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このまちのあの企業、あの製品
安平町

手作り木製遊具のある園庭。未来を築く力を育むおいわけ子ども園20230405

手作り木製遊具のある園庭。未来を築く力を育むおいわけ子ども園

近年、子どもが育つ「環境」に関心の高い保護者たちから注目を集めているのが安平町。

子どもを主役に考えた町づくりを行い、ユニセフが推進する「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」を実践する自治体に日本で初めて承認された町です。2023年春に開校する町立の小中一貫校「早来学園」も話題になっていますが、就学前の子どもたちが通う2つのこども園も素晴らしい環境と方針で運営されています。

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安平町の2つの認定こども園のうち、今回は「おいわけ子ども園」におじゃまし、山城義真園長に園のことをはじめ、園の仕事などについてお話を伺いました。

「未来を育てる」という理念のもとに開園したこども園

取材時は、季節外れのあいにくの雨。

追分エリアにある「おいわけ子ども園」は、園庭が素晴らしいと聞いていたので、子どもたちが外で遊んでいる様子が見られずに残念だなと思いながら園の中へ。雨の園庭には、木製の遊具があちこちにありましたが、どれも素朴な感じがします。

玄関で迎えてくれたのは、園長の山城先生。人懐っこい笑顔で「どうぞ、どうぞ」と中へ案内してくれました。

oiwakekodomo3.JPGこちらが園長の山城先生。笑顔がとっても素敵です!

中に入ると、雨でがっかり...なんてことを吹き飛ばしてくれるような、ワクワクする木製遊具が並んでいます! 登ったり、下りたり、組み立てたり...。最初から遊びが決められた遊具ではなく、自分たちで工夫して遊べるようなものばかり。大人でも想像力がかきたてられます。

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このおいわけ子ども園は2017年に開園。前身は、追分エリアにあった私立の保育園、町立の幼稚園、へき地保育所の3つ。これらを一つにまとめ、公私連携・幼保連携型認定こども園になりました。

「3つの園が一つになるというのはそれなりに苦労もありましたが、各園で取り組んでいた良いところを吸い上げ、地域の方たちや保護者の方たちの意見も伺いながら、園を運営しています。手探りしている部分は今もまだありますが、子どもたちが自分たちで未来を切り開いていく力を育むという理念を持ち、そのために何をするべきかを考えています」

ある程度の年齢になると、大人が決めたことに従っているほうがラクと思うことはあります。しかし、自分は何をやりたいか、何をやるべきかを自ら選択し、決めていくことは、生きていく上でとても大切。人任せの人生ではなく、自分自身の人生を生き抜いていく力は一日で身に付くようなものではありません。

「開園のときに掲げたのが『未来を育てる』。幼少期に自分で選び、自分で決める力を養うことは、想像する力、創造する力も育みます。何があっても乗り越えていける心と体の基礎力を、遊びを通じて育んでいきたいと考えています」

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何もなかった園庭に、職員手作りの木製遊具を設置し保育環境を整備

oiwakekodomo14.jpg職員のみなさんでつくった園庭


「園ができたとき、園庭には何もなかったんです」と山城園長。新しい大型遊具を購入して設置する話もありましたが、それは、子どもたちの創造力を育むことにはつながらないと判断し、子どもたちが主体性を持って遊ぶことができる園庭を手作りすることにしました。


保育環境の整備に関わる研修などを行っている、保育環境研究家の木村歩美さん(おおぞら教育研究所代表)にアドバイザーとして入ってもらい、職員や地域の方たちと一緒に園庭づくりが始まります。

「木村さんからは既存の大型遊具よりも、在園している子どもたちに合わせて遊具を手作りしていったほうがいいとアドバイスをもらいました。遊具を手作りと言っても、僕たちは大工仕事の経験もないですし、最初は職員全員工具の使い方からのスタートでした」

こんな滑り台があったら、こんなブランコがあったら、こんな基地みたいなのがあったら...。遊具を作っていく作業は大変ではありましたが、職員にとってもいろいろな気付きや学びがある時間だったよう。

oiwakekodomo7.JPG先生たちのイキイキとした笑顔が光ります。

「子どもたちの動きを予想しながら皆で話し合って作っていくのですが、子どもたちは僕たちの予想をはるかに超えた動きをします。そのたびに手直しをしたり、新たに作り上げたり。木製だから簡単に手直しできて、自分たちに合った形に変えていけるというのはとてもいいんです」

手作りの木製遊具で遊びはじめてから、子どもたちが自分たちから「今日はこんな遊びをしたい」「今日はこんなことをしよう」と言ってくるようになったそう。

「これまでは大人が細かく遊びの活動内容を考えて、それを子どもたちにさせているという感じだったのですが、環境に力を入れ始めてからは子どもたちが自発的にのびのびと遊ぶようになりました。さまざまな遊びを通じて、社会性を身につけ、心も体も成長。子どもたちの成長は、私たちにとっても刺激になります」

園庭だけでなく、園内にも同様に手作りの木製遊具を設置し、園全体が子どもたちにとって想像力を育む大きな遊び場になっています。

以前は園庭の環境に力を入れている園の見学に行き、勉強させてもらうことが多かったそうですが、最近は逆に見学に来る同業者も増えているそう。「それでも終わりはないので、僕たちも常に勉強ですね」と山城園長。

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馬に触れたり、町の商店街を訪れたり、地域との関わりも深める

開園から6年、最初に作った木製遊具も整備が必要になってきたそう。今の在園児ならどのように遊ぶかを考えながら、直したり、バージョンアップさせたり、新たに作ったりという作業を行っています。

「園庭の環境が整い、少しずつほかの活動も行っています。たとえば、安平町は競走馬の町ですが、子どもたちは馬に触れる機会が少ない。馬に触れることがないまま大人になる人が圧倒的です(笑)。せっかく馬の町に暮らしているのだからと考え、2年前から月に2回ホースデーを設け、馬と触れ合っています」

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馬を飼育している町内のNPO法人がミニチュアホースを連れてやってきてくれるそう。子どもたちは馬に触れたり、背中に乗せてもらったり、冬は馬そりも体験。

「あとは年長からスキー体験も入れています。追分エリアはスキー場があるので、小学校からスキーの授業があります。小学校に入る前に、少しでもスキーが楽しいと思ってもらえるように基本を教えています」

小学校の先生からは、保育園で経験させてくれているので1年生から滑れる子が増えましたと嬉しい報告も届いているそう。

「ホースデーも近くの方の協力があってできることですし、スキーは卒園した子たちが小学校でも楽しく過ごしてもらえたらと考えてはじめたこと。子どもたちの育ちは、園だけで完結するわけではないので、地域との繋がりや小学校、中学校との連携も重要だと考えています」

保育園が地域の人たちと交流を持つことは、地域で子どもたちを見守ることに繋がります。ハロウィンの時は、子どもたちが仮装をして、町内を散歩。商店街を回って、皆さんからお菓子をたくさんもらいます。商店街の方たちも毎年楽しみにしているそうです。

「コロナもおさまってきましたし、ハロウィンだけでなく、今後はもっと地域との交流も増やしていきたいと考えていますし、一緒に何かできるようなこともあればとも思っています」

職員の労働環境を整えることが、より良い保育にもつながる

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職員の半分近くは、前身の3つの園で働いていた人たち。「未来を育てる」という理念のもと、抜群のチームワークで保育にあたっています。残業もほぼなく、その日の仕事はその日のうちに終わらせるというスタイルが定着。

とはいえ、開園してすぐのころは残業も多かったそう。このままでは立ち行かないと考え、仕事内容と量の見直しを行い、本当に必要なもの、そうではないものを振り分けました。またITツールも導入し、保育以外の仕事の作業量を削減。かつては回覧だった事務連絡の伝達も、LINEやslackを導入して一斉に伝えることができるようになり、さまざまな情報もツール内で共有。休憩時間に事務作業をする職員が多かったのですが、休憩時間もきちんと休めるようになり、月に2回あった職員会議を月1回に減らしても問題なく運営できるようになりました。

「職員たちに心と体の余裕がないと、子どもたちと接するときも影響が出てしまいます。園庭の環境整備はもちろん、職員の働く環境もきちんと整備していくように進めてきました」

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福利厚生にも力を入れ、給与などの待遇も配慮。コロナのときも、安心して働けるように努めました。そうした運営努力もあり、職員の離職率は低いそう。園の保育方針や保育環境の素晴らしさに共感して「ここで働きたい」と応募してくる人も多いそうですが、待遇面の良さもプラス要素になっているようです。

卒園後も子どもたちを見守りたい。プレイパーク作りにも意欲的

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おいわけ子ども園を卒園した子たちは、追分に1つだけの小学校へそのまま進みます。ずっと一緒に育っていくからこそ、そこに関わる大人たちの連携も重要です。「こども園で育んできた力を小学校に行ってもしっかり生かせる教育ができる環境を町には期待したいですし、僕たちも一緒に何かできればと思います」と山城園長。

おいわけ子ども園の2階には、子育て支援センター、放課後児童クラブなどがあり、地域の子育ての拠点にもなっています。

「小さな町ですし、入園前から子どもや保護者の方と関わりを持たせてもらい、さらに園を卒園して終わりではなく、僕たちも子どもの育ちを見守り、関わりたいと思っています。今後は追分地区でプレイパークを作りたいと考えています。卒園した子どもたちが、小学校へ行ってからものびのびと遊べる場所、心と体を開放できるような場所を作れたらと考えています」

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山城園長はすぐ近くにあるお寺のお坊さん。追分で生まれ、高校を卒業するまでこの町で暮らし、大学卒業後、町に戻ってきました。地元が好き、子どもが好きだからこそ、この町で育つ子どもたちに自分で未来を築いていける力をつけてほしいと願っています。その想いは、職員の皆さんももちろん一緒。進化し続ける園庭や保育内容、さらに地域との連携など、これからの動きも気になるこども園です。

おいわけ子ども園
おいわけ子ども園
住所

北海道勇払郡安平町追分本町6丁目54番地

URL

http://www.oiwake-kodomoen.com/


手作り木製遊具のある園庭。未来を築く力を育むおいわけ子ども園

この記事は2023年3月13日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。