
好きは最高の才能と言いますが、それにしても未経験からキャンピングカーを作ってしまうとは!
いったいどんな方が作っているのか興味を持ったくらしごとチーム、今日は旭川市にある「有限会社 アルペジオ」さんを訪ねました。
迎えてくれたのは社員の・・・、ではなく3匹の烏骨鶏!!
入り口でピヨピヨとそれはそれは元気に鳴いています。聞けば社長の福本さんが卵から孵化させたアルペジオ生まれのひよことのこと。どうやら、何にでも挑戦してみる性分のようです。
もともとは婦人服の縫製会社で営業や配達のお仕事をしていたという福本さんが、キャンピングカーというものに携わったきっかけは何だったのか、さっそくうかがってみました。
「まだ子供が4つくらいのとき、一緒にキャンプに出かけるのが楽しくて。あちこち行ってたんだけど、キャンプは好きでもテントは好きじゃないことに気づいたんだよね(笑)」
趣味が高じて、寝泊まりする場所として車を改造することにした福本さん。最初は愛用していたハイエースの中を自分で改造してみたそうです。
「車のことも、家具のことも、一切やったことないし知識もなかったね」と笑顔で語ります。
店頭にズラリと並ぶキャンピングカー
普通はキャンプを楽しんで、そこで終わりそうなものですが、福本さんはさらにクオリティーを追求した結果、その車を販売してみようと思い立ちます。
ちょうどその頃、道内にはオートキャンプ場が次々と出来はじめていたタイミングでもあり、カーディーラーはたくさんあってもキャンピングカーを作っているところは無い、これはいけるかも、と思ったそうです。
そうは言っても「工具の使い方すらわからなくて、雑誌で使い方を調べた」という福本さん。苦労はなかったのでしょうか?
「工具の使い方の次は、一つ一つの部品を取り寄せて勉強したね。シンクとか、蛇口とか、ガスとか。
展示会があれば出かけていって、この部品はこのメーカーなんだな、と取り寄せては付けてみて、少しづつ覚えていった」とのこと。
どうやら、苦労というよりはだんだん進歩していくことを楽しんでいたようです。
それよりも大変だったのは記念すべき1台目が完成してからでした。
「いつまでたっても売れなかったのさ (笑)」
工場にて、普通のバンがキャンピングカーへと生まれ変わります
当時、展示してくれていたカーディーラーからはいつまで待っても売れたという連絡が来ないので、福本さんとうとう自分でその展示車両を運転して街から街へと北上していったそうです。
士別、名寄を経て、稚内に来た時のことでした。
何と2日間の展示に300名以上のお客さんが来てくれたのです!
実は稚内のディーラーさんは事前にちらしやラジオなどで宣伝もしていたのですが、それでも300人というのはお店始まって以来の集客だったそうです。
「まだキャンピングカーは珍しかったんだよね」と福本さんは謙遜しますが、試行錯誤して作った車をあちこちをまわって色々な人に見てもらった結果がそこで開花したのでしょう。
そこからは、キャンピングカーが集客効果があるということが共有され、あちこちのディーラーさんから声がかかるようになったそうです。
その後はいくつものキャンパーシリーズを展開し、北海道はもちろん、全国のお客さんのニーズに応え続けているアルペジオさん。一番のこだわりも聞いてみました。
オリジナルで7種類以上のキャンピングカーを展開、シリーズの一つ「リ・ラックス」というクルマには「一家四人で旅に暮らす、かけがえのない時間」のコピーが
すると「日本中見ると、うちのつくりは決して良くはない」という意外な答えが。
「本州の大手製作会社は装備する家具を中国で作らせたり、木材にこだわったりしてるけど、うちは素人でもできるモールなどを使った素朴な作り。素材やデザインにこだわるというよりは、、、他よりも低価格で丈夫、壊れない、というのがうちの良さかな」
どこまでも謙虚な福本さんですが、壊れない、丈夫、低価格、というのは口で言うほど簡単ではない気がします。
「3~4年後にお客さんが、安い買い物したなと思ってもらえたら良い」
という言葉には、使った人が長く楽しんでもらいたい、本当に満足してもらいたいという気持ちと、それができるという自信が現れていました。
実際、購入した人から「楽しく旅行をさせてもらってます」という感謝のはがきが届いたり、以前に購入してくれた九州のお客様がアルペジオの車に乗って道内旅行の途中にふらっと立ち寄ってくれたりと、嬉しい出来事がよくあるそう。
「くるま旅」を楽しむ人達のために、敷地内にはレストルームを用意。電源や洗濯機、トイレなどの水まわり施設も完備しています
沖縄からネットで注文し飛行機で車を取りに来たというお客さんが、地元の沖縄でアルペジオのキャンピングカーに乗っている人を見かけて、購入を決めたと話してくれたということもあったそうです。
福本さんの知らないところでも、アルペジオのキャンピングカーを通して色んな縁が生まれているようです。
そしてその縁は一般のお客さんにとどまらず、今では、官公庁などから救急車や消防車といった特殊車両の架装オーダーも入ってくるとのこと。
なかでも、今迄で一番難しかったというのが救急車の内装架装。
ものすごく作りが複雑なうえに、家具屋さんがするような細かい作業が必要で、なおかつ車の寸法にそれらを合わせないといけないという難題が。
でも「是非チャレンジしてみたかった、これをやったことでうちもかなりレベルアップしたよね」と福本さんは笑います。
売れているのはたまたまだと繰り返す福本さんですが、難易度の高い仕事でもチャレンジし続け、ニーズに答えてきた経験や技術と、人任せにせずワンストップで対応するアルペジオさんならではの安心感がその理由なのでしょう。
営業スタッフとしてのスタートを切った原田さん
そんな社長のもとで営業を担当する社員のお二人にもお話をうかがってみます。
原田辰典さんは富良野出身、この1月から正社員として採用された若葉マークの新人さんです。
それまでは博物館にお勤めだったということですが、なぜこちらに?
「博物館勤務の前は、車の業界にいたこともありました。その時は整備担当で入社しフロント業務を担当していたので、ここもクルマ関係という意味では、全くの知らない業界ではなかったんですよね」
ということで、やはりクルマが好きという素直な気持ちに立ち返った原田さんでしたが、踏み切れない理由が、ディーラーさんだと付きものの転勤という部分でした。
悩む原田さんの目にある日、キャンピングカーの販売という求人広告が飛び込んで来ます。
「なるほど、キャンピングカーか!! ここなら転勤は無い、ライバルも少ないかも、救急車も手がけているということはきっとちゃんとした会社に違いない」
思ったその日にすぐ、アポもとらずに面接して欲しいと事務所を直撃(笑) したそうです。
まずはやってみよう、というところは、何やら社長の福本さんに通じるように見えますが、そのせいかどうか無事採用になり、現在猛勉強中、とのこと。いきいき話す様子から毎日の充実ぶりが伝わってきます。
原田さんと石原さんお薦め、新作の和装キャンピングカー「ダイネット」。話題生抜群! 屋外で、たたみに寝転ぶ、が叶います!
もう一人の営業担当、石原寛子さんは旭川出身、入社して4年目の女性です。
ここに入社したきっかけを聞くと
「もともとは販売職だったので営業という職種にも興味があったんです。でも、キャンピングカーというのは乗ったことも無ければ、特にキャンプが好きというアウトドア派でもなかったです。だから逆に、世の中にはこんな車もあるんだな、という興味からのスタートでした。展示会に行ってそこに来た多くの人達と話しながら案内するというスタイルにも興味がありました」とのこと。
ハキハキと話してくれる石原さんからは、4年目とは思えない自信が感じられ、コミュニケーション力を活かしてお客さんと話す様子が目に浮かびます。
ちなみに福本さんは「特にないな〜」と答えた「アルペジオさん独自の技術や、特徴は?」の質問には、お二人とも「全部です!」と即答してくれました。
その言葉を裏付けるように、事務所の後ろにある作業場では、設計、棚やベンチ等の木工家具製作、シート部分等の縫製、配線・電装関係まで、全てオリジナルで手作りしている様子が見えます。
10代や20代の若いスタッフからベテランまで幅広いスタッフが活躍中
社長のチャレンジをベテランや若い力が支え、進化させていく。
福本さんのつくるものは今やキャンピングカーや特殊車輌にとどまらず、お客様との縁をつなぐ営業スタッフや、木工から電装まで幅広い技術を持つ製作スタッフなどの人材まで幅広いものに。
そんなアルペジオさんがつくる、人の役に立つ、人を楽しませるクルマ、皆さんも是非見に行ってみませんか!
7月迄は、各地の展示会で大忙しだそう
玄関で出迎えてくれた、社長が孵化させた烏骨鶏の雛たち
何でも相談して下さい!