北海道の真ん中あたりに位置する三笠市。アンモナイトの化石が数多く展示されている博物館や、調理・製菓で名を馳せる三笠高校などが有名です。
そんなこのまちの移住者として紹介したい方は、三笠市の教育委員会にいらっしゃいました。テンポの良い関西弁で出迎えてくれたのは、現在三笠市地域おこし協力隊として活躍している南孝太さん。生まれも育ちも京都府だという南さんがなぜこのまちに移住を決めたのか?移住した後の生活はどう変わったかなど色々教えていただきました。
南孝太さんのプロフィール
南孝太さん 京都府出身(単身)
<移住時の年齢>
2018年4月に移住 当時25歳
<移住時の不安要素>
北海道の冬の寒さ
<現在のお仕事>
三笠市地域おこし協力隊として、子どもたちの学習支援業務を担当
移住してみての感想
- 外から入ってきた人に対して排他的ではない
- のんびりしている人、器の大きい人が多い
- 広い北海道遊べる場所がいっぱい(だから娯楽費が急増!)
- アウトドア好きには最高!
- ゴキブリがいない北海道最高!
- 自分を大切にしてるオンリーワンな子どもたちが多い
移住前と移住後の実際の生活費
※左側は移住前の家計調査による平均的な数字、右が南さんの実際の生活費。
※家計調査の数字も含め、実態よりやや高めに見えますが、賞与等も勘案して1年間を平均的なところでならしています。
※右側、現在の南さんの住居費は協力隊制度により役所からの助成により家賃62,000円のところ実質0円です。
※交際費・嗜好品等の出費は含まれていません。
北海道の美しい景色に心奪われて
生まれも育ちも京都府だった南さん。地元では小学校の先生をしていました。ずっと住み慣れた京都が大好きと語る南さんがなぜ北海道に、そしてこの三笠市にやって来たのでしょうか?
早速、なぜ北海道に移住を?と聞いてみると関西弁で「それはもうノリですね!(笑)」と笑う南さん。北海道では聞き慣れないその関西弁に心地よさを感じてしまいます。
表情がコロコロ変わる南さんに注目です。
「...と、言いますか実は北海道旅行がきっかけでもあるんです。2016年の8月に友人たちと北海道へ遊びに行き、函館へ向かって車を走らせているとその道のりで目に入ってきた羊蹄山がもう素晴らしすぎて...これは登らなあかんな!と。(笑)」
羊蹄山といえば、北海道は倶知安町にあるまちにそびえ立つ山。蝦夷富士として多くの方に親しまれています。
こうした北海道の美しい景色に心奪われた南さん。生まれてこの方ずっと京都にいたからこそ、違う場所にも住んでみたいという想いもあり、北海道を移住先に検討し始めたのでした。
そして2017年10月。
移住する半年前のことです。大阪で北海道移住イベントがあると知り参加。その時点ですでに北海道に移住するという心は決まっていて、あとはどこのまちにするかのみという心境だったそう。
「色々他にも市町村の話は聞いたんですが、たまたまその時出会った三笠市が『教員免許を持っている地域おこし協力隊』を募集していたんですよね。それもう俺やん!って。その場で行きますって決めました」
なんという決断力...。その後もトントン拍子で晴れて協力隊としての採用も決まり、北海道三笠市へ移住します。
現在の南さんの仕事場にて真剣な表情の一枚。
2018年4月に三笠市の協力隊として着任すべく、車に荷物を積み込んでフェリーに乗って小樽まで渡ります。今度は旅行としてではなく住むために大きな一歩を踏み入れたのです。
移住してから娯楽費が増えた...!?
即決めた北海道移住。不安はなかったのでしょうか?「不安は寒さで死ぬんじゃないかな?ってくらいですね。アウトドアが好きで、実際にこっちに来てからも山に登ったり色々していて、滑落したこともあるし、ヒグマに会ったこともあります。よく生きてたな、俺。やっぱりなんか持ってるなって思いましたね(笑)」と笑いながら恐怖体験も話してくださいました。
また、南さんにとってゴキブリが出ないことも北海道最高!と思うひとつの要因のようです。「ゴキブリがいないってこと、道民の皆さんはそれが日本一幸福度が高いと思ってほしいですね!」なんて目を輝かせます。
住居に関しても、移住前に役所の担当の方と密に連絡を取っていたので不安に思うことはなかったと話します。
「今は7戸入る築6〜7年くらいの比較的新しいアパートに入居しています。一人なのに2LDKで、そんないらんからってくらい(笑)家賃は6万2千円なんですが、協力隊の制度による助成で実質0円なんですよね」
家賃が0円というのは大幅なコストダウン!
また、比較的築年数も浅く、2LDKという間取りでこの家賃というのも本州に比べるとこれは大きな違いなのではないでしょうか。
この協力隊の助成以外にも、「若者移住定住促進家賃助成事業」として対象者には3万円の家賃助成もあるそうです。
こうした手厚い助成もあり、南さんの生活費もぐんと削減できたのか...と言うとそうではない様子。その要因として娯楽費が増額しているというのです。
アウトドアが好き、とおっしゃる通り南さんは三笠市を拠点に休みとなると北海道中を駆け巡っているそう。特に、道の駅のスタンプラリーにハマって今では98カ所ほどスタンプを制覇しているのだとか。
「利尻、礼文にも行きたいし、本当に行きたいところがありすぎる...北海道広すぎなんですよ〜」なんて幸せそうに頭を抱える南さんでした。
京都にいるご家族も、南さんが移住したことにより北海道に遊びに行く理由ができたとよく遊びに来るのだとか。2019年のゴールデンウィークは10連休だったという南さんが、北海道に遊びに来ていたご家族と共にスタンプラリーの旅に出たそう。
この娯楽費の増減は、北海道中を駆け巡るための資金なのです。そのため、車も四駆に乗り換えたという南さん。車の買い替えの他、移住してから何か新しく購入したものはあるのでしょうか。
「関西と北海道は電流・電波の周波数が違う関係で、電化製品は三笠に来てから買い直しましたね。いったいニトリを何往復したんだってくらい往復しました(笑)」
北海道の子どもたちと触れ合うお仕事
もともと京都で教員をしており、現在三笠市でも子どもたちへの教育をメインとする地域おこし協力隊として勤務されていますが、そもそも教師を目指した理由は何かあるのでしょうか。
「僕、いわゆる劣等生だったんですよね。学校行っても勉強せず、とりあえず寝るみたいな。でも、小6の時、歴史の授業中に教科書に載っていた聖武天皇の絵をノートに真剣に描いていたんですよね。そしたら先生が僕の机のところまで来て、あ〜また怒られるんやろなぁと思ったら『...うまく描けてるなぁ』ってまさかの褒めてくれたんですよ」
先生にとってはなんでもない一言だったかもしれません。しかしその一言が、南さんの人生を変えたのです。
「それから『聖武天皇ってどんな人なんやろ?』って興味が湧いて調べるようになって、自然と勉強するようになったんです。そうすると次第に成績も上がっていきました。あの一言で救われた自分がいるから、自分も誰かを救いたいって思ったのがきっかけですね」
こうして南さんは教員を目指し、その夢を果たしました。
三笠市に来てからも、教育に携わるお仕事をされているとのことですが、具体的にはどんなお仕事をされているのでしょうか。
「学力向上未来塾といって、月水金、子どもたちに社会科の科目を教えています。学校に通えない子どもたちに向けて勉強を教えることもあれば、市内の小学校に行って担任の先生のサポート、お手伝いをしたりしています」
このように、常に子どもたちと関わるお仕事をされていますが、「北海道の子の印象は?」と聞いてみると...「のんびりしている」と一言。
南さんはさらに言葉を続けます。
「世界に一つだけの花...じゃないけど、オンリーワンな子たちが多いですね。自分を理解し、大切にしている。京都は競争競争の世界でした。大阪に負けたらあかん、隣の学校に負けたらあかん、成績は全員貼り出される...そしたら『自分なんてどうせ...』となってしまう子が多いんです。でも、北海道の子たちは京都の子に比べたら競争原理があまりないなぁと。時に『my wayすぎひん!?』とも思いますけど(笑)」
これからへの想い
三笠市民との関わりの中で、どんどんまちのこと、まちの人のことも理解してきた南さん。移住者である自分のことも、心から受け入れてくれるまちの皆さんのその姿勢に、器の大きさを感じると話します。
職場の皆さんとは和気あいあい。「仕事中にボケても許されます(笑)」とさすが関西人のノリ。余談ですが、ツッコミ役はいないとのこと...。しかし、決して無視などはされず笑ってくれる職場の皆さんに囲まれ、「ありままでいれる自分」の環境に満足しているそう。
生活にもすっかり慣れた今、協力隊としての任期は残すところあと1年半。卒業後は、学校の先生になることを今は視野に入れているそうです。
「実は京都にいる時は、先生という職業にネガティブな気持ちも抱いていたんですね。でも、三笠に来て変わりました。良い先生、良いこどもだちと出会って教師というものの考え方が変わったんです」
そう話す通り、本当にまわりの人にも恵まれている様子。友達も1人もいない中での移住でしたが、今ではプライベートのお休みの時間も共に楽しめる仲間ができました。
「同僚とも知床に行ったり、BBQをしたりそういう仲間ができましたね。京都で自分の家でBBQするなんてしたら通報されますからね(笑)。北海道の家は一軒一軒の家も京都とは大きさが違いすぎて『これは宮殿か!』って思いましたもん」と最後まで取材陣を笑わせてくれる南さんです。
地域おこし協力隊として移住すると、住宅の助成があったり、3年間安定した収入が確約されているなどのメリットも多いようです。三笠市の地域おこし協力隊は特に様々な仕事内容で募集をされているので、今回の南さんのように自分のスキルを活かした協力隊への応募も移住のひとつの手です。
好きを仕事にしている南さんは、三笠市でキラキラ輝くまさにオンリーワンな人物でした!
ここがポイント、移住して良かったこと!
- 三笠市地域おこし協力隊 南孝太さん
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