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北海道で暮らす人・暮らし方
釧路市

北海道産のバナナ物語。(有)946Skyファーム20201207

北海道産のバナナ物語。(有)946Skyファーム

別件の取材でお邪魔していた酪農を主体とするとある農場で、仕事が終わり帰ろうとしていた時に、
「実はうちでバナナを作っているんです。見ていきますか?」と。
えっ!?北海道でバナナ?しかも舞台は釧路市。釧路市と言えば、真夏でも20℃を少し超える程度の気温。そんな場所で南国のバナナを?頭の中は、???でいっぱい。
でも、そんな面白そうなネタを放っておけるはずはもちろんなく、改めて取材を申し込み、取材陣は再び釧路に向かうことにしました。

バナナ生産者になった2人

今回の取材で山ほどの???に丁寧にお応えいただいたのは、有限会社 946Skyファームの庄司栄二さんと山口大樹さんのおふたり。
(酪農経営は有限会社 仁成ファーム、バナナ生産は有限会社 946Skyファームと、別法人になっています)
庄司さんは、お兄さんと二人で林業を営んでいたのですが、様々な理由から林業を長く続けていくのは難しいと判断し、当時からアルバイトをしていた仁成ファームに就職を決めたのが2018年の6月。
「面接の時にも、バナナを担当してみないか?と社長から言われてお断りしていたのですが、結局説得されてしまい」と笑います。
一方で、山口さんはダンプカーの運転手をしていたのですが、「自分の考えを仕事に反映できるような、やりがいのある仕事をしてみたかった」と転職を決めたそうです。

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なぜ北海道でバナナを?

酪農の会社がなぜバナナを?その答えは、特殊な技術で作られた苗にありました。
バナナなどの熱帯植物も、かつて氷河期時代にはもっと気温の低い過酷な環境下で生息していたという事実に基づいた発想から生まれた技術。
簡単にポイントだけご説明すると、対象作物の種子や成長細胞塊を半年ほどの時間をかけて、-60℃まで冷却し凍結させ、それをまた時間をかけて解凍するという外部ストレスを与えることで、眠っていた遺伝子が機能して、発芽以降の熱帯植物に極めて早い成長速度と耐寒性が発現するという、植物の栽培可能地域を拡大してくれる、まさに夢のような技術なのです。

バナナではどのくらいの効果があるかというと、
・収穫性は、従来種苗で1株450〜600本のところ、この種苗だと750〜1,000本
・収穫速度は、約18カ月かかるところが、約11カ月で収穫が可能
・糖度は、約15~20度だったのが、約23度以上
これほどの効果があるそうです。
※まだ初年度のため、平均的な実績値がどの程度になるかはこれからですとのこと。

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こんなに小さな苗も、9カ月後には収穫できるまでに大きく育ちます。

これまでに230種類以上の熱帯作物が、温帯地域で栽培が可能になったそうで、
その技術を、デントコーンなどの栽培に活用できないか?と社長が考えたのがきっかけだそうです。
ちなみに、バナナの生産は岡山県が盛んで、同技術を使い日本全国20カ所以上で生産されているそうです。

バナナは『樹』じゃない!?

「実はバナナって樹ではないんですよ」
今回の取材で一番衝撃だったのは、その言葉かもしれません。
こんなにも身近にあって、子どものころから食べていたバナナのことを、全く知らなかったのですね。
「バナナは芭蕉科バショウ属の多年草で、樹ではなく草です。つまり分類的には果物ではなくて、野菜になりますね」
こんなお話を聞いたら、頭の中が???だらけになってしまうのもご理解いただけるでしょうか。
ここで、学術的な説明を延々としても・・・ということで、興味を持たれた方はぜひ調べてみてください。

そのかわり、バナナがどういう風に成長するのかを、写真を使ってお伝えしたいと思います。

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多年草のバナナ。太く幹のように見える偽茎(葉鞘が重なりあっているもの)のまわりにいくつも生えている草が、次の世代の苗。収穫近くまでは、栄養を集中させるために切ってしまいますが、タイミングをみて次の苗を育てていきます。

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1本につきひとつだけ、大きなつぼみができ、やがて花が咲きます。

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実は、大きな花弁に見える部分は正しくは苞葉で、いずれ1本ずつのバナナになる部分が本当の花なのだとか。ややこしくてすみません!!

_85A6332.jpg実が大きくなると不要になる苞葉の部分を、1枚ずつはがしていきます。

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湿気が多い時期には、バナナのお尻にカビが生えないように、めしべの部分を手で取り除いていきます。

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最後はこんなに立派なバナナに!ちなみに、まるごと全部を1房と言うらしいです。

国産のバナナを当たり前に、そしてその先に見つめているもの。

現在、946Skyファームでは、ハウス14棟で900本の苗を育てています。(15万本のバナナができます)
お二人はこのバナナを既に味わったのでしょうか?
「実はまだなんです。順調にいけば、あと1カ月以内には出荷ができると思います。農薬・化学肥料不使用で作っているため、皮まで食べることができ、海外産だとかなり早い段階で収穫をしなければいけないのですが、少しでも完熟に近い状態で収穫できるのも国産のメリットですね」と庄司さん。
「今のところは上手くいっているように見えますが、3カ月間の研修を受けてきたとはいえ、環境が変われば違うことがたくさん。自分で味わってみるまでは本当にドキドキですね」と山口さんが続けます。
「やりがいはもちろん大きく、でも同じ位のプレッシャーも感じています。一年中収穫ができるようになることを目指していますので、まずは一周してみないと落ち着かないというのが正直なところです」

お二人に今後について聞いてみると、まだまだ始まったばかりですからと笑いつつも、
「まずはバナナが成功してからになりますが、将来的には、例えば珈琲などの他の作物も手がけてみたいですね。今は、ハウス内の温度を上げるために灯油を使っていますが、これも近い将来バイオガスになる予定です」と山口さん。
庄司さんは「北海道でバナナが作れたら、日本全国どこでも作れるということ。バナナの生産者仲間を増やしたいです。そして海外産であっても、バナナが自然となっているわけではなく、どこかの誰かが愛情を込めて、手間暇をかけて育てているのです。そういうことを知ってもらえると嬉しいですね」と締めくくってくれました。

先にも述べましたがこの技術は、バナナの生産だけではなく様々な作物の生産に活用ができて、それは酪農・畜産の生産性改善に大きく貢献できる可能性があり、さらには環境問題を解決するひとつの手段にもなり得るのです。
釧路に灯された希望の火。この夢のような物語はどこまで続いていくのでしょうか。

有限会社 946Skyファーム
住所

釧路市新野189-4

電話

0154-57-8770


北海道産のバナナ物語。(有)946Skyファーム

この記事は2020年10月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。