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「田舎暮らしが大好き!」オーストラリアから浦臼町へ20181213

この記事は2018年12月13日に公開した情報です。

「田舎暮らしが大好き!」オーストラリアから浦臼町へ

テレビなどを見ていると、最近はよく外国の方が「日本の文化が好きで日本に来ました!」と言っている姿を見かけます。北海道でも日本はもちろんのこと、『北海道の風土』に惹かれて移り住んだ外国の方は少なくありません。

今回取材をさせていただいたオーストラリア出身のJonathan Jenkins(ジョナサン ジェンキンス)さんもそのひとり。

ただ、多くの外国の方との違いは「特に『田舎』に住みたい!」という並々ならぬ情熱を持っていたことです。現在浦臼町で地域おこし協力隊として勤務しているジョナサンさん。(さん付けだと名前がややこしいので、浦臼町民からも呼ばれているようにこれからは「ジョナサン」と書かせていただきますね)。

それではジョナサンに、どうして浦臼町なのか、そして北海道の田舎で暮らす魅力は一体何なのか...根掘り葉掘り聞いてみました。

日本を好きになったきっかけは、日本人の友人だった

ジョナサンは38年前、オーストラリアの大都市、住みやすいまちとしても有名なメルボルンに生まれました。生粋のオーストラリア人のジョナサンが日本に触れたきっかけは小学校の頃の同級生だったと言います。


「80年代のオーストラリアでは『日本ブーム』がありました。その時僕は小学校1年生だったんですが、親の仕事でオーストラリアに住んでいる日本人の同級生がいたんです。その男の子の家に遊びに行った時に日本のアニメやオモチャに触れたことが日本と出会ったきっかけ。その時マンガやアニメ、『アトム』とか『マクロス』とか...合体するロボットのオモチャを見て『日本すごい!』って」

jonathan_urausu2.JPG目を輝かせて日本の文化の魅力について話すジョナサン

こうして日本に興味を持ったジョナサンは中学校からの選択教科で日本語を選び、高校卒業までの6年間日本語を勉強したのでした。その後大学を卒業し「海外で生活したい!」とインターネットで就職を探し、日本にたどり着きます。

とにかく「田舎」に行きたかった

最初にジョナサンが住んだ場所は茨城県のつくば市。インターネットを駆使して見つけた仕事は英会話教室の先生でした。


つくば市に移り住んで英語の先生をすること1年、契約更新の時期がやってきたジョナサンは思いました。
「実はこの1年、英会話教室の先生たちとばっかり話していてほとんど日本語を使っていませんでした。それに『東京とかの都市部じゃなく、田舎に住みたい』と思って来たつくば市は自分が思っていたよりもすごく都会で。まだまだ行きたいところ、食べたいものがたくさんあったので、もう1年残ろうって決めました」

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こうして2年間をつくば市で過ごしましたが、やはりどうしても田舎暮らしへの気持ちが消えません。

そこで、翌年の更新でつくば市の英会話教室を辞め、次に移り住んだのは北海道の釧路市でした。ここでも英会話教室の先生となったのですが...

「北海道って雪がたくさん降るってイメージだったんです。きっと北海道に住んだらそんな景色の中で生活できる!と思っていたら、釧路は全然雪が降りませんでした(笑)。もちろんつくばと比べたら寒くて、夏でも寒かったことには驚きました。ただ、もっと田舎に行きたくてつくばから離れた釧路を選んだんですけど、釧路も僕の憧れている田舎よりも全然都会でした。でも日本人の友達もすぐできて、すごく良いまちだったんです。この2年間で北海道が大好きになりました」

思っていた北海道生活とは最初は違う印象だったそうですが、釧路で北海道の生活を満喫したジョナサンは2年間をその地で過ごした後に一度オーストラリアに戻ります。

「自分は英語を教えるということが好きだと気付いたんです。だからもう一度、きちんと語学について勉強したくなりました」
そこで大学院に入学し、言語学を勉強。1年半後の2007年に再び北海道に移り住みました。


それが浦臼町......ではなく、道北に位置する幌加内町でした。

やっと出逢った「何もないまち」

つくばよりも、釧路よりももっと田舎に住みたいとまちを探していたジョナサン。
「再びインターネットで仕事を探して、『ここは田舎なんじゃないかな?』と思ったところを見つけました。コンビニもない、何にもない、レストランは名物のお蕎麦屋さんだけ...」

そう言うジョナサンはなぜかとってもキラキラと目を輝かせていました。

「僕は都会育ちで、田舎っていうものにすごく憧れがあったんです。もちろん故郷のメルボルンも大好きだけど、真逆の場所に行きたいっていう気持ちがずっとありました。都会にいても、人と接することってあんまりないと思うんです。それが田舎だと『こんにちは~』『Hello~』って自然に挨拶してくれるんです。それが田舎の好きなところですね。あと、北海道の方って雪が降ると嫌がられますよね。もちろん長く住んでいるから嫌になるんだと思うんですけど、僕みたいに北海道の田舎に憧れていると雪かきすら楽しいんです」

そして幌加内町ではALT(※)の仕事に就いたジョナサンさんは学校で多くの生徒さんに英語を教えます。(※...日本人教師を補佐し、生きた英語を子どもたちに伝える英語を母語とする外国人の意味)

幌加内町の人達のあたたかさに触れ、気付けば10年半という年月を幌加内町で過ごしました。

「ALTという仕事は本当に楽しかったです。それに幌加内町では本当にすぐまちに馴染むことができました。まちの人達が『ジョナサン、バーベキューしよう!』とか『バレーボールできる?』とか色んなことに誘ってくれて。幌加内町では『仕事に行きたくないな~』って思うことが本当にありませんでした。やっぱり改めて、自分は田舎のまちが好きだと思いましたね。自分のライフスタイルに合っていると思います」

再び「何もないまち」へ

10年半という長い間幌加内町に住んでいたジョナサンでしたが「長く仕事を続けてきたので、ちょっと休憩したい」と一度幌加内町を離れることにしました。


その時出会ったのが浦臼町だったのです。

jonathan_urausu6.jpg人口2,000人弱のまち、浦臼町

ジョナサンは再び動き始め、2017年から週に1回浦臼町の中学校で先生を始めます。その後小学校での週に1回の仕事も増えたそんな時、教育委員会から「地域おこし協力隊っていう制度って知ってる?」と話しを聞きました。この制度を使って浦臼町に住み、仕事をしてほしいというオファーにジョナサンは考えました。

「僕はやっぱりこういうまちが好きなんです。幌加内町と一緒で、浦臼町もコンビニもないし、名物はお蕎麦っていう共通点もある。それに、協力隊としてまちに入ればもっとまちの人と交流できるようになる良いチャンスだと思いました」

こうして2018年4月、近郊では珍しい外国出身の地域おこし協力隊として浦臼町に勤務することになりました。

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浦臼町での仕事

浦臼町は小学校が1校、中学校が1校で各学年にクラスは1クラスずつ。ジョナサンはその小中学校の英語の先生が主な業務です。


「人数が少ない方が教えやすいですよね。人数が多い授業だと、英語の授業なのにどうしても1度も喋らず、分からなくても質問もできずに授業が終わってしまう子もいます。でも浦臼町は人数が少ないからこそ必ず全員が発言できる機会があるんです」

その効果は確かに出ているようで...

「浦臼町の生徒の子たちとは、放課後に会っても英語で会話するんですよ。僕が担当している体育館の掃除の時間も英語でやったりとか、クラスの担任を持っている先生がお休みになって代わりに1日担任をした時も、ホームルームから掃除まで1日ずっと英語で過ごした日もありました。こうやって全員が英語を聞いて喋る機会を増やしていることで英語に抵抗が無くなって、少しずつ慣れてきてくれていると実感しています」

都会ではなかなか難しい少人数での授業が浦臼町ではできるという魅力がありますが、この仕事でやりたいのは単に英語の授業だけではないと言います。

jonathan_urausu4.JPG浦臼町の中学校。写真からも分かる通り机の数は少なめ。

「英語力はもちろんですが、僕はやっぱり英語の楽しさを伝えていきたいですね。僕と同じくらいの年の日本の方と話をしていると、英語は難しい、授業は楽しくなかったって言う人が多いんです。だから僕は、英語をもっと楽しく勉強できるようにしていきたい。英語の楽しさをもっとたくさんの人に分かってもらいたいと思っています」

ジョナサンの目標はそれだけに留まりません。

「それにもう一つ、まちの良さを色んな人に知ってもらいたいという気持ちもあります。こういう田舎まちの暮らしの魅力を知らない人がとっても多くて、札幌の友達と話をしていても『浦臼町ってどこ?なんでそんな田舎に行ったの?』って言われます。だから、地域おこし協力隊みたいな人がまちに来てPRをどんどんすることはとてもいいことですよね。それに、まちの人たち自身にもこのまちの良いところがたくさんあるっていうことを教えてあげたいとも思います」

jonathan_urausu3.jpg「浦臼町の子ども達は『浦臼町は何もない、つまらない』って言う子が多いんです。だから、そんな子たちにも、こんなにいいまちなんだよ!って教えてあげたい」というジョナサンの浦臼町についての授業風景

浦臼町での暮らしと魅力

バイクが趣味のジョナサンは、ツーリングで日本一周もしたことがあるほどの旅好き。日本の都道府県は全部行ったことがあり、北海道もほとんどまわったことがあると言います。そんな日本のあらゆる場所に行ったことがあるジョナサンさんから見て、浦臼町の魅力とはどんなところなのでしょうか。


「浦臼町はまず住んでいる人たちが親切であたたかいです。何かトラブルがあっても近所の人がすぐ助けてくれます」

jonathan_urausu8.jpg浦臼町の仲間たちと家でこうして楽しむこともしばしば

「こないだの夏休みに僕の両親が遊びに来て、母が風邪をひいてしまったんです。その時たまたまご近所さんに会って、世間話のついでに『母が具合が悪くて』って言ったら、その人がすぐ畑で野菜とかを採って持ってきてくれたんです。『お母さんにあげてね』って」

本当にとっても優しい人が多いと感動したというジョナサン。

「あとは家を出てすぐ、きれいな景色を見て美味しい空気を吸えるっていうのは贅沢ですよね。都会だと朝起きて、家を出て見えるのはビルとかコンビニとかですから...。それに住んでいる方にとっては当たり前な光景でしょうが、キツネやリスといった野生の動物が近所にいるっていう経験は都会では絶対にできない田舎ならではの経験です。そして浦臼町以外に住んでみないと分からないことだと思いますが水道水がとっても美味しいんです。それに牛肉や蕎麦も美味しいし、浦臼産のマンゴーは今までの人生で食べたマンゴーの中で一番おいしかったですね」

また、趣味はスポーツだというジョナサンだからこそ感じる魅力もありました。

「浦臼町は都会じゃないからこそジョギングやウォーキングにもとっても良いまちだと思います。国道から少し外れたら交通量も少ないので危なくないですし、やっぱり景色がいいですしね。それに冬になるとスノーボードをするにも浦臼町はいいんですよ。町内にスキー場はありませんが、富良野に行くにも札幌に行くにも近いですし、近隣のまちにもいくつかスキー場があるのですぐに滑りに行くことができるんです」

住むからこそ見える魅力が浦臼町にはたくさんあると分かったジョナサンですが、逆に不便なことはなかったのでしょうか。

「買い物も、町内には小さいスーパーがありますし、僕は料理が好きなので滝川や札幌に行って冷蔵庫が満杯になるくらいの買い物をしてきています。浦臼町は不便だっていうイメージがあるかもしれませんけど、隣町のコンビニも車で10分かからないですし、友達とご飯を食べに行こうっていうときもお酒を飲まない人にハンドルキーパーになってもらって行くので全然困りません。浦臼町で生活をするのにも、趣味をするにも困ったことってほとんどありませんでしたね」

jonathan_urausu9.JPG浦臼町民もみんなジョナサンを慕っている様子

これからの地域おこし協力隊

今外国人の方が地域おこし協力隊となるケースも少しずつ増えてきています。その先駆けとなるジョナサンも、その良さを感じているそうです。


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「海外の人で、日本に住みたいっていう憧れを持って日本に来ても、就職できるのは英語の先生がすごく多い。その仕事しかないから英語の先生をやるという状況になってしまっていることもあるんです。これはちょっと残念だと思っていて、外国から日本に移住する選択肢として地域おこし協力隊っていう選択肢があることはいいことだと思っています。外国から来た人がそのまちに実際に住んで良さを本当の外からの目線で発信することができれば、自分の国に帰った時にその国の人達にまちの良さを伝えることができますからね」

今は英語の授業がメインの仕事で、イベントの際にお手伝いに行ったり参加したりしているジョナサン。来年の4月からは活動も2年目となりますが、今後についてこんなお話をしてくれました。

「これから時間ができたら町の色んなパンフレットとかを英訳するような仕事もしたいですね。あとは今、中学校の総合学習の授業で浦臼町のPRを作っているのですが、僕の担当しているグループは日本語バージョンと英語バージョンを作る予定なんですよ」

やっぱり人に何かを教えるのが好きな様子のジョナサン。まさに今の仕事が天職のようです。

「協力隊の先については、実はまだ分かりません。両親も10年前くらいから『オーストラリアに戻っておいでよ~』とは言っているんです。だけど、僕が幸せなことが両親の幸せでもあるって言ってくれていて、寂しいけど応援してくれています。だからクリスマスには連休を取って帰るようにしていますよ。地元に帰ると友達には『北海道の田舎にいる』って言うとビックリされますけどね(笑)。でも僕のお父さんにも浦臼町のFacebookをフォローしてもらっていて、こうやって活動している様子を海外の人や両親にもわかってもらえるのがいいところですし、これから活用できたらとも思っています。まだまだやりたいことがたくさんあるので、任期の間は浦臼町での暮らしを満喫したいですね」

jonathan_urausu12.jpg家でも趣味を存分に楽しむジョナサン

取材した際は浦臼町の地域おこし協力隊となりまだ1年も経っていないのですが、もう既に浦臼町に馴染みその生活を楽しむことができている様子をうかがうことができました。

ジョナサンは協力隊の仕事をしながらも、今年の1月からまた教育に関する通信制の大学院の講義を受けているそうです。勉強熱心で「英語を教えることが好き」、そして「田舎で暮らすことが好き」という情熱を持つ外国の方の視線から見た浦臼町での田舎暮らしの魅力は、国境を越えて少しずつ伝わっていくに違いありません。

jonathan_urausu11.JPG浦臼町民の語学力アップに一役買っているジョナサンでした。

浦臼町地域おこし協力隊 Jonathan Jenkins(ジョナサン ジェンキンス)さん
住所

北海道樺戸郡浦臼町字浦臼内183-15

電話

0125-68-2111


「田舎暮らしが大好き!」オーストラリアから浦臼町へ

この記事は2018年10月29日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。