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このまちのあの企業、あの製品
江別市

暗渠技術で農業の活性化に貢献。株式会社ナラ工業20180222

暗渠技術で農業の活性化に貢献。株式会社ナラ工業

水田や畑などの農地の地下水が多い(水位が高い)と、ぬかるんで農業機械が入れなかったり、作物が順調に育たなくなるなどの被害が生じます。こうした状況に陥らないために農地の地下水位を妥当な高さにする工事が「暗渠(あんきょ)排水」。地中に地下水を集める管(透水管)を埋め込み、余分な水を河川などに排出し冷害や湿害の影響を少なくします。
この暗渠排水に特化し、全国から工事を受注しているユニーク会社が江別にあるとか。取材班は札幌の隣りマチに車を走らせました。

土を良くすることで、農業を良くする「暗渠排水」。

お話を聞かせていただいたのは、株式会社ナラ工業の代表、奈良幸則さん。
「一般の方はあまり馴染みのない用語ですが、こと農業の分野では『暗渠排水』は古くから導入されている取り組みです」

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暗渠排水工事を施し、水はけの良くなった土の中には新鮮な空気が送り込まれます。空気が多くなると、微生物の運動が活発化し、土質が柔らかく養分も豊かになります。加えて作物も健康な太い根を張ることができるようになり、結果的に安全で高品質な作物の収穫可能となるわけです。
「逆に干ばつなどが発生しそうな時には、土の中の水分を増やすこともできます。またメタンガスの発生も大きく低減させるため、地球温暖化の抑制といった環境保全にも貢献しているんです」
なるほど、同社のホームページに掲げられていた『暗渠排水は地球にやさしい』の意味がわかった気がしました。

工事に必要な重機もリユースで自社製造?!

ナラ工業が注目されているのは、暗渠排水工事に不可欠なトレンチャー(透水管を埋め込むために土壌を掘削する専用機)も自社の工場で制作しているということ。しかもそれらは雪上車、農作業用のロータリー車、トラクターなどの中古重機や特別車両をリユースし組み立てているのです。
「かつて重機メーカーがトレンチャーを制作していた時代もありましたが、値段が非常に高価で採算もとれなかったため、事業から撤退してしまったんです。そこからは自社の工場内で造っています」
取材に伺った時もその組立の真っ最中。スタッフが芽室のスキー場で昨年まで活躍していた雪上車に、中古の油圧ギアなどを取り付けていました。
「新品の部品ではコストがかかりすぎるので、重機のレンタル企業や鉄工所などを訪ね、キャタピラー、荷台、チェーン、エンジンなど中古の部材を仕入れているんです。なので、うちにあるトレンチャーはどれも超個性的なんです(笑)」

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自社重機で全国の農地の暗渠排水工事を受注。

自社重機の組立技術は奈良さんの父親でもある先代の社長が培ってきたもの。ちなみに代表職は息子に譲りましたが、重機製造の舞台ではまだまだ現役です。
「トレンチャーとは昭和30年台に生まれた重機。その仕組みを熟知している先代が、現代のニーズに則した改良やバージョンアップを加え、良質な土壌づくりに貢献する重機に仕立てあげているんです」
工場の外にはさまざまな種類のトレンチャーがラインナップ。土質の違いや掘削の幅・深さなど、暗渠排水工事の現場の特徴に応じて使い分けているのだそう。
「北海道だけでなく、山形県や石川県など道外からも工事の要請が舞い込みます。宮城の被災地にも何度か伺いました」
自社で製造した重機で、暗渠排水工事に取り組む... 土木業界広しといえどここまでニッチな会社はそう多くないはず。同社が全国の農場や官公庁から注目されている理由もそんなところにあるのでしょう。

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地域の農業振興のために何が出来るかが再優先。

奈良さんが入社したのは15年ほど前。それ以前は札幌の設計事務所に勤務していました。
「当初は父親の仕事を継ぐ気はありませんでした。勤務10年目あたりでしょうか、農業や環境をテーマにした施設を設計する仕事を受注した際、ふと自分が農業や環境について実は何も知らないことに気づき、愕然としたんです」
北海道の基幹産業である農業に貢献したい、真の意味で環境保全に貢献する仕事に就きたい。そう考えた奈良さんが目を向けたのが自分の父親の仕事ぶりでした。
「父の仕事スタイルは、農家の方々の悩みに寄り添い、将来の夢や希望を聞き、その実現のためにさまざまな手を尽くすというもの。暗渠工事は問題解決法の一つ。地域の農業の振興のために、自分たちができることに全力で取り組むのが父の考えでした」
この仕事流儀に触発され、奈良さんも後継を決意。ナラ工業の社風とも言える『農家に寄り添いながら』さまざまな難題に取り組んできました。
「だから自分も簡単に暗渠をしましょうとはいいません。課題や問題の根源を突き止め、もっと手軽な方法はないか、もっと効果的な策はないかを農家さんと一緒に考えることから始めます」
こうした誠意ある対応、真摯的な仕事姿勢が評価され、ナラ工業の名前は全国に知れ渡るように。奈良さんもトレンチャーと一緒に各地の現場をかけ回る日々を重ねています。

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故郷の歴史を支えた技術を次代に継いでいきたい。

奈良さんが暗渠排水に惹かれたもう一つの理由。それは暗渠工事の歴史にあります。
「日本で最初に暗渠排水用土管が作られたのは北海道。現在の北海道大学の北側の農場に施工されたようです」
さらにご自身の出身地である江別でも、明治13年に開拓使顧問のエドウィン・ダン氏の指揮のもと農場の暗渠排水工事が行われ、その後も数多くの暗渠が展開されていったとか。故郷の農業の歴史は暗渠排水工事の歴史でもあったのです。

「暗渠は江別の歩みを支えてきた歴史的遺産であり産業的資産。この事実や工法を次代に継いでいくことも自分の重要な役割だと思っています」
その実現のために、地元の学生たちに暗渠排水の仕組みを見学させたり、新規就農した若い世代の生産者を招いて暗渠排水のワークショップを開催するなど、奈良さんはプライベートを返上し多彩な取り組みを進めています。
「この工法に対する理解を深めるだけでなく、故郷の江別の歴史や魅力を地元民が再認識するきっかけになったら...そんなことも思い描いています」
土の中に埋設されることもあり、一般の方になかなか知られることのない暗渠。しかしこの伝承の技術や奈良さんらの取り組みが農家や農業を支え、今日の豊かな食生活に継がっているのです。

株式会社ナラ工業
株式会社ナラ工業
住所

北海道江別市野幌代々木町13-1

電話

011-384-5592

URL

http://www.narakougyou.com/


暗渠技術で農業の活性化に貢献。株式会社ナラ工業

この記事は2017年9月22日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。