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浦幌町

【VR】林業の新しいカタチを見つめる若き社長。20190315

【VR】林業の新しいカタチを見つめる若き社長。

十勝エリアの浦幌町は東に丘陵や山脈を抱え、南は太平洋と接する自然に恵まれたまち。森や大地、海といった豊かな資源を生かした一次産業が盛んで、かつては「木のまち」と呼ばれるほど林業が活発だったそうです。この地域で大正時代に商いを始め、今は「新しい林業のカタチ」にチャレンジしているのが北村林業株式会社。女性も含め若いスタッフが数多く働いていることでも業界の注目を集めています。

十勝沖地震をきっかけに、故郷と家族を想って

今回、お話をうかがったのは4代目の北村昌俊さん、40歳。子どものころには浦幌町の森林資源は今にも増して豊富で、まちには製材工場も多かったそうです。ところが、地域の木は徐々に減り、遠くの森に出かけなければならなくなったことから、製材工場は一件にまで縮小したと振り返ります。

「小さいころは2代目の祖父に連れられて山の現場を見せてもらったり、ウチでも製材をやっていた時期があったので工場に入って叱られたり(笑)。父が10歳のころに他界し、3代目は叔父が継ぎましたが、当時の僕は家業を守りたいという意識はまだまだ薄かったと思います」

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北村さんは中学を卒業すると札幌の高校に進学。大学は金沢市のキャンパスを選び、卒業後は本州の大手ゼネコンに就職しました。時はいわゆるバブル景気が終焉を迎えた後だったことから、生き残りをかけた企業が利益追求に奔走せざるを得ない時代。ガリガリ稼ぐという働き方を3年ほど続けた後、北村さんは浦幌町にUターンすることを決めます。

「そんな仕事の仕方に嫌気がさした...というより利益追求型は当たり前だと思い込んでいました(笑)。ただ、15年ほど前に十勝沖地震が起きた時、ふと故郷のことを思ったんです。僕には兄も姉もいますが、どちらも地元を離れて働いているので、家には母と祖母だけ。だから心細いんじゃないかな...と。そんなタイミングで先代の叔父から『帰ってこないか?』と誘われました」

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利益重視の「大企業思考」から、つながり重視の考え方へ。

お祖父さんや叔父さんがバトンをつないできた林業の仕事。北村さんは浦幌町に戻ってくるや、現場を見ないことには何も分からないと山の作業場に入りました。ところが、目に飛び込んできた光景に「ギャップ」を受けたといいます。

「当時はハーベスタ(立木の伐倒や枝払い、切断、集積を行える機械)が市場に出回り始めたころで、林業に使う重機の技術も進んでいました。でも、僕が見たのは未だにチェーンソーで木を切り倒し、枝を払うという昔ながらの作業風景。ベテランにはお手の物かもしれませんが、僕らの世代や若者には体力的にもムリだろうなと直感しました」

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若い人に林業を担ってもらうためには機械化を進め、効率化を図らなければならないと北村さんは考えます。一方、ゼネコンで働いてきた経験から「大企業思考」が抜けず、苦しい時期を過ごしたと正直に打ち明けてくれました。

「働いてくれる社員の気持ちや今までの取引先との信頼関係をまったく考えず、とにかく利益重視を掲げていました。そうするうちに一人辞め、二人辞め、さらに2008年のリーマンショックが追い打ちになり、会社が大ダメージを受けたんです。そんな時、手を差し伸べてくれたのが先代からのお付き合いのある方々。利益重視がいかに上辺だけの関係しか築けず、人や地域とのつながりがいかに大事か思い知らされました」

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同じころ、北村さんをさらに変えたのが浦幌町の教育を軸にするまちづくり「うらほろスタイル」。官民一体となって子どもたちの郷土愛を育み、まちに残り続けてもらうことを目指した取り組みです。北村さんはそれまで商工会青年部の活動やお祭りの手伝いなどには積極的ではなかったそうですが、子どもたちに剣道を教えたり、中学生のまちおこしのアイデアを実現する「子どもの思い実現事業」に携わったり、徐々にまちの教育プログラムに協力するようになりました。

「教育プログラムの手伝いを引き受けるようになってから、林業のこと、山づくりについて改めて考えるようになりました。50年前、60年前に木を植えた人がいて、今僕らが木を切っている...そして次の世代のために自分たちが木を植えなければならない。これって、他にはない長いサイクルの仕事。まちの未来のために子どもたちの郷土愛を育むこととオーバーラップしたんです」

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月の半分は林業、もう半分はカフェで働くのもアリ。

北村さんが利益重視の考えから180度の転換を果たし、社員の価値観や幸せを真摯に見つめるようになってから約10年。その間に浦幌町の教育プログラムに携わったことから、町外の人材育成事業に関わる人との出会いも果たしました。

「イマドキの若者が大切にしている仕事観や働き方を学び、ハーベスタをはじめとする機械化も進めていきました。最近は伐木から枝払い、玉切り(丸太に切ること)などを自動で、しかもわずか数分で完了できる海外の高性能林業機械も導入。おかげでかなり効率的です。一方、女性社員も増えてきたので、トイレを備えた軽トラも用意するなど、『林業女子』への配慮にも力を入れているんです」

kitamuraringyo_urahoro_7.jpgコチラが最近導入した高性能林業機械。傾斜地もズンズン登り、アタッチメントのチェーンソーが自動で木を丸太に!

北村さんの新人教育も実にユニーク。入社後はまず5時間ほど何のために木を切り、なぜ林業が必要なのかとことん話すというのです。昔の人々が植えた木が今の自分たちの仕事につながっているからこそ、次の世代にバトンタッチしなければならないのだと。

「その中で自分が仕事をする意味を考え、主体性やアクションにつながる積極性を身につけてもらいたいんです。新人さんが会社の次代を担うことになった時、経営者としての視点を養っておかないと困ってしまいますからね。技術面だけでなく、林業が地域にとって欠かせない仕事であるというマインドを伝えるようになってから若い人の定着率がグンと高まったと思います」

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一昨年からは日曜日に加え、第2・第4土曜日も休みにしました。じわじわと時代に合った労働環境を整える一方、給与は日給月給制(給与の計算は日給ごとで給与の支払いは1カ月単位)と昔ながらです。北村さんは一般的な月給制を取り入れるか悩んだ時期もあったといいますが、こんな新しい働き方も想定に入れています。

「月給制は安定が望める反面、会社に縛り付けられてしまうことになりますよね。日給月給制の場合、週に4日は林業で稼ぎ、残りの2日は自分の好きなシゴトに取り組むということも可能。大げさにいえば月の半分は林業、もう半分はカフェで働いたって良いんです。最近の若い人にとってはそのほうがモチベーションも高まるんじゃないかと考えています。だから、ウチでは趣味を持っている人のほうが楽しんで働けるはず...ちなみに、僕の趣味はまちづくりなんですけどね(笑)」

kitamuraringyo_urahoro_9.jpg高性能林業機械を操る若手スタッフ。タッチパネルを搭載した最新型の操縦席ですが、「使い方は1カ月くらいでマスターしました」とにっこり。

見た目は古材、中身は新材。付加価値の高い加工を!

実は、北村さんは2018年6月に家業を切り盛りするかたわら、新しい会社を設立しました。その名も「BATON+(バトンプラス)」。きっかけは、Yahoo!JAPAN株式会社・ロート製薬株式会社で働く有志(以下、東京企業チーム)と、地元でまちづくりや事業を行う人との共同プロジェクト「浦幌ワークキャンプ」です。

「東京企業チームは、以前から課題を抱えた地域の力になる取り組みを進めていました。浦幌は地域活性化の行政支援が手厚いと評価が高く、町民との協働で地域の課題解決に向けた話し合いをすることになったんです。合計で5回にわたり東京企業チームがまちに足を運び、アレコレ議論を交わしました」

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その一つのテーマとなったのが豊かな資源を有する林業。北村さんは、東京企業チームを作業現場に連れて行った際、樹齢50年以上のカラマツがいくらになるのか尋ねられたといいます。

「一本で5,000~6,000円程度と実情を話すと、東京企業チームの皆さんは『意味が分からない』と口をそろえました。海外からの丸太の関税がゼロになって以来、このくらいの価格でなければ競争できないと伝えても、過去から受け継いだ山や人の思い、森の手入れにかかるコストに見合っていないと」

東京企業チームにはマーケティングや販売戦略に長けた人も多く、カラマツやトドマツが本州のヒノキといった価値の高い木に比べて弱点はどこにあるのかというヒアリングが始まったとか。北村さんは「柔らかいところ」と答えます。

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「そうしたら、今はDIYの市場が大きく、古材の価値が高いと教えてくれました。さらに、『柔らかいなら逆にキズをつけたり、釘を打ったり、古材風に売り出せば価値が高まるのでは』というんです。僕らは『育てる』『つくる』は上手いと思いますが、都会の人は付加価値を加える視点がスゴい。そこから話が盛り上がり、林業の最前線で働く僕と、副業OKの東京企業チームがタッグを組み、古材風の新材を販売する『BATON+』を立ち上げることになったんです」

現在は2019年春からの販売をメドに、すでに木材加工の工房や新材を古材風に仕上げる特殊な機械も整備。今後、この小さなまちから、木を生かした新しいビジネスが生まれることになります。

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「僕はもちろん、東京企業チームも会社のお金ではなく『身銭を切って』つくった会社です。だからこそ全員に主体性が生まれ、次々と新しいアイデアが展開されていくはず。この木材を使った事業が子どもたちにとってもワクワクする仕事に成長し、やがて浦幌の雇用の場につながることを信じています」

北村さんがかつて目の当たりにした光景と同様に、林業といえばまだまだ体一つで森に分け入り、チェーンソーで木を切り倒すイメージ。けれど、山の保水や森の育成、次代へのバトンタッチという本来の意義を守りながらも、新しい価値をプラスできるという大きな可能性を感じました。北村さんにとっては社員を大切にする環境整備や働き方の進化も、まちの子どもたちへの教育も、新事業も、きっとチャレンジは始まったばかり。でも、現場で働くスタッフの皆さんの言葉は一様に「重機の動かし方のコツがつかめて楽しい!」「山で働くのって心地いい」と前向きです。そして、彼ら・彼女らのまぶしい笑顔に、この先も林業を担いたいという若者が増えていくだろうという明るい兆しが映っていました。

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【VR】北村林業でハーベスタ搭載のハイランダーで特別撮影

※360°で見るためには白い文字のタイトルをクリックしてYouTubeアプリを立ち上げてください(スマホの場合)

浦幌町にある北村林業さんが保有するハーベスタ搭載のハイランダーに今回特別に同乗させていただきました。
(※撮影地は公道ではありません)
最初は木材をカットする動画ですが、その後は画面変わってハイランダーの中へ。
最初は反射して外が見えにくいですが、徐々に外の風景が少しずつ見えてきます。
林業のお仕事に興味のある方は是非360°でお楽しみください

北村林業株式会社
北村林業株式会社
住所

北海道十勝郡浦幌町字帯富97番地3

電話

015-576-2332

URL

http://kitamura-ringyou.com/


【VR】林業の新しいカタチを見つめる若き社長。

この記事は2019年1月18日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。