北海道名物の一つに数えられるラーメン。そして、北海道は日本一の小麦生産地。ならば道産小麦100%のラーメン(麺)をつくろう!...と、誰もが思い描くはず。しかし、道産小麦だけでつくろうとすると、うまくまとまらない、すぐに切れるなど課題が多く、一筋縄ではいかないため、現在も多くのラーメンが外国産小麦でつくられています。しかし、国内一の小麦の産地である北海道から道産小麦のラーメンを発信したい!さらに、道内の小麦農家を応援したい!という思いから製造技術を確立。他社に先駆けてその課題を克服し、道産小麦100%のラーメン(麺)をつくりあげたのが、株式会社望月製麺所です。今回は、北海道登別市にある同社の工場にお邪魔しました。
工場内を見回すと手前ではラーメン、隣ではうどん、その奥では蕎麦とさまざまな商品がつくられています。その中に我が子を見守るような優しい眼差しで、次々と生み出される製品を見つめている男性がひとり。
「いろんな麺をつくっているでしょう?ウチは少量多品種でね。この工場では全部で100種類くらいの商品をつくっているんですよ」と、教えてくれたのが工場長の小野信也さんです。
工場長の小野信也さん。
来るもの拒まずの麺づくり!
昔はこの辺りにもいくつか製麺所がありましたが、時代の流れとともに減っていったんだそう。
「でも、飲食店は続いているので、麺をつくる業者は必要。他の製麺所に来ていた注文をウチでこなすようになったのが、品種が増えた理由の一つです」
他にも、大手製麺メーカーではある程度まとまった量でないと採算が合わない注文も、小回りの良さが強みの同社では対応できることが多い...という理由もあるそうです。
「『地元の特産品をラーメンに練り込んでほしい!』という自治体や『小麦の種類にもこだわった麺がほしい』といった個人のラーメン店など、『来るもの拒まず』で大抵の注文はお受けします。その結果、たくさんの商品を手掛けるようになったんです」
これまでには、竹炭やトマト、ピーマン、しいたけでラーメン、なんてユニークなもののハナシもあったのだとか。
「もちろん、すべてがうまくいくわけではありませんが、せっかくウチを頼ってきてくれたからには、まずチャレンジしてみるというのがモットー。頭を抱えてしまう依頼ほど、なんとかしてあげよう!と燃えることが多いです」
厚みや柔らかさを確認する小野さん。
ラーメンを電気毛布で温める?
同社が道産100%の麺を最初につくったのは、もう20年近く前のこと。当時は今ほど製粉技術も高くないのもあり、苦労したそうです。
「麺帯(小麦を練ってシート状に伸ばしたもの)をつくっても、水分を保持できず、すぐにボロボロと割れてしまいました。特に冬場の乾燥には弱かったですね。
私たちは、練り時間や加水具合、圧延のスピードなどを変えては試し、変えては試し...。いくつもの失敗を重ねてようやく道産100%の麺を開発することに成功。時には麺帯を電気毛布でくるんで保温してから麺にするといった工夫をしたこともありました」
同社の麺は登別、室蘭地区の学校給食にも使われているため、皆さんに安心して食べてもらうためにも品質の安定が第一、とも話す小野さん。
「そのために、いつでもおいしい麺をつくれるよう工場の環境を整えていかなければなりません。また、当社は細かなニーズにも対応出来るのが強みですから、当社の製麺技術で多くの人に喜んでもらえるよう、腕を磨いていきたいです」
情熱のある店主の気持ちに応えたい。
最後に、代表取締役の望月一延さんにもお話を聞きました。
「当社では北海道産小麦100%のラーメンをはじめ、うどん、蕎麦、パスタなど、道産原料にこだわった数多くの商品を製造しています。こだわりの麺づくりに取り組む理由は、北海道の小麦生産者を応援したいという気持ちはもちろんですが、他社とは違う独自技術を磨いていきたいという思いもあるからです」
代表取締役の望月一延さん
小ロットにも対応できる『小回りの良さ』が自慢の望月製麺所。なので、お客様からのニーズも多種多様です。『自分がつくったこだわりのスープに合う、とっておきの麺をつくってほしい...』というような、ラーメン店・店主からの注文も少なくないようです。
「食品会社というと単純作業のイメージがあるかもしれませんが、当社の麺づくりは既成概念にとらわれないアイデアとチャレンジが不可欠。ある意味、非常にクリエイティブな仕事だと自負しています。
時にはみんなで頭を抱えてしまうような要望を受けることもありますが、情熱ある飲食店オーナーや料理人の気持ちに応えるのも当社の使命。これからも、できる限り彼らの理想をカタチにするため知恵を絞っていきたいですね」と望月さんは未来を見据えています。
- 株式会社望月製麺所
- 住所
北海道登別市新栄町1番地14
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