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北海道で暮らす人・暮らし方
大樹町

編集長として、母として見るまちの姿。20161226

この記事は2016年12月26日に公開した情報です。

編集長として、母として見るまちの姿。

たった一人でローカルマガジンを制作する女性。

ノートとペンを手にまちの人をつぶさに取材し、時に首から提げたカメラで良い表情をパチリ。自身のメモから原稿を書き起こし、撮影写真をレイアウト。神宮司亜沙美さんは、大樹町の地域おこし協力隊としてローカルマガジン『ソラユメ』を制作する、ライター兼カメラマン兼デザイナー兼編集長です。しかも、家庭では子育てにも奮闘中。ふだんは取材する側の彼女に、まちの暮らしぶりや魅力について取材しました。

思わぬ一言から故郷へのUターンを決意。

神宮司さんは大樹町のご出身。畜産農家を営む両親のもとに生まれ、命を育み、そして命をいただく環境をすぐそばで見て育ちました。中学卒業後は釧路市の高専で情報工学を学び、就職のために上京。地元が好きだったことから、最初はすぐに戻ろうと考えていたそうです。
「東京では高専で学んだプログラミングを生かし、スマホの開発やWebサイトの構築といった仕事に携わっていました。ただ、企画やお客様との折衝も任されてやりがいを感じていましたし、向こうで結婚もしたので帰るタイミングを上手くつかめずにいたんです」
周りの友人もマンションや一戸建てを購入し始め、人生プランを固め出したころ。そろそろ自分たちも東京に根を張るべきでは、と半ば諦めかけていた大樹町での暮らしは意外な一言から実現したのです。

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「実は夫のほうから北海道で暮らしてみないかと提案があったんです。当時はちょうど子どもが1歳。保育園に預けようと思っていましたが、都内は待機児童が多くて激戦区なんです。だったら大樹町に戻り、気持ちに余裕を持って子育てしたほうが良いんじゃないかって」
平成27年、神宮司さんは勤めていた会社を退職し、家族で大樹町にUターン。待機児童の多い東京の感覚から焦って保育園の手続きに行ったところ、「まだかなり空きがあって肩すかしを食らった感じ(笑)」と笑います。

まちの人に、まちのことをもっと知ってほしい。

実は、神宮司さんは大樹町にUターンする前、ある不安ごとを抱えていました。地方では働く母親をサポートする制度がまだ完璧に整っていない企業も多く、子育てと仕事の両立が難しいのではないかという悩みです。
「東京にいる時に地域おこし協力隊という制度を知り、Uターンする半年ほど前、大樹町長に『来年地域おこし協力隊を募集してください』とお願いしたんです。自分が生き生きと働ける職場を見つけるのではなく、自分でナリワイをつくり出していこうと考えて。そんな思いを汲み取っていただけました」
大樹町の地域おこし協力隊に課せられるのは、自分でやりたいことを決めて取り組む「フリーミッション」。神宮司さんは、まず自分自身がまちのことを知らなければならないと考えました。

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「私が感じたのは地元の人が意外と大樹町の良さに気づいていないということ。東京に出て『ヨソ者の視点』が身についたおかげでしょうか、まちには美しい風景やおいしいものがあり、何よりすてきな人がたくさんいるんだという価値がハッキリと見えてきました」
大樹町のことを外に発信する前に、神宮司さんをはじめまちの人がまちの魅力をもっともっと知る必要がある。そう考えた彼女はローカルマガジン『ソラユメ』の制作に乗り出しました。

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都会では考えられない豊かな環境で子育てを。

早朝4時からワカサギ釣り場の管理人への密着インタビュー。クマの一斉駆除の現場。真冬にスケートリンクを造り整える仕事。飲食店や一般企業だけでなく、神宮司さんはまちの知られざる魅力を伝えようとハードな取材も数多くこなしています。
「あくまで第三者の視点から働く人の葛藤や苦悩までピックアップし、まちの人に知ってもらおうというのが編集方針。田舎の人は奥ゆかしくて恥ずかしがり屋さんが多いけれど、いざ掲載されると『励みになった』とか『周りの人の反応がうれしかった』とか心境に変化が生まれているんです。まちのクローズドな雰囲気が、ほんの少しだけオープンになってきたという感触がありますね」

taiki_sorayume_005.jpg「ソラユメ」のつくる人特集でお菓子屋さんに取材中。

神宮司さんはバリバリ働くかたわら子育ても両立。子どもの一時預かりや中学卒業まで医療費無料といった一般的な子育て支援制度はそろっていますが、母の視点から見たまちはどう映っているのでしょうか?
「わが家はマチナカから少し離れた保育園に子どもを預けていますが、少人数でアットホームな雰囲気の保育園は田舎ならでは。近所の人たちも自分の孫や子どものように可愛がってくれます。何より、子どもがカブトムシやクワガタをとってきたり、家の周りで土遊びをしたり、東京では考えられないくらいの自然豊かな環境に満足しています」

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教育面に関しては町内に高校があり、その先の進学もITを使って海外の大学の授業を遠隔で受けるなど、今の時代なら地方に暮らしていても不安はないと微笑みます。順風満帆なUターンに思えますが、地域おこし協力隊の任期が終わったあとも『ソラユメ』を発行し続けるかは悩みどころなのだとか。
「まだ『ソラユメ』の事業で収入は得られないと思いますし、自分でナリワイを生み出すための足掛かりもつかめていません。まだまだ頑張らなくちゃ」
神宮司さんのパワフルな行動力があれば、きっとナリワイを作り出せますよ!

大樹町地域おこし協力隊
住所

北海道広尾郡大樹町東本通33 大樹町役場 企画商工課

電話

01558-6-2114

URL

http://www.town.taiki.hokkaido.jp/


編集長として、母として見るまちの姿。

この記事は2016年10月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。