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アプリ開発で医療・介護業界の未来を切り開く開拓者20220905

アプリ開発で医療・介護業界の未来を切り開く開拓者

株式会社SynCube(サインキューブ)は、2021年9月に設立されたばかりの新しい会社です。北海道内で医療と介護を融合させ幅広いサービスを提供している白ゆりグループでのICT化に取り組みDX(デジタルトランスフォーメーション)を担います。

アイシーティーにディーエックスですか? 
頭にハテナが浮かぶくらしごと編集部に、丁寧にわかりやすく説明してくれたのが、サインキューブ事業企画部ゼネラルマネージャーの佐藤翔太さんです。
佐藤さんは神奈川県横浜市のご出身で、この会社に転職を機に札幌に移住されたということで、移住の経緯や北海道の印象なども教えていただきました。

医療・介護業界から始まる先進的なDXとは?

白ゆりグループは、在宅での介護サービスや施設の入居まで、医療と介護のサービスをトータルで提供しているグループです。札幌、函館を中心に10カ所の高齢者介護複合型施設と9カ所の訪問看護リハビリステーション、また長沼町で内科消化器科クリニックと札幌市内に2カ所の訪問診療クリニック、調剤薬局など数多くの医療介護事業を運営しています。

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「2050年には6人に1人が高齢者(65歳以上)になると言われていて、それに対して国は『65歳以上でも元気な人は働いてください』ということと、『ITで効率化してください』と言っているのですが、サインキューブは、白ゆりグループの一員として、現場で働くスッタフの負担を軽減し、働きやすい労働環境を実現するソリューションの創造に取り組んでいます」
なるほど、具体的にソリューションの創造とはどういうことでしょうか?

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「シフト作成・管理をするアプリを開発しました。これからグループ内での運用が開始されます」
シフト作成といえば、いまだに紙に休み希望の日を記入する方法で行っているのが一般的ではないでしょうか。
自分の休みたい日に先に誰かの希望が入っていると、休みを申請するのに躊躇してしまったり、管理者にとっても気苦労を感じるのがシフト作成です。これは介護業界に限らずどの業界でも気を遣う繊細な業務でしょう。
そこで、佐藤さんはまずはそのシフト作成の負担を軽減すべく、スタッフに話を聞き、アンケートをとりアプリの開発を進めてきました。
とはいえ、活用するのは日々忙しい介護の現場スタッフです。従来のやり方ではなく、新しいやり方を取り入れる方がもっと大変だと言われなかったのでしょうか?

「白ゆりでは、一人ひとりが『利用者様のために』という共通認識をしっかりと持っています。そのため、早くアプリを使いたいと言われることが多かったです。仕事のやり方を改善して時間ができれば、新しいことに時間を使えて利用者様にさらに良いサービスを提供できるようになりますよね」
とアプリを利用するのを楽しみにしているという期待の方が大きいのだそうです。
「ITは手段であり、本当につくりたいものは、現場スタッフがより笑顔で楽しく働ける環境」だと佐藤さんは笑顔で話します。

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医療分野と介護分野の連携をはかりワンストップで質の高いサービス提供するために、業界でもいち早くICTを利活用してきたという白ゆりグループが素晴らしいですが、ずっと東京でお仕事をされていたという佐藤さんが、どのようなきっかけで、白ゆりグループと出会ったのでしょうか?

「働く場所はどこでもいい」と感じたコロナ禍での在宅勤務

佐藤さんは、2008年に新卒でSE(システムエンジニア)として東京の会社に就職。最初の会社では、証券会社に常駐してデリバティブ取引を管理していました。それから、2015年に広告業界へ転職し、インターネット広告の受発注をするプロダクトの開発をされたそうです。広告は世の中に必要なものではありますが、なくても大丈夫なもの。生活する上でなくてはならない社会貢献性が高い仕事がしたいと考えるようになり、2018年より介護業界でシステム開発に携わるようになりました。

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新卒からずっと東京で働いていましたが、コロナ禍になり在宅勤務で仕事をしているうちに「働く場所はどこでもいいのでは?」とふと思い、ある日、人材紹介で登録していた希望勤務地を全国で変更してみました。すると全国各地の会社からオファーメールが。その中の一つが白ゆりグループでした。
社長が東京に来るというので、さっそく会ってみることに。フランクに思いを語る社長には、経営者として常にアンテナを張っていて、判断が早く、先進的であると感じたそうです。
一度札幌に来てみませんか?との誘いを受け、「せっかくだから北海道でおいしい海鮮でも食べてこよう」という軽い気持ちで、佐藤さんは札幌に足を運び施設を見学します。スタッフの誰もが明るく笑顔で挨拶してくれるのが印象的で、この人たちのシステムを開発するのだなと、実際に感じることができたそうです。

今までの経験やスキルを生かし、従業員のほうを向いて働ける、世の中に貢献したいという自分の希望に近い仕事ができそうだと転職することを決めました。

仕事を変える、住む場所を変えることは人生の一大事で深刻に悩む人の方が多いと思いますが、佐藤さんがとても軽やかに決断されてるのがすごいと思いますとお伝えすると、
「いいから、やれ」が自分の合言葉だと話してくれました。

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「昔は、自分がなんでやらなきゃいけないのか?を考えてばかりいて、すぐには動きませんでした」と苦笑いする佐藤さん。
以前に勤めていた時の上司が「いいから、やれ」と常に言っていて、まず行動することの重要性がわかり、とりあえずやってみようと考えられるようになったのだそうです。

この考え方はプロダクト開発にも有効ですが、佐藤さんの人生においても「まず、やってみる」を実践されているのだとか。人は、やらない理由を作って挑戦や変化から逃げてしまいがち。慣れ親しんだ環境は居心地がいいものですが、人は挑戦する時に成長し、新しい環境に適応しようとする時に進化しますよね。

でも、佐藤さんが移住したくてもご家族の反対はなかったのでしょうか?
「妻は手に職をつけていて、どこでも仕事はができるから、いいんじゃないと言ってくれました」
そうして、2021年11月から札幌での生活が始まりました。

自然は厳しいが人はおおらかなのが北海道の魅力

「父が北海道白老の出身で、小学生の頃には毎年北海道へ来ていたこともあり、すぐアジャストできると思ったのも、北海道に決めた理由のひとつだったのですが・・・」実際に暮らしてみると思っていたのと違ったと感じているそうです。

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11月、札幌に来て1週間くらいすると雪が降り始めました。最初はうっすらと道路に積もる程度の雪で、これくらいならなんとかなると思っていたら、永遠に雪がやまないんじゃないかと思うくらいどんどん雪が降り積りました。特にこの年は記録的な豪雪で市民生活は大混乱。今年の雪は特別スゴかった・・・と色々なひとからフォローされましたが、雪道ではベビーカーが使えないんだ!などの東京との違いにビックリ。早速「雪」という洗礼を受けたのです。

雪が解けてからは、家族でルスツにドライブで出かけたりと北海道生活を楽しんでいるといいますが、
「僕は、アウトドア派ではないので自然も大通公園で十分なんですよね」と笑うシティボーイの佐藤さん。
それに「夏なのに朝晩の風が冷たく、寒い」と奥様からのクレームもあるのだとか(笑)
自然が大好きで移住した人ばかりを取材してきたくらしごと編集部は「たしかにそんな視点もある...!」と目から鱗。

「でも札幌は都会だから暮らしやすいですよ」と佐藤さんが続けます。
海鮮やラーメンなど、食べ物がおいしいところは気に入ったようで、大通公園のビアガーデンに行った時もビールが本当においしくて大ジョッキで注文したと楽しそうに話してくれました。

食べ物がおいしい他にも、人がおおらかなことが北海道の魅力だと感じているそうです。白ゆりグループでも、やりたいこと、やった方がいいことを素直に発言でき、それを尊重してもらえる風通しのいい風土があり、自分に合っているのだとか。

サインキューブは、現在社員が2名ですが、チームで仕事をすることを大事にしているので過労働にはなりません。お互いに得意不得意を補い合い、心理的安全性を高い状態に保ちながら活発に意見交換できるカルチャーがあります。決裁権を持つ社長とも直接対話ができ、意思決定がスピーディーです。開発がスムーズに進められるというのはエンジニアにとって、とてもストレスフリーな環境なのだそうです。

さらに、開発したプロダクトを使ってくれるユーザーがすぐ近くにいて、作った製品をすぐ試してもらえ、フィードバックを直接受け取れるのも魅力だと、やりがいを感じているようです。

スタッフ全員が心身ともに健康で笑顔で働くために

完成したシフト作成のアプリも一度リリースすれば終わりではありません。単純にデジタル化して、業務が効率化できたということではなくて、安定稼働をさせていくことはもちろん、現場からの生の声を聞き、バージョンアップしていくことが必要です。さらに、いずれはグループ以外の同業他社にも活用してもらい、業界全体の効率化につなげていくことを目指しています。

ほかにも「笑顔で利用者様に喜ばれるサービスを提供するためには、働くスタッフ全員が健康なくてはなりません」シフト管理システムの次は、睡眠の質や体温などから健康状態やストレスを察知し、シフトの組み立て方にも反映できる仕組み作りのための、体調管理システムを開発していきたいと佐藤さんは次の未来を視ています。

まだまだ現場では、手書きで書類を作成したり、日常的にFAXが使われるなど非効率な部分が多く、これらを見直していけば働き方の改善や業務効率化を図ることができ、スタッフの皆さんをもっと笑顔にできる。
そんな新しいことを進めて業界を変えていくためには、経営者の目線を持って、トップの人達と同じ視点で話ができるようになっていく必要があると「人として成長することをあきらめたくないんです」と語る佐藤さんは、未開の北海道介護業界を、ICTで切り開く開拓者であると感じました。

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株式会社 SynCube(サインキューブ)
株式会社 SynCube(サインキューブ)
住所

札幌市中央区南9条西7丁目1番28号

URL

https://hp.syncube.co.jp/


アプリ開発で医療・介護業界の未来を切り開く開拓者

この記事は2022年7月28日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。