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このまちのあの企業、あの製品
旭川市

原料産地近くの工場で製造し、おいしさを追求。ヤマザキ旭川工場20230725

原料産地近くの工場で製造し、おいしさを追求。ヤマザキ旭川工場

明治23年に創業したという惣菜メーカー株式会社ヤマザキ。100年以上の歴史を誇る老舗です。北海道にそんな歴史のある会社が!と驚かれた方、実は「ヤマザキ」は静岡の会社なのです。北海道の情報を載せている「くらしごと」なのに、なぜ静岡?と思いますよね。その答えは、旭川に大きな工場を持っているからなのです! 今回は同社がなぜ旭川に工場を建てたのかなどを本社の方に伺い、さらにここに勤務する田形諒さんに工場での仕事についてお話を伺いました。

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静岡に本社を置く、老舗惣菜メーカー。現在の看板商品はポテトサラダ

まずは、「ヤマザキ」という会社のことを知るため、同社の営業本部営業企画部マーケット戦略課の大田渚彩さんに会社について説明をしていただきました。

「弊社は静岡が拠点の惣菜メーカーとなります。もともと駿河湾で水揚げされたものを使った水産加工業から始まりました。缶詰加工も手掛けていましたが、水産から農産にシフトし、昭和29年からは煮豆の製造をスタート。これが人気で、静岡では最近まで『煮豆のヤマザキ』として知られていました。昭和53年からポテトサラダの製造をはじめ、今ではこのポテトサラダが弊社の看板商品となっています。オリジナルのチルド包装惣菜のほか、大手コンビニやスーパーのPB商品も製造しています。国内の工場は静岡に8つ、旭川に1つ設けています。営業所は北海道から福岡まであるほか、国内外にグループ会社を複数有しており、社員数はグループ全体で1,900人ほどになります」

Yamazaki_23.png大田さんは静岡本社に在籍しているため、この日はオンラインでお話を伺いました

年々従業員数は増えているそうで、とても大きな規模の会社だということが分かります。グループ会社の中には農業法人の名前もあります。

「おいしい商品を作るためには素材の味が大切で、自分たちで原料を作るところからはじめようと、各地に農場や原材料を扱うグループ会社を有しています。北海道に関しては、ジャガイモやカボチャを生産しているファームオホーツク、北海道産真昆布の乾燥から加工を自社管理する北海シーウィードという会社があります」

「家庭料理の豊富なメニューを商品化する」という企業理念を掲げている同社。食卓に「もう一品」という考えのもと、家庭的な惣菜を製造しています。煮豆シリーズのほか、人気のポテトサラダやきんぴらごぼうなど、素朴でありながらもあると嬉しいご家庭の手料理を商品化しています。

Yamazaki_8.JPGヤマザキの商品で人気のポテトサラダは主に旭川工場で製造されています

「メインディッシュのほかに、もう一品おかずが増えることで、食卓が豊かになり、栄養バランスが整うのはもちろん、心も豊かになると考えています」

そのため、メインディッシュの邪魔をしないシンプルで家庭的な味付けを目指しているそうです。また、安全でおいしい商品を家庭へ届けるため、野菜づくりに関しても自社で研究を進めています。

「シンプルな味付けでおいしい商品をつくることを目標として、突きつめていった結果、素材をおいしくする必要があると考え、土や種、栽培方法の研究にまでたどり着きました。2017年には、畑から食卓までの情報をすべて集約する研究開発機能も持ったヤマザキグループ総合研究所を静岡に開設しました」

健康な土作りのため、土壌作りに役立つ菌を培養したり、品質の高い種芋を作り、契約農家へ配布したりしているそう。食品工場で出た野菜残さを堆肥にし、その堆肥を畑にまいて、またそこでおいしい野菜を作るといった循環型の仕組み作りにも取り組んでいます。

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コンセプトは「畑で料理する」。ジャガイモ産地の近くである旭川に工場を設立

さて、旭川工場ができたのは2011年、翌年から操業を開始。ここでは道産のジャガイモやカボチャを使った商品をメインで製造しています。

「おいしい商品づくりのため、弊社では『適地適作』という考えを取り入れています。これは、それぞれの野菜に最も適した生育環境で育てたものをという考えです。ジャガイモに関しては乾燥していて寒暖差が大きい北海道が適しているということで、道内でも雨が少なく、寒暖差があるエリアの農家を中心に契約をしています」

Yamazaki_11.JPG北海道は全国一のジャガイモ生産地

ジャガイモのおいしさを生かすため、採れた新鮮の野菜をすぐに調理しようと北海道に工場を建てることに。各産地からも近く、物流拠点にもなるということで旭川が選ばれたとのこと。

さらに収穫や保管方法にもこだわりがあるそう。収穫時はジャガイモにストレスをかけないため、洗浄や選別はせず、泥がついたままコンテナに入れて工場へ運びます。さらに、豪雪の旭川の特性を生かした雪氷貯蔵を行うことで、鮮度を保持。貯蔵中のジャガイモは呼吸をしているといわれますが、貯蔵庫の温度が低いと、この呼吸は抑制されるそうです。

Yamazaki_13.JPGこちらは貯蔵庫の様子。グリーンの特殊ライトで、緑化を防いでいます

旭川工場では、ジャガイモやカボチャを用いた各種惣菜を製造

旭川工場には、社員、パートを含め現在230名ほどの従業員が勤務。その中の一人が、田形諒さんです。ここからは、田形さんに旭川工場について教えていただくことにしましょう。

「旭川工場では、弊社の主力商品であるポテトサラダを中心にかぼちゃサラダや肉じゃがといった惣菜を製造しています。あとは、穂先メンマもここで製造しています」

田形さんは「原料生産技術部原料技術ユニット主任」と「旭川工場原料管理サブリーダー」という2つの肩書きを持っています。仕事内容としては、契約農家の栽培状況の確認などのやり取り、倉庫での原料管理など。

Yamazaki_18.JPGこちらが田形諒さん

「弊社の契約農家さんやJAは主に道東方面。定期的に訪問させてもらって、よりおいしいジャガイモやカボチャを作るためにはどのような土の状態がいいか、どのような栽培方法がいいかなどを話し合いします。改善点がないかを一緒に考えたり、こちらから提案させてもらったりすることもあります。9月の収穫期になると、グループ会社のファームオホーツクへ収穫の応援に行くこともあります」

旭川の工場にいるときは、倉庫で原材料の状態がどうかをチェックし、いい状態で管理ができるように温度調整などを行います。おいしい商品作りのため、ジャガイモの糖度確認も欠かせません。工場のラインに入ってジャガイモの芽取りなど野菜処理のサポートをすることもあります。

「ジャガイモの洗浄や皮むきは機械で行いますが、芽取りは人の手でなければ難しいので、いかにスピーディーに作業するかが大事。鮮度を保った状態で調理にまで持っていくのがポイントなのです。いつ食べても変わらないおいしさを提供するため、改善点を見つけるのも仕事なので、現場で作業にあたっている方たちにも話を聞き、工場ラインのデータも蓄積しています」

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網走の東京農大を卒業後、旭川へ。雪の多さに驚きつつも暮らしやすさを実感

さて、静岡出身という田形さん。どのような経緯で旭川工場に勤務することになったのかについて教えてもらいました。

「静岡では県立の科学技術高等学校に通っていました。進学を考えたとき、ふとそれまでの科学や工業とは異なる農業について学びたいなと思って、網走の東京農業大学へ進みました。人の命を育むのは食べ物で、そのベースとなる農業に関心が湧いてきて」

大学では作物の栽培について学んでいたそう。充実した大学生活だったと話し、さらに網走にいた4年間で、北海道の食の豊かさを実感したと言います。「畑のものもおいしいし、海のものもめちゃくちゃおいしくて。漁師さんからもらったオホーツクのホタテのおいしさにはびっくりしました」と振り返ります。

Yamazaki_14.JPG社内では厳重な衛生管理のために、こちらの格好に変身する田形さん

楽しかった4年間を経て、卒業後は地元の静岡に帰るつもりで静岡本社の「ヤマザキ」の入社試験を受けます。

「子どものころからヤマザキは知っていて、静岡ローカルで放送している煮豆のCMソングとか、なじみがあったので(笑)。また、原材料の生産から力を入れているところにも共感できるところがありました」

大学が北海道だったこともあり、旭川工場での原料管理を任せられたそう。「入社してからもう7年になりますが、ずっと旭川なのですよ」と笑います。その間、職場で知り合った女性と結婚し、7月には男の子のパパに。「お父さん、頑張らなきゃという感じです」とニッコリ。

旭川の暮らしについて、「だいぶ慣れましたけど、雪の多さにはびっくりしました。網走と比べてもめちゃくちゃ多くて。どうも雪かきが苦手で...」と苦笑。とはいえ、「都市機能があって程よく栄えていて、程よく自然もあって、あちこちへのアクセスもいいし、暮らすにはとてもいい環境だと思います」と話します。

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いつ食べても「おいしい」と思ってもらえる惣菜を旭川から全国へ

仕事の面白さややりがいについて尋ねると、「生産者さんたちと栽培について話したり、改善点を探ったり、コミュニケーションを取りながらのやり取りが自分としては面白いと感じています」と田形さん。管理しているデータなどを見ながらやり取りを重ねる中で、改善のヒントが得られることもあります。すべてはおいしいものを作るためです。

「この仕事を7年やっていても、日々勉強ですし、手探りなところもまだまだあります。畑の状況もジャガイモの生育状況も、その年の天候によって違いますし、保管方法も含め、より良くするための方法を常に探っている感じです」

ジャガイモの栽培、収穫、保管と1年をかけて管理をしているため、今年チャレンジした取り組みの成果が分かるのは翌年、翌年にチャレンジした結果はさらに次の年と、どうしても長い期間が必要になります。

Yamazaki_15.JPGとても大規模グループの会社ですので、連携がとても大切です

「とにかくジャガイモのおいしさの安定化を進めていきたいですね。天気など自然環境に関しては僕たちの力ではどうしようもできませんが、どんな状況であっても安定的に高い品質のものを調達できるよう、栽培から関わるのが僕の部署の役割なので」

すっかり旭川工場の中核メンバーとして活躍している田形さん。会社の看板商品であるポテトサラダの原料管理を担っていることに誇りを持っている様子です。

「僕は生産や原料管理の仕事がメインですが、各部署でそれぞれのスタッフがおいしいものを作ろうと切磋琢磨しています。いつ食べても『おいしい』とみなさんに思っていただけるものを、これからも旭川から全国へ送り出していきたいですね」と、最後にそう話してくれました。

Yamazaki_9.JPG工場のみなさん、少しだけ見える目元が笑顔!

株式会社ヤマザキ 旭川工場
住所

北海道旭川市近文町20丁目1120-23

電話

0548-28-6650(静岡本社代表番号)

URL

https://www.yamazaki-grp.com/


原料産地近くの工場で製造し、おいしさを追求。ヤマザキ旭川工場

この記事は2023年6月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。