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札幌市

ニッチな取組みで農を活性化!株式会社シーピーエス20170928

この記事は2017年9月28日に公開した情報です。

ニッチな取組みで農を活性化!株式会社シーピーエス

家庭菜園を手がけたことのある人なら分かるはず。きゅうりやナス、トマトやピーマンなどの野菜を収穫すると、表面が凸凹だったり、曲がったり、小粒だったり、そんなイレギュラーな実も目につきます。けれどそんな野菜は、小売店やスーパーで目にすることはありません。なぜなら、それらは「規格外」だから...。
この規格を外れた農産物に着目し、札幌を拠点に新規ビジネスの創出や地域農業の活性化に貢献しているのが、株式会社シーピーエス(以下、CPS社)という会社。札幌の篠路地区に開けた同社の農場に、執行役員の岡崎翼さんを訪ねました。

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見た目だけで判断される『規格外農産物』

CPS社の設立は2009年。そこに至る経緯を岡崎さんが語ります。
「それ以前は、主に札幌在住の学生と企業や社会を連携させる場づくりをしていました。その中で知り合ったのが、北海道大学の農業系サークル。そこの学生たちと農家を『ボラバイト(ボランティアとアルバイトの間)』でつなぐ試みをする中で、偶然、北海道の農業の側面を目にしたんです」
光が当たらない北海道農業の側面、そのひとつが規格外という農産物の存在でした。
「収穫の人員が足りず割れてしまったもの、売れる時期を逃してしまったもの。さらに形が少々いびつだったり、色味が良くなかったり、サイズがやや小さかったり... たったそれだけの理由で、B級品=規格外の烙印を押されてしまうんです」
これらの野菜は、『見た目が悪いから売れない』という理由で、市場には流通しません。それどころかやむなく破棄されるもの、畑の堆肥に回されてしまうものも。
「味や品質は売り場に並ぶものと何らかわりなく、おいしく食べられる野菜もたくさんありました」
農家の方々が苦労して作り上げた農産物なのに、実にもったいない。そう考えた岡崎さんらは、それらを活用する方法を模索し始めました。と同時に、〈未利用資源の利活用〉というテーマを実現する組織、CPS社を設立したのです。

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北海道農家と首都圏レストランを繋いで。

CPS社がとりかかるべき当面の課題は、大きく分けて2つ。
「一つは規格外の農産物の実情を知ること。商談イベントで知り合った札幌南区の農家さんをはじめ、生産者と交流をもつ中で、未活用になっている食材が予想以上に多いことを知りました」
さらに岡崎さんは、生産者の切実な声を通じ、それらの食材を適正な価格で活用することが地域農業の活性化に大きく役立つということを確信します。
「もう一つの課題は、それらの食材をどこで活用できるかということでした」
この課題に対し、岡崎さんらCPS社のメンバーがターゲットとしたのは、一大消費地東京。「少量の規格外農産物を扱っても、あまり意味がない。地方都市を回るより一大消費地で勝負をかけたほうが得策だと感じました」
飲食店を回る中で知り合ったのが、世田谷のフレンチレストランのシェフ。フレンチ料理の思想には、食材を無駄にしないというコンセプトがあるらしく、規格内外問わず利用していただくことを約束してくれました。
「この一件が皮切りとなり、次第に首都圏や他のレストランや飲食店が規格外の食材を利用してくれるように。CPS社を介して、規格外食材を含むおいしい北海道農産物と心ある飲食店の新しいパイプが誕生したわけです」

自社でも調理や販売に取り組みながら。

農家と飲食店の連携を強める一方、CPS社は規格外農産物のさらなる利活用を促進するために、自社内に加工施設を設置します。
「例えば農家さんから『割れたニンジンが12トン出たんだけど...』みたいな相談が来るんです。さすがにそれだけの量を飲食店で消費するのはムリ。ならば自社のセントラルキッチンで調理加工し惣菜やお弁当として提供するといいのでは、と考えました」

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食品にすればより多くの人に食べてもらえるし、CPS社の取り組みも知っていただける。
「規格外農産物の存在や、北海道の農家の方々の現状を多くの人たちに知ってもらうこともできますしね」
2012年2月、こうした食品を販売する場として丸井今井札幌本店に「ヴィヴルアンサンブル」を出店。オシャレな料理、斬新なメニューからたちまち話題となります。

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「もちろんこの店もできるだけ生産者と直接連携することを前提としています。規格内外にとらわれることなく生産者に損が出ない価格で購入すること、さらに可能な限り使っている食材の生産者の顔が見える惣菜を作る、というコンセプトを現在も実践しています」

規格の概念に左右されない自然栽培の農産物を。

2015年。CPS社はさらに新たな取り組みをスタートさせます。それは札幌篠路地区に自社農場を開園するということ。その理由を岡崎さんはこう説明します。
「消費者に安定的かつ大量に食材を供給するために、必然的に生じてきたのが、流通食材の『規格』という概念です。『規格』があることで、消費者は食材の良し悪しを悩むことなく購入ができますし、値段も安定します。しかしその反面『規格』があることで、規格外という存在が生まれたり、農家の方々の収益が減ったりというデメリットも生まれるわけです」
では自分たちは何をすべきか。自問した岡崎さんらが導いた答えは、規格などの既成の流通概念に翻弄されない、高い商品価値をもつ野菜づくり=自然栽培に取り組むことでした。
「またアレルギーなどの理由によって、慣行栽培の野菜を『食べたくても食べられない』という意見があったのも大きな要因でした」
そんな折、北海道の仁木町で自然栽培学校を行っている方と知り合い、同社スタッフがそのノウハウを吸収。その方の指導のもと、同年秋自社農園CPSファームの開園にこぎつけます。

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「一年目は4町歩の圃場で大根およそ3万本、カブおよそ4万個の生産となりました。もちろんすべて無農薬無肥料の自然栽培。昨年は圃場を10町歩にまで拡大、レストランとの連携を密に。今年は50を超える少量多品種での生産にチャレンジし、飲食店・レストランが欲しい野菜を生産していく出荷先確定生産に取り組んでいます」
さらにこの農場で指導員を育成し、自社以外の圃場でも自然栽培の輪を広げていく、という野望もあるとか。CPS社のビジョンはまだまだ広がりそうです。

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地域貢献と経済活動の両輪を稼働させる。

最後に岡崎さんに投げかけたのは「なぜこのようなニッチな取り組みをするの?」という疑問でした。農家のための規格外品の取り扱い、首都圏飲食店との仲介、惣菜やお弁当の販売、自社農園の運営... どれもビジネス的な旨味がたっぷりとは思えなかったからです。
岡崎さんは、それは自分たちが悩みを相談されると断れない性分だから、とニッコリ。しかしその後は真剣な眼差しでこういいました。
「すでに、自社の利益だけを追求する企業は生き残れない時代です。地域の課題、産業の矛盾、住民の悩み...それらを見据え、その解決と企業の存在価値を重ねることで、真に社会に求められる企業になっていく。CPS社は今、まさにその途中にいるんです」
地域に根付き地域と共存する企業へ。岡崎さんらCPS社の思想がスタンダードとなる日はそう遠くないように感じました。

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株式会社シーピーエス
住所

北海道札幌市北区北14条西3丁目11-2

電話

011-214-1390

URL

http://www.cps-1.co.jp/


ニッチな取組みで農を活性化!株式会社シーピーエス

この記事は2017年8月7日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。