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苫小牧市

地元の人や観光客で賑わう場所に。ぷらっとみなと市場の挑戦!20220620

地元の人や観光客で賑わう場所に。ぷらっとみなと市場の挑戦!

ホッキ貝の漁獲量日本一で知られる苫小牧。産卵期の5、6月を除き、質の良いホッキ貝が日々苫小牧漁港に水揚げされます。その漁港のすぐそばにあるのが、「海の駅 ぷらっとみなと市場」です。

地域に密着した市場として地元の人たちに支持されてきましたが、客足は年々減る一方。そのような状況を打破するべく、PRや営業活動を行っているのが同市場の事務局長・青谷尚人さんです。SNSを積極的に活用したことを機に、今では各方面からの取材が増え、観光スポットとしても注目されるように。今回は同市場のために奔走する青谷さんにお話を伺いました。

50年近くの歴史がある古い市場

「海の駅 ぷらっとみなと市場」は、昭和47年(1972)に現在の場所にできた「苫小牧公設食品卸売センター」が前身。もともと駅前にあった朝市がはじまりで、卸売市場として賑やかだったそうです。ところが平成に入り、大型スーパーが登場し、小売業者はコンビニ等へ業態を変えていったため、少しずつ売上が減少傾向に。平成15年に卸売市場から業態を転換し、「海の駅 ぷらっとみなと市場」という名称で小売市場として再出発を切りました。
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東棟、西棟から成り立つぷらっとみなと市場。店舗数は20あり、「新鮮なものを安く」というコンセプトを掲げた青果店、鮮魚店が軒を連ねるほか、昨今は飲食店が増えています。年季の入った建物からは市場の長い歴史が感じられ、知る人ぞ知る味に出合えるのではないか、イイモノがお得に手に入るのではないかという期待感を抱かせてくれます。

「建物も古いし、直さなければならないのだけれど、とにかくまずここの魅力を知ってもらうことが大事だと思って、SNSでの発信を見様見真似ではじめてみました。組合員の中にはやる気のある方、熱い思いを持っている方もたくさんいて、何とか彼らのためにもお客さんを呼びたくて、自分がやれることをやろうと思いました」と青谷さん。

敏腕営業マン、ドライバーを経て事務職に就くため事務局へ

そんな青谷さんが事務局長に就任したのは、一年前。長く市場に関わってきた方かと思いきや、「前職は重油のタンクローリーに乗っていました」と意外な答えが返ってきました。といっても、タンクローリーのドライバーをしていたのはほんの数カ月。その前は営業マンとして長年エネルギー業界に携わっていました。
「僕は北見紋別の出身で、もともとは銀行員。30代前半で転職して、ガソリンスタンドを運営する会社で20年以上営業としてあちこち飛び回っていました」
エリアマネージャーとして営業成績の振るわないスタンドの立て直しを任され、売上を3倍にするなど実績を積み重ねていきました。
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「どうやったらお客さまが来てくれるのか、リピーターになってくれるのかを常に考えていました。例えば、スタンドに来たすべてのお客さんにスタッフが必ず声をかけるとかね。人は結果が出ないと、焦ってすぐに別のことをやろうとするけれど、僕は諦めずに続けてみることが大事だと思うタイプ。とにかく諦めずに続けるよう当時のスタッフには言い続けました」
その結果、最終的には売上が伸び、リピーターが増え、不振が続いていたスタンドも安定した運営ができるようになっていったそう。

ところが会社が倒産し、会社のオーナーが変わります。すぐに結果を出すことを求められるようになり、方針が合わないと感じて退職。
「ちょうど57歳だったのですが、次は営業以外の仕事に就こうと思いました。危険物取扱者の免許は持っていたし、あとはタンクローリーを運転できる免許を取ればいいだけだったのでドライバーを目指すことにしました」
晴れてドライバーになったものの、凍結した坂道でスリップし、想像していた以上に命がけの仕事だったということに気付き、怖くなってしまったと言います。

ドライバーを諦め、住まいのある千歳のハローワークで次の仕事を探していた際、ぷらっとみなと市場の組合の事務の求人を見つけます。
「営業はもういいと思っていたので、事務ならと応募しました」

市場の良さを知ってもらうため...。休むことなくSNSを毎日更新

minatoitiba2.JPG市場の中には美味しそうな飲食店もたくさん!
同市場を訪れた青谷さんは、建物の古さにまず驚きました。
「50年近くそのままだと聞いて、これは少し直せば済む程度のレベルではないなと(苦笑)。しかもお客さまの数が減っていると聞き...」
事務職で入ったものの、営業マン時代の血が騒ぎます。
「どうやったらお客さまが増えるだろうか」

まずは市場のことを知るために各組合員のところを日々回り、たくさん話を聞きました。売上を伸ばすためにいろいろ挑戦したいという方もいることが分かりました。
「30代、40代の若い組合員さんの中にはいろいろなアイデアを持っている方もいます。また、長年ここで店をやっている方の中にも熱いものを持って仕事に取り組んでいる方もいます。皆さんの想いや熱意を聞いているうちに、僕自身も市場をなんとか盛り上げたいという気持ちになりました」

また、苫小牧市の商工振興課から「苫小牧の観光を引っ張っていくような施設にしていけないか」という相談もあり、「やれることはまだいっぱいあるような気がして、それならやれるだけやってみよう」と考え、行動に移します。
minatoitiba8.JPG店舗の若いスタッフさんにも気軽に声をかけます
ぷらっとみなと市場の売上アップに繋がるヒントがないか、通りを挟んで向かい側にある卸売市場へも出向きました。あるとき、形状はよくなくても味に問題がない魚介が安く売られているのを見つけ、ぷらっとみなと市場の組合員に「なぜ安くていいものがあるのにここで売らないのか?」と尋ねました。返ってきた答えは、「形が悪くて売り物にならないから...」でした。
「でも、お客さまたちが望んでいるものは本当にそうなのかなと思いました。家で食べるものなら、安くて新鮮でおいしければ十分ではないかと。お客さまの求めているものを考えて提供していきましょうよと組合員さんに伝えました」

さらに、ぷらっとみなと市場はこれまで広告宣伝を一切していなかったため、まずここを知ってもらうことが大切だと考えます。ホームページを作成し、マメに更新も行うように。
「建物はレトロだけど、各店で扱っている商品は本当にモノがいい。目利きが揃っていますからね。飲食店も地元のおいしいものを使ったメニューを揃えている。だからこそこの良さを伝えていくべきだと思いました」
そこで、ぷらっとみなと市場のFacebookページも立ち上げます。
「SNS自体よく分からなかったけれど、市場を知ってもらうためにイチから勉強しましたよ。お金をかけなくても発信できますしね」
何があっても毎日必ず更新すると決め、「新鮮なものを安く提供。その情報を早くお届けする」を目標に特売情報などをアップ。休みの日も更新だけのために事務所へ立ち寄っています。
minatoitiba15.JPGこの日、青果店の目玉は初物のメロン!

諦めずに続けた結果、GWには4万人以上が来場

現在のFacebookページのフォロワーは2700人以上。「市場へ来てもらうことが目的だから、評価は来てくれたお客さまの数で決まる」と話しますが、ガソリンスタンドの営業マン時代に培った「諦めずに続けて結果を出す」という青谷さんのスタイルがここでも花開き始めます。Facebookの情報をチェックしてから訪れる地元の人や、札幌方面から足を運ぶ人が増え始めたのです。平日は平均1500人、土日は2500~3000人がここを訪れます。

さらにフォロワー数の多い札幌在住のユーチューバーに直接アタックし、よかったら市場に来てYouTubeにアップしてくれないかと依頼。5人のユーチューバーがそれぞれの視点で市場を取り上げてくれました。今後は、市場自体でももっと動画を作ってPRしていく必要もあると考えています。
「イベント時にだけ開催した海鮮焼きの動画をアップしたら、愛知県の方から15人ほどの団体で行くから、その海鮮焼きをやってくれないかという問い合わせがあり、動画の影響力を実感しました」

minatoitiba14.JPGさすがは苫小牧! 見事なホッキが豊富に並びます
そんな一生懸命な姿を見て、ぷらっとみなと市場の組合員の方たちも青谷さんに厚い信頼を寄せるように。市場内を歩いていると、「青谷さん、青谷さん」と皆さんが声をかけてきます。「これ見てよ」と洒落の効いた新しい前掛けを見せてくれる寿司屋の大将や、「親身になって店のことを考えて、運営に対して的確なアドバイスをくれる」という青果店の若いスタッフも。
「営業マン時代は社外の人との交渉がほとんどでしたが、今は中の人たちとのやり取りがメイン。全員の足並みを揃えるための調整が難しく感じるときもあります。ただ、お客さまが増えることで、組合員の皆さんの意識も変化していくのではないかと思っているので、集客に関して僕はできることを続けていこうと思っています」

この場所を知ってもらい、魅力を感じてもらうためには足を運びたくなるきっかけが必要です。日々のSNS発信のほか、イベントの内容を充実させることにも力を入れはじめます。今年のゴールデンウィークには、競り体験やマジックショー、歌謡コンサートなどのほか、海鮮バーベキューなどを実施。さらに子ども連れでも楽しめるようにお菓子の市場を用意しました。そこに並べる菓子に関しては、小学生の孫にアドバイスをもらったそうです。
「お客さまが何を求めているのか知ることは大事ですから、生の小学生の声を取り入れましたよ。おかげでお菓子の市場は子どもたちに大人気でした」
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また、本州からの観光客が見込めるのではないかと考え、初めてお金をかけて東京と大阪に向けて広告を打ちました。
結果、これらが功を奏し、ゴールデンウィークの9日間で4万3000人もの人がぷらっとみなと市場を訪れました。
「市の商工振興課の方たちも大喜びでしたね」と振り返ります。

まだまだやれることはある。目標来場者数は年間70万人!

ところが、これだけ多くの人が来てくれたからといって、あぐらをかいていてはならないという現実を青谷さんは突きつけられます。
「個人旅行が増えていることが分かったので、レンタカー会社へ市場のパンフレットを置いてもらおうと回ったのですが、10カ所中7カ所もの会社が市場のことを知らなかったのです」
うぬぼれていてはいけないと痛感。それと同時に、ほかにもパンフレットを置いてもらえるところがあるのではないか、営業に回れるところがたくさんあるはずだと考えるように。さらに、今後はインバウンドが戻ってくるであろうと想定。コロナで一度は中断していたそうですが、観光会社とタイアップしてインバウンドをターゲットにしたパッケージ商品の準備も再び進めています。
「やれることはまだまだあります。やれることはすべてやり切りたいですね」
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昨年の来場者数は延べ35万人。今年はその倍の70万人を目標にしています。
「70万人、いけると思っています! コロナも少し落ち着いたし、ゴールデンウィークの様子を見ても、人の動きが活発になっているのがよく分かりました。今までと変わらずSNSの発信を続けながら、外回りをして市場をどんどんPRしていきます」

仕事とはいえ、青谷さんをここまで突き動かす原動力は何なのでしょうか。
「たまたま縁があってここへ来て、素晴らしい部分がたくさんあり、想いを持った組合員さんもいるのに、それをうまく伝えられない、活かしきれていないのはもったいない。なんとかできないかなと考えているうちに、だんだん仕事がおもしろくなってきたのです。人が行動するのに最終的に重要なのは、おもしろいか、おもしろくないか。仕事はもちろん、何においてもおもしろいと自分自身が思えば、夢中で取り組めるものです。僕は今の仕事がとてもおもしろいと感じているわけです」
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考えて、行動して、それを諦めずに続けて、結果を出す。そのプロセスが好きだという青谷さん。ぷらっとみなと市場が、今以上にもっと多くの人で賑わう日もそう遠くはないかもしれません。
海の駅 ぷらっとみなと市場
海の駅 ぷらっとみなと市場
住所

北海道苫小牧市港町2-2-5

電話

0144-33-3462

URL

https://puratto.jp/

営業時間 7時~16時

定休日 水曜


地元の人や観光客で賑わう場所に。ぷらっとみなと市場の挑戦!

この記事は2022年5月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。