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伊達市

『馬』が人を繋ぐ、大滝わらしべ園。20180801

この記事は2018年8月1日に公開した情報です。

『馬』が人を繋ぐ、大滝わらしべ園。

「乗馬療育」という言葉をご存じでしょうか?障がいを持った方が、馬に乗ることやふれ合うことで、精神面・身体面ともにリハビリテーション効果が高いとされている療法です。特に馬に乗ることで、馬の揺れ・リズムや、馬の背中から感じる温かさにより、身体の筋肉をほぐすだけでなく、精神を安定させる効果もあり、リラックスしながら実践できることが特徴です。

この乗馬療育に力を入れ、かつて日本で唯一の乗馬療育専門インストラクター養成学校を設立した「社会福祉法人 わらしべ会」。現在、北海道では大滝・浦河・札幌と3つの地域で事業を展開しており、法人設立時の最初の拠点である伊達市大滝区(旧大滝村)にあるのが「大滝わらしべ園」。こちらの障がい者支援施設が今回の舞台です。

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乗馬療育の地を求め北海道へ。

昭和56年に大阪の地でスタートした社会福祉法人 わらしべ会。世界中のリハビリテーション施設を駆け巡り、ご活躍された医学博士の村井正直先生と陽子先生のご夫妻により創設されました。利用者の積極的なモチベーションを引き出す方法として取り入れるべく乗馬療育の実践を機に、北海道でも法人を立ち上げ、昭和61年に当時の大滝村で身体障がい者の入所施設をスタートさせました。これは北海道の地で新しい活動を創造しようとする挑戦でした。

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雄大な土地、気候、地形などを活かし、古くから馬産地として位置付けられてきた北海道。なかでも日高地方を中心に数多くの牧場が競争馬を産出しています。わらしべ会の進める乗馬療育には、まさに適した土地であるといえます。わらしべ会は大滝でスタートした後、平成8年に浦河に身体障がい者療護施設を設立、平成10年には同じく浦河に日本唯一のホースセラピスト養成学校であった日本乗馬療育インストラクター養成学校を設立しました。(平成18年閉校)

現在、大滝わらしべ園では2頭の馬がおり、日々障がい者の方々の療育をサポートしています。こうした乗馬療育やインストラクターの育成といった馬を通した活動、そして大滝の自然に惹かれやってきた、施設長の平岡理恵さんにお話を聞きました。

大滝の自然、馬とのふれ合いから生まれる笑顔。

otaki03.JPG施設長の平岡さん。

「この大滝わらしべ園は、かつて重度身体障がい者更生援護施設としてスタートしたのが始まりです。その後、障がい者自立支援法の施行があり、現在は障がい者支援施設として運営しております。ここの大きな特徴は、やはり大滝の自然と馬との活動にあります。夏は乗馬や畑作業、ノルディックウォーキングコースでの散策、冬はクロスカントリースキーといった余暇活動を提供しています」。

otaki04.jpg車イスの方でも楽しめるよう、職員の方が作ったチェアスキーです。

この大滝での生活を求め、北海道はもちろん、本州から来られている利用者さんもいらっしゃるとのことです。乗馬療育は設立当初からわらしべ会が力を入れてきた活動であり、馬とふれ合うことを楽しみにしている利用者さんがたくさんいます。

「利用者さんは、みんな馬に乗ると自然と笑顔になるんですよね。特に森の中の散策はとても気持ちがいいですよ。また、身体面でもたくさん利点があって、例えば足が動かない障がいを持っている方でも、馬にまたがり揺れを感じることで、足を動かしている感覚が身についたりもします」。

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取材時にも、実際の乗馬療育の様子を見せていただきました。利用者の方の笑顔、それ見て喜ぶ職員の方の笑顔。乗馬を終えた後には、馬に「ありがとう」と言葉をかけてあげている姿は印象的でした。

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馬が人を呼ぶ、大滝わらしべ園。

平岡さんは埼玉県のご出身で、かつてアメリカ留学とカナダへのワーキングホリデーの経験があり、この北海道という地に憧れ移住してきました。他にも、この大滝わらしべ園には、数多くの道外からの移住者の方がいらっしゃいます。朝岡晃一さん、菅沼克浩さんも、同じく道外からの移住者です。どうして移住者の方が多いのでしょうか?その答えは、馬にありました。

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「私は愛知県の出身なんですが、ここに来る前は、競争馬の厩務員を目指して、競争馬の育成牧場で勤めていました。その後、乗馬クラブといった馬に関わる仕事も経験した後、浦河にあった日本乗馬療育インストラクター養成学校に通うことにしたんです。そうして、学んだことを活かすべく、この大滝わらしべ園に入社しました」と教えてくれたのは朝岡さん。

otaki08.JPG職員の朝岡さん。

続けて菅沼さんもこう教えてくれました。

「私は、出身の静岡県で就職して働いていた時、ふとテレビで障がい者の乗馬に関する番組を見たんです。その時の仕事は、正直やりたいと思って就いたものではなかったんですが、このテレビで障がい者の方が笑顔で楽しそうに乗っている姿を見て心を打たれたんですね。初めてやりたいと思えることを見つけたのを覚えています。その後は朝岡と同じく、浦河の日本乗馬療育インストラクター養成学校への入学して、今に至ります」。

otaki09.JPG職員の菅沼さん。

お二人のように、障がい者支援や介護の分野に関しては全くの未経験でも、馬と関わる仕事や生活を求めて来られた職員さんも多いといいます。なるほど、馬が人を呼ぶ、大滝わらしべ園です。

農福連携の取り組み。

近年、大滝わらしべ園では、全国的にひろがりをみせる「農福連携」の考え方を取り入れるべく、農業を通した活動にも力を入れています。

otaki10.JPG施設から道路はさんで向かいに広がる大きな農場。

「アスパラやカボチャ、にんじんなど、この広い土地を存分に活かして農作業を利用者さんに体験してもらっています。昨年はカボチャを748個も収穫できたんです!採れた野菜は、利用者さんのご家族や近隣住民の方々に食べていただいたりもしています。利用者さんだけでなく、職員も一緒に農業を体験することで、お互いリフレッシュできる効果もありますね(平岡さん)」。

otaki11.JPGアスパラの収穫。たくさん採れました!

新たな取り組みとして、今年収穫予定カボチャは、札幌にある事業所でペースト状など加工して、お菓子の製作や、お菓子屋さんへ卸すことを計画中といいます。

楽しさとやりがい、そしてその先へ。

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乗馬療育や農福連携の活動を通した、利用者の方との触れ合い、自然との触れ合い、馬との触れ合い、それぞれが楽しさでもあり、やりがいでもあるとみなさん仰います。こうした活動をもっと拡げていきたいと平岡さんをはじめ、職員の方々は日々、大滝わらしべ園で一生懸命に仕事と向き合っています。

otaki13.JPG職員さんは、良い意味でのんびりした人が多いんだとか。日々、協力し合いながら楽しく働いています!

社会福祉法人わらしべ会 大滝わらしべ園
社会福祉法人わらしべ会 大滝わらしべ園
住所

北海道伊達市大滝区大成町10番地

電話

0142-68-6344

URL

http://warashibe-hokkaido.com


『馬』が人を繋ぐ、大滝わらしべ園。

この記事は2018年6月28日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。