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初山別村

星空の美しい村のホテル。「何もない贅沢さ」がちょうどいい20221116

星空の美しい村のホテル。「何もない贅沢さ」がちょうどいい

日本海に沿って北へ伸びるオロロンライン。風光明媚な海岸線は夏のドライブコースとしても人気です。そのオロロンライン沿いにある初山別村は、日本最北の天文台「しょさんべつ天文台」があることで知られる村。人気ドラマの舞台にもなったことがあるので、記憶に残っているという人も多いのでは? 夜空を遮るものが辺りにないため、降り注ぐ星々を「浴びる」体験ができるそう。今回は、美しい星空が自慢のこの村の「しょさんべつ温泉 ホテル岬の湯」に勤務する福士直晃さんに、村の魅力や暮らし方、職場についてお話を伺いました。

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人に喜んでもらえる仕事がしたいとホテルへ転職

「しょさんべつ温泉 ホテル岬の湯」は、30年以上の歴史がある村唯一のホテル。昭和58年に村の保養所として建物が建てられ、平成4年からホテルとして営業をスタートしました。平成13年には日本海が一望できる露天風呂のある温泉棟を増築。平成26年には前浜であがった新鮮な魚介を用いた料理を提供するレストランをリニューアルするなど、少しずつ増改築を行い、現在は全25室を有する規模になりました。夏場は道内外からの観光客がたくさん訪れ、そのほかの季節はビジネスマンが多く利用しています。

同ホテルの総務・経理を担当する福士直晃さんは、隣町の羽幌町出身。平成23年からこちらに勤務しています。「メインの仕事は総務、経理ですが、忙しい時期は浴場清掃もするし、厨房の手伝いも入るし、送迎バスの運転もします。でも、表に出てお客さまと話をするのは楽しいし、ここに泊まって良かったと喜んでもらえると嬉しい」と話します。

実はもともと信金に務めていたという福士さん。札幌の専門学校で経理を学び、卒業後道北エリアの信金へ。「人の役に立ち、喜んでもらえる仕事がしたくて信金に入ったのですが、ちょうど景気が悪い時期で、特に融資の現場は想像していたものとは大きくかけ離れていて...」と約3年で退職。

misakinoyu_7.jpgこちらが羽幌町出身の福士直晃さん

「次の仕事を探さなきゃと思っていたとき、たまたま新聞にこのホテルの社員募集のチラシが挟まっていて、経理を募集しているということで、自分にもできそうだなと思ってとりあえず応募してみました。実家のある羽幌から通ってもいいかなと思って」

経理のできる人が辞めたあとだったため、数字に強い福士さんはすぐに採用となりました。当時、村の住宅事情は古い公営住宅が大半を占めており、福士さんは羽幌から通うつもりでしたが、ちょうどいいタイミングで新しい公営住宅の部屋が空きます。「キレイだったので、そこに入らせてもらいました。ラッキーでした」と振り返ります。

「実家から自分に必要な荷物だけ運んで、気ままな一人暮らし。その頃はコンビニもなくて(今はセイコーマートがある)、仕事が終わるちょっと前に役場のそばの商店に電話をして、魚を卸しておいてもらって、それを買って部屋で焼いて食べたりしていましたね。また、その頃は地元の友達がたくさんこちらに残っていて、みんなで毎日のように遊んでいました。だから寂しいとは思わなかったし、居心地も良くて、札幌や東京に行きたいとは思わなかったですね」

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不便さを感じたことはほとんどない村での暮らし

その後、結婚して村内に家を購入。現在は奥さま(ホテルの同僚だったそう)とネコと暮らしています。都会では考えられない広い庭があるそうで、多趣味な福士さん、最近は庭仕事にはまっています。

「休みの日は洗車をするか、庭仕事。草むしりをしたり、樹木の剪定をしたりしています。コロナ禍であちこち出かけられなくなってから、庭仕事をするのがとにかく楽しくて、あっという間に2、3時間経ってしまいます。特に木々の管理や世話が好きで、庭には桜、ツツジ、アジサイ、スモモ、紅葉などの木があります」

人口が1,000人ちょっとという初山別村。スーパーもホームセンターもないそうで、暮らしの面で困ることはないのかを尋ねると、「それが特にないんですよね。スーパーは羽幌まで行かなければならないけれど、最近はネットで何でも買えるから、尚更不便は感じません」と福士さん。札幌へ行くとにぎやかで楽しそうだなと思うものの、たまに行くだけで十分と感じ、自然に囲まれた村の静かな暮らしに満足しているそうです。

misakinoyu_1.JPGホテルから海に向かうと、バンガローもあり、アウトドアも満喫できます

職場環境は、和気あいあいとした雰囲気

さて、プライベートが充実していることは分かりましたが、職場の雰囲気を含め、仕事面はどうなのでしょうか。

「総務、経理の仕事はどこも同じだと思うけれど、特別面白いわけではないですよ(笑)。でも、事務所のみんなは仲がいいし、楽しく仕事をしています。職場環境はいいと思います。総務や経理以外に浴場清掃や送迎もやりますけど、そこに不満はないです。ボイラーチェックや設備管理も長年手伝っているうちに気が付いたらすっかり詳しくなっていました」

和気あいあいという言葉がしっくりくる職場であることがよく分かります。小さなホテルですから、1人で何役もこなさなければならない点もありますが、むしろいろいろな経験ができるという点では面白みもありそうです。

misakinoyu_21.jpgレストランの新鮮な海の幸も魅力の一つ!

「関係ないですけど、僕ヘビメタが好きなんですよ(笑)。だから、入社面接の際にいつも『ヘビメタ好き?』って聞いちゃうんですよね。歌うのも得意で、かなり高音が出ます。クリスタルキングだって歌えちゃうから(笑)」

そう言いながら、楽しそうに笑う福士さん。そんなコメントからも十分職場の楽しそうな雰囲気が伝わってきました。

misakinoyu_22.jpg福士さんが言う通り、スタッフのみなさんは取材中も冗談を言い合いながら、楽しそうにしている姿が印象的でした

豊かな自然とアットホームな人たちに囲まれながらの暮らしや仕事。
なんでもある便利な大都市での暮らしとは異なり、『何もない贅沢さ』を満喫している福士さん。
そうした初山別村での暮らしは、福士さんにとって「ちょうどいい」ようです。

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しょさんべつ温泉 ホテル岬の湯/福士直晃さん
しょさんべつ温泉 ホテル岬の湯/福士直晃さん
住所

北海道苫前郡初山別村字豊岬153番地

電話

0164-67-2031

URL

https://hotelmisakinoyu.wixsite.com/misakinoyu/home


星空の美しい村のホテル。「何もない贅沢さ」がちょうどいい

この記事は2022年10月6日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。