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「ナニナニ製菓」はパンとお菓子と西胆振の無限の可能性を秘める20170914

この記事は2017年9月14日に公開した情報です。

「ナニナニ製菓」はパンとお菓子と西胆振の無限の可能性を秘める

無農薬・オーガニックの安全安心な食材で作るパンとお菓子が人気の「ナニナニ製菓」。東京で暮らしていた庭山さん夫妻が、西胆振の素晴らしい食材と出会い、その魅力を広めたいと始めたお店です。

店を開いて2017年で3年半、これまでの歩みと、これからの夢を、客足が途絶えないお店にお邪魔して聞いてみました。

西胆振に感じた『無限の可能性』

naninani_seika4.jpgレトロな雰囲気の外観が室蘭のまちに溶け込みます


室蘭の繁華街、中島町の小さな商店街にある「ナニナニ製菓」は、室蘭出身の庭山貴行さんと、東京出身のなをさん夫妻が2013年に開いた、体に優しいパンとお菓子のお店です。気になる店名の「ナニナニ」はアイヌ語で「そのまま・ありのまま」という意味。アイヌ民族史専門家に「そう解釈しても良い言葉」だと確認をもらい、この名をつけたと言います。

そんなナニナニ製菓の店に並ぶのは、ふわふわモッチリで香り豊かな道産小麦パンや、ほぼ日替わりというマフィンにスコーン、季節のタルトなど。化学調味料や人工甘味料、香料、保存料は不使用で、できるだけ無農薬、オーガニックの体に良い食材を使い、さらに野菜や果物などは近郊の農家を直接まわって旬のものを仕入れています。

naninani_seika8.jpgたくさんの種類が並びます

また、製鉄で栄えた室蘭らしいお土産をと、室蘭工業大学と共同開発した「鉄の素クッキー」も人気で、2017年4月には同商品が日本ギフト大賞の北海道賞を受賞しました。

東京で働いていた貴行さんが地元で起業すると決めた時、友人のほとんどが反対したそう。それでもUターンを決意したのには、貴行さんが育った室蘭・西胆振エリアの食材に、無限の可能性を感じたからでした。

東京暮らしの中で気づいた故郷の恵まれた環境

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貴行さんは、高校卒業後に「広い世界を見たい」と東京へ。大学生の時にはノンフィクション作家を夢見て、まずは出版社の仕事を経験しようとスポーツ系出版社の編集部で働きます。その後、IT企業のコンテンツ制作や編集などの仕事を経て、大手フィットネスクラブに転職。マーケティングや広報を担当します。

「色々と勉強になる職場でやりがいもあったのですが、その頃にはもう、独立を考えていました」と貴行さん。

きっかけはふたつ。
ひとつめは、子どもが生まれたことで、パティシエをしていたなをさんが、子どもに安全安心なものを食べさせたいと、オーガニック・無農薬といった食材に注目するようになったこと。

ふたつめは、東京ではなかなか手に入らなかったり、高値がついているそんな食材が、室蘭やその周辺では比較的簡単に手に入るのを知ったことです。

「帰省した時、この辺りって、野菜に果物、魚、肉、乳製品となんでもあるなど。それも全国レベルの質の良いものが、と気づいたんです」。

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人づてに生産者を紹介してもらう中で、こだわりや情熱を持って野菜を作っていることも知りました。

西胆振の食材の魅力を発信したい。生産者の努力や食材のおいしさを、ちゃんと評価してもらいたい。でも、どうすればいいのか。

その答えのひとつが、地元室蘭に「ナニナニ製菓」を開いて、西胆振の食材で作られたパンやお菓子をきっかけに、この地域の食の魅力を知ってもらうことでした。

店を始めるにあたって、料理に詳しくなければならないと貴行さんはフードライターに転職。
「3年ぐらい、色々な店を取材でまわりました。いい勉強になりましたね」と笑う貴行さん。

いざ、移住。そして、開業。

独立して店を開くにはパティシエである、なをさんの協力は欠かせません。もともと地元が北海道ではないなをさん。東京から移り住み、自分の店を持つことに不安はなかったのかと聞くと、「可能性があるならやってみたい!と思いました」とニッコリ。
「車で30分も走れば畑に行けて、野菜や果物が手に入るんです。作り手にとっては夢のような環境ですよ」となをさんは話します。


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そんなお二人は、室蘭の地に移住するにあたり、じっくりと事前に準備を始めていたと言います。
「移住に関しては、3〜4年前から準備を始めていました。家探しなどの実務的なことはもちろん、室蘭にどれくらいパン・お菓子のお店があって、人口比は東京とどれくらい違うのかなど、マーケティングリサーチ的なことも時間をかけて行いました。起業に関しては、行政や商工会議所などで行っている独立支援や助成金をしっかり調べて、利用しました。書類の準備などは大変ですが、金銭的なリスクを減らすために必要だと思います」。

また、移住してきてからも地域の人たちとの関わりを積極的に図っているようです。
「地域の会合などに顔を出して、町内のための役職や仕事は、できるだけ受けるようにしています。40代は上の人と下の人をつなげる重要な世代なので、照れたり遠慮したりせず、どんどん関わっていくようにしています」。
このようにして、室蘭という地に溶け込んでいき、そしてナニナニ食堂がこの地で愛されるようになっていったのでしょう。

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ナニナニ製菓、次のステップを踏み出す

生産者から店へ、店から消費者へ。食材が地域でしっかり循環することで、生産者の励みにもなり、消費者も幸せになる。「その橋渡しにナニナニ製菓がなれたら」と貴行さんは言います。「西いぶりファーマーズマーケット」などの産直イベントを主催するのも、そんな思いから。


店を開いて3年余り、今年は次のステップへの準備を始めるため、2017年7月末から10月2日まで長い夏休みを取るそう。
「まずは、いまの店の近くに移転する予定なのでそのことを。それから西胆振の食材で、国内だけじゃなくて、アジアなどの海外にも打って出たいので、色々な展開を考えていきます」と、力強く話してくれた貴行さん。

小さなお店の大きな挑戦は、これからも続いていきます。

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ナニナニ製菓 庭山貴行さん・なをさん
ナニナニ製菓 庭山貴行さん・なをさん
住所

北海道室蘭市中島町1丁目38-5 1F

電話

0143-83-6854


「ナニナニ製菓」はパンとお菓子と西胆振の無限の可能性を秘める

この記事は2017年7月26日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。