「花のまち」と住民意識にはギャップがあった!?
東神楽町は「花のまちづくり」に早くから取り組んでいるまち。昭和30年代に始まった「明るい農村運動」や「蚊とハエのいない北海道建設運動」といった取り組みをきっかけに、花を生かした美しい環境を徐々に整えていきました。平成12年の全国花のまちづくりコンクールでは最優秀賞の建設大臣賞を受賞し、翌年にはカナダで開催された国際コンクールにも参加。東神楽町の名は全国的に知られるようになりましたが、「花のまち」のキャッチフレーズと住民の意識にはかつては少々ギャップがあったようです。今回は東神楽町が運営する育苗センターのスタッフの中田公裕さんと、「花Tomo」に所属する飛騨野雅美さん、吉原由美子さんにお話をお聞きしました。
写真左から飛騨野雅美さん、中田公裕さん、吉原由美子さん
「花のまち」が一人歩きする状況に危機感を覚えて。
東神楽町が「花のまちづくり」を掲げたのは40年以上前。町内会や公共施設の花壇を整備する住民はいましたが、「花のまち」を強く意識していたのはごく一部のまちの人々とメディアだけだったのだそうです。
「私はお花が好きで趣味はガーデニング。17年ほど前に東神楽が『花のまち』として有名だから引っ越してきました。ただ、聞くと住むとでは大違いというか、目立つ取り組みがあまり見当たらず...」
そう話すのは飛騨野さん。お祖母さんが仏花を市場に卸す仕事に就いていて、子どものころにご用聞きの手伝いをして以来、花には目がないと笑います。
「だけど、ちょうど飛騨野さんが移住してきたくらいから、育苗センターが拡張され、公園や公共施設に飾るための花の苗を増やしていきました」と吉原さんが言葉を続けます。
その育苗センターの拡張時にはアルバイトとして働き、5年ほど前に建設水道課の職員として運営に携わるようになったのが中田さん。「花のまち」の名前だけが一人歩きする状況に危機感を覚え、立ち上がりました。
「僕らがいろんな花を提供できるようになれば、まちの人々も興味を持ってくれるかなと思ったんです...単純な考えですが(笑)。あちこちから種や苗を買ったり、分けてもらったりして、多彩な花の育苗を始めました」
花に興味を持ってほしいと600種12万本の花を育苗。
チューリップからパンジー、ベゴニア、インパチェンス、さらに多肉植物まで。中田さんは独学を重ねて花の種類を増やしていき、まちの人々に地道に紹介し続けました。その姿に胸を打たれた方が珍しい種を持ってきてくれ、少しずつ数を増やしてきたといいます。
「今は600種17万本ほどの花の苗を育てられるようになりました。東神楽には花壇整備や庭いじりに取り組んできた人がいらっしゃいますから、花を愛でる土壌は根づいているのでしょう。最近では中年男性でも『コレ、カワイイ花だね』と興味を示してくれます」
飛騨野さんや吉原さんも中田さんと交流を持つようになってから、色とりどりの花を植える楽しみが膨らんでいったそうです。5年前には寄せ植えやオープンガーデン巡り、花の講演会などに取り組む「花Tomo」を設立。当初はわずか3人でスタートを切りましたが、今や町民50名が参加するほど大きな団体となりました。
「最初は家の周りをお花でキレイに飾りつければ、ご近所の方も真似してくれるんじゃないかという軽い考えでした」と飛騨野さん。「でも、ご家庭でガーデニングに取り組んだり、町内会にしても春花壇や夏花壇の整備に乗り出すところが少しずつ増えてきたんです」とは吉原さん。まちと住民の地道な努力が、ようやく花開いてきたようです。
「今後は東神楽らしい特色のある花をどうアピールするかも課題です。『花のまちづくり』を掲げ続けるためにも僕の知識を若い世代に伝えなければなりませんし、花の苗を売るための企画も必要。花のまちづくりをミッションとする地域おこし協力隊とは、そのあたりのアイデアも一緒に練っていきたいですね」
中田さんの言葉に深くうなずく飛騨野さんと吉原さん。皆さんの笑顔が「花のまちづくり」のタネなのですね。
- 東神楽町建設水道課「育苗センター」
- 住所
北海道上川郡東神楽町南2条東2丁目
- 電話
0166-83-3356
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