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中標津町

中標津のくらしと健康を支える超大型スーパー、東武サウスヒルズ20240208

中標津のくらしと健康を支える超大型スーパー、東武サウスヒルズ

酪農が盛んな道東の町・中標津町。平坦な根釧原野に牧草地が広がるのどかな町です。町内に空港があるほか、釧路や根室とも近く、アクセスも良好。そんな中標津の町には、町民をはじめ近隣の町の人たちに愛される大きなショッピングセンター「東武サウスヒルズ」があります。

広い建物内には、生鮮食品から日用品までさまざまな商品が並び、ファッションや飲食店などのテナントも多数。札幌の大型ショッピングセンターと比べても遜色ないどころか、それ以上の品ぞろえです。老若男女問わず、毎日たくさんの人たちが買い物に訪れ、週末になると家族連れで一段とにぎわいます。今回は、「東武サウスヒルズ」がなぜこれほどまで町の人に支持されているのか、そのヒミツを探りに店舗へおじゃましました。

大きなショッピングセンターには、健康を意識した商品がズラリ!

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「建物はワンフロアで、広さは幅が200m、奥行きが100m。ユニバーサルデザインで段差もありません」

そう話しながら店内を案内してくれたのは、「東武サウスヒルズ」の執行役員で店長も務める室井勝則さん。売り場面積は6000坪ほどあるそうで、通路も広く、売り場全体がゆったりしているのがよく分かります。ディスプレーも見やすく工夫され、思わずテンションが上がります。

「地元の生鮮食品はもちろん、成城石井、コストコ、自然の味など、中標津や道東エリアの店では置いていないものもうちでは用意しています。あとは、特別栽培の野菜やオーガニック食品、発がん物質の入っていないものなど、健康を意識した商品を取り揃えています。ベーカリーのパンも国産小麦を使った無添加の生地を用いているんですよ」

首都圏で人気のある食品ブランドの数々。どれもオーガニックやヘルシーに特化した食品で知られるものばかり。都会でもそれぞれ別の場所で売っているものが、ここでは一堂に揃うというのにも驚きます。

「店のコンセプトは、『いつまでも若々しく健康で長生きしましょう』。そのためには普段の食事から気を付けないとねということで、店で扱うものにはとことんこだわっています。価格の安さよりも、健康にいいかどうかが大事。地域の人たちに元気でいてもらいたいという想いが根っこにあるんです」

地元の人が元気であることが、結果として地域の活性化にもつながると考え、健康に良いもの、地域の人たちのニーズに応えられるものを積極的に取り揃えています。また、健康という側面で言えば、雨や雪の日もここに来て、広い店舗内を歩いて運動不足解消をしている高齢者の方たちもいるそうです。

とにかく地元の人たちに喜んでもらいたいと、「ここに来ると楽しいと思ってもらえる店づくり、ここがあって良かったと思ってもらえるサービスを常に考えています」と室井店長。

毎日11時と14時には試食販売、ライブ販売を行うなど、より買い物を楽しめるような企画を用意。このようにさまざまなイベントを催しています。さらに、町の人の役に立つならと、店舗内にある携帯ショップ、旅行代理店、ファストフードなどはサウスヒルズが直営で行っているのだそう。このほか、町の人たちの日々の生活をサポートするため、宅配サービス「たすかーる」や宅配エリア外の人も利用ができる「カーピックアップ」なども行っています。

店づくりやサービスのお手本は、アメリカの地域密着の大型店舗

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「ちょうど18年前にこの場所にサウスヒルズを建てました。そのときからアメリカの郊外にある地域密着型のショッピングセンターを参考にした店づくりやサービスを行っています」

そう話すのは、常務取締役の中川禎さん。

「日本はアメリカから5年遅れているという考えをオーナーが持っていて、今も毎年アメリカへ視察に行き、新しいアイデアやサービスを導入しています」と話します。確かに、アメリカ映画に登場するような大きなショッピングセンターとサウスヒルズは、店の外も中も雰囲気が似ています。

「LIVE HEALTHY LIVE LONGER AND LIVE HAPPY」(いつまでも心身共に健康で、幸せな人生を送りましょう)という理念を掲げ、健康に良い商品を取り揃えるというアイデアもアメリカの店舗を参考にしました。

「アメリカは国民皆保険ではないですから、自分の健康は自分で守らなければならず、日々の食事から健康に気を付けようという人も多い。だから、郊外店にはオーガニックの食品などをたくさん扱っているところがあります。例えば、かつてオーナーが視察に行ったアメリカの店舗では、赤ワインをたくさん並べていて、ポリフェノールを取りましょうと訴求していました。そこで、うちもまずは良いワインを店に置こうということで、バイヤーをフランスに行かせて、直接取引を行うようになりました。さらにそこから、フランスのワイナリーの方に店へ来てもらってワインのセミナーを開いたりもしました」

ここ数年、添加物の入っていないものやオーガニックに特化した商品を扱うスーパーが各地に増えてきましたが、18年前、大型スーパーでこのような取り組みを行っているところは少なかったそう。まして道東ではほとんどありませんでした。

「とにかく、安全なものを提供しようという思いで商品を仕入れていましたね。トランス脂肪酸の入ったマーガリンを置かないようにし、食品は無添加のものを置き、野菜も無農薬や有機のものを揃えました。当初は理解してもらうのに苦労しましたが、最近、やっと時代が追いついてきたような感じです」

お客さまだけでなく、社員一人ひとりに健康への理解を深めてもらうため、社員向けのセミナーなども開催。今では社員たちも積極的に学びを深めているそうです。

「コロナ前は、社員もアメリカへ研修に行かせていました。ディスプレーなども勉強になりますしね。豆などの量り売りの機械はアメリカから取り寄せたものを使っています。また、コロナ禍からはじめたカーピックアップのサービスもアメリカで行われていたものを取り入れました」

いざというとき、地域のためにできることは?ブラックアウトで得られた教訓

これだけ充実した内容の店舗で、かつ大勢の人に支持されていることを考えると、ほかのエリアへの進出も考えるのではないかと思いますが、中川さんは「あくまでうちは地域密着型であり、お客さまたちと一緒に店を育てていくことを大事にしているので、特に店舗数を増やす予定はありません」と話します。現在は、サウスヒルズと北見市端野にあるイーストモールの2店舗だけを運営しています。すべては地元のため、地元で暮らす人たちのため。話を伺っているとそんな想いがひしひしと伝わってきます。


「今でこそ、町のランドマーク的な存在として扱われることも増えましたが、18年前はなかなか子ども連れのお客さまに足を運んでもらえず、スタッフで知恵を出し合って、TOBUレンジャー・ギガルスという戦隊もののグループを作ったんです。そのステージをやっているうちに、それが子どもたちの間で人気になり、毎月のショーを楽しみに来てくれる子どもも増えるようになりました」

町の子どもたちに「町で好きなところ」というアンケートを取ったところ、「道立ゆめの森公園」に次いで2位を獲得。「町の子どもたちがここを好きでいてくれるのは本当にうれしいです」と中川さん。現在働いているスタッフの中には、子どものころ、TOBUレンジャーが好きだったという人やここに買い物にくるのが楽しみだったという人もたくさんいるそうです。

また、地元のための店であるとよく分かるのが、2018年に起きた胆振東部地震によるブラックアウトのときのエピソード。

「電気がすべてダメだったので、店をオープンできる状況ではありませんでした。冷凍、冷蔵品がダメになってしまうため、まずはすぐに冷凍車をチャーターして廃棄になるものを極力抑えました。鮮魚など生ものに関しては店の前にテントを張って、スタッフ総出で炭焼きにして販売しました。最初は誰も来ないのではないかと思ったのですが、気が付くと長蛇の列ができていて、『家で調理ができなかったから助かった』『ありがとう』とたくさんの町の方たちに喜んでもらえました。このとき、あらためて地域のために一丸となって動くことの大切さや、自分たちの存在意義を感じることができ、よい教訓となりました」

TOBU_blackout127.pngブラックアウトの時のエピソードは、東武サウスヒルズの新人研修の際にも伝えられています

町の人たちと共に歩んできた店ですが、少子高齢化が進む中、人手不足という課題も抱えています。

「人が足りないからといって、これまで行ってきたサービスをやめることはできませんし、人が少なくてもうまく回せるようにマルチ化というものをスタートさせました」

これは各部門の忙しい時間、手が空く時間を調べて数値化し、時間帯によって手が空く部門の人が忙しい部門へフレキシブルに動いて作業を行うというもの。時代の動きに臨機応変に対応できる柔軟さも感じられます。

店頭に並ぶ商品を通して、未来を担う町の子どもたちの食育を

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次に実際に現場で活躍しているスタッフの方たちにお話を伺うことに。まずは、バイヤーを務める副店長・木幡竜仁さんです。現在は鮮魚売り場を担当、その前は、食品やベーカリーも担当していたそうです。

「うちの鮮魚売り場の特徴は、地元の鮮度の良い魚はもちろん、本州の珍しい魚も数多く扱っているところかな。道内の魚ばかりだとどうしても魚種が偏ってしまうので、徳島や石川、ときには沖縄からも魚を空輸します。特に週末はファミリー層向けに魚を並べ、子ども用の小さな手袋を用意して子どもが魚に触れられるようにもします」

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たとえば、コブダイを仕入れて、コブの部分を触ってもOKにするなど、実際に魚を見て、触れてもらうことが地域の子どもたちの食育に繋がればと考えているそう。また、親子の会話のきっかけにもなればと話します。

「魚を触らせるとか、あえて他店でやらないこと、面倒なことをやることで差別化を図っています」

木幡副店長は中標津町出身。「道東は全国のトレンドや旬のものが一番遅く届くエリア。若い頃はもっと早くこないかなと思っていました」と話し、「東武ならそんなタイムラグを自分たちで減らしていけるような気がして入社しました。最近は、入社前に感じていたそれが解消できつつあると感じています」と続けます。

さらにバイヤーとして心がけているのは、「未来を担う子どもたちに安心安全な食材を提供すること。あと、食に興味を持ってもらうことですね。今、みんなが食べているものが10年後、20年後の健康につながっているということを伝えていけたらと考えています」と話します。

売り場を訪れた子どもたちから「ここの店、スゴイ!」と言われたり、お客さまから「欲しい商品があった」と声をかけられたりすると、やりがいを感じるとニッコリ。また、日々勉強だと話し、「本州の店へ視察に行くこともありますが、そこで取り組んでいるものを見て、うちならどう取り入れることができるかを考えています。まだまだ成長していかなければと思っています」と熱い想いを語ってくれました。

宅配やカーピックアップのサービスを充実させ、より便利に

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次にお話を伺ったのは、ネットの宅配サービス「たすかーる」やカーピックアップのサービスを取り仕切る次長・南園真宏さんです。

「中標津町内でネットスーパーとして稼働しているのは、うちともう1社だけ。ただ、毎日配達、当日注文OKなのはうちの『たすかーる』だけです」

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町内の利用者であれば月額550円で何回でも配達してくれるそう。しかも商品はすべて店舗と同じ価格。むしろ宅配限定のお買い得商品も用意しているとのこと。

「利用してくださっているのは、子育て世代、共働きのご家庭、あとは1回の買い物の量が多い酪農家さんや漁業の方たちのご家庭が多いですね。コロナが流行していたときは、医療従事者の方や教育関係者の方の利用も多く見られました。そして、冬は全体的に宅配の売上が上がります」

週に何度か通うガソリン代を考えれば、550円は決して高くはない金額ですし、平日忙しい方にとっては店と家の往復の時間が短縮できると評判なのだそう。平日は宅配を利用し、週末は家族で来店というファミリー層もいるそうです。また、町外に暮らす人が町内に住む高齢の親のために会員となり、電話で親に必要なものを聞き、ネットで注文し、宅配してもらうというケースもあるそう。さまざまな層に支持されているサービスであることが分かります。

また、アメリカで主流とされるカーピックアップのサービスも利用者が増えています。あらかじめネットで注文してもらった商品をスタッフが用意。利用者は駐車場に到着したら、アプリから到着ボタンを押すだけ。そうすればスタッフが車まで商品を運んでくれるという仕組みになっています。

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「現在、カーピックアップの会員の方は250名ほど。ドライブスルー的な感覚で利用していただいています。宅配はエリアが限られているのですが、カーピックアップは住んでいる場所に関係なく、ここに取りに来ていただける方であれば誰でもご利用いただけるので、少し離れた町の方や大量に買い物をする必要がある方、店舗を見て買い物をしている時間がない方などにご利用いただいています」

宅配もカーピックアップも最初の仕組み作りと従業員への教育が大変だったそう。アプリの構築以外はすべて自分たちで考え、作り上げました。きめ細かいサービスなどは、「大手だとなかなか難しいと思いますが、うちのような規模だからできるのだと思います」と話します。「これで完璧とは思ってはいません。まだまだ改善点はあります」と続け、より便利に快適に地域の人たちに役立つサービスを提供したいと語ってくれました。

お話を伺った皆さん、それぞれ中標津という町が大好きと話してくれました。常にどうすれば町のためになるか、町の人たちに喜ばれるかを考え、誇りを持って仕事に取り組んでいる姿が印象的でした。

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東武サウスヒルズ
住所

北海道標津郡中標津町南町3番地10

電話

0153-72-3155

URL

http://www.kk-to-bu.co.jp/southhills/


中標津のくらしと健康を支える超大型スーパー、東武サウスヒルズ

この記事は2023年11月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。