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札幌市

安心安全の沖縄食材でつくる家庭の味。うちなぁー泡盛館20200409

この記事は2020年4月9日に公開した情報です。

安心安全の沖縄食材でつくる家庭の味。うちなぁー泡盛館

今でこそ、北海道にいながらにして沖縄料理や泡盛を楽しむのは珍しいことではなくなりました。ゴーヤチャンプルーや海ぶどうを居酒屋で見かけても驚かなくなりました。オリオンビールだって生で飲むことができます。しかし、何事にもはじまりや、それを始めた人たちがいます。
今日ご紹介するのは、そんなお店の中のひとつ「うちなー泡盛館」。当時、札幌でもまだ沖縄料理のお店がほとんど無かった中で、沖縄の味を北海道に広めるべく営業を始めた、沖縄料理と琉球泡盛のお店です。店主の渡邊雅弘さんにお話をうかがいました

始まりは電化製品のイベント販売

さて、そもそもなぜ北海道で沖縄のお店を?という以前からの疑問を、渡邊さんにさっそくぶつけてみます。
札幌生まれ札幌育ちという生粋の道産子である渡邊さんと沖縄との出会いは、約20年前まで遡るそうです。
「学生の時に、たまたまアルバイト先で知り合った現在の妻に誘われて始めたのが、妻の父が営む電化製品卸会社での催事(イベント販売)の仕事でした」

え、電化製品? 飲食はおろか沖縄とは全くかけ離れていますが、どうゆうことなのでしょう。。。
聞けば、義理のお父様が代表を務める電化製品卸の札幌栄電社は、当時から札幌駅周辺のデパートなどで、催事販売を行っていたのだそう。しかし時代の流れと共に、電化製品の大型量販店があいついで札幌駅周辺に進出し、電化製品の事業だけでは経営が厳しくなっていったと言います。
そんな時、催事をやっていた関係で縁のあった本州のイベント会社から、沖縄の商品を扱ってみませんか、と声がかかります。

偶然にも、社長である義理のお父様は、お得意様やお客様を連れて沖縄旅行に行ったことをきっかけにして、昔から沖縄の歴史や状況に深い関心をお持ちだったとのこと。度々沖縄を訪れるうちに、どんどん人とのつながりも生まれ、何か沖縄に対してできることがないかと考えていたそうなのです。

そんな理由からも、とんとん拍子に話が進み、会社の中に沖縄物産事業部を立ち上げて、まずは催事からやってみよう、ということになったのでした。それが1990年代のこと。
渡邊さんは卒業後、正式に社員となり、その後めでたく奥様と結婚することになるのですが、ここで初めて沖縄の食材や商品に触れたのでした。
こうして始まった沖縄物販の催事は、手探りながらも、電化製品の催事をしていた縁で、今までと同じように札幌駅のコンコースや周辺のテナント施設で開催することができ、徐々に開催の機会を増やしていきます。
そうするうちに、札幌駅の地下街に常設の店舗をオープンし、時を置かずに同じく地下街に2店舗目をオープンさせるまでに物販事業部は成長したのでした。

「自分は、その頃は主に電化製品の方の仕事をしていたので、まだそんなに関わることは多くなかったのですが、でも沖縄物産事業部が急激に忙しくなっていったのを覚えています」

幸運なことにちょうどそのタイミングで、沖縄を舞台にした朝の連続ドラマの放送が始まり、沖縄サミットの開催があり、健康をテーマにした人気テレビ番組では沖縄の食材が取り上げられ、世間では沖縄ブームが巻き起こっていたのでした。当然、沖縄の商品を売る催事の人気も高まり、常設店舗の売上も増加。しかもそのころは北海道で沖縄の商品の催事を行っているようなところは殆どなく、ライバルもいない状態だったのです。

ちなみに当時の主力商品を聞いてみると
「まずはやはり黒糖ですね。かち割りにしたものなど当時は珍しく、人気商品でした。その他は泡盛、ウコン、ゴーヤ茶、フコイダンなど、健康に良いとされるものや、テレビで取り上げられたものがよく売れましたね」と渡邊さん。

utinaa9.JPGこちらが店主の渡邊雅弘さん

何だか、順調そのもののように聞こえますが、苦労した点は無かったのでしょうか

「そうですね、やはり距離があるので、送料の問題や、届くまでに時間がかかることや、場合によっては商品が届かないなどといったところですね。当時は、社長もかなり苦労したと聞いていますよ」

聞けば、いろいろな人との縁やつながりを通して沖縄の商品を卸してくれる会社を紹介してもらい、商品を安定的に仕入れることができるようになっていったそう。

いよいよお店がスタート

そうしてコツコツと沖縄の商品の物販を続けてきた背景があって、札幌駅地下のテナント運営会社から、是非、沖縄料理の飲食店もやってもらえないかと声がかかります。

「飲食業の経験自体が無かったので、さすがに躊躇しましたね。でもいろいろと配慮もしてもらって、条件を話し合ううちに、よし、やってみよう!となったんです。そこで一番大事になるのが、どんな料理を提供するかということでした。自分達は素人ですし、当時、札幌に料理のプロはたくさんいても、本場沖縄の料理を再現出来る人はほとんどいませんでした。そこで、方々探した結果、いわゆる"沖縄のおばあ"に来てもらうことになりました。私たちが提供したかったのは、あくまでも普段沖縄の人たちが食べている家庭料理だったので、まさにぴったりな人材に巡り会うことができました。
高級な食材を使ったり、アレンジしたり、創作したものではなく、安心安全の沖縄産食材でつくる家庭の味、というそのときのコンセプトは今も変わりません」

こうして、いよいよ沖縄料理の店「うちなあ〜」がオープンします。札幌駅地下という誰もが立ち寄りやすい立地や、本場沖縄の味をランチでもディナーでもリーズナブルに楽しめるとあって、多くのお客さんが訪れます。
沖縄に行ったことのある人からは、札幌で沖縄の味に出会えるなんて嬉しいという声が良く聞かれたそう。また、苦いと有名になりつつあったゴーヤも、思ったより苦くなくて美味しい、と評判に。
こうしてオープンから順調に沖縄料理のファンを増やしつつ、数年後無事にテナント契約期間の満了を迎えます。

そこで、渡邊さん達は選択を迫られます。これでいったん飲食部門は終了して、一段と人気の高まっている沖縄商材の物販の方にさらに専念するのか、それとも場所を変えて飲食店としても続けるのか。

「お店に通ってくれるお客様や、お世話になっている沖縄の仕入れ先など、いろいろ考えるとやはり簡単には辞められなかったですよね」
結果、紆余曲折はありましたが、札幌中心部の狸小路にあるビルの中に場所を移し、「うちなあ〜泡盛館」として新しいスタートを切ることになったのでした。

utinaa6.JPG一歩店に入ると、そこはもう沖縄です!

リニューアルを経て再スタート

移転した当初、最も苦労したのが、ビルの4階という場所による集客の問題だったそう。

「中心部ではあっても、そのお店に行ってみたいという目的を持ってくれないとお客様はなかなか4階までは上がって来てくれません。1階や地下にある路面店のように、歩いていてたまたま目に入るという偶然もほぼ期待できないです。たくさん公告を打てるお店や、名前で店のことがわかるチェーン店と違い、入ってみないとわからないというのは、ある意味賭けですからね。お客さんもリスクがありますよね」と、渡邊さんが当時のことを振り返ります。

課題はたくさんありましたが、渡邊さんがお店の責任者として常駐すると同時に、出来ることからコツコツと取り組んでいったそう。例えば、それまではほとんど装飾のないシンプルな店内だったのを、琉球衣装や、泡盛の各蔵元の暖簾や、シーサーや、三線といった、沖縄を感じさせるもので埋め尽くし、お客様が一歩店内に入れば沖縄を感じられるようにしました。
また、泡盛は瓶(かめ)ごといくつも店内に並べ、インテリア的要素とともに、飲み放題利用のお客様が自由に好きなだけ汲めるという楽しみを提供するようにしました。

「おかげさまで、店内の雰囲気も好評で『ここでオリオンビールや泡盛を飲むと、また一段と美味しく感じるね』と言って頂くことが増えました」

utinaa10.JPG何と時間内なら何回汲んでもOKの泡盛! 飲み比べて自分のお気に入りを探す人が多いそう

もちろん、メニューについても、安心安全の沖縄産食材でつくる家庭の味、というコンセプトは変わりませんが、バリエーションを増やしたり、この店でしか食べられない目玉商品も改めてアピールしたり、ランチタイムにもお得なお食事メニューを提供したりと努力を重ねました。

お店の宝はスタッフ

しかし、最大の特徴は何と言っても接客を担当するスタッフです。驚くことに、現在7名いるアルバイトさんは全員沖縄出身、正真正銘のうちなーんちゅ(沖縄の言葉で沖縄の人を指します)なのです!いったいどうしてそんなことが可能なのかを尋ねると、ここでもやはり人との縁がきっかけでした。

「お店に来てくれるお客様で、北大(北海道大学)の先生がいるのですが、誰かアルバイトできるような人がいないかと相談したところ、紹介を快諾してくれて。その時紹介してもらった学生さんが沖縄出身の子だったのですが、そこから代々繋がって、今でも常に沖縄出身の北大生さんたちが働いてくれているんです」

実際に働いてもらうと、想像していなかった副産物がさくさんあったそう。
「北海道のお客様に、沖縄のものを提供したり説明したりすることにすごくやりがいを感じているとみんな口を揃えて言ってくれます。改めて自分の出身地に誇りを持つことができるみたいで。一方でお客様も、沖縄の人に接客や説明をしてもらうことは、より満足度が高いようなんです。なので、普通の居酒屋の客とアルバイトという関係よりも、よりフレンドリーな関係になることが多いですね。お客様から『三線弾いてよ!』なんてお願いされることもしょっちゅうです。もともと弾ける子はもちろん、店に来てから練習して楽しんでる子もいますよ」

お話を聞いていくと、この店の居心地の良さの理由が改めてわかって来ました。
接客してくれる店員さんの言葉にはほのかに沖縄のイントネーションが残り、お願いすればBGMに生の三線が流れ、出てくるゴーヤも、アグー豚も、島らっきょうも全て沖縄のものなのだから当たり前です。ここは札幌の中にある沖縄だったのです。

utinaa3.JPGランチメニューはボリュームたっぷりのものが盛りだくさん

これからの目標

改めて、これからやってみたいことや目標を聞いてみました。
「若い方にも、沖縄の魅力や泡盛の美味しさをもっと伝えて行きたいですね。おかげさまで40代〜50代を中心に年配の方まで幅広くご利用頂いていますが、20代の方も増えてくれるとすごく嬉しいです。泡盛は蒸留酒なので身体への負担が少なく、二日酔いになりにくく、くせも少ないので飲みやすいんです。うちではサワー類もロックで提供するのと同じ泡盛を使用しています。実は、泡盛の蔵元さんたちからは、北海道では美味しいお酒がたくさんあって、なかなか泡盛の需要が増えないという声を聞くんです。うちでできることとして、せめていろんな泡盛のイベントを開いたりして、少しでも美味しさを広めて行きたいですね!」

その言葉通り、お店のFBには、三線教室や、"うちなあ〜ないと"という飲み放題+抽選会といった様々なイベントがUPされています。それをきっかけに新たに来店してくれる方も徐々に増えているそう。

何事もコツコツと積み重ねて来た渡邊さんに、今までで一番嬉しかったことも聞いてみました。
「やっぱり、お客さんの 『ここに来ると沖縄を感じられて嬉しい』とか『沖縄で食べたより美味しかったよ』とか『三線の音色っていいね』などの、楽しく過ごせたよという声が一番嬉しいですね」

utinaa16.JPG色鮮やかな琉球ガラスで飲むとまた格別

そういえば、いつもニコニコと接客している渡邊さんですが、お店では忙しくて三線を弾く時間も無さそうですね、という質問には、何と「三線は聞く専門です!」との応えが!?「音楽を聴くのは大好きなんですけどね。歌ったり弾いたりはダメなんですよ~~」と渡邊さん。三線を構えての撮影もあっただけに、失礼ながら、くらしごとチーム爆笑です!

さて、取材では今までで一番大変だったことを良くお聞きするのですが、、、恐らくというか間違いなく、今、ですよね?
「そうですね。正直、2018年の胆振東部地震のときよりも今の方が深刻ですね」

暇なんで、いくらでもインタビューしてもらっていいですよ、と渡邊さんは笑いますが、そのダメージは想像に難くありません。
「みんなが大変なときですから、こんなときこそ気晴らしや息抜きに沖縄に来て下さい、とほんとは言いたいんですけどね(笑)。でも万全の体制で営業はしていますが、万が一にもお店で感染したなんてことになったら、それこそ取り返しがつきません」

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他の多くの飲食店も同じかも知れませんが、来て欲しいけど万が一何かあったら、、というこのジレンマ。。本当に1日も早く感染の勢いが終息するのを願うばかりです。

最後に、沖縄で好きな場所は?という質問には、「何も無いような場所が好きですね。たとえば本部(もとぶ)という地域の、ふくぎ(沖縄や奄美地方で見られる常緑高木)並木の景色は落ち着きます。昔ながらの沖縄の空気を感じられるようなところが好きです」と教えてくれました。

その言葉はそのまま、お店で提供される素朴な味にも繋がっているようです。

残念ながら今(4月9日現在)は、是非お誘い合わせの上みんなでお店に足を運んで下さいね、とは、言いたくてもなかなか言えない状況にあります。
ですので、日常を取り戻したあかつきには、是非お店を訪れてみて下さい!そして沖縄を体感してみて下さいね

沖縄料理&琉球泡盛 うちなぁー 泡盛館
沖縄料理&琉球泡盛 うちなぁー 泡盛館
住所

北海道札幌市中央区南3条西5丁目36-1 F-DRESS5番街ビル4階

電話

011-215-0320

URL

https://www.facebook.com/pages/category/Kitchen-Cooking/沖縄居酒屋-うちなぁー-1637846456515740/

取材当時の情報です

お店は現在、閉店しておりますのでご了承ください


安心安全の沖縄食材でつくる家庭の味。うちなぁー泡盛館

この記事は2020年3月11日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。