HOME>北海道で暮らす人・暮らし方>都市に隣接する農園で自然栽培に取り組む若者たち。

北海道で暮らす人・暮らし方
札幌市

都市に隣接する農園で自然栽培に取り組む若者たち。20171010

都市に隣接する農園で自然栽培に取り組む若者たち。

見た目が劣るだけで、市場に出まわらない規格外の農産物。そんな未利用資源を有効活用したいという願いのもと、2009年に設立されたのが株式会社シーピーエス(以下、CPS社)。規格外の野菜の提供、それらを使った惣菜などの販売などに取り組む一方、価値の高い農産物を生産するために、札幌市篠路の一角に無農薬・無肥料の自然栽培農園も運営しています。その農園で働く二人の若者に、マイクとカメラを向けてみました。

農を知る料理人でありたい。 〜村田このみさんの話

真っ赤に熟したトマトを箱に詰めたり、パプリカをサイズごとに仕分けしたり。農場入口に設けられた作業場で、忙しそうにしていた村田このみさんに声をかけました。村田さん、ここで働くまでの経緯を聞かせて。
「出身は北見です。調理の専門学校を卒業し、道内の飲食店や東京のビストロで調理師として10年ほど働きました」

shizensaibai_cps_2.jpg

その日々の中で彼女が感じたこと。それは野菜の調理法は分かっても、それらが育つ環境やその栽培について自分は何一つ知り得ていないという事実。
「例えば慣行栽培とオーガニック栽培。表面的な違いはわかっていても、その実情は殆ど知らない。生産者がどこにこだわっているのか、どんな思いを込めているのか何も理解していない。次第にこのスタンスで料理をしていることにも違和感を感じるようになっていったんです」
決意した彼女が向かったのは京都。知人に紹介してもらった農家さんのもとで農作業を経験します。
「オーガニックで園芸作物や米作りに取り組む生産者でした。農薬を使わないことの意味や意義を知る一方、雑草の管理の大変さやその先にある除草剤の必要性も理解できた研修でした」

shizensaibai_cps_3.jpg

規格外の取り組みにも心打たれCPS社へ。

京都での半年の農業研修を経て、再び北海道へ。その経験を活かすべく仕事先を探しているさなかに出会ったのが、CPS社。2015年の暮れ、村田さんは同社で働き始めます。
「札幌で自然栽培を手がけていること。さらに自分たちで販売チャンネルを持ち、自然栽培の野菜を提供していことや、地元農家の方々の規格外の野菜を活用しているという点にも共感しました」
オンシーズンは札幌篠路に広がる農園へ。10町歩ほどある農地には、トマト、メロン、ジャガイモ、ズッキーニ、ササゲなど、50品目を超える農産物が栽培されており、村田さんも10名ほどの仲間と共に定植、除草、収穫、梱包などの作業に当たります。

shizensaibai_cps_4.jpg

「手が空けば配送もしています。地元のスーパー、自然食品販売店のほか、イベントやマルシェで販売を担当することもあります」
畑がクローズする冬場は、同社のセントラルキッチンへ。全道の約30戸の農家から送られてきた規格外を含む野菜の調理も手がけます。
「農と食が同居しているような職場。やりがいは大きいですね」

最後に、入社して約2年が過ぎた今の気持ちを伺いました。
「改めて思うのは農業は奥が深いということ。いろいろな経験をさせていただいていますが、まだまだ勉強の途中です。ただいつか、もう一度飲食店に立ちたい。ここで得た経験や知識をしっかり詰め込んだ、説得力のある料理を提供したいと思っています」

自然栽培を極めたいチャレンジャー。 〜森岡武彦さんの話

こんがり日焼けした顔に、朗らかな笑みが浮かんでる。畑の好青年、そんな表現がピッタリの森岡武彦さんにもお話を伺いました。

shizensaibai_cps_5.jpg

「高校まで札幌で過ごし、卒業後は国士舘大学へ。その後国際的なフードビジネスを手掛ける企業に入社し、超多忙な日々を過ごしました。ニューヨークでおにぎり店を新規開店させるなんて経験も。仕事は刺激的でしたが、激務と荒れた食生活がたたって体を壊しやむなく退社。そこで食の大切さを知り、農業やオーガニック栽培に対する関心が湧いてきたんです」
では今自分は何をすべきか。熟考の末に森岡さんが思いついたのは、全国を旅しながら各地の有機農家を訪ね、農作業を体験させていただくというもの。なんともユニークな発想です。
「一箇所の農家で働くことも考えましたが、いろんな考え、いろんな試み、さまざまな栽培法に触れてみたいという思いが勝ったんです」
もとより思い立ったらすぐ動き出す性分。森岡さんはその後一年間、沖縄、奈良、東北、北海道で有機栽培に取り組む農家のもとに足を運びます。その数およそ30軒!
「ほぼ飛び込みでの訪問でしたから、みなさん一様に驚かれていました(笑)。でも面倒がらず丁寧に指導してくれたり、中には住み込みで働かせてくれた方もいたり。本当に素敵な経験ができました」

shizensaibai_cps_6.jpg

日本で農家探訪の後は、パラオで開墾農業を体験!

これだけでも相当型破りな体験ですが、森岡さんの奇想天外なチャレンジはまだ続きます。
「農家巡りの終盤、何気に見たインターネットに『パラオで農業をしてみないか』という社員募集があったんです。たいした農業経験もなく、ましてやパラオの知識もありませんでしたが、何だか妙にそそられて。その頃はすでに結婚もしていたので、奥さんにも相談し、めったにない機会だから一緒にやってみようかと(笑)」
パラオでは国策として農業の振興に力を入れており、この募集告知もその流れからのもの。かつて日本が統治していた時代もあり農業の先進国でもあることから、日本人スタッフの募集をしたのではないかと森岡さんは推測します。
「とりあえずパラオに渡りましたが、現地に着いてビックリ!機械はない、肥料はない、ネットはつながらない。あるのは荒れ果てた土地だけ。農業をする前に開墾しなければならないという有様でした」
仲間は奥さまの他、同じくネットを介して参加したバングラデッシュ人や現地スタッフ。
「汗と泥にまみれながら大地を拓き、わずかな記憶を頼りに日本から持ち込んだ種や苗を植えました。肥料がないと育たないとの思いで、魚の残滓やバナナを畑に撒いたこともありましたが、その翌日その畑の作物が一気に枯れました。泣けました...(笑)」
そんな苦労を重ねながらも、ナスやトマト、ツルムラサキ、枝豆などの野菜をなんとか収穫。それらの野菜の栽培ノウハウのほか、野菜を現地販売するネットワークやルートも構築し、後ろ髪を引かれる思いを感じながらも森岡さん夫妻は約一年のパラオ農業体験を終えたのです。

shizensaibai_cps_7.jpg

今は『点』の経験をつなげて次の夢を描きたい。

帰国した森岡さんは、次の職場として自然栽培を手掛ける農園を探します。
「日本の農家さんの訪問やパラオでの開墾農業体験を通じて、より一層自然栽培に対する関心が高まったんです」
そんな折たまたま故郷の札幌で自然栽培に取り組んでいるCPS社の存在を知ります。規格外野菜の利活用などの地域貢献、農業貢献にも心を打たれ2017年春、森岡さんは同社に入社したわけです。
「働き始めてまだ数カ月ですが、毎日が学びの連続。畑作業の一つひとつが自分の糧になっていることをリアルに感じています」
その一方「思い立ったら行動」の性格は健在。つい先日も奥さまとフランスに渡りセラピーや食育について学んできたとか。
「北海道の農業は素晴らしいのですが、大規模農家へのチャレンジは自分には荷が重いかも...。現段階ではハーブに絞った農場を夢見ています。ハーブの抽出液を使ったセラピーは妻も共有するビジョンでもあるため、そんな日にたどり着くことが当面の目標です」

夢を描く人の話は実におもしろく、本当にあたたかい。村田さん、森岡さんのインタビューを通じてそう感じる一方、大消費地と生産地が隣接する「札幌の農業」への可能性も感じた取材でした。

shizensaibai_cps_8.jpg

株式会社シーピーエス 自然ファーム ハレトケ
株式会社シーピーエス 自然ファーム ハレトケ
住所

北海道札幌市北区あいの里

URL

http://www.cps-1.co.jp/haretoke/


都市に隣接する農園で自然栽培に取り組む若者たち。

この記事は2017年8月7日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。