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北海道で暮らす人・暮らし方
初山別村

初山別の農業と地域づくりの担い手に。20180101

初山別の農業と地域づくりの担い手に。

人口約1,200人の村に35歳で移住した男性。

初山別村は、北海道の北西、日本海側に面した留萌管内中部に位置するまち。石狩市や稚内市へと続く道路オロロンライン沿いに広がり、漁業も農業も盛んです。ここ最近、人口わずか1,200人ほどの小さな村に子どもたちや地元のお母さん、ご年配など多世代の元気な笑顔が集まるスペースがオープンしました。その名も「繋小屋(つなごや)」。この施設を運営する一般社団法人「マッチワークス」の代表が佐古大さん、現在39歳。初山別とは縁のない地から35歳のころに移住してきた一人にして、新規就農のために農業研修を受けている真っ最中でもあります。

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ふと見た地域おこし協力隊の募集ポスターがUターンの決め手。

佐古さんのご出身は札幌で、高校卒業までの時間を過ごしました。

「東京の大学に進学し、建築構造を専攻しました。もともと北海道が大好きなので、就職は道内で...と思っていましたが、当時はいわゆる超氷河期。求人数自体も厳しい中でUターンは叶いませんでしたが、幸いにも本州の大手電力会社から内定をいただきました」

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佐古さんは在任中、原子力発電所建物の保守や新設の仕事も担当。原子力発電所が置かれるのは地方のまちで、地域住民と接するうちに人の温かさやゆったりとした時間の流れにあこがれを抱くようになりました。

「新潟の赴任先では田植えを手伝わせてもらったこともあります。以来、農業に携わってみたいという気持ちはあり、故郷の北海道へも戻りたいと思いながらも一歩を踏み出せず...。モヤモヤしているところ、電車でたまたま見かけたのが初山別村の地域おこし協力隊を募集するポスター。『コレだ!コレならまず地域にとけ込めそう!』と思ってすぐに書類を送りました。あの...正直なところ、何をするのか分からなかったんですが(笑)」

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思い切ったアクションからわずか数カ月。佐古さんは北の大地にUターンし、2014年から初山別村の地域おこし協力隊としてまちの暮らしをスタートさせました。

小さな村にコミュニティカフェと子どもたちの塾を。

当時の初山別村の地域おこし協力隊は、明確なミッションが与えられるというよりも、まちのために自ら考え、地域の声を拾い上げた上で活動するスタイル。佐古さんが隊員となったころは、村民と一緒に手芸が得意な人の講座を開いたり、廃校を活用したイベントを実施したり、村内の交流を深める企画に取り組むことが多かったといいます。

「大きな村ではないので、当然みなさん顔見知りだとばかり思っていたのですが、初山別は人が集まる機会がそれほど多くなかったようで、イベントを通じて『初めまして』的な村民同士の交流が意外にも多くありました。僕ら地域おこし協力隊の企画をきっかけに、ご年配の方同士の外出やママ友のふれ合いが増えていったと聞くとうれしかったですね」

machworks_shosanbetu_5.jpg繋小屋で販売している村民の方の手芸作品。実にカワイイ!

一方で佐古さん自身は、初山別に住み続けようと決めていたことから、村にとけ込むための人脈づくりにも力を入れていました。とはいっても、まちの人々から見れば、都会から来たいわゆる「新参者」。苦労はなかったのでしょうか?

「地方はクローズドで多少のストレスがあるかと思っていたけれど、まったくもってゼロ。僕は人に対して積極的に話しかけるタイプじゃないんですが、むしろ『どんなヤツが来たんだ?』『村を案内するか?』と声をかけてもらえて。都会のように自ら訴えかけずとも輪が広がっていったので、自分にとっては助かりました」

machworks_shosanbetu_6.jpg現・地域おこし協力隊の男性とお話しする佐古さん。

地域おこし協力隊として活動すること約二年。初山別村でコミュニティカフェをオープンするための動きが始まりました。村の暮らしと人々が大好きになった佐古さんは、農業に加えて移住促進や地域活性化でも貢献したいと考えていたとか。まさに渡りに船。2016年には、自ら代表となって「一般社団法人マッチワークス」を設立しました。

machworks_shosanbetu_7.jpgカフェのスタッフと談笑中。

「コミュニティカフェ『Tailwind(テイルウィンド)』に加え、村からの受託事業として『自由学習空間オルタナ』を主に運営しています。初山別の親御さんは教育に熱心な方が多く、学校以外にも勉強を教わる塾がほしいというニーズが高かったんです。週に1回コース、2回コースのような形で、子どもたちの分からないことに応えたり、勉強の仕方を教えたり。素直な子ばっかりですから、笑顔を見ているだけで元気をもらえます」

machworks_shosanbetu_8.jpg子どもが大好きな佐古さん。夏は農家、冬は塾講師という北海道の新しい農家さんのあり方になるかもしれません。

今は地域おこし協力隊のほか、カフェでは専門のスタッフも働いています。佐古さんは初山別村に新しいスタイルの雇用も生み出したというわけです。

村の手厚い就農支援制度が農業の夢を後押し!

佐古さんは初山別村の新規就農制度を利用して農業研修(1〜2年)を受けているところ。見ず知らずの人が突如として農業にチャレンジするよりも、地域おこし協力隊の3年間で村民との関係を深められたことが、親方(研修受け入れ先の農家)がすんなりと研修を引き受けてくれた理由ではないかと微笑みます。

「ウチの村は研修支援資金に加えて、住宅料などの助成も充実していることから新規就農のサポートはかなり手厚いほう。しかも、いざ就農となる際にネックになりがちな農地取得についても、受け入れ先が支援してくれるんです。こんなに破格の条件がそろっているのも、農家の後継者不足や離農地の維持が村全体の課題だからだと思います」

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佐古さんが目指すのは稲作農家。日々の研修の中で技術や知識が不足していると痛感する反面、農作業自体は「今はまだ親方に頼ってばかりですが、思った以上に体力的にはキツくない」と感想を漏らします。農作業は毎日が重労働というイメージを持たれがちですが、農業機械をいかに上手く使うかがポイントなのだそうです。

「農業とマッチワークスの仕事で、冬の農閑期も含めて年間を通して稼げるようになるのが理想的です。地域の方は特に冬場の仕事がないと言いますが、単発の仕事を含めれば実は働ける場はたくさんあります。その都度さまざまな方と関わることもできるので、面白いですよ」

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オロロンライン沿いに広がる険しくも雄大な風景。

初山別にはスーパーこそないものの、コンビニや移動販売もあることからふだんの買い物には困らず、暮らしに不便を感じたことはないと佐古さんはいいます。仕事や日常生活だけでなく、余暇も充実していると言葉を継ぎました。「野球やバレーボールといった村内のスポーツ大会に出るのも楽しみの一つです。他にも近隣のまちへ出かけ、苫前の町民劇に参加したり、遠別で和太鼓を叩いたり、村内外の交流も視野に入れつつ、多くの人との時間を楽しんでいます。あと、今日は何もないという日に家で飲むビールは格別(笑)」と表情を緩めます。

佐古さんが取材の締めくくりに連れて行ってくれたのは「しょさんべつ天文台」のある「みさき台公園」。海と星空のロマンチックな組み合わせを眺めるのも好きだといいますが、それ以上に見せたい景色があると先を歩いていきました。すると、目の前に現れたのはオロロンライン沿いにどこまでも続く断崖絶壁。あまりの雄大さに言葉を失ってしまいました。

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「実は初山別に移住する前、ドライブでこの公園に来たことがあるんです。オロロンラインは平坦な海沿いのイメージがありますが、こんなに切り立った自然の造形を眺められるのはあまり知られていません。思い出の中の風景を見ながら、ココでボーッと過ごす時間がお気に入りなんです」

新規就農を果たしながら、「一般社団法人マッチワークス」の事業を軌道に乗せるのはこれからのこと。佐古さんの眼前に広がる崖のように道は険しいと思いますが、だからこそやりがいにあふれ、その先にはきっと青空のように晴れやかな日々が待っていることでしょう。

一般社団法人マッチワークス
一般社団法人マッチワークス
住所

北海道初山別村字初山別102番地1 繋小屋

電話

0164-67-2717

URL

http://match-works.wixsite.com/matchworks/

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初山別の農業と地域づくりの担い手に。

この記事は2017年10月25日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。