HOME>このまちのあの企業、あの製品>企業的なのに、あったかい。いいとこ取りで働ける(株)藤井牧場

このまちのあの企業、あの製品
清水町

企業的なのに、あったかい。いいとこ取りで働ける(株)藤井牧場20240520

企業的なのに、あったかい。いいとこ取りで働ける(株)藤井牧場

清水町は、日高山脈の麓に広がる酪農と農業のまち。十勝平野の西部に位置し、国道38号と国道274号が交差し、さらには、道東自動車道のICや特急停車駅も有することから「道東の玄関口」とも呼ばれています。確かに高速道路を使えば札幌圏にはクルマで2時間と少し、帯広市にも1時間以内でアクセスできる利便性の高い立地です。
酪農が盛んなこのまちの中でも、指折りの規模を誇る牧場が「株式会社藤井牧場」。未来を見据えた組織化や若い世代を受け入れる環境整備に力を入れています。まずは代表の藤井稔さんにお話を伺いました。

スケールメリットと、町内の酪農を下支えするという使命と。

株式会社藤井牧場が法人化に乗り出したのは平成23年1月のこと。酪農業界が大規模化と家族経営の二極化に進むさなか、同社は十勝エリアでも比較的早い時期に前者を目指して動き出しました。

fujiibokujo_02.jpg

「経営的な目線から見ると大規模化はスケールメリットの点で大きな魅力。一方、今後も町内でも離農が進んでいくことを考えると、酪農を下支えする存在にもなりたいと法人化を進めていきました。もちろん、デッカイ牧場を経営するというあこがれもモチベーションの一つです(笑)」

法人化からしばらくは、大規模な牧場の求人自体が希少だったこともあり、若い世代が集まりやすい状況が続きました。ところが、どの地方にも共通する若者の流出が清水町でも深刻化。さらに、規模の大きな牧場が増えてきたことから、若い人材を確保することが困難になってきたと表情を引き締めます。

fujiibokujo_03.jpg

「当社も効率化や省力化は常にトライアンドエラーを繰り返していますが、酪農はマンパワーに頼らざるを得ない部分も大きな仕事。つまり、いかに自社の魅力を高めて、定着してもらえるかがカギになります。そのため、東京の商社で働き清水にUターンしてきた人材を招き、組織化を急ピッチで進めていきました」

業務のスリム化によって、酪農業界ではレアな4週8休を確立。

同社では目標設定に対する自己評価と役員評価によってボーナスの査定に反映させる評価制度を整えたり、女性専用の休憩所を設けたり、イマドキの世代が望む環境を少しずつ整備してきました。中でも、3年ほど前に酪農業界では珍しい4週8休制度を確立したのが、働き手にとっての大きな魅力になっています。

fujiibokujo_04.jpg

「酪農業界は朝と夕方の搾乳に合わせ、昼間は中抜けするのが一般的です。けれど、当社は早番と遅番の2チームに分け、役割分担を明確にしました。加えて、スタッフの入れ替わりがあっても同じ業務がこなせるよう、密に情報共有できる仕組みやマニュアルづくりによって平準化を進めたんです。4週8休の8時間勤務に収まるように業務をスリム化するイメージとでもいいましょうか」

他にも、夜間の牛の出産をサポートする当番制を廃止したり、夏場の牧草収穫もコントラクター(農作業受託組織)を上手に活用したり、繊細なケアが必要な哺育については仔牛の育成プログラムを持つ町内の清流ファーム(町内9件の酪農家とともに運営)に預託するなど、働きやすい仕組みづくりに力を入れています。

fujiibokujo_05.jpg

「どの業界も同様だと思いますが、令和の時代に合わせた環境にしなければ、到底『選ばれる職場』にはなりませんからね」

過度なプレッシャーがないよう、新人さんの育成はゆっくりペース。

ここ最近、同社では若い世代の入社も増え、新卒採用にも取り組んでいます。近年は燃料費や輸入飼料の高騰により、これまで通りの運営を続けては行き詰まっていく時代。藤井さんは、こうした変化をいち早くキャッチし、コストの安いものや新しい資材に置き換えながら、利益率の高い酪農経営を展開するように意識しています。こうした目線をスタッフにも要求しているかと思いきや...

fujiibokujo_06.jpg

「コスト意識や自発的な行動はいい仕事につながるのは確かですが、過度な期待はプレッシャーにつながりますし、お互いに求めるものがすれ違ってはギャップが生まれます。そのため、新人さんの教育は非常にゆっくりペース。例えば、新卒に関してはまず会社のことや牛について説明するオリエンテーションを設け、先輩方の指導のもと半年〜1年かけて一連の作業を覚えていければ十分です。その後も、『牛の状態の変化に気づける』、『搾乳時にチームの動きに合わせてカバーできる』などを段階的に覚えていくうちに経費や生産性について自然と考えられるようになれれば良いと考えています」

fujiibokujo_07.jpg

ワンステップ上の目標づくりはスタッフと会社で話し合い、スキルに応じたワークスケジュールも立てているのだとか。チームを率いるリーダータイプはもちろん、人とのコミュニケーションに苦手意識を持つモクモク作業派も評価しているといいます。

コミュニケーションは大切だけど、プライベートはノータッチ。

同社で働くスタッフは町外出身者が大半だとか。住む場所については単身向けの町営住宅もあり(オール電化で築浅!)、民間の賃貸アパートに暮らしたとしても家賃は半額補助しています。クルマを持っていない人に向けた車両の貸付制度もあるなど、至れり尽くせりの環境です。

fujiibokujo_08.jpg

「これまでは会社の組織化について話しましたが、若いスタッフとのコミュニケーションも大切にしています。顔色や声色が良くない場合は積極的に声をかけますし、具合が悪そうなら当然ながら無理はさせません。買い物に行くのも辛そうな場合、食料を届けたこともあります。ただ、適度な距離感を取るのも大切。若手同士は食事に出かけたり、ワイワイ遊んだりしているようですが、僕らはプライベートにはノータッチ(笑)。ただ、家族が増えるので休みを減らして給与を上げたいとか、パパ育休を取りたいなどの希望にはこれまでも応じてきましたよ」

fujiibokujo_09.jpg

企業的な働き方と、牧場のあったかさ。2つの「いいとこ取り」ができるのが、藤井牧場で若い世代がイキイキと働ける理由なのです。

地元からの距離と、4週8休の働き方に魅力を感じて就職。

次にお話を伺ったのは、2023年に新卒で入社した髙橋黎也さん。千歳市出身で子どものころから生き物が大好きだったそうです。

fujiibokujo_10.jpg

「大学進学にあたって、レンジャーを目指そうと酪農学園大学の環境共生学類を受験した...つもりが、希望学部の記入ミスで循環農学類に進んでしまい(苦笑)。もともと楽天的なタイプでもあるので、『ま、いいか』と4年間を過ごしました」
就職活動では農業系の就活サイトを活用し、エージェントからいくつかの牧場を紹介されたとか。その中で地元の千歳市からさほど遠くなく、何より4週8休の働き方に魅力を感じたのが藤井牧場だったと振り返ります。
「対人関係の多い仕事は性格的に得意ではありませんし、都会でセカセカと働くのも好きではありません。だったら、生き物を相手にするのも良いかも...と軽く考えて就職を決めました」

fujiibokujo_11.jpg

入社にあたって住む場所は代表の藤井さんから町営住宅を紹介してもらい、生活に必要なものは帯広市で買いそろえたといいます。町内にはスーパーやコンビニ、病院、ホームセンターなどもあることから、不安といえば初めての一人暮らしくらいだったというのも、楽天的な性格と自己分析する髙橋さんらしいエピソードです。

イマドキの若い世代が求めるワークライフバランス。

入社後、髙橋さんは会社のオリエンテーションを受け、ミルカー(生乳を絞るための機器)の取り付けや乳質ごとの印付けなど、簡単な作業から教わっていきました。

fujiibokujo_12.jpg

「最初から8時間ビッチリ働くのではなく、まずは会社に慣れる意味から早めに退社させてもらうなど若い世代の新人に対する配慮を感じました。先輩方の指導はアドバイス一つとってみても、理由や背景をしっかりと説明してくれるので分かりやすかったです。入社から3ヶ月ほどで重機の資格を取り終えた後は、牛舎掃除や寝藁の敷き詰めといった作業も担当するようになりました」

現在は入社から1年が経ち、任される仕事も少しずつ増えてきました。けれど、プレッシャーになるような業務量ではなく、適度なバランス感覚だといいます。最近は乳量が増えることにモチベーションを感じるようになったそうです。

fujiibokujo_13.jpg

「イマドキといえばイマドキですが、僕は給与と休みのバランスを重視するタイプ。その点でいえば、当社は待遇も良いほうですし、4週8休の働き方にも満足しています。先日も、連休に有給をプラスして3連休を取ることができました。清水町は田舎ですが、当社には若いメンバーも多いので、休日にご飯を食べたり、帯広に出かけてカラオケを楽しんだり、プライベートも充実しています。ゆとりのある中で、じっくりと成長していきたい方にはオススメですね」

fujiibokujo_14.jpg

株式会社 藤井牧場
株式会社 藤井牧場
住所

北海道上川郡清水町字清水第3線19番地

電話

0156-62-4636

URL

https://fujii-farm2013.com/

GoogleMapで開く


企業的なのに、あったかい。いいとこ取りで働ける(株)藤井牧場

この記事は2024年4月2日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。