
北海道長沼町。札幌と千歳の中間に位置する利便性もあり、それでいて自然も豊かなこのまちに、風がながれる空間がとても心地良い素敵なお店を発見しました。お店の名前は「こぼれ種みちくさマルシェ」。
優しい口調で私たちを出迎えてくださったのは、2021年5月に東京からこの地に移住してきたご夫婦。「移住支援金」という制度を利用し、この地で念願のお店を開いた、滝田さんご夫妻です。
オープンエアなお店、こぼれ種みちくさマルシェ
オープンエアなお店に足を一歩踏み入れると、なんだか物語の世界にいるような、そんな気持ちにさせてくれるスープと雑貨がメインの、テイクアウト専門の素敵カフェ。
「こぼれ種」というのは、「たまたま落ちた種が芽生えた、幸運」という聖書の言葉を用いて、幸運のお裾分けが出来たら、と考え店名に名付けられたそうです。
店内では美味しそうなスープやスコーンがいただける他、「マルシェ」というだけあって、さまざまなつくり手さんが手がけた手作りの品々も並んでいました。
40代で、新たな人生をスタートさせる
滝田大志さんと、智美さん。今から10年程前東京で出会い、ずっとご友人関係を続けていました。途中、智美さんは住処を鹿児島へと移し、東京と鹿児島...その距離はあれど、導かれるようにしてご結婚され、お二人で北海道へとやって来たのです。
店先には素敵なドライフラワーが店前に置かれていました
突然の渡道...!まずは少しずつ、これまでの流れをじっくりと聞かせていただきます。
滝田さんは長年、東京のファストフード店で働いていたと言います。月日は流れ、40代がスタートした時にふと、「人生このままで良いのだろうか?」と少し考えてみたそうです。
笑顔がとっても素敵な滝田さん
これまでずっと東京にいながらも、心のどこかでは「ほかのところに行ってみようか」という、どこか新天地に行ってみたいという気持ちを持っていた滝田さんはいつしか
「北海道でお店を開きたい」
そんな構想を抱くように。
それをいざ実行しようと決断できたのも、北海道長沼町ですでにカフェを経営されていたご友人の存在でした。その方の隣の土地で、カフェをやれるかもしれないという未来が明確に見えてきた頃、滝田さんは智美さんに「一緒に来てください」という言葉とともに、籍を入れ、二人で北海道への移住を果たしたというわけです。
穏やかな雰囲気で現場を和ませてくれる智美さん
長沼町に、念願だった自分のお店を開いた滝田さんご夫婦は、住まいはお隣恵庭市に決めました。
「移住の情報収集をしていた時に、北海道に移住した方々の動画を見ました。そこに恵庭の方が出ていて、話を聞いているうちに、恵庭っていいなと思ったんです。その方は、恵庭はとにかく住みやすいということを強調されていました」
こうして気になった「恵庭市」という存在。ちょうどお店を建てる長沼町にも近いということもあり、住処は恵庭市に決めました。
実際に恵庭市へと来た際、想像を超えるまちのキレイさに感動したと話します。
「東京から来た者としてはビックリしましたね(笑)。恵庭市は『花のまち』と謳っているのですが、その通り、道を歩けばお花がキレイに咲いています。なんてことのない道端にさえ、たくさん花がありますからね。公園も多いけど、どれもキレイです」
逆に冬は、人生初の雪が降り積もるシーズン。初めての雪かきには、筋肉痛になりながらも頑張ったと笑いながら振り返ります。
「札幌に比べたら、恵庭は雪が少ないはずなんですが、2021〜2022年にかけての大雪は、ビックリしました。いきなりそんな大雪の年を体験してしまったわけです(笑)」
そんな予想していなかった冬を乗り越えたお二人ですが、なんと言っても移住してから感動したことは、野菜の旨み。
「東京で買うものとは全然違います。ブロッコリーなんて最初に食べてその美味しさにビックリしました。実はブロッコリーは今まであまり好みではなかったのですが、こっちに来て好きになりました」と滝田さんが話します。
店内の様子
「移住支援金制度」の存在
さて、冒頭でも少し触れましたが、滝田さんは「移住支援金制度」を利用して移住を果たしました。
この制度は、東京圏から移住し、就業・起業・テレワーク移住した方が移住支援金がもらえる制度。移住を考えていた際に、インターネットでたまたまこの情報を知った滝田さんは、この制度を利用して、お店を建てるまでに至りました。
素材の味を最大限に活かしたスープ
「基本的に事務手続きなので、大変と言えば大変でしたが、札幌でこうした制度の申請の手配をお手伝いしてくれる機関があって、教えてもらいながら手続きを進めていきました」
こうした相談できる機関の存在も大きかったと話します。
申し込みの書類はたくさんあれど、起業計画をしっかり作り、それに沿ってやっていくことが、大切な第一歩だと教えてくれました。この計画を練り始めたのは、北海道に来る前からだったそう。
もともと外食産業にいたからこそ、食の安全性も大事に、かつ、素材の旨みを活かすべく、提供するスープについては、料理研究家の知人にアドバイスをもらいながら試作を重ねました。
こうして準備を整え、2021年5月にこの地へやって来て、開業に向けお店づくりを始めました。自分たちの手で作り上げたこだわりがぎゅっと詰まっているからこそ、このお店からは温かみが感じられるのかもしれません。
5月に来てから7ヶ月後...2021年12月にお店自体が完成し、翌年2月には念願のお店オープンとなりました。
「支援金の存在は本当に大きかったです。これがなかったら、お店なんてできなかったかもしれない。支援金があったからこそ、思い切って起業できたのかもしれません」
移住支援金を利用しての移住を考えている方へ何かアドバイスは?と聞いてみると「起業計画をしっかり立てれば大丈夫」とのこと。
マルシェの今後
さて、こぼれ種みちくさマルシェは、まだまだ始まったばかり。これからの未来、滝田さんの目には一体どう見えているのでしょうか。「今後は、長沼のブロッコリーとか、トマト、お豆も使っていきたいと考えています。季節によって、美味しいスープが味わえるように。これからも、素材の味をなるべく活かすものをご提供していきたいです」
ひっそりと長沼町に建つ、訪れた人たちを温かい気持ちにさせてくれるこのカフェは、インスタグラムを通じて、色んな方がすでに訪れているそう。
奥様がつくるスコーンなどの焼き菓子も人気。
アメリカンタイプのスコーンは、甘みがありおやつ感覚で楽しめます。
「小さい頃からお菓子をつくるのが好きで、いつかは...なんて思っていたことが叶いました」とにこりと笑う智美さん。
お店に置かれた手作りの雑貨は、滝田さんご夫妻の繋がりで、作り手さんたちの商品を販売。道外の方が作る雑貨も置かれているそうです。いろんな作家さんがいて、素晴らしい作品の魅力も伝えていきたい、そう話す滝田さん。
「もともと、マルシェに行くのが好きだったのもあって、飲食と展示、物販など、マルシェスタイルのお店をやりたいと思っていた」
まさに描いた夢を叶えたその姿は、とてもキラキラ輝いて見えました。
優しい雰囲気のお二人
- こぼれ種みちくさマルシェ
- 住所
北海道夕張郡長沼東5線南12
- URL
※取材当時の情報です。
※現在、お店は閉店しておりますのでご了承下さい。