
ホームページアドレスが、www.anko(あんこ).co.jp。そんな、並々ならぬ餡への愛情を感じさせるのが千歳市に工場を構える田中製餡。創業地は東京で本社も都内にありますが、生産の中心は北海道。昭和22年の創業当時、一般的に餡は菓子店などが家内工業的につくっていましたが、同社は業界で初めて専用工場をつくり量産体制を確立。「いい餡は、いい豆から」という理念のもと、小豆の産地でもある千歳市に工場を置き、現在も北海道内のみで産地と素材にこだわった餡を生産し、全国に発信しています。
また、製餡技術においても減圧濃縮法という方式を独自に開発して品質向上を実現。この高い技術力を誇り、自社製品だけでなく、数々のPBやOEM製品も製造しています。
餡づくりを支えるのはこの道、二十年以上のベテラン。
小豆を茹でる湯気がモクモクと立ち込め、甘~い香りに包まれる製餡工場。「もうすぐ小豆が炊きあがりますよ。炊きたてはホントにおいしいから、ぜひ食べてってください!」と声をかけてくれたのは、製餡部門の係長・管野仁さん。この道、二十年以上で同社の餡づくりは管野さんが支えていると言っても過言ではありませんが、元々は工業畑の出身なのだそう。
「ここに来るまでは、あんこをつくるなんてまったく考えていませんでした。実は今の支店長(古幡さん)が中学の同級生で『うちに来ないか?』と誘ってくれたのが入社のきっかけ」。食品製造が自分にできるか心配だったそうですが、やり始めたらあんこづくりの面白さにハマってしまったのだそう。
ひとつとして同じ豆はない。
餡づくりには、思い通りにならない面白さがあると管野さんは言います。小豆は産地や時期によって含まれる水分量が違うため、同じ温度、圧力で炊いても、同じようには仕上がりません。
「同じ畑で同じ時期に採れた豆を使っても、日の当たり方など、ちょっとした生育環境の違いによって豆の性格も変化します」
小豆は素直に炊きあがるものもあれば、熱や圧力をどれだけかけても膨らまないものもあるのだそう。「機嫌が悪いとまったくこちらの思い通りにならない。『小豆は女の子と一緒だぞ~』なんて若いヤツにはよく言うんです(笑)。千差万別の性格にどうやって合わせていくかが、男の腕の見せどころですね」
そのため、餡づくりはマニュアル化ができないとのこと。菅野さんも最初は小豆の見極め方が分からず何度も失敗したと言います。
「でも上司は絶対怒らなかったんです。むしろ、納得いくまでやれと言ってくれて...。失敗から学ぶしかないってことなんです。だから私も今の若い職人には同じように伝えています」
いつか届けたい、本当の炊きたての小豆。
同社では「ごはん炊き」といい、お米を炊くように小豆を炊いています。そのため、炊きたては「粒が立っている」状態になり、ひと口食べるとやわらかな甘さと豆の旨味が広がり、本当においしい!
「実際には流通させるために殺菌などの処理が不可欠なのですが、できるだけ炊きたてに近いおいしさをお客さんに届けたい。それを実現するのが私の夢なんです」
餡づくりの奥深さを知り、仕事に誇りを持つ。
本社は東京ですが、生産拠点はこの千歳工場。従業員は社員とパートを合わせて200名~300名いて、すべて道内で採用しているそうです。「ウチの従業員はとても明るく、のびのびと働いています。賑やかすぎて、真面目に働いているのか?...なんて気になるほど(笑)」とにこやかに話してくれたのは、支店長の古幡徳之さん。
食品を扱う企業として品質管理の徹底はもちろんですが、メリハリのある雰囲気こそ同社の良さだと古幡さんは言います。従業員教育として、近年では「田中塾」という活動にも取り組んでいるそう。「当社の歴史や強みとしている技術をみんなが共有できるよう、社内外の人間が講師となって研修を行います」と古幡さん。
「餡というのはこしあん、つぶあんの違いから、甘さの加減まで、意外と細かく細分化されている製品です。餡づくりの奥深さを知ることで、誇りを持ってこの仕事に取り組んでほしいと思っています」
- 田中製餡株式会社
- 住所
北海道千歳市泉沢1007番地23(北海道工場)
- URL
東京本社:東京都大田区大森西2丁目2番4号