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このまちのあの企業、あの製品
長沼町

ワーケーションから始まる「化学反応」を!サンネット(株)20240629

ワーケーションから始まる「化学反応」を!サンネット(株)

札幌市からクルマで1時間弱、新千歳空港から約30分。長沼町は北海道らしいのどかな田園風景が広がる小さなまちでありながら、都市部へも、日本各地への空路にもほど近いことから、近年は移住者や企業の熱視線が注がれています。

2022年12月、そんな長沼町のポテンシャルを見出し、まちの中心部にカフェと見紛うほどオシャレなワーケーションオフィスを設立したのがサンネット株式会社。神奈川県小田原市と東京都新宿区に本社を置くIT企業です。大手企業の顧客と直接取り引きし、主に業務系アプリケーションの開発から保守までを手がけています。今回は代表の市川聡さんと、社員の岩波理歩さん、森田正海さんにご登場いただき、このまちにワーケーションオフィスを構えた理由や、実際に仕事と暮らしを体感してみた感想などを伺いました。

エンドユーザー志向だからこそ開設できたワーケーションオフィス。

まずは、代表の市川聡さんから会社の自己紹介をしてもらいました。サンネット株式会社が創業したのは1969年、今から数えて半世紀以上も前のことです。当初は東京地方税理士会小田原支部、小田原商工会議所が中心となり、同社の前身となる小田原電子計算センターを設立しました。

「実は本社を置く小田原市には、大手生命保険会社の情報システムに関わる総本山と、精密機器メーカーの工場があります。40年以上も前、その2社と直接取り引きを始めたことが当社のスタンスを決める契機となりました」

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そのスタンスとは「エンドユーザー(同社の場合は顧客となる企業)」志向。IT業界も建設業界のように元請けと下請けによってプロジェクトを進行するケースが大半ですが、やはりスケジュールのしわ寄せや厳しいリクエストに右往左往せざるを得ないのは後者のスタッフなのだそうです。

「社員のためにも、当社はメーカーやディーラーの下請けではなく、パートナーとして顧客と伴走する姿勢へとシフトしていったんです。私自身、中途採用の営業職として入社し、安定・定量的に仕事を獲得するために大手企業を中心に新規開拓に奔走しました。こうした努力やエンジニアの技術力も相まって、今では名だたる東証プライム上場企業と長いレンジで直に取り引きしています」

顧客との間に「仲介者」がいない分、利幅の大きさにつながるのもエンドユーザー志向のメリット。同社は55期にわたって無借金経営を続け、「利益があるからこそ、長沼町にワーケーションオフィスを開設できたんです」と市川さんは表情を緩めます。

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コロナ禍のメンタルヘルスをケアするためにワーケーションを。

ワーケーションとは、「ワーク(=work)」と「バケーション(=vacation)」を掛け合わせた造語。働きながら休暇を楽しむ新たなワークスタイルを指します。近ごろはよく耳にする一方、実際に制度として取り入れている企業は多くないのが実態ではないでしょうか。

「私が代表に就任した後、ほどなくして東日本大震災が起こりました。当時は自社内にサーバールームを設けていたことから、計画停電によって社員の出勤時刻もマチマチに。朝5時に出社する人もいれば、昼過ぎからオフィスに来る人もいたため、不公平感をなくすためにフレックスタイム制度を導入しました。このように社員の負担軽減や時代の変化に合わせた柔軟な対応に力を入れてきたこともあり、ワーケーションの導入にもフットワークを軽くチャレンジできたのだと思います」

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市川さんがワーケーションを取り入れようと考えたのは、やはり社員のためを思ってのこと。きっかけは、コロナ禍によって全社員をテレワークに切り替えたことによる弊害だといいます。

「当社の社員は厳重な守秘義務を抱えているため、セキュリティが強固な環境でなければ働けません。テレワークの気分転換にカフェで仕事をしたくなっても、Free Wi-Fiは情報漏えいの危険性があるためNG。例えば、一人暮らしの社員は誰とも顔を合わせずに自宅でモクモクと業務に向き合い、コミュニケーションが激減したことでしょう。メンタルヘルス面が気がかりとなってきた時、ワーケーションという働き方があることを知り、『これだ!』と直感が働きました」

セキュリティを担保したオフィスをどこかに構え、旅先で観光やグルメを楽しめれば心身もリフレッシュする...市川さんの脳裏にそんなイメージが湧き、ワーケーションの導入に向けて動き出しました。

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空港からも、「道内ビジネス」を進める上でも、良好な立地。

市川さんはワーケーションオフィスの開設場所を考えるにあたり、拠点の首都圏からできるだけ遠い北か南を思い浮かべたとか。さらに、台風や地震といった災害リスクをできるだけ避け、東京との航空アクセスも良い場所と考えた結果、「北海道」に行き着いたといいます。

「とはいえ、せっかく北海道にワーケーションオフィスを構えるのに、札幌のような都会では首都圏とさほど環境は変わりません。私たちは冬場の運転にも慣れていないので、除雪がしっかりとされ、複雑な道がないこともマスト。このような視点から北海道らしい場所を探していたところ、新千歳空港からクルマで約30分のところに長沼というまちがあることを知りました。ゆくゆくは札幌で地場企業の顧客を開拓することも考えていたため、道内ビジネスも展開しやすい立地だと感じたんです」

ワーケーションオフィスと隣接するアパート棟の建設には地場の工務店を選定。「札幌軟石」「江別のレンガ」などを用いて、地域の特色を生かした空間へと仕上げていきました。

「ワーケーションオフィスの開設にあたり、社員にも意見を聞いたところ、『カフェのような空間で仕事がしたい』『家族やペットとも泊まりたい』など、奇譚のなさ過ぎる声が数多くあがりました(笑)。こうしたアイデアもできる限り取り入れ、2022年12月にワーケーションオフィスが完成したんです」

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移住促進に力を入れる長沼町役場を筆頭に、地元の方々はワーケーションオフィスの開設にウエルカムムード。けれど、市川さんは首都圏の「よそ者企業」を地域に受け入れてもらい、今後も接点を持ち続けていくためにも会社の自己紹介を兼ねた説明会も開いたといいますからさすがの一言です。

「開所式には建物を施工してくれた大工さんをはじめとする地元の方々に加え、社員や小田原市在住の画家・中津川宏章さんを招いてライブペイントも楽しんでもらいました。こうした交流から、地域課題の解決に向けたアイデアが飛び出すことで、長沼に拠点を構えた企業としての使命も果たせると考えています」

sunnet_livepainting.jpg小田原市在住の画家・中津川宏章さんによるライブペイントの様子。このアートは長沼オフィスに飾られています

長沼町の環境が好きすぎて、ワーケーション4回目の社員も。

ここで、実際に長沼町でワーケーションに取り組んでいた2名の若手社員にインタビューのマイクを向けてみました。まずは新卒入社から3年目の岩波理歩さん。文系の経済学部出身ながら、高校時代に受けた情報系の授業でプログラミングの楽しさを知ったことから、就活ではIT業界を目指していたと振り返ります。

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「当社の経営理念に信条の一つとして『社員感動』が掲げられていたことが興味を惹かれた第一歩。就業体験で実際にオフィスを訪れた際、先輩方がやわらかな雰囲気で楽しく働けそうだと直感しました」

現在、岩波さんは自治体向けの住民税試算クラウドサービスを手がける部署で働いています。当初、先輩からは「このシステムを使うと何ができるのか」から説明を受け、「この画面ではこのプログラムを使う」といったことを少しずつ教わるスタイルに安心したと笑います。

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「当社はライフワークバランスがしっかりと整う上、『社員感動』の通り社員思い。中でも、私は長沼も、ワーケーションオフィスの環境も大のお気に入りで、すでに4回も利用しています(笑)。普段は交流する機会のない他部署のメンバーともワイワイできますし、移動や隣接するアパートの費用も会社負担なので、至れり尽くせりです。時には長沼の方々とお酒を飲む機会もあり、都会では知ることのできないさまざまな知識を教わっています。仮に札幌にオフィスを構えていたら、こうした接点は持てなかったと思うので本当に楽しいです」

と、「長沼ワーケーション」の魅力を教えてくれました。


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もう1人お話を伺ったのはエンジニアは森田正海さん。ワーケーションは2回目で、趣味のランニングをするにも最適な環境だと言葉を継ぎます。

「僕は一人暮らしなので、部署を超えて交流できる場を設けてもらったことで、心身ともに健康的に過ごすことができています。普段の買い物には困ることがなく、首都圏と比べると人が多すぎないので暮らしやすいと思います。出身地が広島県呉市なので、こうした小さなまちはやっぱり落ち着きますね」

福利厚生の大きな大きな副産物が、地域との「化学反応」。

最後にインタビューのマイクを市川さんに戻します。当初の狙いの一つでもあった道内ビジネスについては進んでいるのでしょうか?

「札幌市にはIT企業も多いですが、大手の支店レベルで開発費用が高額だったり、東京のニアショア(開発の一部を国内の別にあるIT企業などに外注すること)だけを請け負っていたり、地場のニーズに応えられるケースが少ないように感じます。実際、当社でもすでに道内企業の仕事を受注し始めました。マーケットとしてはまだまだ開拓の余地があると思います」

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こうしたビジネスの開拓を進める一方、市川さんは長沼町とのつながりを深める取り組みも欠かしていません。ワーケーションオフィスで鍋を囲んだ地域交流会を開いたり、アグリテックへの興味から農家の勉強会に参加したり、積極的にまちの人々に溶け込んでいます。

「長沼町役場ともいろいろとお付き合いしており、その繋がりで『DEMOLA HOKKAIDO(デモーラほっかいどう)』の話を聞いたんです。北海道大学産学・地域協働推進機構のもと、学生と企業・自治体が一緒になり、アイデアの創出を行うという実に興味深い取り組みだったため、当社も参画することにしました。現在、最終報告に向けて大詰めを迎えているところです」

市川さんご自身も、2023年には毎月のようにワーケーションオフィスに足を運ぶほど長沼町の環境がお気に入り。都市部に近く、ほどよく田舎で、近郊のあちこちに温泉があるという魅力を満喫しているそうです。

「ただ、当初は社員のための福利厚生として考えていましたが、このまちに来てみると、さまざまな方を紹介してもらい、多種多彩な話を伺う中で産学連携をはじめとする『化学反応』が起こりそうなことにビックリしています。これこそが、このまちにワーケーションオフィスを構えた大きな大きな副産物ですね」

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サンネット株式会社 長沼ワーケーションオフィス
サンネット株式会社 長沼ワーケーションオフィス
住所

北海道夕張郡長沼町錦町南1-12-14

電話

0123-76-9202

URL

https://www.sunnet.co.jp/

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ワーケーションから始まる「化学反応」を!サンネット(株)

この記事は2024年6月5日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。