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士幌町

優しく見守る温かい環境で、野菜も人も育つ農園20181225

優しく見守る温かい環境で、野菜も人も育つ農園

大きなハウスがいくつも立ち並ぶ、広大な農場。訪れた取材陣を、可愛らしい笑顔で迎えてくれたのは、高校卒業後の2018年4月から夢想農園で働く、逸見理菜さんです。
女性が新卒で農業の仕事に就くってどんな感じ?リアルな姿を取材してきました。

農業は女性として輝ける職業

理菜さんは、士幌町にある北海道士幌高等学校の出身です。農業経営ならびに農業の多面的な機能について学習できる、アグリビジネス科で農業を学び、新卒で夢想農園に入社しました。現在、理菜さんの他にも2人の正社員がおり、大規模農業や加工業が早くから発展した士幌町では、夢想農園のように従業員を雇用して運営している農家も珍しくはありません。夢想農園は、士幌町と音更町にある40haの広大な農地で、じゃがいも、ビートといった原料作物、白かぶ、水菜、パクチーなど多種多様な野菜、そして和牛を生産しています。

musou01.JPG新卒で農業の道へ進んだ、逸見理菜さん。

農業王国の十勝エリアにおいて、理菜さんと夢想農園はどのようにして出会ったのでしょうか?その答えは、高校2年生の時に経験したインターンシップ。2泊3日の泊まり込みで、農場主の堀田隆一さん・悠希さん夫妻や社員、パートさんと一緒に農作業をしたり、旅館やお店に直接卸している野菜の納品にも連れていってもらったそうです。

「そこで野菜がどのように使われているか、どんなお店・どんな人なのかを、悠希さんが話してくれました。作るだけではなくて、野菜の行く先のことも考えるというのが、とても良いなと思いました」。

この時、農業の仕事の素晴らしさを感じ、女性として農業で輝く悠希さんに憧れ、夢想農園での就職を決めたといいます。

musou13.JPG農場主の堀田隆一さん・悠希さん夫妻。

食べる人のことを考えると、仕事に誇りを感じる

取材に伺った秋の始まりに行っていたのは、白かぶの葉を取り、箱詰めする作業。ターンテーブルに乗せられて流れてくる白かぶを箱に詰める、淡々とした流れ作業が続きます。

「同じ作業が長い時間続くと正直大変です(笑)。でも、ここの農園はとっても人が温かいので、作業も楽しくできるんです。『ここで働いてよかった』と思える瞬間ですね」。

笑顔でうれしそうに話してくれる理菜さん。パートさんと仲良く話す姿からも、普段の仕事の様子が垣間見えます。10歳以上歳上のパートさんと、休みの日に一緒にカラオケに行ったり、買い物に行ったりすることもあるんだとか。

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入社半年で、農園にも作業にも溶け込んでいる理菜さんですが、入社時にはちょうど繁忙期で、農業の洗礼を受けたようです。ビート(てん菜)定植の時期に当たり、朝から夜まで作業が続いたと言います。

「ビートの苗取りといって、苗のポットから機械で苗を外していく作業をしたのですが、最初は体力もないので苗が重くて。『どうして私はこれを延々とやっているんだろう?』なんて思っちゃいました(笑)。でも、植えた苗が伸びて、ビートが大きくなっていく姿を見て、『私がやった仕事は、こういうことだったんだ』とわかりました」。

また、道内のイベントに出張し、野菜の販売に連れていってもらうことも。お客さんが、「ここの野菜はおいしいのよね」と言って買っていく姿を見て、改めて農業という仕事に誇りを感じたと言います。

「悠希さんもいつも言っていますが、食卓で誰がどのように食べているのかを考えることが大事なんですよね。それを考えると、忙しくて疲れた時も、今している仕事が楽しいと思えます。農業をする人がいないと、みんなの食卓に野菜も載らないということを、ここで働いてから考えるようになりましたね」。

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農園主の眼差しから感じる従業員への「親心」

可愛くネイルをして、おしゃれもしている普通の女の子。夢想農園への就職をきっかけに一人暮らしを始め、休日には農園でもらった廃材を使ってDIYをするというちょっとガテン系(?)な意外な一面もある理菜さん。さらに、おもむろにアコースティックギターを取り出し、こう教えてくれました。

「実は、中学の同級生と二人で「earth」というユニットを組み、CDも制作したことがあるんです。」

なんとミュージシャンとしての一面も!実際に、youtubeにアップされたミュージックビデオも見せてもらいました。その完成度にビックリ!

「隆一さんと悠希さんも、私たちの歌を良いね!と言ってくれて、応援してくれているんです。農園の開いたイベントで投げ銭ライブもさせてもらったこともあります」。

「earth」の曲がコチラから聴けます!

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理菜さんを見守る農園主の隆一さんと悠希さんの眼差しからは、強い「親心」を感じます。

「高校生のインターンシップで来た時は、最後の挨拶をした時に泣いちゃって。純粋でいい子だなぁと、スタッフたちももらい泣きですよ。まだ入社して半年余りなので、現場で淡々と行う仕事が多いですが、栽培管理の仕事や、外での販売や商談も経験させてあげたい。そして自分らしい仕事、役割を見出していってほしいですね」と悠希さん。

農業を通しての従業員の成長を願う温かさが伝わってきます。

消費者に、生産者の思いを伝える

農場主の堀田悠希さんは、農協での勤務を経て、隆一さんとの結婚を機に農業の道へ。十勝管内の農業関係者の女性ネットワーク「農と暮らしの委員会」を立ち上げ、女性農業者が生き生きと働くためのトークイベントやマルシェなどを開催し、精力的に活動しています。また、地元の商工会から委託を受け、道の駅ピア21しほろの運営を行うために、2017年に株式会社at LOCALを設立。

「道の駅にも、スタッフが10人います。みんな、志を持っている若者たち。その夢を模索して、叶えられるチャンスを作ってあげられる職場にしたいですね」。

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夢想農園の野菜は、市場を通して流通しているほか、飲食店や小売店へ直接販売もしています。また、道内各地でのイベントやマルシェへの出店、さらには、東京都大田区にある池上本門寺で行われる音楽フェス「Slow LIVE」でも飲食ブースを出店し、北海道野菜としほろ牛を使った「農家ごはん」が大変好評だったそう。道外にも、北海道・十勝のおいしさを発信しています。食べる人のことを考えて野菜を作り、食べる人と直接つながる姿勢は、理菜さんたち従業員にも受け継がれています。

この職場に出会えたことがうれしい

理菜さんに、夢想農園の野菜で何が好きか聞いてみました。

「もともとパクチーが好きなんですけど、夢想農園のパクチーは香りが強く出るので本当においしいです!わかもろこしも、ここで初めて食べたのですが、パリッとして甘くて瑞々しいんです」。

わかもろこしは、士幌町でブランド化しているヤングコーン。一般的に流通しているものは水煮が多く、生のものが手に入る機会はあまりありません。私たちも、いただいて食べてみました。表面をこんがり焼き、噛むと中からうま味がじゅわっと。ひげもしっかりコーンの味がして、サクッと食べられます。

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女性として、農業を仕事にすることにどんな思いがあるのでしょうか?

「確かに、最初は体力的にキツイと思うこともありましたが、働いているうちにだんだん体力もついてきました。野菜を可愛く包装する方法を考えたり、女性ならではのアイデアや感性を生かせる仕事もたくさんあるんですよ」。

夢想農園に出会えたこと、働けること自体がすごいことだと思う、と理菜さん。
働いている人がお互いを思い、食べる人のことも思う。ここ夢想農園は、野菜を育てるだけではなく、こうした温もりに包まれながら、野菜も人も育つ農園でした。

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夢想農園
夢想農園
住所

北海道河東郡士幌町字士幌東4線173

URL

https://www.facebook.com/musounouen


優しく見守る温かい環境で、野菜も人も育つ農園

この記事は2018年9月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。