
太平洋に開けた十勝南端のまち広尾町。
毛ガニを茹でる真っ白な水蒸気が、氷点下を大きく下回る空気の中に溶けていきます。ここは十勝南端のまち広尾町に位置する十勝港。今日はこのまちの目玉イベント「毛ガニ祭り」の開催日です。早朝から多くの観光客が行列を作る中、会場の中を忙しそうに走り回る男性が。広尾町の地域おこし協力隊のメンバーとして働く土本義和さんです。
豊かな環境の中で生きてる実感を味わいたい。
広尾町は、水産業が盛んなこと、さらにノルウェーの首都オスロ市から正式にサンタランド認定を受けていることでも知られるまち。義和さんは2年ほど前の53歳の時にここへ移住、現在は町役場に籍を置き、まちおこしに関するさまざまな仕事に取り組んでいます。 「実は若い時分から、広尾はなじみのまち。年に何度も足を運んでいたんです」 その理由はなんとサーフィン。広尾町は知る人ぞ知るサーフィンのメッカ。義和さんは20代の頃から、玄人好みの大波を楽しむために広尾の海に足繁く通っていたのです。 「もちろんその時は、将来移住するなんて考えていませんでしたけれど(笑)」
ご出身は札幌。前職はIT業界に属し、大手企業のSE職や社員教育のコンサルティング担当など、ビジネスの第一線で働いていました。しかし年齢を重ねるにつれ、次第に心の休まる環境の中で自分らしく働きたいという思いが募るようになったとか。 「そんな中、妻から広尾町で地域おこし協力隊の募集をしている、という話を聞いたんです」 まさに渡りに船。しかもその町は若い頃からよく知っていた広尾町。さっそく義和さんはその募集に応募します。 「ちょっと年齢は上だったけれど、やる気では負けないって思ってました。町長も応援してくれたし」 2015年9月にはそれまでの仕事を退職。その2カ月後に義和さんは広尾町へと移住しました。
同じ水産商工観光課に所属する横山幸大さんと。
家族の思いがひとつに...「広尾町で暮らそう」
ここでインタビューのマイクは奥様のひろえさんへ。ご主人の広尾町への移住の直接のきっかけを作った張本人です。 ご出身は義和さんと同じ札幌。札幌市役所に約20年ほど勤務した後、そこで培った教育指導などのノウハウを活かすべく、フリーのセミナー講師に転身。経営者向けのコーチングからPTAを対象とした親子コミュニケーションなどの講座を全道各地で行うようになります。
「そんな取り組みのひとつが、町民の中からまちづくりの担い手を育てるために、町長が塾長となって開講した『ひろお未来塾』。私はその講師としてお声がけいただきました」
それがきっかけで何度か広尾町に足を運ぶようになったひろえさんは、次第にこのまちに魅了されるようになっていきます。「食べ物がおいしくて、景色が美しくて、空気がきれいで、騒々しくなくて、優しい人がたくさん暮らしていて...。来れば来るほど好きになる、そんな感じでした」
こうした最中に耳にしたのが、広尾町の地域おこし協力隊の募集の話。ここから先は前述のとおり。ご主人の義和さんは仕事を辞め広尾町へ一足先に移住。その後、息子さんの中学卒業を待って、ひろえさんも息子さんと一緒に広尾町へ。2016年春から家族3人の暮らしがスタートしたわけです。
新しい故郷に貢献できる人生を送りたい。
義和さんの肩書はブランド化マネージャー。 「広尾町の特産物や観光資源を、町外に広くアピールしていく仕事です」 取材にうかがったのは昨年の12月。サンタランドのイルミネーションがまばゆく輝き、さらに広尾町の目玉イベント「毛ガニ祭り」が開催されるなど、まち全体が盛り上がる時期。義和さんのケータイも忙しそうな着信音を奏でていました。
「Facebook等のSNSを駆使してPRしたり、町外の物産展で販売をサポートしたり、サンタランドの取り組みを応援したり。自分ができることは何でもしています」 奥様のひろえさんは、以前と同様セミナー講師として町内外を駆けまわる日々。空いた時間はご自宅の居間をサロンとして開放し、近隣住民の相談に乗るなどの活動にも取り組んでいます。
お二人共に、給料は以前に比べ大幅減に。それでも移り住んでよかったと二人が口を揃えるのは、このまちに心の底から魅了されたから。「広尾町の土地に大きな魅力と可能性を感じています。収入は確かに減りましたが、同じように食費や住居費、交際費などの支出も減ったので気にはなりません。この先も住民の皆さんとともに、豊かで穏やかな暮らしを営んでいきたいです」と義和さん。「移住してすぐに友だちを作ったり、野球部に入部するなど、息子がこの町に引っ越してよかったと言ってくれたのがうれしい」とひろえさんも笑顔を見せます。
広尾町への貢献が使命という、地域おこし協力隊の任期は3年。しかし義和さんも家族もすでにこの町の永住を決めています。 「この町は自分たちにとっての新しい故郷になるはず。たとえ協力隊の任期が終わっても広尾町に貢献できる存在であり続けたいと思っています」
- 広尾町役場
- 住所
北海道広尾郡広尾町西4条7丁目1番地
- 電話
01558-2-2111
- URL