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まちおこしレポート
新ひだか町

まちをあげて次代の「農」を育む話。20161024

まちをあげて次代の「農」を育む話。

新ひだか町の農業担い手支援の取り組み

新ひだか町と聞き、真っ先に思い描くのは軽種馬や日高昆布。けれど、日高山脈の麓に肥沃な大地が広がるこのまちは、ミニトマトや花き(観賞用の花)、水稲など多彩な作物がすくすく育つ農業王国でもあるのです。高齢化や農の担い手不足といったどの地方も抱える課題に、新ひだか町はどう取り組んでいるのでしょうか。

地域農家が立ち上がり、担い手支援組織が発足。

平成18年3月、静内町と三石町が合併して生まれた新ひだか町。二つのまちの人と情報がより活発に行き来するようになり、基幹産業の規模も大きくなったとはいえ、農家の人口は少なくなる一方でした。
「正直なところ、新ひだか町の農業担い手支援は後れをとっていました。新・農業人フェアをはじめとする新規就農関係のイベントで、他のまちの受け入れ体勢や手厚い助成金に驚くくらい...」
かつてを振り返り、苦笑するのは新ひだか町農林水産部農政課・農産グループ主幹の飯田裕紀さん。このままでは地域農業が衰退の一途をたどってしまう。危機感を覚えて立ち上がったのは、他でもない生産者だったといいます。

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「地域農業の次代を担う人材を外から呼び、育成していくのはまちの農家なんだ。そんな『自分ごと』の熱意に引っ張られるような形で、平成22年に『新ひだか町農業担い手育成支援協議会』が発足しました」
協議会の構成員は農業体験や研修を受け入れる農家が10名。農協や町農業実験センターも会員として手をたずさえ、飯田さんら町役場は事務局としてイベントや説明会を広くサポートする役割を引き受けました。まちをあげて新規就農者を受け入れる体勢へと大きくシフトチェンジしたわけです。

まちが本気だからこそ、3作目から選ぶのが条件。

協議会が新規就農者を集めるための構想を練り、農業担い手支援の取り組みをスタートさせたのは平成24年。最長2年の研修期間には月額18万円(スタート時は15万円)の研修費を支給したり、住宅補助や帰省旅費を用意したり、果ては就農後も多彩な補助金を利用できるなど、かつてとは比べ物にならないほどの高待遇を整えました。

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「農家さんは積極的に研修生を受け入れるだけでなく、新規就農を迷っている相談者をわざわざ圃場へと案内することも。農協にしても将来に向けての営農計画を丁寧に指導しますし、町農業実験センターもコストカットにつながる技術を日々研究しています」
このように新ひだか町が農の担い手を迎え入れる姿勢は本気。だからこそ、本気で新規就農を目指す方には「条件」を設けています。それは何でも自由に作って良いというわけではなく、ミニトマトか花きの栽培、または和牛の飼育から選んでもらうこと。実はこの3つは新ひだか町が振興する作目でもあり、経営を安定させやすいのです。

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苦い思いをさせたくない、という親心に似た愛情。

飯田さんが新規就農者にとりわけオススメするのがミニトマト。病気に強いタフな生命力を持っていることからビギナーでも失敗しにくく、なおかつ「ハウスもの」は一般に設備投資にかけるお金が少なくて済むそうです。
「ここ10年ほどの間、新ひだか町でミニトマトの栽培に取り組む農家がかなり増えました。ベテランにとって収穫以外はそれほど手間がかからない上、JAしずないがブランディングした品種『太陽の瞳』は道内外の市場で高評価。毎年『もっと入荷したい』という声も多く、売れる道筋がきちんと立っているんです」

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まずは生活できるようになる農業を目指してほしい。取材の間に飯田さんが何度もそう口にした理由は、有機農法や無農薬栽培にトライしても収量や売り先を確保できずに苦しい立場に置かれがちなことを知っているから。新規就農者に苦い思いをさせたくないという親心に似た愛情が、『稼げる農業』をすすめる方針の根底に横たわっているのです。

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農業は決して一人ではできないことを前提に。

『新ひだか町農業担い手育成支援協議会』の立ち上げから5年。現在は8組12人が新規就農を果たし、8組11名が研修生として汗を流しています。新ひだかの農業を担う若手は順調に増えているようです。
「私たちは農業体験の際に必ず現地に足を運んでもらい、新規就農者や研修生とお話しする場も作っているんです。それが農業に携わったことがなくてもやっていけるんだ、という安心材料になったと皆さんは口をそろえます」

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新ひだか町は日高管内では大きなまち。静内エリアには総合病院や保育施設、高校もあり、さらにチェーン店も増えてきています。生活の便が思いのほか良いことに「え?こんなに大きなまちだったの?」と感想をもらす人も多いとか。
「新ひだか町の暮らしは日高管内では都会的。とはいえ、私たちが就農相談会で面接する時は地域の一員としてとけ込めるかどうかを重視しています。自然とふれ合えればいいとか、農業にはコミュニケーションが必要ないという理由で就農すると、地域の農家と些細なすれ違いがおきて残念な結果を招いてしまいがち。農業は決して一人ではできないことを伝え、ギャップが生まれないようにするのも私たちの役割です」
まちが本気で就農支援に取り組むからこそ、本気の若手が集い育っていく。そんな大きな可能性が感じられる取材でした。

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新ひだか町役場三石庁舎農政課
住所

北海道日高郡新ひだか町三石本町212番地

電話

0146-33-2111

URL

http://shinhidaka-noushinkyo.hokkai.jp/


まちをあげて次代の「農」を育む話。

この記事は2016年9月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。