
昭和28年に豆の仲立店として歩み始めた株式会社丸勝は、十勝ブランド・北海道ブランドの良質な豆の味わいを、北は稚内から南は沖縄まで全国各地に届けている企業です。平成21年には、地元食材をふんだんに使った料理を味わったり、農作物の収穫を体験したり、十勝の魅力を丸ごと楽しめる、花と食と農のテーマパーク「十勝ヒルズ」をオープン。さらに同社は豆の消費拡大が生産者への恩返しになるという考えのもと、十勝産の小豆や金時豆を使った『十勝純粋酢』の開発をはじめ、豆のジャムやドレッシングなど地域資源を活用した多彩な商品を展開しています。十勝から届くおいしさのヒミツに、今回はクローズアップします。
会社を支えるのは、地元出身の社員。
同社は乳製品や肉類、ジャガイモに小麦、数えきれないほどのおいしさに恵まれた食料基地・帯広に本社工場を構えています。同社の敷地は、大きな倉庫や豆を選り分ける工場がいくつも建ち並ぶビッグスケール! その中のひとつ、製造工場でお話をしてくれたのは、十勝ヒルズ製造・管理の田沢直也さん。
十勝ヒルズ製造・管理 田沢直也さん。
「十勝純粋酢は生産量も多くないので、ここの規模は工場というよりもラボといった感じでしょうか」。そう言って製造現場に案内してくれました。田沢さんは入社して約10年以上、製造セクション一筋で働いているそう。「僕は帯広出身で十勝の広い大地や澄んだ空気が大好き。高校3年生のころ、進学先も就職先も札幌を希望する友人が多かったのですが、自分は生まれ育った十勝で働こうと初めから決めていました」と田沢さん。「当社は十勝の代名詞とも言える豆をメインに扱う企業ですから、地元ラブの僕としては理想的な職場だと思いましたね。実は営業職の募集で入社したんですが、当時は折しも十勝純粋酢の工場が完成したタイミング。そこで僕に製造スタッフとしての白羽の矢が立ったんです」
十勝の小豆や金時豆が「酢」に。
そんな地元愛に溢れた田沢さんが従事しているのが、『十勝純粋酢』の製造。「一般には米酢のイメージがありますよね。当社では、普段お世話になっている生産者さんのためにも、豆の消費拡大に繋がる新しい食べ方を模索しようと十勝純粋酢の開発プロジェクトが立ち上がったと聞いています。酢はでんぷん質を含む食材からなら作れるのですが、豆類に限っては加工すると食感がザラザラしてしまうので不向きなんです」と田沢さん。その課題をクリアするために道の食品加工研究所とタッグを組んで、日々チャレンジが繰り広げられたのだそうです。
手間隙かけて豆から酢を作るメリットを尋ねたところ、「栄養素の面で言えばミネラルや旨み成分が豊富で、とりわけ体内の余分な塩分を排出するカリウムの値が飛び抜けています。味わいは米酢よりもツ~ンとした風味が少なく、コクがあってまろやかです。料理のアクセントとしてソースにからめてもおいしいですし、健康志向の方は10倍程度に薄めて飲んでもグッド。ひいき目抜きにオススメ出来る商品ですよ」。
酵母の住環境づくりが、もっとも大切!
同社イチオシ商品の『十勝純粋酢』が、どのように作られるかを聞きました。「ペースト状にした豆にある酵素を加えることで、ザラつきや苦みを出さずに糖度を高めることができます。その他は一般的な酢の製造工程とほとんど変わらず、酵母を添加してアルコール発酵させてから種酢(酢酸発酵させるための食酢)を加えて寝かせるという流れです」と田沢さん。
しかしながら、酢づくりは酵母にとっていい環境を用意するのが一番の肝だと言います。「温度が低いと酵母が働きませんし、高すぎると腐敗してしまいます。火入れや室温管理には細心の注意を払っています」
十勝の豆には夢がいっぱい。
同社は、やりたいことを応援してくれる社風だと田沢さんは言います。「アイデアが浮かんだらすぐ社内会議で議題にしてくれますし、そこでOKだったらすぐ試作に移れます。そのスピードは発案者の僕自身がとまどっちゃうほど(笑)。スーパーで見掛けるジャムを豆でつくったらどうなるのか、ジュースとお酢を組み合わせたらおいしいのでは...身の回りにヒントがたくさんありますから、今後は十勝純粋酢に続くヒット商品を開発したいですね」と笑顔で語ってくれました。小さな小さな豆だけど、その可能性は大きな力を秘めているようです。
人の和やつながりを大切に。
続いて話しを聞いたのは、十勝ヒルズ開発部 商品開発・製造・販売の水谷光さん。豆を使った商品の開発に当たり、プロジェクトメンバーの頭を悩ませたのは、そもそも何を作るかということだったそう。「餡を作るとなれば取引先の和菓子屋さんとライバル関係に当たってしまい、かといって洋菓子との相性もイマイチ。何度も何度も試行錯誤を重ねて、ようやく酢という形にたどり着いたんです」と水谷さん。
十勝ヒルズ開発部 商品開発・製造・販売 水谷光さん。
そこからは、同社の企画立案から実行までのスピード感が最大限に生かされたと言います。「十勝純粋酢の工場にしても、もろみ醸造免許の取得に設備が必要だったという理由もありますが、試作の段階で『やってみよう』と建ててしまったんです(笑)。アイデアが形に結びつきやすいという意味では、やりがいを持って働ける職場だと思います」。そして『人の和やつながり』も同社には欠かせないキーワード。「人を伝った出会いや協力をもとに、様々なプロジェクトがダイナミックに動いていく会社ですから、スタッフもバイタリティが溢れています」