働き方の多様性が叫ばれる昨今。本業のほかに副業をしたり、さまざまな仕事を兼業したり、フリーに活躍する人が増えてきています。ここ北海道にもまた、自由な働き方をしている人がいるのです。その名も鈴木雄太さん。
鈴木さんは現在奥様と一緒に『ヤドカリウォーク』というYouTubeチャンネルを運営されています。街歩きを中心に撮影から編集まで全て自分たちで行っているのだとか。
鈴木さんがyoutuberとして辿り着くまでには多くの物語がありました。今回はそんな自由を愛する鈴木さんにお話をお伺いしてきましたよ!
今を作るのは『ユニークな職歴』
ご出身は日高地方に位置する新冠町。お父様の仕事の関係で小学生の頃に岩見沢や苫小牧へと転校し、苫小牧には小学校6年生から高校卒業まで、その青春時代を過ごしました。高校卒業後に決まった就職先は北海道警察。
「大学へ行く目的もないし、高校卒業後は働くという気持ちしかなかったので...高校時代空手をやっていたし、それなら警察がいいんじゃないかなぁと思って(笑)」
そんな想いで試験を受けたという鈴木さん。この時点でなんだか彼のフットワークの軽さが感じられます。
物腰がとっても柔らかい鈴木さんです。
こうして卒業後道警に就職し、交番勤務等を経てちょうど22歳になった頃でしょうか...ふと、自分の今後の人生について改めて考え始めた鈴木さんは、一度仕事を辞めて、新たな道へ進もうと決心したのでした。
しかし再就職先を探すもなかなかうまくいかず...。
「公務員になったから人生安泰だなと思っていたのですが、なかなかうまくいかなくて...」と、その後一旦飲食などのアルバイトを始めます。
アルバイトを始めて3年ほど経った頃、20代後半になるということもあり当時お付き合いしていた現在の奥様と相談し、一度環境を変えようと、かつての住み慣れたまち、苫小牧へ引っ越すことを決意。
そこで介護の職業訓練を勧められて半年間で資格も取得。介護の世界へ行くのか、この先どうしようかと悩んでいたタイミングでたまたま苫小牧にある自動車学校の求人を発見。
そして、軽い気持ちで応募した話す鈴木さん。ここでも持ち前のフットワークの軽さが光ります。
見事採用され、初めは送迎バスの運転からスタートでした。
そのために中型の免許やバイクの免許も取得しました。見習い期間中には運転の実技試験に向けた練習はもちろん、学科や面接、2本の論文など資格取得のため勉強に勤しみました。
入社後半年でギュッと詰め込み、全ての関門を見事クリア。
初めての生徒さんのことも「めちゃくちゃ明るい女性で、緊張もなくとても楽しくできました」と、今でもハッキリ覚えていました。
フリーで働く第一歩を踏み出すきっかけとは?
最終的に教習所では指導員として7年半勤めました。その後、教習所の仕事を辞めた理由は3つ。
「まず一つ目は人生について再び考えたこと。深く内省したというか...シャワーに入りながら泣いたことがあって、なんか人生このままで良いのかなって。色々と考えた時期があったんですよね」
このまま死ぬのが嫌だという漠然とした想いがあり、それについて「内心は楽しくなかったんでしょうね」と当時の想いを振り返ります。
そこから大量の本を読み、色んなことを体験している人がたくさんいるということを知り、自分の人生がつまらなく思えてしまったのだとか。現在の鈴木さんの持つ強さに辿り着くまでには苦しみもあったのですね...。
そこで、過去の人たちの真似や新しいチャレンジをしてみたいとさらに本を読み漁ります。読んだ本のジャンルはビジネス書から哲学書まで多岐に渡り、特に影響を受けた本は、20世紀に最も影響を与えたビジネス書といわれる『7つの習慣』と哲学書の『セネカ』。
特に『セネカ』は心にズバッときて、その後の生活に影響を与えたそう。主に人生の短さについて語られていて、自分の人生にも時間がないと実感したのです。そんな風に本を読みながら勉強の時間に費やしました。
2つ目の理由は、自動車学校の指導員という仕事柄たくさんの若い人たちと関わっていく中で、多くの若い人たちが元気がなく絶望している様子だったのが気になったから。
「超フレッシュな子たちのはずなのに、みんな超元気ないんですよ...!そしてみんな『大人になりたくない』って口を揃えて言う。大人が楽しそうじゃないからって言うんです。その時自分も内省していた時だったので、自信を持って大人は楽しいよとは言えなかったんですよね...」
若い人たちが見て、あのおじさんたち楽しそうだなって思ってもらえるように生きたいと思ったと言います。
また、夫婦の間で北海道も海外ももっと色々な所が見たいよねと話し合ったのも3つ目の後押しとなりました。発信力や行動力をつけて色々なところに行ってみるのが夢だと話します。
いつもこのリュックを背負っていろんなところへ赴いている鈴木さん。
こうして2020年の12月頃に考えもまとまり、コロナ禍ではありましたが「混乱し元気のない人が多い今がチャンスだ」と、退職を決意します。
その時奥様とは「ちゃんと段階的に稼げるようになろう」と話し合い、今後鈴木さんの収入がある程度安定してから奥様も仕事をやめて2人で旅に出る予定なんだとか。
「今は自由な時間を使って何ができるか模索中です。まだまだ迷子なんですけど(笑)」
北海道の良さを街歩きで発信。皆に伝えたい故郷の素晴らしさ
現在の活動はYouTubeがメイン。北海道の街歩きを発信しています。「人がやっていないことをしたいと思い、ひたすら歩きまくってます。地元の方と駄々絡みしたり(笑)」
自分と同い年くらいの世代から、もう少し上の世代や、旅や飲食に興味のある層に届けたい動画なのだとか。ほっこりしたというコメントも多く、コロナ禍で外出がままならなかったり、一人で過ごしている人に見てもらって元気を与えられたらという思いで更新されています。
「北海道から離れた方も見てくれているんです。『なかなか地元に帰れないのでこうして見ることができて嬉しいです』なんてコメントもあって、やっててすごく楽しいですね」
道内の人はもちろん、道外へ出て行った人に届けることができるのもYouTubeの楽しみだと語りました。現在の更新頻度は週一回。奥様がお休みの週末に撮影し、編集は高いクオリティは求めず人間性勝負。ゆっくりだけど少しずつ視聴者は増えているのだとか。鈴木さんの熱い想いが画面からも伝わっているのかもしれませんね。
そうそう、YouTubeのチャンネル名の「ヤドカリウォーク」...名前の由来を聞くと「よくぞ聞いてくれました(笑)」と笑い、こう言葉を継ぎます。
「住所不定になりたいんです。ヤドカリの生態のように色んな所を転々としたいんですよね。飽きるというか好奇心でそうしたいんです」
こちらがそのyoutubeページ
今は街歩きですが、ゆくゆくは移住体験や好きなまちを深掘りしてYouTubeで良さを発信したいと話してくれました。
実は鈴木さん、数年前にNPOを作ろうとしたこともあったのだとか。しかし、設立の難しさを実感し断念。
「今はみんなの力を借りるということを一旦やめて、自分の殻に閉じこもって力をつけている状態です」
まさにヤドカリ!な鈴木さん。
失敗してもめげずに方向転換をして、新しいことに挑戦するところに鈴木さんらしさが出ています。
生き方の理想は勇者。憧れた世界観を現実に落とし込む
昔から超がつくほどのゲーマーだった鈴木さん。ゲームに登場する『勇者』的な生き方に憧れたと言います。「勇者ってニートじゃないですか。基本的に楽しく生きてる奴ってだいたいニートなんですよ(笑)。ドラゴンボールの悟空も北斗の拳のケンシロウもニート!」
色んなところに行って、色んな人と出会い、色んな仕事をする。お金だけじゃない、人との繋がりを作るためには、ニート的な生き方、活動をしなければ達成できないと話す鈴木さん。
「RPGゲームの生き方を現実で出来ると超楽しそうだなって思って」と無邪気に笑います。
鈴木さんの生き方の原点はゲームにあったんですね。意外な発想になるほど!と手を打ちました。
また、「北海道の人って北海道の良さを全然わかってないですよね」と話します。
自動車学校の指導員時代、免許合宿で本州からの生徒さんも多かったのだそう。他の地域の免許合宿と比べて北海道の免許合宿は割高なのですが、それでも北海道に来たいという理由は美味しいご飯と豊かな自然。
「信じられないくらい北海道のご飯に喜ぶんですよね。ホテルで出てきたじゃがいもが美味しすぎて、そのじゃがいもをわざわざ購入して実家に送るなんて子もいました。でもそういうのって外に出ないと見えない北海道の良さなんですよね」
一度外に出て色々なところを見て、改めて北海道の良さを確認したいと鈴木さんは語ります。
固定概念を覆す自由な生き方を貫く姿勢
カラッとした明るさで目標へ猪突猛進な鈴木さんに今のモチベーションを保てている理由を尋ねると「自分のことなんてどうでも良いって思うことです。哲学的な考えなんですけど、自分のことが好きな人が多すぎる。悪口言われたり人からの目線を気にしすぎると落ち込むんですけど、そもそもお前になんか誰も興味ねぇよって思うことから始まるかなと思って」
結果が出なかろうが人から嫌われようが良いという感覚を持って行動しているのだとか。
そんな鈴木さんも仕事を辞めてから一年間は浮き沈みも多くありました。焦りを感じ落ち込み、社会から分断されたような気がして寂しいと思ったことも。切り替え上手な印象でしたが、その度にしっかりと経験を噛み砕いて咀嚼し、苦しみを吸収して自分のものにしているからこそ現在の力強さなのだなと感じました。
直近で挑戦したいことは、今やっていることの活動範囲を広げること。
北海道以外のエリアをしっかり歩いて北海道の良さを再発見したいと話します。保守的な環境ゆえに発信している人も少ない印象の北海道。そんな中で発信することはとてもやりやすく、チャンスを感じると言います。
インタビューの終盤、最も身近で支えてくれている奥様へメッセージをお願いしてみました!
「一番難しい質問ですね(笑)沢山遊ぼうって感じかな?仕事とか遊びを分けたくないので、一緒に沢山遊んで色んな所へ行こう。一言でまとまらないなぁ」
今回のインタビューの中で一番言葉に詰まっていた鈴木さんでした(笑)出会っておよそ16年の奥様、鈴木さんの一番の理解者であり仲間なのでしょう。
最後に鈴木さんは生き生きとこう語りました。
「もっともっと変なことをしていきたいなって思います。例えば『家ねぇっす』ってだけで笑い取れるじゃないですか。よく分かんない奴になりたいんですよ。そうすると若い方は興味を持ってくれる。中年でそれをやっているのが面白いっていう」
どこまでもまっすぐに人生の楽しみ方を追求する鈴木さん。もっと自由で良いし、もっと楽しくて良いんだと思わせてくれるインタビューになりました。これからも鈴木さん夫婦二人三脚での「ヤドカリウォーク」の旅は続くのです。
- 鈴木雄太さん
- URL
◎Instagramアカウント
https://www.instagram.com/yadokari_walk/