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苫前町

新しい漁業の在り方を模索する苫前の漁師。20171109

新しい漁業の在り方を模索する苫前の漁師。

これからのまちの漁業を引っ張る28歳の若者。

苫前町といえば日本有数の好漁場といわれる武蔵堆(むさしたい)をごく近くに控えるまち。港にはたこやカレイ、えびなど数多くの魚介が揚がり、ホタテ稚貝・半成貝の養殖も盛んです。けれど、漁師の高齢化や後継者不足はほかの地域と同様に深刻な課題として影を落としています。「小笠原漁業部」の小笠原宏一さんは28歳の若き漁業者。北るもい漁協苫前支所の青年部部長であり、留萌管内の漁協青年部の副会長として、この状況を打破しようと奮闘中です。

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父のケガから漁師へと舵を切った高校3年生の夏。

高校生のころはラグビーに熱中し、大学でも続けようと思っていた小笠原さん。ゆくゆくは教員を目指そうと将来を思い描いていた高校3年生の夏、突如として人生の転機が訪れます。漁師のお父さんが漁の最中に大きなケガを負ってしまったというのです。

「父は仕事が続けられるかどうか危ぶまれるくらいの状態でした。教員の道も捨てがたかったんですが、家業を絶やす=漁業権まで放棄するのはやっぱり心苦しくて。葛藤に葛藤を重ねて、漁師の道へと舵を切ることに決めました。幸い、父は漁に復帰できるくらい回復したんですけどね」

小笠原さんは漁業後継者の育成を担う鹿部町の漁業研修所に通い、基礎的な知識や技術を学びながら、小型船舶操縦士と漁業無線の免許を取得。「ちなみに苫前を出た経験はこの研修の半年間くらいです」と笑います。

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「まずは父と一緒に漁に出ましたが、不安だし、覚えなければいけないことは一杯あるし、足手まといだと感じるくらい何もできませんでした。最初はうれしそうに教えてくれていたのに、次第にイライラされて意見がぶつかり合っちゃったり(笑)」

それでも小笠原さんは持ち前の負けん気で、カレイやヒラメの刺し網漁、たこの獲り方を身につけていきました。そして漁に出てから3年目、晴れて漁業組合の組合員となり漁業権も取得。お父さんからは、船外機や道具一式をもらって独立を果たしたのです。

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たこの樽流し漁に見出だす、付加価値の高い獲り方。

苫前の漁港には20代の若手が少なく、ホタテの養殖に携わる人を含めても総勢3名。北るもい漁協苫前支所の青年部部長の小笠原さんにとっても、若手の新規参入をいかに支援していくかに頭を悩ませています。

「漁業権を得られるかどうかは港によって大きく異なります。苫前の場合は閉鎖的というワケでは決してないけれど、今のところはまずこのまちに住み、90〜120日は乗り子(雇われ船員)として働かなければ組合員になれません。漁業権を得られるチャンスはあるんですが、ハードルが低いとはいえず...。自分としては漁師の魅力をもっと伝えて、担い手を増やしたいと考えています」

小笠原さんは沿岸漁業に出る場合、朝の2時に港を出発し、網にかかった魚とともに戻ってくるのは朝の5時。それから出面さん(パートさん)と一緒に昼の3時くらいまでは網を外すなど丘の作業にあたります。ここ最近メインとしているたこの漁は朝の5時から始まり、一通りの作業が完了するのは夕方過ぎです。

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聞く分にはハードに思えますが、シケの日は網や道具を直すなど、比較的ゆったりと働けるそうです。何より、小笠原さんの言葉を借りるなら、「働く時はガッチリ働いて休む時は休み、自らの腕一本で稼ぐこと」は、やりがいがたっぷりだとニッコリ。

「僕ら漁師にとって最も怖いのは獲れないこと。なので、最近は漁獲量が少なくても食べていけるよう、漁獲物の付加価値を高める取り組みを進めています。僕が着目しているのはたこの樽流し漁です。これはたこだけを効率的に漁獲する自然にやさしい漁法で、樽といわれる仕掛けは一度に15個までしか投入できない決まり。乱獲を防ぎ、未来に水産資源を残すという『獲り方』に価値を見出だしてもらい、たこ1匹の価格を上げられないか模索しているところです」

ogasawaragyogyou_6.JPGこれはたこ箱といわれる仕掛け。たこの習性上、自ら穴の中に入ってくるのだそうです。

このプロジェクトには協力者も現れ、実現に向けて動き始めているそうです。漁師の負担や不安を減らしながら稼ぎはそのまま。そんな漁業の新しい在り方に期待が高まります。

苫前の魅力とあたたかさを子どもたちへ。

小笠原さんは漁師の仕事だけでなく、子どもたちに漁業や農業を通してふるさとの魅力を伝える活動にも積極的。5年ほど前からは、まちの小学生を対象にした夏休みの体験事業「とままえ GENkids」の実行委員も担当しています。

「昨年は子どもたちと一緒にキャンプを楽しみながら、食の大切さを知ってもらったり、リーダーシップの術を学んでもらったり。苫前は山のものも、海のものもおいしくて、最高の暮らしができる場所なんだって思ってもらいたいんですよね。例え都会に出て上手くいかなくても、僕ら上の世代はいつでもあたたかく迎え入れるんだってことも常日頃から伝えています」

ogasawaragyogyou_7.JPG子どもたちへの社会教育を一緒に行っている西さんとのツーショット。

海のようにどこまでも広い心を持ち、ふるさとの未来を見つめる小笠原さん。こんな若者が頑張っているなら、次世代を担う若手漁師も、地元に残りたいという子どもたちもきっとたくさん現れますよ!

小笠原漁業部
住所

北海道苫前郡苫前町字苫前

電話

0164-68-7924

URL

https://www.facebook.com/profile.php?id=100010745807275

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新しい漁業の在り方を模索する苫前の漁師。

この記事は2017年8月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。