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八雲町

ホタテ漁師の三代目は、頼れる若き親方。20170110

この記事は2017年1月10日に公開した情報です。

ホタテ漁師の三代目は、頼れる若き親方。

育てる漁業、ホタテ漁師の村上朝克さん。

北海道のホタテの水揚げ量は全国の8割を占め、堂々の日本一。また近年では、「獲る漁業」が落ち込むなかで、「育てる漁業」の代表として北海道の漁業を支えています。
ホタテの養殖には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは、ホタテの赤ちゃんである稚貝(ちがい)を海に放して海底で成長させる「地まき式」。もうひとつは、稚貝に穴をあけロープで海中に吊るして育てる「耳吊り式」です。地まき式はオホーツクと根室方面で、耳吊り式は太平洋側の内浦湾でとエリアもはっきり分かれています。
内浦湾沿いに位置する八雲町は、ホタテを基幹産業とする町。今回ご紹介する落部漁業協同組合所属の村上朝克(もとかつ)さんは、ホタテを中心に漁業を営む3代目の漁師さんです。

hotateryoushi_murakami002.JPG村上さんは自分の船を持ち、漁の采配をふるう"親方"

手間と時間をかけて、赤ちゃんから育てます。

ホタテ養殖は、海中に浮遊する稚貝を"採苗器"に付着させることから始まります。6月に投入した採苗器を1ヵ月ほどで引き上げ、わずか数ミリの赤ちゃんを取り出して籠に移してまた投入。このように、成長に合わせて籠を変え、枚数を減らしながら海の中で育てていきます。
春になる頃には、浜が一番忙しくなる"耳吊り"作業があります。5cmほどに育った貝に1枚ずつ穴をあけ、テグスを通してロープに固定。それを幹綱いわゆる桁(けた)と呼ばれる太いロープに吊るして、海中に戻し、10cmくらいに成長させます。
水揚げまでの約2年間は、貝に付着する物を取り除いたり、浮き玉を調整したりと、見回りも欠かせません。あのプリプリとした甘いホタテが私たちに届くまでには、かなりの手間と時間がかかっているのです。


hotateryoushi_murakami003.JPG小さな稚貝を海中で育てていくホタテ養殖

世界の海で修業を重ね、26歳の若さで親方に。

自分の船を持ち、漁の采配をふるう漁師は"親方"と呼ばれます。40歳の村上さんは、親方衆の中でもかなり若いほうですが、実は漁師のキャリアは長いのです。
一年を通して忙しい漁師の家で育ち、小学生の高学年になるとお父さんと一緒に船に乗り、漁を手伝ってから学校へ行くのが日常に。そうして、中学を卒業したらすぐ漁師になりました。

hotateryoushi_murakami004.JPGほかの漁も体験してみようと、16歳のときには世界一過酷とも言われるベーリング海のカニ漁を経験。
「3ヵ月間ずっと海にいたのはキツかったけど、いろいろな人が集まって、一緒にやる仕事は面白かった」と、村上さん。その後もアラスカへ行って鮭の加工を経験するなど、独自のやり方で修業を重ねていきました。転機となったのは、お父さんが倒れ、親方を継ぐことになった26歳のとき。
「子どもの頃から船には乗っていたし、漁師の仕事はひと通りわかっていたけど、実際に自分が親方としてやるとなると、ものすごく不安だった」。
結婚して子どもが生まれ、家族のためにと一生懸命に働いて、親方になって6年。ついに自分の船を持つことができたそう。代々続いてきた「第八朝丸」の名前を印した新しい船を見たときは、「そりゃあ、うれしかったよ」と、日焼けした顔がほころびました。

hotateryoushi_murakami005.JPG親方になってから造った「第八朝丸」の操縦席で

やる気のある若者には、漁師のシゴトを教えたい。

hotateryoushi_murakami008.JPG漁師を目指して研修中の松岡直哉さん


漁業は北海道にとって重要な産業ですが、新規参入の難しい世界と言われています。でも、「やる気のある人は受け入れる」のが、村上さんのスタンス。いまは、「養殖」を専門学校で学び、八雲町へUターンしてきた松岡直哉さん(20歳)を雇用し、この春から漁師の仕事を教えています。

では、漁師になるにはどうすればいいのでしょう? まずは、漁業協同組合の資格審査委員会、理事会の検討を経て准組合員になることが必要です。さらに、漁業の経験を積み、組合から正組合員と認められれば漁師として独立することができます。もちろん、船を買ったり、資材を用意したりする資金は必要ですが、最も重要なのは「技術」と村上さんは言います。
「単独でやりたい場合は、昆布、なまこ、ウニなど、まず魚種を選ぶことが必要。チーム作業ができるなら、ホタテや鮭の船に乗って仕事を覚える。どちらにしても、経験しながら技術を身に付けていくしかない」と教えてくれました。
頼れる親方のもとで、懸命に働く若い研修生。「育てる漁業」の希望を感じさせる船上の光景でした。

落部漁業協同組合 カネジョウ 村上漁業部 村上朝克さん
住所

北海道二海郡八雲町落部529

電話

0137-67-2211

URL

http://www.otoshibe-gyokyou.com/index.html


ホタテ漁師の三代目は、頼れる若き親方。

この記事は2016年10月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。