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白老町

やさしい人が集まる温かな場所。地域密着の福祉事業を行う天寿会20241219

やさしい人が集まる温かな場所。地域密着の福祉事業を行う天寿会

北海道の南西部に位置し、海、山、森がそろう自然豊かな白老町。約1万5000人が暮らしています。白老牛や虎杖浜たらこなど全国に誇れるおいしい特産品、国立アイヌ民族博物館を有するウポポイ(民族共生象徴空間)がある町としても知られています。太平洋に沿って東西に長く伸びた町の西側、登別市寄りの竹浦地区に、町の福祉を支える「社会福祉法人 天寿会」の本部や主要な各施設があります。

今回は歴史ある同法人へおじゃまし、法人の歩みや現在のことを伺いました。また、移住してきた職員の方や再就職したという方に白老での暮らしも合わせて、働き方などを語ってもらいました。

開設から55年。長い歴史の中で育まれてきた地域との連携や温かな法人の雰囲気

白老町の市街地から海沿いに続く国道36号(国道235号)を西へ向かうと、右手に社会福祉法人天寿会グループの施設が立ち並ぶのが見えてきます。この広い敷地内には、グループの本部のほか、障がい者支援施設の「北海道リハビリテーションセンター」とその療護部、診療所、介護療養型の介護老人福祉施設「そよ風の里」、特別養護老人ホーム「北海道リハビリテーションセンター特養部」「友活の里」、通所介護の「リハビリデイセンター」、居宅介護支援事業所があり、すぐそばには認知症対応型の高齢者グループホーム「いたどり」もあります。

まずは法人について、理事であり、事務次長を務める工藤直樹さんに話を伺いました。

tenjukai_05.jpgこちらが、事務次長を務める工藤直樹さん。

「設立の背景としましては、昭和43年に設立認可を受けて、翌年ここに重度身体障がい者の更生援護施設として北海道リハビリテーションセンターを開設しました。もともと、札幌の医師が脳卒中や事故などの後遺症に対して医学的なリハビリが必要だと考えて作ったと聞いています」

当時、医療と福祉が連携したこのような施設は全国でも珍しく、先駆けだったそうです。その後、地域のニーズに応える形で特別養護老人ホームやデイサービスセンターの開設などを行い、白老町内では一番規模の大きい社会福祉法人となりました。

「天寿会の強みや特徴は、まずは白老という地域にしっかりと根差している点。利用者の方はもちろん、そのご家族とも密接な関係を築かせていただいています。そのため、それぞれのニーズに応じた柔軟な対応も可能で、これが地域社会の福祉向上に貢献していると思います。あと、障がい者支援、高齢者介護など、多岐に渡る福祉サービスを提供している部分も挙げられます。さらに、地域に根差している部分にも繋がりますが、地域の医療機関やほかの福祉施設とも連携を取り、包括的なケアを行っているのも大きな特徴と言えます」

tenjukai_03.jpgスタッフ同士の温かな笑顔と会話が、利用者さんへの安心感につながっています。

また、より良い福祉サービスの提供に欠かせないのが現場の職員の存在です。やりがいや働きがいを持って仕事に取り組める環境整備にも力を入れているそう。「うちの法人の職員は、本当にやさしくて純粋に福祉と向き合っている人ばかり。上や下に関係なく、利用者さんのことを第一に考え、利用者さんのために何がベストかをみんなで考えているので、意見も言いやすいし、風通しもいいと思います」と工藤さん。実際に現場で活躍しているスタッフの声はのちほど伺うことにしますが、5年前に転職してきた工藤さんも、「みんなやさしくて、温かい職場だなと感じました。これは、長い歴史の中でこういう風土が培われてきたからなのかなと感じている」と話します。

いかに働きやすい環境かを表しているのが、職員の定着率の高さ。「定年まで勤めあげる人が多く、70歳を超えても現役で働きたいと言ってくださる元気な方もいるくらいです」と工藤さん。

「市街地から離れていますし、立地がいいというわけではないのですが、これだけ長く働きたいと言ってくれる方がいるのは、温かい雰囲気で、働きやすいからなのだと思います。一度外に出てみて、やはりここでもう一度働きたいと言ってくれる方も結構多いですし、ご夫婦で働いている方も多いんですよ。定着率の高さは、職場の雰囲気だけでなく、休みのことや待遇、制度のことなど、労働環境の整備をコツコツ行ってきた結果もあるかもしれません」

tenjukai_15.jpg社会福祉法人天寿会の基本方針は、利用者と共に歩み、笑顔と安心を提供すること。

理念に共感し、単身赴任で白老へ。質の高いサービス提供と職員の働く環境整備に尽力

2019年に転職してきたという工藤さん、現在は事務方として財務などを担当。もともとは札幌の社会福祉法人で同じく財務系の仕事をしていたそう。転職のきっかけを伺うと、「今の理事長が掲げている法人理念に強く共感したのと、地域密着でいろいろな取り組みを行っているのを見て、ここで自分も仕事がしたいと思い、転職することに決めたんです」と教えてくれました。

その法人理念とは「利用者と共に歩み、笑顔と安心を提供します」というもの。「温かい思いと人間味が伝わってくる理念だなと思いました。利用者の方、1人ひとりの幸福と安心を大切にしているのがよく分かりました」と工藤さん。

さらに、経営理念は、「利用者家族のニーズに基づく、専門的で利用者本位のサービスを提供すること」「利用者が自らの能力を活用できるよう自立を支援すること」「関係機関との連携を密にして、地域医療・福祉・介護に貢献すること」「社会福祉法人としての社会的責任を自覚し、関連法令を遵守すること」「経営の安定した明るい職場をつくること」の5つ。これに則ってきちんと運営を行っている点も、工藤さんが天寿会で働きたいと思った理由のひとつだったそう。

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「人も事業所も多い札幌だとなかなか地域密着で福祉サービスに取り組むのが難しい部分もあり、自分の中でジレンマもあったんです。でも、ここは地域にしっかり根差してサービスを提供しているし、職員の働きやすさもしっかり考えている。ここなら自分が理想とする仕事ができるのではと感じ、単身赴任でこちらへ来ることを決意しました」

財務を中心に運営管理に携わり、今や法人の中核として活躍中の工藤さん。「中長期的な事業計画としては、利用者さまの安心と安全を最優先に努め、そのご家族にも安心していただけるよう環境を整備。食事や余暇活動も含めて、より質の高いサービスを提供できるようにと考えています。そのために、職員の育成研修の強化やスキルアップも図っていきたい」と話します。「計画を推進するには、経営の安定化も重要」と続け、IT化や介護ロボットの導入など、業務の効率化も進めていきたいと考えているそうです。

工藤さんの単身赴任生活もすでに5年。週末は札幌へ戻るという生活を送っているそうですが、「白老はごはんもおいしいし、温泉が充実しているのがいいですね」と話します。冬場は雪が少なく、気候の良さも気に入っているそう。「子育てがひと段落したら、妻もこっちに来てもいいかなと言ってくれているんです」とニッコリ。

tenjukai_02.jpg『天寿会で残りの人生を全うしたい』と語る工藤さん。その表情には、天寿会への安心と信頼がにじみ出ています。

障がい者支援も高齢者介護も行う大きな法人。チューター制度で安心して仕事に取り組める

さて次に、実際に現場で働いている職員2人に話を伺っていきましょう。一人目は、本部から離れた白老町の市街地にある特別養護老人ホーム「寿幸園」で、介護員として勤務している浅田真由子さんです。

浅田さんは大阪出身の28歳。北海道大学入学を機に北海道へ。もともと福祉に興味があったわけではなかったそうですが、「大学1年の教養のときに受けた授業で、たまたま福祉の講座があり、それを受けたのがきっかけ。そのときは日本の子どもの貧困がテーマで、豊かだと思っていた日本でも毎日のご飯を食べられない子どもがいるということに衝撃を受けました。そこから福祉について学びたいと考えるようになりました」と福祉業界を目指した理由を教えてくれました。

tenjukai_06.jpgこちらが、介護員として勤務している大阪出身の浅田真由子さん。

教育学部で福祉について学び、子どもたちに勉強を教える札幌市のボランティアの活動も行っていたという浅田さん。「最初は生活保護のケースワーカーになろうと考えていましたが、ボランティア活動を通じて、自分が関わったことで子どもたちが笑顔になって、成長していく姿を見て、そういう仕事に就きたいと思いました」と話し、卒業後は障がい者支援の施設を運営する社会福祉法人へ。

「大学では座学ばかりで、実技や実習は全然してこなかったので、とにかく介護技術なども習得したいと考え、24時間で支援にあたる障がい者支援の施設に就職を決めました」

配属された伊達の施設で働きながら介護福祉士の資格を取得。4年間勤務し、「高齢者の方の介護についても経験し、スキルアップしたい」と転職を決意します。転職の仲介サイトを利用し、天寿会に出合い、「歴史ある大きな法人で、障がい者支援も高齢者介護も行っていて、グループホームなどもあり、いろいろな福祉サービスに携わるチャンスがある点に魅力を感じ、2年前に転職を決めました」と振り返ります。

tenjukai_07.jpg「利用者さまは温かい人ばかりで、日々私に笑顔をくれます」と語ります。

「札幌などの都市部にも大きな法人はありますが、もともと人混みが苦手なのもあり、白老くらいの規模の町がちょうどいいなと思いました。また、白老は雪が少ないので、それも魅力でした」

浅田さんが勤務する特別養護老人ホーム「寿幸園」には、介護度3以上の認知症の方や寝たきりなど介助が必要な高齢者の方が生活しています。

「自分にとっては職場ですが、利用者の方たちにとってここは暮らしの場。皆さんの生活の質を下げないように気を付けています。とにかくいつも穏やかに過ごしていただけるように、自分自身も笑顔を絶やさず穏やかでいるよう心がけています」

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天寿会グループに勤務して2年になりますが、「法人が大きいのでいろいろな制度もきちんとしているし、資格取得のサポートや研修も充実していて働きやすいです」と話します。職場環境についても、「上の人たちも話しやすい人ばかり。私は自分の意見を伝えるのが苦手なのですが、話しやすい雰囲気なので、利用者さんにとって何が大事かを話し合ったりもしやすい」と続けます。新人の間、教育係として一人の先輩が専属で付いてくれるチューター制度というものがあり、「分からないことを教えてもらったり、大なり小なり相談に乗ってくれたり、チューターの存在はありがたかったです。今もいろいろ相談に乗ってもらっています」と話します。

休みの日は、料理をしたり、読書をしたり、のんびりと過ごすことが多いという浅田さん。「白老にいて日常生活で不便を感じることはまったくなく、自分にはちょうどいい町だなと感じています」と話し、札幌までも車で1時間ほどなので、ときどき札幌へ行って大学時代の友達に会うこともあるそう。

「今は社会福祉士の資格取得を目指して勉強中です。資格取得に必要な実習も本部で受けさせてもらうなど、サポートも受けられるので、取得に向けて頑張りたいと思います」と最後に語ってくれました。

tenjukai_09.jpg「白老町はわたしの第2の故郷です。これからも天寿会で生活する利用者さまのために、そして自分自身の成長のために、仕事を楽しみにながら頑張っていきます」と力強く語ってくれました。

再雇用でも温かく迎え、サポートしてくれる職場。やりがいを感じながら働く日々

次に話を伺うのは、竹浦地区の本部と併設しているリハビリデイセンターに勤務している職員の櫻井和恵さんです。櫻井さんは登別市出身、室蘭の短大で保育を学びますが、社会福祉に興味があり、卒業後に天寿会へ。

「短大の授業で障がい児に関する福祉の授業があって、そのときに福祉に興味を持ちました。あと、天寿会の試験を受けたのは、短大のパンフレットに天寿会で働いている卒業生の写真があって、その先輩の働いている姿がとてもカッコよく見えて(笑)。かれこれ30年近く前の話です」

tenjukai_10.jpgこちらが、リハビリデイセンターに勤務している、登別市出身の櫻井和恵さん。

当時は就職氷河期と言われる時代。天寿会も高倍率だったそうですが、櫻井さんはその難関を突破して無事合格。障がい者の方たちの支援にあたる更生部介護課に配属され、登別の実家から通いながら勤務していました。

「あの頃は障がい者施設がこの辺りにはまだほとんどなくて、入所者の数もすごく多かったんです。今は駐車場になっていますが、そこに3階建ての建物があって、軽度、中度、重度と障がいの重さによってフロアが分かれていて...。保育の短大出身なので、入ったばかりのころは介護の右も左も分からなかったのですが、先輩たちがみんないい人でしっかり教えてもらいました」と懐かしそうに話す櫻井さん。話を伺っていると、天寿会の歴史や規模の大きさもよく分かります。

3年勤務したあと、白老町の方と結婚することになり退職。出産を経て、専業主婦として子育てに専念しますが、4人いるお子さんのうち、2人目を出産後に保育士の資格を生かして働いてみようと、町立の保育園で臨時職員の保育士として働き始めます。3人目の妊娠で一旦保育士の仕事からも離れますが、子育てがひと段落つくと再び保育士として勤務。

tenjukai_12.jpg「介護職は私の天職です」と語る櫻井さん。

「4人目の出産のときに専業主婦に戻ったのですが、その子が幼稚園に入るタイミングで、また働きたいなと思ったんです。保育士に戻ることも考えたのですが、天寿会で一緒だった先輩が今もバリバリと働いているのを知って、もう一度社会福祉のほうに携わりたいという気持ちが芽生えて...」

その先輩が上層部に櫻井さんの話をしてくれ、平成27年にパート職員として天寿会へ戻ることに。リハビリテーションセンターの入所者さんたちの支援を担当します。

「出戻りでしたが、受け入れてくれたことがありがたかったです。17年離れていたので、介護方法も用語も全部変わっていて、ほぼゼロからのスタートでしたが、周りの職員の方たちのサポートがあって、なんとかやってこれた感じです。ここの人たちは本当にやさしいんですよ。若いころに働いていたときの同僚や先輩もまだたくさん働いていて、みんな声をかけてくれて、天寿会に戻ってきてよかったなと思いました」

tenjukai_11.jpg「田舎の介護は、どこかほっとする温かさがあります。人間関係も良好で、冷たさや無機質さとは無縁の、心通う時間が流れています」と櫻井さん。

しばらくパート勤務でしたが、令和元年に正職員登用試験を受けて、正職員に。その間、介護福祉士の資格も取得。翌年には、現在所属している部署に異動となります。

「今いる部署は、管理者も入れて4人。23名の利用者の方がいて、1日に14名ほどが通所し、ここでリハビリをしたり、入浴をしたり、創作活動をしたりして過ごします。送迎も行きますし、入浴介助や食事の介助も行います。職員がしっかりコミュニケーションを取って、チームワークの良さで毎日乗り切っています。とにかく、利用者さんにも楽しく過ごしてもらいたいとみんな同じ思いを持って支援させてもらっています」

今も子育てしながら仕事に励んでいる櫻井さん。「白老の町は子育てもしやすく、支援も充実しているし、暮らしやすい町です」と話します。そんな白老の町に暮らす利用者さんやその家族の方たちが安心して生活できるよう、自分も力になりたいと考えながら仕事に取り組んでいるそう。

tenjukai_13.jpgスタッフの手を握る利用者さん。両者の信頼関係が伺える素敵な様子を取材班はほっこりした気持ちで見守っていました。

「利用者さんにここで楽しく過ごしてもらい、安全に無事にご自宅へお届けすることを一番に考えながら、ご家族の方たちともしっかり連携を取り、些細なことでも相談してもらえるような存在でありたいと思っています。地域に根差すというのはそういうことだと思うので」

最後に、「福祉の世界もどんどん進化しています。制度もすぐに変わるので、利用者さんやそのご家族のためにも新しい知識を取り入れていかなければと考えています。これからもしっかりその辺りを学びながら仕事をしていきたいですね」と語ってくれました。

事務方の工藤さんの話からも、現場職員の2人の話からも、天寿会というグループが本当に白老という町に密着していて、温かく、やさしい人たちが集まっている法人であると伝わってきました。

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社会福祉法人 天寿会
社会福祉法人 天寿会
住所

北海道白老郡白老町字竹浦134番地5

電話

0144-87-2611

URL

https://www.s-tenjyu.org/

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やさしい人が集まる温かな場所。地域密着の福祉事業を行う天寿会

この記事は2024年11月29日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。