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北海道で「カフェをやりたい!」を実現した女性オーナー20170919

この記事は2017年9月19日に公開した情報です。

北海道で「カフェをやりたい!」を実現した女性オーナー

元WEBプログラマーの軌跡

富良野と言えばドラマのロケ地やラベンダーで有名なまちですが、富良野の中にも様々な「まち」があります。北の国からのロケ地であり、観光地でもある「麓郷(ろくごう)」に行ったことがある方は多いでしょうが、「東山」という地区に行ったことがある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。


東山地区はもともと東山村という名で独立していましたが、後に富良野市と合併した地区。そんな東山地区の入り口、南富良野町との境目に古民家カフェがあります。
それが「Cafe&Bread IPPO(いっぽ)」です。

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IPPOのオーナーをされているのが和歌山県出身の山本美麗(やまもとみらい)さん。そして山本さんと時々一緒に接客をしているのが、共にこの富良野に移住してきたスタッフのクマさん(トイプードルとチワワのMIXでチワプー)です。

ippo16.jpgもふもふの毛が愛くるしいクマさん。

お話をうかがうと、なんと山本さんの以前のご職業はWEBプログラマー!そんな完全IT系女子の山本さんがどうして富良野に移住し、カフェをオープンするに至ったのでしょうか。

とにかくカフェと富良野が好きだった

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和歌山県出身の山本さんは進学で大阪へ移り、その後大阪でWEBプログラマーとして社会人の道を歩みはじめました。そんなIT系の進路を歩んできた山本さんでしたが、実はかねてより大のカフェ好き。趣味はもちろんカフェ巡りで、お休みの日にはカフェに通い、いつの日か自分の店を持つ夢のためにパン教室にも通っていました。

そしてある日、山本さんは思い立ちました。「カフェをやるならやっぱり本場を見ておかないといけない!」と。
そうして山本さんは「カフェで働く」という目的のためだけに会社を退職し、オシャレなカフェの多い神戸に移住し、実際にカフェで働き始めました。その後、さらに転機が訪れます。

当時から山本さんとお付き合いをしているつよしさんは大の富良野好き。そんな富良野が大好きな大阪出身の彼と、富良野旅行の際に美しい景色を見て、「もうここに住む!」と彼の方から宣言したのです。それから二人はたびたび富良野に訪れては住む場所や仕事を探し始めます。

2013年の2月、ついには富良野市で行っている移住モニターツアーに参加することになった二人は、実際に移住を体験しました。ますます本気度が高まる二人にその翌月、「富良野市で地域おこし協力隊を募集している」というニュースが飛び込みます。それまで旅行という少ない日程だけではどうしても住む場所や働く場所をゆっくり探すことができなかった山本さんは「今だ!」と移住を決意。

その後、富良野に行くぞ!という熱い意思を持ったつよしさんも準備が整い、南富良野町の地域おこし協力隊として移住してきます。
「なので今は、私は富良野市のこの場所に、彼は南富良野町に住んでいるんですよ」と山本さんは笑いました。

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「憧れ」から実際に住むというリアルへ

2013年6月、憧れの富良野市に第一号の地域おこし協力隊として着任した山本さんの仕事は、富良野市の中でも「山部(やまべ)」と呼ばれる地域の活性化。


そこで山本さんはまず最初に、NPOの運営するドライブインのお手伝いを任されます。もともとカフェで働いていた山本さんにとってドライブインのお手伝いはそれほど苦ではなかったそうです。ただ、飲食店のお手伝いよりも大変だったのは初めての北海道への移住、そして生活でした。

移住に関しては「自分の物を運ぶより、北海道で買った方が安かった!」というくらい、神戸から北海道という距離の引っ越しはやはり大変だったそう。何より「飛行機に乗る時にクマちゃんを預けるのが可哀想で...」と愛犬家ならではの大変さもあったとか。

ippo7.jpgIPPOの広報担当クマさんです。IPPOの顔!

富良野の中でも山部は、過去にひとつの独立したまちだったこともあってか、自分たちのまちに対しての意識が強い町なんだとか。また、「女性が強い町だな〜」とも感じ、みんなひとりで何でもできることに驚いたということも明かしてくれました。

ただ、関西から移住の山本さんは北海道の生活はもっと大変だと思っており、意外だった部分もあったそう。

「北海道の冬と言えば毎日2mくらい雪が降ると思っていたんですよね。でも住んでみたら2〜3日に1回、降った時にまめに雪かきをすればい良かったので想像していたよりも冬は大変じゃありませんでした。富良野は地震もないので住みやすいですしね。ただ、最初はやっぱり雪道での運転はとっても怖かったですね・・・」

慣れない環境での生活に、最初はちょっと大変だった部分もあったそうですが、だんだんと北海道の冬にも慣れていったそうです。

念願のカフェをオープン

地域おこし協力隊着任当初から「私はカフェをやりたいです!」と宣言していた山本さんに、運命の出会いが訪れます。それはドライブインで仕事をする中で現在のカフェの建物の大家さんと出会ったことでした。


大家さんに紹介してもらった場所は、東山の入り口。20年前はライダーハウスだったという富良野のはずれにあるその建物を見たとき、山本さんは「トトロに出てきそう!」とすぐに心が惹かれたそう。しかし、その建物は数年使っていなかったため老朽化が進んでボロボロの状態。大家さんも「こんなところ使わない方がいいんじゃないか?」と言っているくらいでした。しかし山本さんはここでカフェをやると決断。2014年の5月に改装工事に着手します。

ippo3.jpg本当にトトロに出てきそう。

大工さんに教えてもらいながらの、ほとんどがDIY。まずは傷んだ部分や不要な部分の解体から着手し、協力隊の仕事と並行しながらひとつひとつ手作業で改装を進め、翌年の2015年3月には地域おこし協力隊の任期を終了し5月に念願のオープンを迎えたのでした。

「初めの一歩」そして「一歩一歩進んでいく」という願いを込めてカフェは「IPPO」と命名されました。

ippo5.jpgほとんど自分でつくったという店内。

ippo11.jpg木のぬくもりがあったかく、とても居心地の良い空間です。

移住者や地域おこし協力隊が集まる場へ

「こんなところでカフェなんかやっても人来ないんじゃない?」そう言われて始まったIPPOでしたが、実際に営業を始めてみると他のまちの地域おこし協力隊の仲間や富良野に移住した仲間が数多く顔を出してくれました。

もちろん、南富良野町の地域おこし協力隊として山本さんに遅れて北海道に移住してきたつよしさんも、お休みの日はお店を手伝ってくれるなんてことも。


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また様々なメディアにも取り上げてもらえたことで夏は観光客のお客さんも順調に足を運んでくれているそうです。

さらには協力隊をしていた頃に親身になってくれた富良野市役所の職員さんが遊びに来てくれたり、他の町の役場の職員さんが事例として視察に来たり相談に来たりもするそうです。悩んでいる仲間や相談に来た方に、山本さんは親身になって話を聞き、時には背中を押し、時には去ってゆく仲間を見送ることもありました。

「私はやりたいことがあったから富良野に来て、やりたかったからカフェをやっているだけ。目的があってその地に来たのならやったらいいし、それが別の場所じゃなきゃできないならそこに行った方がいいって思っているんです」。

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誰もが憧れる「富良野移住」ですが、実際は物価が安いわけでもなく、移住に対するハードルが低いとは言えない部分もあるようです。しかし、実際に富良野に移住してみて山本さんは改めて富良野の良さも実感しました。

「まず、富良野は本当に水がキレイですね。IPPOも水道が通っていないので地下水を汲み上げて使っているのですが、検査をしてもらったら飲用に使っても問題ないとっても水質の良いところでした。そんな水で育った富良野の野菜は本当に絶品で、野菜がこんなにおいしいなんて今までの人生で感じたことがなかったので本当に感動しました。そんなおいしい野菜が近所で安く仕入れることができるのでこの場所でカフェをできて良かったなと思います」。

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またご近所さん同士のおすそ分けも頻繁にあるそうで、この地域ならではの人と人との距離の近さを感じさせてくれるようです。

東山に生まれた古民家カフェ。次の『一歩』は...

「富良野でカフェをやりたい!」というカフェ好き女子が一歩踏み出したことで始まった古民家カフェ「Cafe&Bread IPPO」。時には人とぶつかり、時には人の優しさに触れながら過ごしてきました。地元産にこだわったランチや、苦労して作り方をマスターした天然酵母のパンも好評で観光客や常連さんで賑わっています。


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そこで山本さんに今後の展開に聞いてみると「実はもう次の『一歩』を考えているんです」とのこと。オープンしてまだ2年にも関わらず次の目標がすでにできているなんて、その行動力には驚きますが、今後の山本さんの行動がとっても楽しみ。

山本さんは富良野に移住するということは楽しいことばかりじゃないと言います。しかし「これをやりたい!」という明確な目標と強い意志があれば、富良野という町はきっとそれを叶えられる場所でもあることを教えてくれました。山本さんはこれからもきっと自分の目標に向かって歩き続け、IPPOを訪れる仲間たちの背中を押してくれる存在でいてくれるのではないでしょうか。

Cafe&Bread IPPO
Cafe&Bread IPPO
住所

北海道富良野市字東山4176-2

URL

http://furano-ippo.info

◎Facebookも更新中

https://www.facebook.com/furano.ippo/


北海道で「カフェをやりたい!」を実現した女性オーナー

この記事は2017年7月11日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。