コロナ禍の折、リモートワークや家と職場の往復だけで、たまには気分転換に外に出たい、という人も増えているのではないのでしょうか。
そんな状況からか、実は最近釣りを始める人が増えているのだとか。
今日は、釣り具専門店にして、道内一の店舗網を誇るフィッシュランドさんにお邪魔し、ほとんど釣り経験の無いくらしごとメンバーの目線で、釣りの楽しさや現状についてじっくり教えてもらおうと思います!
フィッシュランドさんの意外な歴史
まずお話をしてくれたのは、営業次長の斧さんです。
斧さんは94年に入社して以来、店舗での接客や店長業務を経て、現在は本部で各店舗をとりまとめていらっしゃいます。
何でも聞いて下さい!と言う斧さんに、まずは入社のきっかけや、ご自身の歩みや、フィッシュランドさんの歴史からお聞きしてみました。
こちらが営業次長の斧さん
札幌生まれ札幌育ちの斧さん、小さな頃からもちろん釣りは身近にあったそう。
「子どもの頃に父親に連れられて行ったのがはじまりです。そのとき、2日間全く釣れなかったのに、3日目から急に釣れはじめて。その楽しさが忘れられず、しょっちゅう川釣りや渓流釣りに出かけるようになりました。大学生になっても、勉強はあまりしないのに、釣りは一生懸命やってましたね(笑)」
いよいよ就職の段になり、就職先が見つからず困っているときに見つけたのが、フィッシュランドさんの求人でした。
斧さんは、採用されたのはたまたまだとおっしゃいますが、それはきっとなるべくしてなった、相思相愛の採用だったに違いありません。
ここからは、そんなフィッシュランドさんの意外な歴史についても教えてもらうことにします。
「もともとうちは、フィッシュランドという名前の釣り堀だったんです」
え!全く知らなかった予想外の事実に、のっけから一同びっくりです。しかも、釣り堀といっても、全天候型の室内釣り堀であり、札幌市内に何カ所もあったというのですから驚きです。1976年当時の札幌に、私たちの知らないレジャーがあったということ、たくさんの人がそこで釣り糸をたれている様子、などを想像すると何だかワクワクしてきます。
ちなみに、この釣り堀があったのは90年代の初めまでだそうで、残念ながら斧さんが入社したときにはすでになかったそうなのですが、釣り堀の一角にすぎなかった販売コーナーが、今や専門店として道内15店舗にも広がっていったのはどんな経緯だったのでしょうか。
釣り具の他、ウエアなどオリジナルブランドの商品も豊富です
「最初はもちろん、釣り堀利用のお客様用に開いていた小さな売店だったんですが、その釣り具の売れ行きがすごく良かったようなんです。だんだんと多くの種類を仕入れて販売するようになり、釣り堀を閉鎖したあとも釣り具店は残し、これが現在のフィッシュランド事業の始まりとなりました」
それから数年後に全国的な釣りブームがやってくるわけですが、まさに絶妙のタイミングで舵を切ったと言えそうです。
誰もが気軽に立ち寄れるお店を目指して
ここで、個人的に気になっていた「釣り具チェーン店」という呼び名の理由についても質問してみました。
「当時、釣り具を扱う店といえば、常連客の多い小規模なお店しかない時代だったので、『もっと誰もが気軽に立ち寄れる釣り具のスーパーマーケットをつくりたい』先代社長にはそんな想いがあったようなんです」
たしかに、釣り具専門店はたくさんありますが、初心者にはちょっぴり入りにくい部分があるかもしれません。そこに注目したのは、さすがに多くの事業を展開する基礎をつくった先代社長です。
ではこの「初心者や未経験者も気軽に立ち寄れるスーパーマーケットのようなお店」であるために、斧さんや皆さんはどんなことを心掛けているのか、聞いてみました。すると、、、
「多分、私どもは、他よりもかなりお客さんと会話をすると思いますよ」という答えがかえってきました。そして真剣な顔でこう続けます。
「なぜなら、まだ釣りのことが良くわからないという方、つまり聞きたいことがたくさんあるだろう方には、とにかくきちんとコミュニケーションをとって、お教えできることがあればお役に立ちたいなと思っているからです。例えば釣りって、何を釣るか?どこで釣るか?によって、必要な道具がかわるので、まずはそこをしっかり聞きますね。もちろん、そこが明確になっていない方には、逆にこちらから、こんな釣りはどうですか?とご提案します。さらにお話しして頂けるようであれば、いつ?誰と?場合によってはご予算は?とさらに詳しくお聞きして、最適なものをおすすめするようにしています」
実際、釣り未経験のくらしごとスタッフが、写真撮影を兼ねてフィッシュランドさんの接客を体験したのですが、こんなこと聞いていいのかな、と思うような質問にも丁寧に答えて頂いたり、釣れるコツを教えてもらったり、すごい楽しかったです!と、とても嬉しそうに話していました。(笑)
ちなみに、こんなこと聞いていいのかな?の「こんな質問」とは、「エサや虫にさわれないんですがどうしたらいいですか?」というものでした。。。が、「そういった方向けに、今は専用トングなんかもあるので大丈夫ですよ!」と、丁寧に対応頂いたそうです。
目先の利益よりも、まずは釣りの楽しさを知ってもらうこと、そのために最適な商品を提供することを重視する、きっと、こういった姿勢が、釣りニーズを開拓し、たくさんのファンを獲得することにつながっているのは間違いなさそうです。
太平店のスタッフさんたちと
接客の原点になった体験
ところで、販売員時代の印象に残っている出来事はありますか?という問いかけには、終始穏やかに語ってくれる斧さんが、さらに柔らかい表情になって、こんなことを話してくれました。
「ちょうど今ぐらいの季節(2月)ですかね、当時の僕と同じ歳くらいの方が来店されて、こんなことを言いました。『子どもと一緒にワカサギ釣りをしてみたい。時間もお金もあまりかけられないんだけど、なんとか子どもを楽しませたくて』」
90年代半ば頃、国や会社の多くが完全週休二日制を取り入れたこともあり、余暇を楽しもうという人が増えた時代でした。当時、テレビでも盛んに放映されてブームになっていたブラックバス釣りの影響などもあり、釣り具業界はかなり忙しい毎日が続いていたそうです。そんな中お訪れたのがこのお客さんでした。
「自身も子どもを持つ身として共感できたのもありますし、自分がはじめて父親と釣りに行った記憶とリンクしたのかもしれません。なんとかその想いを叶えてあげたい!そう強く思いました。このときの会話を、今もふと思い出すんです」
親子連れにも大人気。わかさぎ釣りセット
いつの時代も、親子で遊びに出かけた思い出は子どもにとっても親にとってもかけがえのないもの。たくさんの家族や親子の大切な思い出づくりに一役買う、釣りにはそんな側面もあることに気づかされました。
そして、斧さんはじめフィッシュランドのスタッフさんは、釣りの背景にある、お客さんのそんな気持ちにこたえようとして、一生懸命会話をするのだな、と改めて理解したのでした。
広がるお客様の層
さてここで、改めてお店のことを詳しく教えてもらおうと思います。
冒頭でもお聞きしましたが、最近釣りをする人が増えているそうで、お客様の層に変化はあるのでしょうか。
「フィッシュランドは、未経験者からベテランさん、釣り船も営む漁師さんまで、幅広くご利用いただいています。当社オリジナルブランドのアイテムも販売しているので、リーズナブルに揃えたい方にも多くご利用頂きますし、単に商品を買いに来るのではなく情報収集のために来店される方も多いですね。
最近はコロナウイルスの影響でアウトドア人気に火が付き、釣り人口が増えました。その中でも、今まで多くはなかった小さなお子様連れのファミリー層や、女性のお客様が増えてきたのが嬉しいですね。特に女性は、僕が入社した94年ころは、お店に来ただけで、え、女性が来た!ってびっくりするくらいだったんですよ(笑)。それが、今はもう珍しくなくなりましたね」
さらに、スタッフのほぼ全員が道産子で、北海道のフィールドに精通しているフィッシュランドさんには、旅行や週末の釣りで道外から来るお客さんも多いのだとか。
お客様の層は確実に広がっていると思いますが、今後、特にどんな方に来て欲しいですか?という質問には
「若い人や、お子さんをお持ちの方には特に来て欲しいですね」という答えがかえってきました。
「釣りは、というか釣りに限らず、外で遊ぶことは子どもにとって(もしかしたら大人も)不可欠だと思うんです。今の子はゲームとか楽しいことがたくさんあるし、難しいかもしれないけど。でも、せっかく、北海道という素晴らしいフィールドが身近にあるのだから、実際に足を運んでもらって、遊んでもらって、その素晴らしさを体験してもらいたいな~と本当に思いますね」
釣りの醍醐味について、「釣りが好きと言うより、外にいるのが好きなのかもね」と話してくれた、登山もたしなむ斧さんらしい言葉です。
お客さんを楽しませるには釣りというカテゴリしかなかった!
ここで、斧さんからの、「最初はちょっぴり心配でしたが、今や素晴らしい店長になってくれました」との推薦コメントとともに、太平店店長の小田さんにバトンタッチです。
太平店店長の小田さん
笑顔がとってもさわやかな小田さんは、石狩市出身の32歳。入社して13年、4年前からここ太平店の店長をつとめています。
まずは、入社のきっかけからお聞きしてみました。
「父の影響で、5歳とか6歳くらいから竿を持たされてましたね(笑)。海の近くに行くと、海鮮ラーメンとか、美味しいものを食べさせてもらえたので、それが楽しみでよくついて行ってました。もちろんこのお店も父と一緒に何度も来たことがありました」
でも、高校時代は釣りはちょっとお休みして、ソフトボールに明け暮れる毎日だったそう。
「寮に住まいながら旭川の高校に通い、北海道代表選手にもなるほどスポーツ一色の生活でした。でも卒業後は、家庭の事情もあって、進学して部活というよりは、就職の方が現実的だったので、面識のあった、当時の太平店の店長に相談しました。そしたらたまたま採用枠があって、うちに就職すれば?とお誘いをいただいたんです。信頼している方の言葉でしたし、自身も釣りが好きでしたし、断る理由はなかったですよね」
こうして無事入社が決まり、いち釣り客から、売る(接客する)立場になった小田さんですが、入社して改めて、お客さんを楽しませるには、やはり自分には釣りというカテゴリしか無かったなと気づいたそう。
ベテランスタッフさんともコミュニケーションばっちりです
「とにかくお客様を喜ばせたい、これは入社時も今も変わらない自分のモットーです。人に何かを教える、伝えるってすごく難しいことなので、どうしたら伝わるだろうかということをいつも考えています。例えば、商品について問われたとき、自分がどう思うかではなく、お客様が釣り場でどういった不便を感じているのか、何がうまくいかなくて苦労をしているのか、まずそこが重要で、実際のお客様の立場に立った商品の提案やアドバイスでなければ意味がないと思っています。便利な商品が新しく販売されたとしても、それは全てのお客様にとって便利なものではないでしょうし、一通りの商品は自分の釣りでも試して、それぞれの使い勝手の違いを記憶してお伝えするようにしています」
「実際のお客様の立場に立った商品の提案やアドバイスでなければ意味がない」 ついつい見失いがちですが、販売業に限らず、一番大事なことではないでしょうか。それを常に意識し、商品を自分でも実際に試してみるなどして努力を怠らない、そんな姿勢には、頭がさがります。
さらに、店舗販売でできることとして、こんなこともされるそう。
「釣りは一緒に行かない限り、実技を教えることはできませんので、店舗では糸をセットした釣り竿を実際に持ってもらい、『ブリならこれくらいの引きですね』と私が糸を引っ張って圧をかけてみたり、実践に近い形を体験してもらったりもしています」
まさに、体験型釣り具店!やはりこういったリアルなアドバイスや丁寧な接客は、ネット販売ではできない体験です。
すごい!最年少ながら、素晴らしい店長、と斧さんがおっしゃるのも納得です。
売らない販売員!?
ところで、小田さんは、売らない販売員と呼ばれていうるとのうわさがありますが(笑) と、投げかけてみると
いや、それはですね、、とあわてた様子の小田さん。ものすごく納得のいく説明をして下さいました。
「自分たちは商品の販売やアドバイスを行うことで、お客様の自己実現をサポートする存在です。なので、お客様がレジまで商品を持ってきても、どういう場面で使用するかを伺った上で、それがふさわしくない商品であったり、マッチしない組み合わせであれば、迷わず別なものをおすすめします。最初に持ってきた商品の方がすごく高価なものだったとしても・・・です(笑)。症状に合わせた薬でなければ効果がないのと同じで、当店で購入いただく際には、お客様のニーズにぴったりの処方箋をお出ししたい気持ちなんです。目先の売上よりも、お客様には長く楽しく釣りを続けていただきたいので、多少お節介に感じてしまう方はいるかもしれませんが(笑)そこは変えられないですね」
実際に、社長や専務さんもおっしゃるそうなのですが、「釣り具屋さんは病院みたいなもん」なのだそうです。
それは、まさにフィッシュランドさんとお客様との関係性を表したぴったりな言葉、に聞こえました。
聞けば、小田さんがパッと頭に浮かぶお客様の顔はざっと150人にものぼるそう!
「会話をすることでお客様を知り、またベテランの方々にはこちらが勉強させていただくことも多く、自然とコミュニケーションが取れるようになりますね。信頼関係ができると『この前おすすめしてくれたやつのお陰で、でっかいの釣れたわ~!』とまたお店に来てくれて、写真を見せてくれたりします。そういったやりとりがとても楽しいですし、幸せなんですよね」
自己実現はお客さんだけでなく、自分たちも
そんな小田さんですが、プライベートでは実は子育ての真っ最中!さぞや忙しいのではと思いきや、何と率先して定時退社をすすめるなど、働く環境づくりにおいても妥協がないのでした。
「自己実現って、お客さんだけでなく、自分たちにもあてはまること。お客さんをハッピーにして、自分たちもハッピーにならないと!」
その言葉通り、忙しい中でも時間を作り出し、得意なブリ釣りや、深夜のソイやイカ釣りに出かけているそうですが、今後チャレンジしてみたいことについても教えてくれました。
「今後は個人的に釣りの道具について、などをYouTubeにアップしてみたいですね。実は自分の子どもは5歳と7歳なんですがすでにユーチューバーデビューしてるんですよ!もちろん、妻の管理でなんですが。新しいおもちゃや食事を楽しんでいる動画をアップして楽しんでいます。釣りをする動画に関しては、僕が完全に裏方として全面サポートしてますけどね」
「あと、お店に関してはやはり近郊店での一番を目指したいですよね。北区・東区のお客さんが、気軽に入れる、「かかりつけ」のお店として、認識してくれるように、これからも頑張っていきますよ!」
小田さんのスマホは釣りに関する写真でいっぱい
今回の取材で強く感じたのは、斧さんや小田さんはじめ、皆さんが商品を売るだけの販売員ではないということでした。
「売らない」店長さんやスタッフさんは、お客さんに最適な処方を見つけるべく、一生懸命会話をしていました。
その接客をきっかけにして、これからも、釣りを通して、家族や人との絆を深めたり、北海道の自然の素晴らしさを知る方が増えていくことでしょう。
帰り道、完全インドア派を含め、4名いた取材陣全員が、『釣りって楽しそうだね』と口にしました。
これから何か新しい趣味をはじめたい人、たまには外に出たいなという人、密になりにくい釣りはいかがですか?
太平店には、創業当時から勤務し釣り堀時代を知る大ベテランのスタッフさんも
- 株式会社 フィッシュランド 太平店
- 住所
北海道札幌市北区太平5条1丁目
- 電話
011-773-9650
- URL
本社/ 北海道札幌市中央区南3条東4丁目1-20 EFビル
電話/ 011-219-2101