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このまちのあの企業、あの製品
安平町

約50年、輸入農機で農業の効率化を後押しする(株)IDEC20230302

約50年、輸入農機で農業の効率化を後押しする(株)IDEC

安平(あびら)町にある(株)IDEC(以下、アイデーイーシー)は、アメリカ、ドイツ、アイルランドなど約10ヵ国から農業用・酪農用の機械を輸入し、全国の販売店やディーラーに卸している会社です。昨年に完成した新社屋は、一部が吹き抜けのガラス張りになった建物で、機械のパーツを組み立てる工場も併設しています。

広い敷地内の一角には、鮮やかな色の「はたらくクルマ」や、トラクターに連結して土起こしや種まきなど使う大きなアタッチメント(装置)が並んでいました。エントランスに入ると、壁一面の世界地図パネルが目に飛び込んできます。アイデーイーシーは創業以来50年近くにわたり、世界を相手にしたビジネスで成長を続けている企業なのです。では、なぜ安平町に会社を?くらしごと取材班、インタビューに行ってきます!

idec01.JPG世界地図のパネルが目立ちます

始まりは酪農家、より良い農機を求めて海外へ

迎えてくれたのは、工場長の村上英紀さんと、営業部の堀 文喬(ふみたか)さん。社長の照井幸広さんは、残念ながら奄美群島の徳之島へ出張中とのこと。堀さんが「取引先は全国です」と話す通り、北海道だけでなく日本全国を忙しく飛び回っているそうです。

創業者の会長は元々、安平町の酪農家だったといいます。国産の農機が壊れやすく困っていたことから「頑丈な機械が欲しい」と、自ら海外へ行って買い付けてきたのが会社の始まりなのだとか。半世紀ほど前の話ですが、当時は海外での直接買い付けは珍しかった時代、なんというバイタリティ!

「うちの会社は、アメリカのクーンナイト農機を国内で最初に直輸入したパイオニアです」と、堀さんは胸を張ります。土作りのために堆肥をまく「マニュアスプレッダー」や家畜の飼料をかくはんして給餌する「ミキサー」など、クーンナイト製品はいまでも変わらない売れ筋のひとつ。父親の後を継いだ照井社長が徳之島で商談中の製品も、クーンナイトの給餌用ミキサーだったそうです(ちなみに、徳之島は黒毛和牛の子牛を生産していることで有名です)

idec02.JPGこちらがクーンナイト

取り扱いは欧米諸国を中心に約10ヵ国

アイデーイーシーは欧米からニュージーランドまで10ヵ国ほどのメーカーと取引があり、幅広い種類の酪農用・農業用作業機を扱っています。ここまで海外の取引先が増えたのは、新製品が出れば視察に飛んでいき、役立つものを先取りして仕入れてきたこと、また、販売店を通して「こういった機械はないか」という農家さんのニーズにこたえてきたことからだそう。

多く売れている地域は、大規模農業・酪農で知られる十勝などの道東エリアで、現在の主力商品は、鮮やかなブルーが特徴のドイツ・レムケン社のもの。堀さんは、こう話します。

idec03.JPG若きエース、堀さん。

「世界には何百もの農機メーカーがありますが、レムケン社もそのひとつ。10年ほど前に、うちの社員が見つけて取り扱いを始めました。農地をお借りしてデモストレーションをしたり、展示会を行ったりと販促活動を進めていった結果、『レムケン社の機械は使いやすくて丈夫』というイメージがユーザーさんの間に浸透していきました」

横のつながりが強いといわれる農家さん同士では、良いことも悪いこともすぐに広まっていくといいます。近くの農家がレムケンの機械で畑作業をしているところを見て、「あちらがレムケンを入れたから、うちも使う」と注文をしてくれる農家さんも少なくないとか。

実際に作業をしているところを、会社のYouTubeチャンネルで見せてもらいました。

idec08.JPGこちらがレムケン

アメリカ製のトラクターが引っ張っているのは、畝(うね)と種まきが同時にできるレムケン社のアタッチメント。同社が国内で初めて導入し、好評を得ている製品です。このアタッチメントは横幅が6Mありますが、コンパクトに折りたためるのが特徴。トラクターに装着したまま公道を走ることもできます。ボックス型に折りたたまれていく様子は特撮のロボットを見ているようで、子どもならず大人もちょっとしたワクワク感アリ!

ほかにも耕地に堆肥をまくマニュアスプレッダーや、牧草を刈ってロールにする作業をいっぺんに行うロールベーダーなど、その実力はもちろんですが、なんといっても見ていてカッコいい!もしかして、農家さんにとっては、「憧れの外車」のような魅力もあるのでは...。「そうですね。お客さんからすると、クルマみたいな感じでもありますよね」と、堀さんもにっこり。そうですよね、これは自慢できちゃいますよね...。

大きさだけじゃない、輸入農業機械のメリット

建物に併設された組立工場と、屋外の敷地に並んだ製品も見学させてもらいました。村上工場長がディーラーや販売店に機械を納品するまでの流れを説明します。

idec04.JPGかっこいい威厳のある村上工場長

まず、コンテナに積まれた輸入品はパーツに分かれた状態で届きます。そのパーツを組み立てて出荷するのが、工場での主な仕事。村上工場長は、納品に間に合うように日程を調整したり、製品を運ぶためのトラックやクレーンの手配を行ったりもします。
村上工場長の悩みごとは、若い人がなかなか来てくれないこと。「キツい仕事というイメージがあるのかもしれないけれど、うちではそんなことはないんですよね。未経験でも大丈夫だし、なんとかしてイメージを変えられないかなと思っています」

農場撮影のベテランで、車や作業機械好きのカメラマンは「あまり聞いたことのないメーカーばかりですね!」とやや興奮気味。「インチ工具とミリ工具を使い分けるのに戸惑いとかありませんか?」「確かに、国によって単位の規格が違うから、そういうことはありますねえ」と、工場長との話が弾みます。

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農地を耕す「プラウ」というアタッチメントを見ていると、こんなことも教えてくれました。
「うちの扱っている海外メーカーの製品は、非常に質の良い鉄を使っています。同じ作業量で使うと、国内産のプラウは1年使えば刃先がすり減ってダメになってしまう。でも、このプラウだと3年は持つんですよ」
なるほど、長く使える丈夫さも兼ね備えている、農家さんにとって頼もしい存在なのですね。

全国に発信!スタイリッシュなHPと動画でアピール

ところで、これからの日本は大規模農業でなければ生き残りが難しいといわれていますが、だからこそサイズの大きな外国産の農機やアタッチメントにいっそう人気が集まってきているのでしょうか。営業の堀さんは「そうですね」とうなずきながら、現在の農業における問題点を教えてくれました。

「大規模化が必要とされるようになった最も大きな要因は、なんといっても農業人口の減少にあるんですよ。農家として生き残るためには1人当たりの作業効率をどう上げていくか、そこにかかってくるんです」

輸入農機の需要は道内、そして全国でもますます高まってきています。日本中に、大型の頑強な輸入農機を必要としている農業者がいる。次代を担う若手農家さんはネットで積極的に情報収集としていることを踏まえて、堀さんは会社のホームページをスタイリッシュにリニューアル。また、製品やイベント情報を発信するYouTubeチャンネルをつくりました。

聞けば、堀さんは入社してまだ2年もたっていないのだとか。前職は広告代理店勤務で、それも福岡県に住んでいたそうです。村上工場長も「私もここに入って3年ぐらいですよ」と言います。アイデーイーシーは中途入社のスタッフが多いと聞いていましたが、このお二人はどのような経緯でこの会社に入ったのか、お聞きしてみましょう。

中途入社も歓迎、社長とフラットに話せる会社

営業の堀さんは25歳、福岡で航空関係の専門学校を卒業後、千葉県の成田空港で航空貨物のオペレーション業務をしていました。その後、福岡に戻って広告代理店に転職、営業と製作を担当します。成田時代に知り合った奥さんとの結婚も決まり、奥さんご出身の地、北海道へ移住することに。


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「道外に住んでいた私からすると、北海道は牧場や農業というイメージがあったんですよね。それに携わる仕事がしたいなと思ってアイデーイーシーに決めました」との答えが。入社してからは、農業に関する知識を得ることからスタート。上司について回りながらお客さんとの話で学んだり、自分で調べて知識をつけていったりしていると話してくれました。

専門学校時代に取ったフォークリフトや大型特殊免許もこの会社で役に立っているといいます。広告代理店に勤めていた経験も生かして、会社ホームページやYouTubeも製作。「これからはSNSも充実させていきたいですね」と意欲を見せています。結婚して恵庭市に住まいを構えた堀さん、休日には奥さんとふたりで道内をドライブしたりと、公私とも充実した暮らしを送っているそうです。

工場長の村上さんは、道北の天塩町出身で大工やトラック運転手などさまざまな仕事をしてきました。50歳を前にして、アイデーイーシーで営業部長を務めるお兄さんに「そろそろ一生の仕事を」と勧められて同社に入ります。「やったこともない初めての世界なので、最初は戸惑いがありました。いまはようやく慣れて仕事も軌道に乗ってきたところです」

仕事のやりがいをお尋ねしてみると「農作業が始まる3月ごろのピークに注文が殺到するんですけれど、納期に間に合わせるよう指示・分担をしながら機器を完成させるんです。製品を積み込んだ6台、7台のトラックをすべて見送ったとき、それが気持ちいいんですよ!」と爽快な表情に。

アイデーイーシーはほとんど残業のない会社で、村上工場長も家に帰れば奥さんと小学生のお子さん2人との大切な団らんを過ごす時間が十分にあるといいます。「うちの社長が本当に良い人で、目線も上からでなく、私たちと同じように話してくれるんですよ。従業員のことを第一に考えてくれて、仕事だけでなく家庭のことも相談できるんです」

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隣で堀さんも強くうなずきながら「社長にはなんでも言える感じですよね。新人の私が提案した会社のホームページやYouTubeについてもすぐにOKをもらいましたし」と、会社でのやりがいを話します。そういった社長のお人柄のためか、スタッフ同士の関係もとても良いのだとか。村上工場長は、アイデーイーシーで働く決め手を「なによりも安定ですよね!」と話していましたが、それはお給料や休日、福利厚生といった面だけではなく、社内の雰囲気の良さも含まれているのではと感じました。

現場と営業でどちらかが困ったときは連絡を取りながら助け合うなど、村上工場長と堀さんが実感を込めて語る連係プレーの取れた明るい職場から、今日も農家さんの頼もしいパートナーとなる農業機械や製品が道内へ、全国へと旅立っていきます。

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株式会社IDEC(アイデーイーシー)
住所

北海道勇払郡安平町早来北町64番地10

電話

0145-22-2237

URL

https://idec-jpn.com/

youtubeもご覧ください!


約50年、輸入農機で農業の効率化を後押しする(株)IDEC

この記事は2023年1月26日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。