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上士幌町

おしどり夫婦の幸せな移住ライフを招いた転職。20181126

おしどり夫婦の幸せな移住ライフを招いた転職。

広大な十勝平野に横たわる美しい田園風景。十勝エリアには、「ザ・北海道」をイメージするような光景がそこかしこに広がっています。帯広市を中心に1市16町2村で構成されるこの地域は、農業や林業、水産業など一次産業が盛んで、のどかな落ち着いた雰囲気。観光はもちろん、暮らし働くにももってこいの環境です。今回は動物と関わる仕事に就きたいという夢を叶えようと本州から北海道に渡り、現在は十勝エリアの上士幌町に暮らす上本嵩さんと奥様の咲佑実さんにお話をお聞きしました。

酪農といえば北海道!目標に向かって一直線!

十勝エリアを中心にグループ企業を展開するノベルズグループ。肉牛の子どもを育てる「育成」、出荷に向けて成長させる「肥育」、生乳を絞る「酪農」の8牧場を経営し、今後、新たに牧場を開設するなど生産規模の拡大を目指しています(2018年4月取材現在)。全体では2万頭を超える肉用牛や乳用牛を飼養している国内最大級の「ギガファーム」。肉牛や酪農の分野で独自の生産システムを構築するだけでなく、食品加工や販売といった事業も展開することで複合的な強い経営を実現しています。さらに、地域社会や畑作農家とも手を携えながら「日本一の牧場をつくる」という大きな目標に向かってチャレンジ中です。

グループの中核をなすのが上士幌町の株式会社ノベルズ(以下、ノベルズ)。同社の繁殖部門でリーダーを務めているのが愛媛県出身の上本嵩さん。自宅でペットを飼った経験はありませんでしたが、小さなころにテレビの動物番組を見て以来、獣医を夢見るようになったと振り返ります。

「獣医師を目指して勉強を続けましたが、高校生のころに学びのハードルがあまりに高く感じてしまい...。加えて、両親もいわゆる『普通の会社員』を望んでいたことから、説得に負けて東京の大学の商学部に進学しました」

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ご両親を安心させるためにも公認会計士を目指そう。と、思ったものの、幼いころから抱いていた「動物に関わりたい」という夢はそう簡単に打ち消せませんでした。上本さんは就職活動で動物関連の職種に狙いを絞りましたが、専門的な知識があるわけではないことから「結果は軒並みNG」と苦笑します。

「どうしても諦めがつかず、愛媛にUターンして小動物の専門学校に通い直すことにしました。動物看護師の資格も無事取得したのですが、自分としては、小動物ではなく、大型の動物の方が好きだったことから将来の道をあれこれ考えていました。そんなとき、ふと、僕の頭の中で大草原で牧草を食む牛のイメージが湧き、だったら北海道で働こうという図式が成り立ちました...単純ですよね(笑)。酪農に関しては何も分かりませんでしたが、まずは求人が募集されていた足寄町の牧場で働くことに決めました」

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奥様が働くレストランで「ノベルズ」と出会って。

実は、小動物の専門学生時代に出会ったのが奥様の咲佑実さん。卒業後、半年ほどで熱烈なアプローチを受けて、めでたくゴールインすることになりました。ところで、嵩さんが北海道に渡りたいことは知っていましたか?

「はい、もちろん。ただ、私の両親は結婚と同時に北海道に移住するという予想外の申し出にビックリ。猛反対もされましたが、自分の人生は自分で切り開きたいと伝え、最終的には理解を得られました」

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上本さんご夫婦が足寄町に移住したのは5年ほど前。奥様は町内のレストランでパートを始め、嵩さんは酪農に従事しました。夢だった動物とふれ合う仕事、そして北海道の環境はどうだったのでしょうか。

「牛のエサをあげたり、トラクターに乗って牛舎のワラを替えたり、とにかくいろんな作業に携わらせてもらえました。時にはしいたけの原木に菌を打ち込むという酪農家離れした経験も(笑)。何もかも初めてのことで生活を楽しむところまではいきませんでしたが、あこがれの大地で働いているという手応えは十分でした」

搾乳やトラクターによる牧草の刈り取り、サイレージ(発酵飼料)づくりなど酪農のスキルを数多く積み上げた嵩さん。仕事に充実感を覚える一方で、新しい刺激と出会いたいという思いも湧き上がってきたそうです。

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「そんな時、妻が働くレストランのシェフからたまたま紹介してもらったのがノベルズのスタッフ。企業規模について聞かせてもらい驚きました。グループ企業全体で100億円以上の売上で、しかも働き方がシステマチック。農業はキツくて収入も上がりにくいという従来のイメージが覆ったんです。農業をきちんとした『ビジネス』として捉えながら、ダイナミックな経営を行うところが他の法人農家と一線を画すとワクワクしたことを覚えています」

上本さんはさっそくノベルズの会社見学に出かけました。その際に目にした受精卵移植という先進的な技術に胸を打たれ、さらに労働環境と給与のバランスの良さにも魅力を感じたとか。その場は面接ではなかったそうですが、用意していた履歴書を取り出し、必死に熱意を伝えたところ見事に採用に至ったのです。

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上士幌のご近所さんとも仲良しに!

嵩さんの仕事は主に受精卵の移植。専門家が黒毛和種の雌牛から受精卵を取り出し、一つひとつ品質を検査したものを、交雑種と呼ばれる雌牛の子宮に専用の器具を使って着床させ、妊娠させています。

「当社の受精卵移植は、設立当初から確立されている高精度の技術。とはいえ、新人時代は『繁殖って何だろう?』状態でしたから、会社の先輩やコンサルタントの先生に、牛の受精や妊娠した後の管理方法についてイチから教わりました」

nobels_8.jpg雌牛を妊娠させるために受精卵を移植する嵩さん。同社は全国に先駆け、「交雑種1産取り肥育」という手法によって肥育牛と肉用子牛を同時生産する革新的なノウハウを確立。

ゼロからの出発だからこそ、仕事に対してガムシャラに向き合ったという嵩さん。一方、当時は足寄町からクルマで30分ほどかけて通勤していたことから、徐々に距離がもどかしくなってきたといいます。

「3年くらい前、ウチのスタッフから紹介を受けて上士幌町の町営住宅に入れることになりました。その時は役場の方と面談してすぐにOKが出たと思います」

上士幌町は人口が5千人ほど。足寄町よりも小さなマチです。咲佑実さんは引っ越しに反対はしなかったのでしょうか?

「私はもともと人が多いのが苦手なタイプ。町内にはスーパーやコンビニもありますし、これくらいの田舎暮らしがちょうど良いと感じました。少ししてから飲料やヨーグルトの宅配・販売の仕事も始め、今では町内のおじいちゃんやおばあちゃんに会いに行くのも楽しみです。ご近所さんも移住者にやさしいので、笑顔のお付き合いができています」

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上士幌町の子育て支援は知らなかったけれど。

嵩さんは入社から約1年半でリーダーにステップアップ。受精卵移植による妊娠頭数がじわじわと増えたことも一因ですが、仕事に取り組む真面目な姿勢が評価されてのことでした。昨年には会社の資格取得支援制度を活用し、「家畜人工授精師」も取得。牛の繁殖について天職と感じるほど手応えを感じています。何だか順風満帆ですね。

「牛の管理はようやく分かってきたところですが、管理職として人のマネジメントや評価に関わるのは難しいです(苦笑)。僕の指示一つで業務を定時で終わらせられるか、少し残ってしまうことになるか分かれることもありますからね」

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ノベルズの業務管理や人員管理といったシステムのおかげもあって、以前勤めていた牧場に比べると、嵩さんの帰宅時間はグッと早まり、ご夫婦そろって自宅でゆっくりと過ごすことができるようになりました。休日には知床や札幌に出かけ、ガス抜きとして観光を楽しむことも多いといいます。咲佑実さんは「いつも唐突に私を連れ出そうとするんですけどね」と冗談交じりに笑い、こう続けました。

「最初は北海道での暮らしを不安視していた両親も、生き生きと仕事に取り組む様子に安心したのだと思います。旅行のついでに定期的にわが家に寄ってくれるようになりました。何せここは、食事のおいしさも風景も魅力的ですからね(笑)。ただ、自分自身も両親と同じように春に花が咲き乱れる美しさ、夏の広大な田園風景、秋の紅葉、そんな一つひとつが未だに新鮮で、あこがれの土地に旅するように暮らしている感覚です」

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嵩さんの同僚は道外からの出身者が約4割。釣り好きの仲間と近くの川に出かけることもあるそうです。町営住宅の一世帯に一つ割り当てられる家庭菜園も、年々パワーアップさせています。

「正直なところ、僕らは『上士幌町に移住しよう!』と暮らし始めたわけではありません。だけど、転職をきっかけに仕事が趣味といえるくらい楽しくなりましたし、二人の生活にも余裕が生まれました。そう考えると、結果として幸せな移住になったんじゃないかなと思いますね」

nobels_12.jpgマチの交通と交流の拠点を目指した新施設「上士幌町交通ターミナル」でツーショット。

株式会社ノベルズ
株式会社ノベルズ
住所

北海道河東郡上士幌町上士幌東3線259番地

電話

01564-2-3660

URL

http://nobels.co.jp


おしどり夫婦の幸せな移住ライフを招いた転職。

この記事は2018年4月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。