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新十津川町

終着駅のまちにたどり着いた開拓者20170720

この記事は2017年7月20日に公開した情報です。

終着駅のまちにたどり着いた開拓者

たどり着いた終着駅

1日1本しか電車が来ない終着駅、そこに新十津川町の地域おこし協力隊として活躍している高野智樹さんが関東から初めてこの地にたどり着いたのは2015年の初夏のことでした。当時はまだ1日に3本の電車が走っていたJR新十津川駅。きっとこの時はまだ、高野さんが新十津川町でこんなにも深く駅と関わっていくことになるとは思いもしなかったはずです。


高野さんは新十津川町の地域おこし協力隊として2015年6月に着任しました。そのきっかけは以前にされていた仕事を辞めたタイミングで先輩が「青年海外協力隊」になったこと。青年海外協力隊について調べている際に出会ったのがこの「地域おこし協力隊」という制度だったのです。

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ツーリングで北海道を回っていた経験から北海道に移住を考えていた高野さんは、新十津川町の地域おこし協力隊の募集に目をとめます。

新十津川町では当時、地域おこし協力隊はいなかったため第一期生の募集でした。そのため募集の内容が縛られておらず自由さを感じたのも高野さんが応募した動機のひとつ。他の地域おこし協力隊の募集にも応募されていたものの、一番スムーズに話が進んだという新十津川に高野さんは着任することとなりました。

新十津川町ってどんな町?

新十津川町に移住して2017年で2年となった高野さん。新十津川町の印象を聞いてみると
「とにかく広いっていう感じですね。『新十津川だなぁ』っていうよりも『北海道だなぁ』っていう感じ。他の町と比べてどうってことはないんだけどね(笑)」と印象を語りました。

そうは言いながらもこの広い土地に広がる農地の景色や水のキレイさにも定評があることを教えてくれた高野さん。また新十津川町では移住定住に力を入れていて、最近では町外で仕事をしている人でもわざわざ住むためだけに移住してくる人も多いのだとか。

実際に高野さんが新十津川町に住んでみた印象も「車さえあればどこにでも行けるし、そんなに田舎っていう印象はない」とのことで、移住してきた方たちにとっても住みやすい町なようです。

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それでもやはり、北海道移住の最初は苦労したこともあったようです。

入居したアパートに設置されていたボイラーが古い灯油ボイラーだったため、初めて見る設備に使い方が全く分からず最初のうちは水風呂を使っていた!という仰天エピソードがあったり、東京出身の高野さんは最初は車を持っていなかったため自転車で生活していたり、ようやく手に入れた車でしたが「北海道の車にはエンジンをかけるリモコンをつけたりするのか!(※)」と驚いたり...。
そんな初めての北海道生活ももう3年目。驚きつつもだんだんと北海道の生活にも馴染んできているそうです。

(※)リモコンエンジンスターター ... 北海道の冬では、屋外に置いておいた車の車内が冷え切っていたり、窓ガラスが凍っていたりするため、家にいながら遠隔で車のエンジンをかけるリモコンをつける方もたくさんいらっしゃいます。そうすることで、車に乗るときには暖機運転が完了しており、すぐに動かすことができるようになります。

個性的な旅人が集まる終着駅の町

新十津川町の自由な内容に心惹かれて地域おこし協力隊となった高野さん。しかしその自由さゆえに苦労した部分もありました。

最初は物産館のお手伝いを業務としていましたが、スタッフの中の一人の方から「高野さんがもしやりたいことがあるのなら、ここで仕事をしていてもそれができないんじゃないかな」と言ってもらったことで物産館を出ることを決意。

shintotsukawa_takano2.JPGこちらが新十津川町の物産館。

しかし当然、物産館を出ても初代地域おこし協力隊である高野さんに行く場所はありません。そこで「まずは町の勉強だ!」と図書館に通うようになります。

すると今度は「地域おこし協力隊が毎日図書館にいるけど何をやっているんだい...?」と住民から言われるようになってしまいます。それがきっかけで役場の方に「事務所、ほしいかい?」と声をかけてもらえたことで、役場の一角に席を置くこととなりました。

そうして迷いながらもあちこちに足を運んでいた高野さんでしたが、2016年2月にその後の活動に大きく関わる「勝手に新十津川駅を守る会」会長の三浦さんから「駅前の『かまくら』作りを手伝ってほしい」と声をかけられます。

shintotsukawa_takano3.JPG勝手に新十津川駅を守る会の会長、三浦さんです。

新十津川駅は高野さんが新十津川町に初めて足を踏み入れた時に利用した交通機関。新十津川の町の人は本数も多い隣町の滝川駅を多く利用するため、移住した時には新十津川駅から来たことを多くの方が驚いたと言います。

そんな住民の方にとっては利用される人の方が珍しい駅ではありますが、その「1日に1本しか電車が来ない」という珍しさに惹かれて多くの旅人が訪れる駅でもあります。
この駅をせっかく訪れてくれる人のために何かしたい!という活動に共感し、三浦さんと共に高野さんもだんだんとこの活動に関わってゆくこととなりました。

shintotsukawa_takano4.JPG時刻表に記された1つの数字。最終列車は9時40分に発車します。

そんな中、以前から「協力隊独自の拠点がほしい」と思っていた高野さんはついに旧商工会館を使う許可をもらいます。

この建物は役場の持っている休遊地のひとつだったため、自由度も高かったことも利用を決めた理由のひとつだったとか。2017年5月に新たに着任した金奨一朗(こんしょういちろう)さんと共にこの建物の改装や整備を進め、イベント・レンタルスペースである「大人アジト Studio lab」をオープンするに至りました。

shintotsukawa_takano10.JPG事務所を構え、こうして笑顔で仕事が出来る高野さん。

地域おこし協力隊最後の1年とその後

現在、この「大人アジト」で様々なイベントを開催し住民同士の交流を進めている一方で、新十津川駅の掃除や「勝手に新十津川駅を守る会」としてイベントを手掛けている高野さん。


shintotsukawa_takano6.JPG高野さんと、同じく新十津川町協力隊の金さん、勝手に守る会の三浦さんと、電車をお出迎えしに来たこどもたち。

今後のことについて聞いてみると「夢を持つ人が一緒に何かできる場を作れたらいいなぁと思って」。都市と農村をつなげ、事業の立ち上げや移住の支援をするのが夢だそうです。その「場」作りにコワーキングスペースなどを作るのもいいね、と語っていました。

shintotsukawa_takano9.JPGこの日はみんなで一緒にごはんを食べようという「みんなの食堂」イベントが大人アジトにて開催されていました。

また新十津川駅についても「いつか廃線になってしまうことは仕方ないのかもしれない。でも、それでもできることがあると思うんだよね」と話しました。

きっと今の活動をしたっていう実績が残ることで、同じような状況にある町や駅、その人たちのためになれるんじゃないか、と。その町の枠を越えた広い考え方はやっぱり高野さんのような地域おこし協力隊じゃないとできない発想ではないでしょうか。

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ただ「定住が絶対じゃないと思っている」とも言っている高野さんはいつも自由であることを大切にし、何者にも縛られないマイペースな生き方をしています。

そんな自由な生き方を目指す協力隊がいること自体が町の魅力であり、新十津川町の風通しの良い空気を表しているような気がしますよね。この自由な若者と町の人とが出会うことによって、きっとこれからさらに面白いことが生まれてくるに違いありません。

新十津川町地域おこし協力隊 高野智樹さん
住所

北海道樺戸郡新十津川町字中央302番地2

電話

050-1061-7330


終着駅のまちにたどり着いた開拓者

この記事は2017年5月18日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。