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音更町

仲間と共に十勝の美しい山を作る、新たな林業会社。西野産業20230904

仲間と共に十勝の美しい山を作る、新たな林業会社。西野産業

十勝の音更町にある西野産業は、音更の森を育て木材を造る新進気鋭の林業会社。古くから続く組織が多い林業の世界ではめずらしく、2020年に創業した新しい会社です。

「大事なのは安全、そして働きやすさとコミュニケーション」

こう語る、代表の西野隆博さんと、4月に入社した齊藤幸太さんにお話を伺いました。新しい会社の想いや林業の魅力について探ってみましょう。

ゼロから林業会社を起業した西野さん

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代表の西野さんは、上士幌町出身。20歳の頃から音更町で暮らし、20代半ばで自動車の営業職から林業の世界に飛び込みました。林業のキャリアは足掛け約15年です。

「若かったので身体を動かしたいと思っていたんですよね。学生時代にバスケットボールもやっていたのもあって、動いているほうがスッキリするんです。それで、知り合いに声かけてもらったのを機に転職しました」

はじめは運送会社の一部門として林業に携わり、次は音更町内にある森林組合に入ったといいます。

「はじめの会社で数年間木の伐採など林業の基礎を身につけて、森林組合に行ってからは造林も手掛けるようになりました。森林組合でやらせてもらっているうちに、自分でもやりたい。自分でもできるかもっていう気持ちが大きくなっていきました。森林組合も『やる気があるならいいよ』って言って下さって、お言葉に甘えて独立したっていう経緯です」

林業の世界では、近年ゼロから会社を創業するのはとてもめずらしいこと。西野さんのキャリアとやる気を、古巣の森林組合が後押しして今に至りました。現在は主に森林組合の委託を受けて音更町内の民有林の造林と造材を手掛けています。
ただ、いくら林業とのつながりやキャリアがあったとしても、そう簡単に林業会社が成り立つわけではありません。創業してまだ3年ながら、会社が軌道に乗っているのはなにか秘訣があるはず...。その秘訣を探るべく、西野さんとともに齊藤さんにもお話を伺っていきます。

コミュニケーションが仕事の要

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2023年の4月に入社した齊藤さんは、現在40代半ば。今まで複数の仕事をしてきてその中には林業に7年間従事した経験もあります。再び林業に就きたいと思っていたところ、シゴトガイドで西野産業の求人広告を見て「ここだ!」とピンと来て門を叩きました。新しい会社なので、よりよい仕事環境をみなで作っていけるという可能性を感じ、応募したそうです。

「林業の現場では大きい音が出るので、他の人とのコミュニケーションが取りにくいのですが、音で『あの人はあそこにいるな』と感じる仕事でもあると思っています。なので、日頃からコミュニケーションをしてその人の考え方をわかっているということが重要だと考えています。円滑でいい意味で仲良くして話し合える仲であれば、怪我や事故を防ぎ、効率的に進められると思います」

齊藤さんは入社してまだ間もないながらも、西野産業は全員とコミュニケーションが取れる会社で、なんでも言いやすい社内環境だといいます。従業員同士で同じことを何度も言わなくても情報共有できている環境で、仮に忘れてしまっても仲間に聞ける雰囲気があるそうです。

また一般的に従業員から代表には立場上、意見は言いにくいということがありがちですが、西野産業ではそのようなことがなく、従業員の声を代表が聞いてくれるし答えや解決策も返してもらえるそうです。
みんなと話し合い、試行錯誤をしながら仕事を進めていくことが楽しいと語る齊藤さん。仕事の段取りを組んでみて、試しにやってみて、『こうじゃない』『違った、変えよう』とお互いにバンバン言い合える仕事環境にやりがいを感じています。

この会社の要は、従業員同士の密なコミュニケーション。代表である西野さん自身が、コミュニケーションを図りながら仕事を進めていくことが大事だと捉えています。

「安全に、怪我をしないようにというのが大前提で、自分で山を作り上げていきたいという想いがありました。うちはまだ創業したばかりですが、大きな仕事もみんなで作り上げていきたいと思っています。そのためにもコミュニケーションはとても大切。
齊藤さんはまだ入社間もないのですが、林業の経験もありますし、なにより人柄がいいので話しやすいんですよね。うちは他のメンバーも人柄がいいので、僕も言うべきことははっきりと言うようにしています。そうすることで若い人たちも慕って、ついてきてくれると思います」

従業員が働きやすい環境を整えコミュニケーションを積み重ねていくことが大事だと、西野さんは考えています。西野産業ではさらに、現場には女性専用の車のほか車載式トイレも用意。西野さんや齊藤さんのほか、女性スタッフをはじめ20代や30歳の若手数名とともに、日々喧々諤々しながら山に向かっています。

では、具体的に山で日々どんな仕事をしているのでしょうか。おおまかに仕事の内容や流れについて伺ってみました。

自分の時間をしっかり確保できる会社

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林業は屋外の仕事なので、当然ながら仕事内容は季節や天候に左右されます。仕事内容は季節ごとに変わり、基本的には1年サイクル。春は主に木を植える仕事で、植林が終わったらそのまわりの草を刈る仕事が続きます。秋になると間伐や除伐などの間引き作業をし、冬に出荷する木を全て切り倒すという流れで、年単位でこのサイクルを続けていきます。
いっぽう、季節により仕事内容が変わりますが、日々の仕事時間は年間を通じてそれほど大きな差はありません。

「うちの仕事は、明るいうちに外に出て暗くなってきたら帰ります。残業はほとんどありませんし、雨の日はお休みです。自分の時間をしっかり確保しつつ、身体を動かしながら健康な毎日を過ごせます。通勤ラッシュもありませんし」

西野産業の朝は少し早く、7時にスタート。ただ、終わりも早く16時には終了するので、みなさん遅くても17時には家にいて各自自分の時間を過ごしているそうです。日が短い冬ですと日没時間前後に仕事が終わるものの、夏などはかなり明るいうちに帰宅できます。
仕事時間が明るい時間のみというのは林業の魅力ですし、残業がほとんどなく自分の時間をしっかりと確保できるのはこの会社の大きな魅力です。

自分たちで美しい山を作れることが林業の魅力

さらに、林業の魅力について西野さんと齊藤さんが語り合ってくれました。

「仕事で山の上まで行く時があるんですけど、景色が綺麗だなって思うことがよくあります。特に、朝早い時とか意外と気持ちがいいです。
あと、仕事を積み重ねていくと、自分が上手くなったなと実感できる時があるんです。木の倒し方とか、チェーンソーの刃の磨き方とか。刃の研ぎ方一つで切れ味が全然変わるんです。草刈りも同じく、綺麗に草が刈れたら見た目が綺麗で気持がちいいですし、植林するのもまっすぐ綺麗に植えていたら、育ってきてすごい目につくんですよね。目に見えて綺麗な山になるんです」(西野さん)

「草を刈ったら植え付けも綺麗に決まっていると、その先苗が大きくなっていくにつれてすごい綺麗に見えます。自分が植えたところがそうだったら気持ちがいいです。植え方が雑な人って、けっこうわかるんですよね。例えば1メートル前に植えてあるはずの苗が3、4本なかったりするところがあると、切ったのか植え方が悪かったのかわからないけど、どっちにしても育ってきて形に出るんですよね......」(齊藤さん)

「そうそう。僕らが普段から山を見慣れているからよくわかるのですけど、手入れしている山と手入れできていない山の違いははっきりわかります。写真撮りたくなるような山か、そうは見えない山かってくらい。木が全然違うんです。綺麗に植えて間伐とか除伐とかしっかりやっていると綺麗な山になるので、まわりの景色も変わります。土木や建築の方が、『あの橋は昔俺が作った』って言うような感じで、『あの山は僕らが作った』みたいな」(西野さん)

「そうですよね。自分の植えたところを覚えていれば、木が育ってきたら自分の植え方や刈り方は間違っていなかったとわかります。そのやり方でより効率的にするにはどうすればできるのかを考えるのが好きです」(齊藤さん)

「植えるのがまっすぐだと育ってきたらすごい目につくんです。形になって目に見えて綺麗になるのを自分たちで作っていけるのが林業の魅力だと思います。
ただ、林業って失敗したら失敗で取り戻せないんですよね。間違って木を切っちゃったらその木はないので。失敗であんまりくよくよせずに、自分の糧にすればいいなって思います。自分の失敗は経験って、次に活かせばいいので」(西野さん)

自分たちの力で山を作り上げていくという林業の魅力を熱く語って下さいました。

何よりも大事なことは安全。そのために最新機械も導入

西野産業は、従業員同士のコミュニケーションを大事にしながら林業の魅力を追求する会社。2人が口を揃えて言う最も重要なことは、怪我なく安全に仕事をするということ。

「昔の林業は怪我が絶えない仕事というか職人気質が強い業界という感じでしたが、15年前に比べたら林業の業界もだいぶ変わってきたとは思います。女性も増えてきました。
『失敗しちゃった』とか『あの時こうしていればよかった......』ということにならないよう、事故なく怪我なくというのを一番大切にしています」(西野さん)

「まずは、安全で怪我のないようにやるのが大前提ですね。仮に代表が『もっとやれ』と言って怪我しそうになったら僕もみんなも『ちょっと待って』と止めますよ。でも西野代表はそんなことは言いませんね。毎日、仕事の段取りを組み説明した後も必ず『怪我しないように』と声を掛けてくれます」(齊藤さん)

西野産業では、急ぐために雑な仕事をして怪我や事故につながることは避けています。例え遅くなっても工期内であれば自分たちのペースで安全に仕事を進めるというスタンス。天候の都合もありますし、人それぞれ日々の体調の良し悪しもあります。
安全に仕事をしていくうえで大事なことが、日々のコミュニケーションであり、さらに機械化を進めていくこと。西野さんは、機械化を進める意義をこう語ります。

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「チェーンソーで切るのはやっぱり大変なんですよ。日々安全に綺麗に切れる匠のような人はごく一部しかいません。機械に任せたほうが早いし身体も楽なんです。それに手作業で木を切るとなると事故の可能性もありますから、安全のために機械化を進めています」

西野産業では、林業でほぼ必ず必要なグラップル(木をつかむ機械)はもちろん、ハーベスター(立木の伐倒や枝払い、玉切りした材の集積作業など行える機械)やフェラーバンチャ(木を掴んでハサミのように切る機械)などのほか、十勝では初と言われている最新機械も導入しています。
また、従業員が大型特殊機械を操縦できるように資格取得の補助もしており、昨年は会社の費用で若手の従業員を泊まり込みの研修に派遣して免許を3つ取得してもらったそうです。

「機械を扱えるようになるには、それなりに年数がかかりますが、車やバイクの運転が好きな人は割と早く覚えられるようです。むかし勤めていた森林組合で『林業で一人前になるのは10年かかる』と言われたことがあります。振り返ってみると、10年経てばみんな意外と大型機械にも乗れるようになるなぁ、と感じますね」

木が苗から育って大木になるまで年月がかかるように、林業で一人前になるには時間がかかるようです。ただ、西野産業では日々のコミュニケーションを大切にしつつ機械化を積極的に推し進めています。新たに林業へ飛び込んだ人でもきっと、挫折しにくく前向きな気持ちでスキルやノウハウを習得していけるでしょう。

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人との関係を大切に、自分のビジョンを持って欲しい

最後に、一緒に働く仲間としてどんな人がいいのか西野さんに聞いてみました。

「人間関係が大事だと思うんです。人は他人をバカにすることがあると思うのですけど、仮に自分がバカにされても他の人をバカにするようなことを言わないような人がいいです。自分でも心がけていますし。こういう意識を大事にする人がいいなって思います。
あとは、ちゃんと自分のビジョンを持ってくれればいいですね。少なくとも自分がいまできることを一生懸命にがんばってくれればと思います」

西野産業は、安全を第一に、日々のコミュニケーションとともに働きやすい環境を整えている新時代の林業会社。十勝で仲間とともに美しい山を作る姿は、陽の光を浴びて輝いて見えました。

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西野産業
住所

北海道河東郡音更町宝来西町南2丁目4-2

電話

0155-29-2817


仲間と共に十勝の美しい山を作る、新たな林業会社。西野産業

この記事は2023年8月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。