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恵庭市

森林を無駄なく資源に変える! エニワ林工(株)20190520

森林を無駄なく資源に変える! エニワ林工(株)

風の冷たさも大分緩んだ3月のある日、取材陣は北海道恵庭市にある自然公園に向かいました。
今日の目的は、ずばり森林作業のデモンストレーション見学。
北海道における林業の担い手不足の問題を知ってから、少しずつ林業業界の勉強を重ねてきたくらしごとチームにとって、まさに参加必須のイベントです!

ということで、今回は普段なかなか目にすることのない、自然を相手にする森林作業の一部始終をレポートします。

森林の木が木材になるまで

今日、作業の解説をしてくれるのは、北海道恵庭市にあるエニワ林工株式会社の枝廣崇夫さん。
東京生まれ東京育ちながら、山好きが高じて北海道で林業に生きる道を選んだ方です。

5D3B4415.JPG趣味はスノーボードという枝廣さん

マイクを握る枝廣さんの後ろには、特徴的なカタチをした重機がずらり。
ちなみに5台の総額は1億円越え!だそう。行政からの補助金がでる場合もあるとのことですが、林業事業体として全てを揃えるとなるとかなりの覚悟が必要そうですね。

さていよいよデモンストレーションが始まります。
まずはチェーンソーでの伐倒。今日のデモを行ってくれるエニワ林工(株)の社員さんの中では一番の若手林業男子が登場。
「ココに倒すように、という目印をつけておきました」という枝廣さんからのプレッシャーに見学者からも少し笑いがこぼれます。
狙った場所にしっかり倒せるか、風向きなども計算しながら慎重に切れ目を入れていく若手林業男子。
見学者約20名ほどが見守るプレッシャーの中、ものの3分ほどで見事に目印のテープの真ん中に倒すことに成功!

5D3B4423.JPG大きな木も狙い通りに倒れ、歓声があがります

次に登場したのは「フェラバンチャーザウルスロボ」を搭載した重機。
キャタピラーで進む重機は一般の工事現場でも見られますが、今回見学した機体には鉄板で頑丈に運転席が架装されています。
というのも、このロボの主な役割は、道無き山林に重機を乗り入れ作業をするためや木を運び出すための道をつくること。
山の中を進むには、ここまで頑丈に守らなければ木々の枝が車体に突き刺さる危険があるからなのだとか。

eniwarinko1.JPG右の黄色い車体の先に搭載しているのがフェラバンチャーザウルスロボ。左のオレンジの車体の先に搭載しているのがハーベスタです。

一見ショベルカーのようにも見えるアームの先には爪とナイフが格納されて、木をはさむ、切る、土を掘るなどができる多機能のヘッドがついています。これはアタッチメント式で簡単に交換ができるそう。
山林の傾斜や土の状況、冬なら雪質などを見極めて道を開いていくことは全ての作業の生命線です。
このロボがつくる林道が不安定だったり、最適なルートでないと、その現場の効率は格段に落ちてしまうのです。

さて、そんなフェラバンチャーザウルスロボ、この会場では主に伐倒のデモを見せてくれます。
まずは数本立っている木の中で少し細めの木に向かい、アームを垂直に持ち上げ木の上部から等間隔に切断して行きます。
次には少し太めの別の木を地面すれすれの根元から切断しそのまま持ち上げて移動させ別の場所に積み上げて行きます。
さらには残った根っこを引っこ抜き断ち割ります。
あとは根っこの穴を埋めてならして終了。
あっという間に、何本もの木が生えていた場所は茶色い地面がむき出しの更地となりました。
この重機を運転しているオペレーターさんは10年以上のベテランが務めているそうで、木を見る目が必要とされるため、当初はもちろんチェーンソーでの伐倒など基本の作業経験を積んだそうです。同じ太さの木でも樹種によって重さや堅さが全然違うため、重機といえどもそれらの違いに対応した操作が必要になるのです。

5D3B4441.JPGつかむ、切る、土を掘る、など複数の作業を1台でこなすフェラバンチャーザウルスロボ。根っこごと引き抜くときには歓声があがります。

次に登場するのは「ハーベスタ」直訳すると収穫機。つまり育ったもの(木)を収穫する専門の機械です。
最大径600㎜もの大きな木を切り倒し、持ち上げ、枝を払い、丸太にする、しかもそれらの作業を同時に、一瞬とも言えるスピードで行います。ヘッドには枝を送るローラーや切断するチェーンソーが格納されていて、その作業姿はさながらトランスフォーマー!
巨大な木がまるでゴボウのようにいとも簡単に整えられ玉切されていきます。

チェーンソーで人力でやるとかなり時間のかかる枝を払う作業も、ハーベスタではあっという間。
木の根元側から横に持ち上げ、ローラーで送りながら枝をそぎ落とし、今度は根元側に向かってローラーで木を送りながら格納してあるチェーンソーで等間隔に切断して行きます。
ここで驚きなのが、オペレーターはただ単に切りそろえているのではなく、根元の切り口の色や質感を見て一瞬でその木の状態を見極め、さらにはサイズや節を見て、部分ごとに、建材になりうるのか、チップにした方がいいのか、どのお客さん向けなのか、使い道を決め容量を量り長さを決めるといいます。
重機を使って木を伐るのは一瞬・・・その一瞬の中で色々な事を見て思案し決めているのです。
「頭の中は常に数字と電卓、1回切ったらそれで行き先が決まるので」と枝廣さん。
まさにこちらも経験がなせるベテランの技なのです。

5D3B4468.JPGまるでトランスフォーマー! ハーベスタ

さて、ハーベスタにより切り揃えられ、積み上げられた丸太は「フォワーダ」という集材車輌によって大型トラックの待つ場所まで運ばれて行きます。

eniwarinko2.JPG

運転席の屋根の上でグラップルクレーンと呼ばれるアームを操作し、短い木材も、長材もバランス良く積み込まれていきます。長いアームを駆使することで、車輌はほとんど動かさずに木材を積み込めるのです。

フォワーダが作業をするかたわらで、今度は大きなお釜のようなものを搭載した車輌が、うなり声をあげ出します。
これは「チッパー」と呼ばれる移動式の木材破砕機です。つかむという意味のグラップルが、払い落とされた枝葉や根っこをそのお釜部分につかみ入れると、回転しながら石臼のように木を砕いていき後方のコンベアーからチップがはき出される仕組みです。

5D3B4502.JPG根っこや枝葉をあっというまに細かなチップにするチッパー

このお釜に入るサイズの木質のものであれば大体の物をチップ化することができます。
これを現場でできるのは運搬コストを下げるという面でも大きなメリットだと枝廣さんは話します。

さて、これらの収穫作業により積み上げられた丸太や木材を工場まで運ぶのが原木運材車です。
こちらの車輌は後部にグラップルクレーンがついていて、ドライバーさんはこのオペレーターを兼務しています。

5D3B4517.JPG10t原木運材車に切り出した木を積み込むドライバーさん

地上からすると結構な高所での作業ですが、慣れた様子で丸太を5~6本一気につかんでバランスをとりながら車体に積み込んでいきます。
そんなプロの作業を見ながら「色々な林業重機に乗りましたが、この10トン原木運材車の運転は重機の中でも一番難しかったです。ボディと接続しているキャビンがかなり回転するので、普通の人は恐くて乗っていられません(笑)原木運材車のドライバーさんはすごいんです」と枝廣さんは話します。
せっかく木を切り出しても、山から運び出してくれる人がいないと林業は成り立ちません。
林業にはこういったプロのドライバーさんも欠かせない存在なのです。

切り出した木にいかに付加価値をつけるか

一連の重機作業のデモンストレーションが終わると、今度は切り出された木がその後どうなるのか、の説明へ。
ここで突然枝廣さんから、見学していた皆さんへのクイズが!
「直径30センチの木は何立方メートルでしょう。末口二乗法で計算して下さい!」
(す・・・すえくちじじょうほう・・・???)くらしごとチームは完全にフリーズ(笑)
あとで聞いたところ、末口とは木の細い方の小口(切り口)の最小径を2乗したものに長さを掛けて計算する方法だそうです。
ちなみに今回の場合は、最小径で0.3メートル×0.3メートル×3.65メートル(の規格)=0.329立方メートル、が正解でした!
作業しながら皆さんは常にこの計算をして、仕事量を調整しているのだとか。

さて、私たちの目の前に用意されているのは、根元からトップまで5つほどに切り分けられた1本のトドマツ。
一番玉、二番玉、三番玉、と根元側から順に呼ばれるそうです。
本来製材品向けの上質な木で、一番玉などは一見ふっくらとしてキレイに見えるのですが、トドマツ特有の水分過多になってしまった状態で、製材品にすると割れてしまうためこの木はB級品にしかならないとのこと。
素人目には全くわかりませんが、少しの欠点でも大きく値段に差がつくそうです。
それではそれ以外の部分はどのような付加製品向けの材になるのでしょうか。枝廣さんが説明を続けます。

5D3B4414.JPG

一つは垂木(たるき)・胴縁(胴縁)と呼ばれる家の壁の中に入る枠材などの製材品。そして家の柱などに使われる芯持材(しんもちざい)。
現在では木材の乾燥技術が進んだ結果、今までは住宅材には不向きと言われていた樹種でも可能になったものもあるのだとか。

そして、木をかつらむきにしたものを何枚も重ねて強度を出した針葉樹合板は、ハウスメーカーからの需要や工事現場での型枠などのニーズがあります。
さらに木の先端に近づく三番玉より先になると曲がりや節などが出てくるため、細かく砕かれてチップやパルプ材になっていきます。
しかし、紙の需要自体が減少している今、パルプ材としてのニーズも頭打ちになりつつあります。
そこで考えたのが、断熱材のグラスウールの代わりとして使用できるウッドファイバーです。
これはチップをさらに細かく粉砕してぎゅっと固めたものですが、実際触ってみると、とても木からできているとは思えない程のふかふかの手触りです。
真っ先に使用感を教えてくれたのは大工さんだったそうですが、「グラスウールはちくちくして大変だが、これはとても扱いやすい!」と好評だそう。さらに色を選ばないので、トドマツでもカラマツでも関係なく使えるのも効率の良いところ。

「値段の部分でこれからさらに工夫して、もっともっと多くの場で使ってもらいたいですね」と枝廣さんは自信をのぞかせます。
さらに、チップをもう少し細かくしたものは、サラブレッドの育成牧場から声がかかり、足場用としてコースや厩舎からの道にひかれているそうです。

最後に残ったバーク(皮)は肥料やボイラー燃料になります。
バークや端材を最後まで無駄なく使い発電する事業は「バイオマス発電」と呼ばれ、循環型社会にとって魅力的な事業として期待されています。
本来はこのような目的でしたが、最近は補助金の関係などや、また集めやすいという理由もあって、本来もっと有効な使い道がある部分がバイオマス燃料として発電所に入るようになってきている現実があるということも話してくれました。
「丸太の供給業者としてそれはしたくない。すべてを燃やすために何十年も育ててきたんじゃないと僕は思うんです」と強い想いを語ります。
「林業は植えて・育てて・間伐して・ようやく製材となる木を収穫する。何十年もかかって収穫するんです。植えたのは何十年も前で、植えた人たちはすべてを燃やされるために植えたわけじゃない。木がきちんと育つように整備してきた人たちだってそうです。この木のきちんとした価値をみなさんにわかっていただいて、使われるべき場所で使われるように、循環する努力をしていくことが僕たち事業体のやるべきことだと思います」

5D3B4533.JPG林業のこれからについて熱心に語ってくれました

その言葉に林業に携わる事業体としての強いプライドがにじみます。
現場で今まで未利用材だった末木枝条(すえきしじょう/切り落とした部分のこと)をチップにして運びやすくするなどの努力の甲斐あって、最近ではやっと発電所に受け入れてももらえるようになってきました。

昨年亡くなった先代の会長は「あの造林地は誰々が結婚したときに植えたんだよな」と話しながら色々を教えてくれたのだとか。
「会長や先輩達が様々な思いを込めて作ってきた山や木を無駄にしたくない」その想いは林業のサイクルと同じように世代を超えて受け継がれていく姿に胸が熱くなるのを感じました。

地域の産業としての林業の未来

その後、デモ現場から移動して恵庭市内に実際に建築中の道産材100%の家を見学しました。
見学したデモンストレーションのように、今後はユーザー(住宅購入予定者)と住宅メーカー、林業業者がコミュニケーションをとり、ユーザーが原料となる木を目で見て選べるような場所を設けたり、見学会のようなものが増えたりすると、道産材ももっと認識してもらえるのではないか、という枝廣さんの考えでもあります。

5D3A8560.JPGエンドユーザーであるお客様と工務店・工場・林業事業体が一体となって取り組みたい!と考えを伝える枝廣さん

自分達のような事業体と行政が協力して地域の産業を育てて行きたい。
そう願う枝廣さんの、林業をとりまく様々な課題にあきらめること無く前向きに取り組む姿がとても印象的でした。

自然を相手にするからには暑かったり寒かったり、危ないことも厳しいこともあるはずです。
それでも枝廣さんは「仕事に行きたくないと思ったことは一度もないです」と言い切ります。
五感をフルに活用し、なおかつ理科や算数・社会・国語に英語という学校で習った全てのことが活かせるんですよ、と笑う姿からこの仕事が本当に好きなのが伝わってきます。
先人たちが大切に育ててきた森の木を、受け継ぎ、育て、いかにふさわしい使い方をするか、知恵と工夫と技術で挑戦する林業という仕事、今は機械化が進み、女性の進出も増えていると言います。
こんな会社や熱量を持った人がいる限り、チャレンジしたいという人がこれからも増えていくのではないでしょうか。

5D3A8525.JPG

エニワ林工株式会社
住所

北海道恵庭市駒場町1丁目8-2

電話

0123-33-5351


森林を無駄なく資源に変える! エニワ林工(株)

この記事は2019年3月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。