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北海道で暮らす人・暮らし方
下川町

思い立ったら即行動!の木工家20170817

この記事は2017年8月17日に公開した情報です。

思い立ったら即行動!の木工家

移り住みながら腕を磨いて

埼玉県出身の河野文孝さんは、子どもの頃から好奇心旺盛。いろいろな『モノ』の構造に興味を持ち、時計などを分解して仕組みを確かめた事もありました。建築物も好きで、高校卒業後は建築工学を学べる専門学校に進学。しかし、模型作りなどの授業は楽しかったものの、少しずつ建築への興味が薄れてしまったため、卒業後は方向を変え、ある目的を持って営業職に就きました。「人としゃべるのが苦手だったので、営業の仕事をすることで話せるようになりたいと思ったんです。チャレンジですね」と説明する河野さん。その口調は、苦手だったとは思えないほど、とても滑らかです。


その後は、やっぱり好きなモノ作りの道に進もうと、木工塾に通い、手加工を習得。そして、28歳の時にたまたま出先で北見高等技術専門学院の存在を知り、以前から北海道出身の作家の作品に興味を持っていたこともあって、入学を決めました。「やりたいと思ったら後先考えずに動いてしまうんです」との言葉どおり、学院修了後もその時々の自分の製作スタイルに合った環境を求め、東川町、剣淵町、愛別町と移り住みながらモノ作りを続けました。

そんな河野さんが2016年10月に下川町に移住したのは、『森の中で、地域材を使ってモノ作りができる環境』があったからでした。

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ここでしか作れないモノを

下川町との縁を取り持ってくれたのは、地域活性化に向けて移住促進などに取り組む、下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部プロジェクト総括部長の長田拓さんです。長田さんとは、数年前に共通の知人を介して知り合った後、アート作品を展示する「下川まちなかアートフェス」への出店の誘いに河野さんが応じたことで交流が深まりました。


shimokawa_kawano4.jpg河野さん(左)と親しげに話す長田拓さん(右)

そんな中、町のNPO法人が、うまく木材として流通に乗らず、パルプ材になっている地域材を木工などに生かす取組みを開始。長田さんからその情報を得た河野さんは移住を決意し、町内で自身の家具工房「森のキツネ」を開く場所を探し始めます。そして見つけたのが、かつて森林組合の事務所として使われていた建物でした。「長田さんと一緒に10件以上、物件を見て回りましたね。この建物は、森から近く、古いけれど梁(はり)も柱も大きくしっかりしていて気に入りました」。建物の大家さんから出された唯一の希望は「町の特産品を作ってほしい」ということ。それは、地元産の木材にこだわり、「その地域ならではのモノを作ろう」と考えていた河野さんの気持ちをさらに強くしました。

shimokawa_kawano3.jpg10件以上まわって、ようやく出会った物件。森のキツネはこのように自然に囲まれています。

現在進めている仕事の一つが、二又の木の形を生かしたテーブル作りです。「枝分かれした木は扱いづらいため、一般には流通しません。だからこそ使いたいと思い、長田さんから町役場の森林産業推進課に相談してもらい、協力していただきました。木材の産地だからできることですね」。枝分かれした一方の枝はそのままで、もう一方は板状にして、他にはないテーブルを作り上げる予定です。

地元店と初コラボのカッティングボード

河野さんは、もう一つ、ある人からの誘いで地域に根差した仕事を手掛けています。下川町で80年以上続く「パンとケーキの店 やない」のパン製造担当、矢内啓太さんです。
矢内さんは高校卒業後、札幌の専門学校への進学と就職で、パン製造の技術を身に付けて4年前に帰郷。その後、町内にハード系パンが浸透していないことが分かったため、何とか広めようと、バゲットとカッティングボードを一緒に店頭に出し、『豊かなライフスタイル』と結びつけて提案することを思いつきました。


shimokawa_kawano5.jpg河野さんと矢内さん(右)。河野さんが持っているのは噂のカッティングボードです。

二人の出会いは、町内で開かれている、移住者と地元の人たちの交流の場「タノシモカフェ」。矢内さんは偶然会った河野さんに、その場でカッティングボードの製作を依頼しました。河野さんは「第一印象はちょっと怖かったけど、話し方がソフトだったので安心しました」と笑います。
打ち合わせを重ね、ボードは地元産のクルミ材を使って作ることに決定。その理由は、パンに使ったクルミのカスで手入れができるからです。矢内さんは「お買い上げのカッティングボードは、当店のサービスで、いつでも手入れをさせていただくつもりです」と話しています。

これから河野さんは、家具以外にもいろいろなモノを作っていくと決めています。「例えば、町内のお店のオリジナル商品として、スマートフォンのケースやバインダーなどを作るのもいいですね。ここでしかできないモノを追求して、増やしていきたいです」。意欲あふれる河野さんのチャレンジは、始まったばかりです。

shimokawa_kawano6.jpg自分用に作ったバードコールを鳴らす河野さん。移住後、釣りやスノーボードなど趣味も満喫

森のキツネ 河野 文孝
森のキツネ 河野 文孝
住所

北海道上川郡下川町一の橋615

URL

http://morino-kitune.com


思い立ったら即行動!の木工家

この記事は2017年5月9日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。