力、そして熱い思いを持って野菜と共に日々成長しています。

途切れることのない植物への探究心

renkun2.JPGこちらが怜くん


幼い頃からお花や植物など自然のものが大好きだった怜くん。一般的に男の子が好きな戦隊ものには一切興味がなく、お気に入りは六花亭の包み紙。沢山集めては花の名前を言ったり、絵を描いたりしていたといいます。

行きたいところを聞くと近所にある「バラ公園」と答え、とにかく植物が大好きでした。

親戚に農家が多いという家庭環境から、昔から農業と関わることも多かったそう。子供の頃からおばあちゃんとビニールハウスに入ったり、花や野菜を植えさせてもらったりしていました。大きくなれば変わるかと両親は思っていたものの、植物への興味は止まらず更に追求。自分で一から野菜を育てみたいという思いで、中学1年生から本格的に農業を始めました。

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現在は農業を始めて3年目の中学3年生。

中学校に通いながら野菜を栽培しつつ、毎週日曜にはお母様が経営するパン屋『中仙道農園 パン工房 Riren』で野菜の販売を行っています。

みずみずしいほどに純粋な野菜への思い

今回のインタビューに使う写真撮影のため、農作業も兼ねて畑に案内してくれました。

把握しきれないほど沢山ある野菜を手に取っては一つ一つ丁寧に説明してくれます。「どんな野菜を作っているの?」と聞くと、「ほとんど一通りあります」と答えました。

その言葉通り、定番の野菜から旬の野菜まで、どれだけ多くの品目の野菜を出すかを意識して野菜栽培を行なっているのだとか。肥料や土にもこだわり、様々な工夫をしています。

「肥料は有機質のものを使うようにしています。また品種の特性をどれだけ生かすかということにも着目していますね」と大人顔負けの受け答え。

renkun4.JPGもはやその手は「農家」の手です

土作りも研究中で、微生物の菌や米ぬかなどを混ぜ込んでいます。また新しい品種に挑戦する姿勢も怜くんの魅力。

「作るのも面白い品種の方がインパクトあって良いかなと思って種選びをしています」

冒頭で紹介した変わった名前の野菜を始め、ミニパプリカやこどもピーマンなどスーパーでは見かけない種類の野菜を積極的に栽培中。そしてこれらの野菜は面白いだけではなく、もちろん味も良いのだとか。

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「特にミニパプリカは大きいのより甘くて美味しいんです」と嬉しそうに話してくれました。

話せば話すほど、怜くんの野菜への思いがひしひしと伝わります。

野菜作りの苦労を聞くと「農業はその年その年で環境が異なるんです。天候にもすごく左右されるし、自然との関わり方が一番難しいですね。この3年間でもそれぞれ違う経験をしました。年を重ねるごとに上手く育ったなという野菜を一品目でも増やせる努力をしています」と答えてくれました。

経験を糧に着実に成長していく頼もしさを感じます。

新しいものを積極的に取り入れる柔軟さ

農業を始めて3年目の怜くんは周りの農家さんとの交流も大切にしています。

ご近所の農家さんにも少し話を伺うと、「怜くんは勉強熱心で、すごく沢山質問するよ」とのこと。まずは品種について聞き、肥料や栽培の管理方法など理解できるまで詳しく聞いてくるそう。

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気になる野菜があれば購入して来年以降の参考にすることも。

怜くんに周りの農家さんについて聞くと、「みんな優しくて、経験豊富な方が多いので質問にもきちんと答えてくれてとても助かっています」と話しました。

周りの力も借りながら着実にステップアップしている怜くんです。

他の農家さんからの勧めで今年から始めたインターネット販売。注文は道内からが多いですが、宮崎県にこだわりのメロンをお届けしたことも。

インタビュー中は何度も「人に食べてもらって、喜んでもらえるのが一番嬉しい」と話すのが印象的でした。

自主性を大切にする怜くんは収穫から納品書作りまで、配送作業も全て自分で行います。早いときは朝5時から、メロンを収穫する7月はなんと早朝4時から作業を開始したんだそう。配送作業が完了した後、学校へ行き、帰ってきてからはまた農作業をするという多忙ぶりです。全国の人に美味しい野菜を届けたいという思いで継続しています。

更に、野菜の情報を発信したいとインスタグラムも始めました。当日にインスタグラムの投稿を見て、お客さんが来てくれることもあるのだとか。
「大和ルージュ」という赤いスイートコーンについてどうしてこの野菜を知ったのか聞くと、「インスタグラムで投稿があり、作ってみたいと思って直接問い合わせてみました。その後色々話していたら種を譲ってもらうことになったんです」

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SNSで情報収集するだけではなく種までも収集してしまう行動力!野菜への熱い思いと探究心で、インターネットを上手に活用しています。

来年チャレンジしたいことを聞くと「来年からは農業高校で寮に入るかもしれないのですが、今やっていることは途切れさせたくないですね。農業に関わる時間が楽しいのでもっと増やしたいです。あと高校での農業と家での農業を両立させて比較したりとか...」と農業のこと中心の回答。

寮に入っても週末には帰ってきて、今やっている日曜日の野菜販売を続けたいと意欲的でした。

また、どんな農家さんになりたい?という質問には、「全国の人たちに美味しい野菜を届けたいです。色んなものを取り入れつつ、人気のものは固定化して柔軟にやっていきたいですね」

お客さんとの対面での交流を大切にしつつインターネットを活用した宣伝販売方法を自然と取り入れている怜くんはまさしく次世代の農家さんという印象。
今後の農業を担う人として力強いものを感じます。

とにかく見守る。息子を信じる母の愛情

とてもしっかりした怜くんですが、どのような環境でこの真面目さが培われたのか気になります。
そこで怜くんのお母様である中仙道恵里加さんにもお話を伺いました。

renkun7.JPGこちらが怜くんのお母様

恵里加さんは現在栗山町にあるパン屋『中仙道農園 パン工房 Riren』を経営されています。毎週日曜日には怜くんが育てた野菜の販売を行ったり野菜を使ったパンを作ったりととても協力的な恵里加さん。

「パンに使う野菜は私がイメージして選んで、怜から仕入れています」

renkun8.JPG農業を始める際には最初に、資材や肥料、種など多くのお金がかかることを怜くんに伝えたと言います。

なんとパンに使用する野菜も怜くんに注文して仕入れているのだとか。家族間でもきちんとお金を支払い、怜くんの経済観を養っています。

また、農作業に関して日々どうアシストしているかを伺うと、「失敗も勉強なので、やりたいことを思い切りやらせています」と答える恵里加さん。

怜くんに全てを任せて、農作業にはあまり関わらないことを心がけているそう。
「日中の水やりも頼まれればやりますけど、自分からはやりません」と手を差し伸べたくなる親心をグッと堪えて見守っています。

農家であるおじいちゃんとおばあちゃんも手を貸したくてうずうずしているようですが、怜くん自身が自分から頼んだこと以外はやらないでとお願いしています。

「部活の時なんかは帰ってきて夜8時頃からヘッドライトを付けてハウスに入って、種まきをしている日もありました」そんな怜くんを家族みんなで見守るのが中仙道家の愛情です。

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親子で受け継がれる思いの強さ

ふと恵里加さんにパン屋を始めたきっかけを伺うと、怜くんの野菜への思いと通ずるものを感じるエピソードが飛び出しました。

元々趣味でパン教室に通うほどパンが好きだった恵里加さん。札幌厚別区にあった大好きなパン屋『デュパン』に足繁く通っていました。
ある日いつも通りパン屋を訪れると閉店のお知らせが...
強いショックを受け、途方に暮れる恵里加さんに『デュパン』のオーナーさんが「機材を譲るからパン屋やってみない?」と声をかけました。

そこからすごい勢いで話は進み、家族の反対がありつつも恵里加さんはなんとかパン屋を開店させたのでした。

「デュパンの方に技術も学びたいですと伝えたところ、なんとオーナーさんと店長さんがわざわざ栗山まで通ってくれてオープンまでびっちりレクチャーしてくれたんです。今はデュパンの基本を守りつつ、独自のアレンジも加えてパン作りをしています」

大好きだったパン屋の味を受け継いだ恵里加さん。好きなものへは一直線、パンへの一途な思いが伺えます。

その姿が野菜へ熱い思いを燃やす怜くんの姿と重なりました。思いの強さとまっすぐさは母親である恵里加さん譲りなのかもしれません。

最後にこれから農業をやりたいという子とその親御さんへのアドバイスを伺うと
「失敗が成功に繋がるので子供を信じてやらせてあげることが大切だと思います。信じてあげてひたすら見守るんです。本当に困ったら自分から言ってくるので、困ったと言える環境を作ってあげることが大事ですね」

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何もしないで見守る、簡単そうに聞こえますが親にとってはとても難しいことですよね。輝く未来の農家中仙道怜くんは、家族をはじめご近所の農家さんや購入者さん、多くの人々に見守られながら日々成長中。
こだわりを持って野菜を追求していく怜くん。

そんな彼の農業への情熱は増すばかりです。
今後も怜くんの成長に目が離せません。

renkun12.JPGがんばれー!怜くんー!

中仙道農園 パン工房 Riren
住所

北海道夕張郡栗山町南学田376

営業時間:日曜のみ 11:00-16:00


未来輝く中学生農家。ユニークな野菜取り入れグングン成長中!

この記事は2022年9月29日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。