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まちおこしレポート
大樹町

老舗ラーメン店が天ぷらを揚げる理由。20161226

この記事は2016年12月26日に公開した情報です。

老舗ラーメン店が天ぷらを揚げる理由。

地場の秋鮭と「さけるチーズ」の新食感天丼!

「新・ご当地グルメグランプリ北海道2016in大樹」で見事に優勝した「大樹チーズサーモン丼」。地元で水揚げされた秋鮭と、雪印メグミルク大樹工場で製造される「さけるチーズ」の天ぷらに、各店のアイデアを凝らした地場産食材の天ぷらをプラスした新食感の天丼御膳です。このご当地グルメを提供しているお店の一つ、老舗ラーメン店「赤門」を訪ねてみました。

天ぷらを揚げるガス台がなくて...。

大樹町のマチナカから車を走らせること約10分。のどかな農村風景が広がる場所に、突如として「赤門」の大きな看板が見えてきました。
「いらっしゃい!」。威勢の良い声で出迎えてくれたのは二代目店主の川村一弘さん。額に巻いた赤い手ぬぐいがトレードマークです。
「大樹チーズサーモン丼」の開発が始まったのは4年ほど前のこと。大樹町役場や商工会、飲食店などのメンバーが集う「大樹チーズ&サーモングルメ地域活性化協議会」で食材や調理法をあれこれ検討した結果、天ぷらでまちおこしに乗り出し、地域活性化のツールにしようと決まったそうです。

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「大樹町といえば秋鮭とチーズが特産品。天丼に使うメイン食材は比較的早い段階で決まったようですが、チーズは揚げると溶けてドロドロになっちゃうのが課題だったみたい。試行錯誤を重ねるうちに雪印メグミルクの『さけるチーズ』を天ぷらにすると、歯ごたえのある不思議な食感を生み出すことに気づいたと聞いています」
ん?みたい?聞いています?川村さんは開発に携わらなかったのでしょうか?
「実はウチの店にはガス台が2つしかなくて、お昼と夜のピークタイムに天ぷらを揚げるのが難しかったんです。役場の方から何度も参加を呼びかけられたんですが、自分のお店で提供できないことには...と、泣く泣くお断りしていました」

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とはいえ、大樹町への思いが人一倍強い川村さんは、イベントや道外の物産展で「大樹チーズサーモン丼」の販売や調理を手伝っていました。

昼の2時から5時までの間だけ『大樹チーズサーモン丼』を。

川村さんが「大樹チーズ&サーモングルメ地域活性化協議会」に入ったのは発足から2年後。その裏には少々強引なエピソードがあったようです。
「協議会の中心メンバーの一人が僕の先輩でして。集まりに顔を出すよう何度も誘われて、さすがに断り切れずに行ってみると...そのまま勢いに押されちゃったというか(笑)。ただ、お店のピークタイムをのぞいた昼の2時から5時の間ならチャーシューを煮込み終わっているので、空いたガス台で『大樹チーズサーモン丼』を作れると提案すると、快く受け入れてくれたんです。他の提供店はちょうどアイドリングタイムですから、お昼時を外して食べに来るお客さんにとってもメリットがあると思います」

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それからは各店独自に考案するかき揚げやつけダレ作りに奮闘する日々。ラーメン店らしくメンマの天ぷらを提案するも、地場食材では作れないことからすぐに却下されたと川村さんは苦笑いします。
「ふと思いついたのが『大樹納豆』のかき揚げ。町内で製造されていますし、何といっても納豆の天ぷらって珍しいでしょう。僕は近所の農家さんと仲が良いので、ほうれん草を譲ってもらってチーズとともに揚げた天ぷらも加えることにしました」
ラーメン店らしさはつけダレに表現。「しょうゆダレ」「特製みそダレ」「つけ塩」と3テイストをそろえています。

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まちおこしグルメは地域活性化につながるのだ!

川村さんはずっと大樹町暮らしかと思いきや、高校卒業後に札幌の調理師専門学校に入学。都会の中華料理店で2年ほど修業を積んでからお店を継ぐために戻ってきました。
「僕は中学生くらいのころからお店を手伝ってきたから、やっぱり父の味を受け継がなきゃって思いも強かったんです。ただ、帰ってきてもラーメン作りに関してはほとんど放置状態(笑)。最初は常連さんから父と味が違うとか、おいしくないとか、厳しい言葉をいただきました」

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それでも常連さんは何度も通い続け、我が子を育てるように川村さんの成長を見守ってくれたのだとか。「味が良くなった」といわれた時は本当にうれしかったと相好を崩します。創業者であるお父さんは、今年、多くの方に惜しまれながら亡くなってしまいましたが、豚骨と鶏ガラ、たっぷりの野菜からとった変わらない味を楽しみに通い続ける人がほとんどです。

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「このまちも人口が減ってしまったし、ウチのラーメンも全盛期に比べると半分くらいしか出なくなりました。けれど、『新・ご当地グルメグランプリ北海道2016in大樹』では、1万3千人以上のお客さんがこの小さなまちに集まったんです。まちおこしグルメは地域活性化につながるという確かな手応えを感じましたね。だから、地元開催ではない来年も優勝して、大樹町をもっと宣伝しなくちゃ」
そう語る川村さんの視線の先には、お店を手伝い続けている奥様の姿が。ご夫婦の間には可愛い娘さんが二人生まれ、大樹町ですくすく成長中です。お子さんたちは「赤門」の味を受け継ぐのでしょうか?
「イヤイヤ、それは気が早い(笑)。だけど、お店を継ぎたいなんていわれたら...やっぱりうれしいですよね」

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ラーメン専門店 赤門
住所

北海道広尾郡大樹町石坂

電話

01558-6-3643


老舗ラーメン店が天ぷらを揚げる理由。

この記事は2016年10月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。